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第四章

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「俺の事が信用できないですか?」

 まあ勿論それもあるが。
 カシュアだって、いい顔しないだろう。向こうは気づいていないかもしれないが、裏切った張本人だからなあ。
 あれだけこっぴどく裏切られていればさすがのカシュアも……

「えっ、誰だっけ? ああ、そういえば居たね! すっかり忘れてたよ!」

 ……無駄でも知能を、もちっと上げといたほうが良かったか?

「どちらにしろ俺には選択肢がないんですがね。万が一あんたの身に何かあったら……俺だけじゃなく一族郎党の首が飛ぶ」
「いやまさかそんな事が」
「あの御仁は冗談は言わないからな」

 ……マジですか?
 オレが言って……聞くかな? あいつ頑固だからなあ。

「それにカユサル様だけじゃなく、エルメラダス様にも念押しされたからな。あの人は普通に首を刎ねる」

 ああ、確かにおっかなそうだしな。
 しかし、うちには護衛といっても、結構な戦力を持っているぞ?
 特に必要だとは思えないんだが。

「ならば俺の腕を試して頂きたい」

 どうするラピス?
 えっ、カシュアと戦わせて見る?
 お前がやらないのか? えっ、めんどそうだからヤダ? お前……

「えっ、ボクがやるの? いやいやいや、思い出したよ彼! 純粋な剣の腕ならば、この国でも2番目に強いと言われている人だよ!」

 そういや屋敷でもそう言ってたな。
 と、いうことは、もう一人のカユサルが変装してたのが……一番な訳か、どうりで強いはずだ。
 最初に穴に落ちなければ、ブラックドラゴンもなんとかしたかもしれない。

「大丈夫ですよカシュア、今のあなたなら、ちょっとやそっとの攻撃では傷一つ付けられません。使用するのは木刀ですしね」

 ほら、お坊ちゃまにいいとこ見せるチャンスですよ。って囁いている。
 いや別に、ソイツはオレの事はなんとも思ってないと思うぞ。
 しかしカシュアはニヤリと笑う。あっ、これはなんか嫌がらせを思いついた顔だな。

「いいねそれは! なら勝者には、クイーズ君の熱いベーゼをお願いしようかな!」

 おまっ、なんて事言うんだ! どっちが勝っても罰ゲームにしかならないだろうが!

「何を言うんだい? こんな美少女を捕まえて!」
「仮に向こうが勝ったら、オレはあのおっさんにチュウする事になるんだぞ!」
「だったらキミはボクが勝つように応援する事だね!」

 お前が勝っても大してかわらんだろうが!
 嫌だぞ、男にチュウなんてするとか。
 おい、聞けよ! ちょっと聞けってば!

 カシュアの奴はそんなオレを無視してスタスタと裏庭に向かう。鼻歌とか歌ってやがる。
 だが、そんな上機嫌も戦闘が始まるまでの間だった。

「ちょっと! 聞いてないよぉおお!」

 激しい攻撃に防戦一方のプリンセス。攻撃なんて一刀もさせてもらえない。
 ラピス君、大丈夫だって言ったじゃない! って吼えている。
 だから言ったろ、ラピスの大丈夫は大丈夫じゃないって。ん? カシュアには言ってなかったか?

「ちゃんと防げているじゃありませんか?」
「これは大丈夫とは言わないよ!」
「まさか俺の攻撃がここまで防がれるとは……」

 まあ、中々頑張っているのは確かだ。
 目にも止まらない速さの攻撃を、その巨大な盾を巧みに使って防いでいる。防御特化型にしただけの事はあるな。

「くっ、力で押してもビクとしない……スピードで隙を狙おうとも、隙がない。盾で視界が防がれているはずなんだが……」

 対して城から派遣されて来たオレを護衛するという、名をボウリックという人物。
 カシュアの堅牢な防御に驚愕している。

「確かに、このような女性が居れば、護衛など考えないか……」
「フッ、愚かな、奴は我々の中でも最弱。そんな奴にも勝てんとは底が知れて居る」

 お前はどこの悪役四天王だよ?
 そのラピスのセリフに思わず隙が出来るボウリック。
 すかさず攻撃を加えるカシュア。しかしさすがは第二位、ギリギリで受け止める。

「はい、そこまでにしましょうか」

 そこでラピスが手を叩きながら間に入る。
 えっ、もう終わりなの? えっ、そんなにチュウがしたいんですか。だって?
 ヤダヨ! よし終わりだ! 勝負は引き分け!

「え~」
「え~言うな」

 お前はほんとにオレにチュウされたいのかよ?
 なんなら今ココで本当にしてやろうか? ああん!?
 ふとカシュアが横目で何かを見たかと思うと、

「うん、いいね! ぜひともしてもらいたいものだ! ほら! ここに! ぶちゅ~とお願いするよ!」

 ウザッ。
 カシュアが横目で見た先、そこには、お昼が一段楽したエクサリーさんが。
 オレは顔を近づけてくるプリンセスを、アイアンクローで黙らせながらエクサリーに問いかける。

「今日の仕事は終わり? こっちもちょうど揉め事が片付いた所だから、一緒に休憩でもしようか」
「彼女は随分怒っているようだな。こんな所で戦闘を始めたのがまずかったのか?」
「いやあれ地顔」
「………………」

 そこで絶句してやるなよ。またエクサリーが落ち込むだろ?
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