『モンスターカード!』で、ゲットしてみたらエロいお姉さんになりました。

ぬこぬっくぬこ

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第六章

レベル95

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「うぉっ、どうしたサヤラ、死相が出ているぞ」
「終わらない……終わらない……もう弾は見たくない」

 やはりというかなんというか、聖皇国でもサヤラの銃器は大ヒット!
 ピクサスレーンの下町と違いここは大都市!
 そりゃもう注文が殺到する訳ですよ。

 ちなみに、オレ達の楽器に付いては上々の滑り出し、と言った感じで、大ヒットとはお世辞にも言えない。
 楽器を弾ける人が少ないからな。お高いし。
 どっかで音楽教室でも開かないと駄目だなこれは。

 フラッと倒れそうになるサヤラを抱き止める。

「ほんとに大丈夫か? もっと値段を上げた方がいいんじゃないか?」
「……なんだか元気が沸いてきました! まだまだやれる気がします!」

 オレはお姫様抱っこでサヤラを店まで連れて帰る。
 そのサヤラ、なんだかハイになっているようで、顔から今にも湯気がでそうなぐらい興奮している。
 熱でもあるんじゃなかろうか?

 店にたどり着くと、扉の隙間からジトッとした目でオレ達を見てくるアポロ。

「いやっ、違うんだよ!? ちょっと帰り道で調子が悪くなってね? だから泣かないでアポロ」
「…………泣いてないし」
「あっ、お坊ちゃま、なんかエクサリーが呼んでましたよ」

 アポロの隣からひょっこりとラピスが姿を現す。
 ふむ、なんだろうか?
 さっそくオレはエクサリーの元へ向かう。

「……私には商才がないのかも知れない」

 そこでは、そう言って落ち込むエクサリーが俯いていた。
 えっ、なんでそういう結果に?

「これを見てみて」

 エクサリーが帳簿を差し出してくる。
 ふむ、かじろうて黒字って所か。
 まあ最初の決算だから上々じゃない?

「父の店の1割にも及ばない……」

 いや、それは比べるところが間違っている。
 おやっさんの店は儲け率だけならトップクラス。
 こんな小さな専門店じゃ太刀打ち出来る訳が無い。

「でも……」

 そう呟いて黙り込むエクサリー。
 父親からは資金の援助、国からは店舗まで。最高の立地、最高の環境。
 それを与えられて置きながらこの程度の売り上げだとは納得がいかない。とのことだろう。

「もしかして、オープンしたと同時に大量に人が入り、生産が追いつかないぐらい商品が売れて、あっというまにこの国一番。とか思っていたり?」
「うっ……いや、その、ちょっとはそんなこと、思ったかなぁ……」

 まあ、誰も売れないと思って商売を始める奴は居ない。
 誰もがそんな期待を胸に新しいスタートを切るのだ。
 そして現実を知ってやる気をなくす。良くあるパターンだ。

 しかもエクサリーの場合、隣に実際にそのドリームを達成しようとしている奴が居る。
 サヤラの銃は売りに出したとたん数日で在庫が切れた。冒険者だけじゃなく、貴族からも注文が殺到している。
 そのうち、ここらじゃ一番の売り上げを上げる日も遠くないかもしれない。

「エクサリー、ちょっと気分転換に外を歩いて見ないか?」
「えっ? いいけど……?」

 オレはエクサリーを店から連れ出し広場へ向かう。
 その広場の一角では、一生懸命オレ達が作った楽器を弾いている人が居た。
 そしてその人の周りには笑顔の人達が溢れている。

「下手だなあ……でも、楽しそうだな」
「……うん」

 オレだってその昔(前世)いろんな事に挑戦してみたさ。
 最初はコレならば一気にランキング1位になってウハウハだぜ、なんて思ってても結果は散々。
 その都度落ち込んださ。

 でもそんな時、誰かが楽しいと言ってくれた。少なくても、凄いと言ってくれる人が居た。
 だから続ける事が出来たんだ。
 エクサリー、見てみろよ。オレ達が売ったものを、ああやって必死に使ってくれている人がいる。そしてその周りには笑顔の人達で溢れている。
 それって凄いことじゃないか?

「ほかの何を売っても、ああはならない。オレ達の売っている商品は人々を笑顔にする商品だ。そしてそんな商品を心待ちにしてくれている人が居る」

 一人でもそういった人が居る限り、オレ達のやっている事は無意味では無い。
 赤字で無い、という事が前提だが、

「利益を追求するのはもっと後でもいい。まずは一つ一つ丁寧に、商品を必要としている人に届けるんだ」

 そうする事によって、買った人がまた次の人へと、そのまた次の人へと。
 今、演奏を聞いて笑顔の人の誰かが、自分も弾きたいとやってくるだろう。

「オレ達が売っている商品は、誰もが必要とする日用品でも、無くてはならない必需品でもない」

 オレ達が売っているものは、

「生活の中で、笑顔をプラスアルファさせる物だ」

 だからサヤラの銃のように爆発的に売れはしないだろう。
 だけど、いずれ人々に浸透して行く。だって笑顔は、誰もが欲しがっているものだからだ。

「……クイーズは凄い。きっと私はクイーズがいないと何も分からなかった」
「そんな事無いさ。分かる人間はいずれその答えに辿り付く。早いか遅いかの違いだ」
「でも、今知る事が出来て私は良かったと思う。私だって笑顔が大好きだから」

 ――ニヤァ

 と笑う。
 コワッ、その笑顔はコワッ! もっと自然に! 子供が泣いちゃうよ!

「……頑張ってみたのに」
「愛想笑いをしようとするからだよ! もっと自然に笑えばきっと良くなる」

 そ、そうかな。って、しきりに指で口角を持ち上げながら答える。
 そこへ、お話はもう終わりましたか。とラピスが入ってくる。

「そんな事気にしていたのですか? 贅沢ですねぇ」
「えっ、私が贅沢?」

 ラピスが事情を聞いてそう言ってくる。

「贅沢も贅沢! お金も有る! 男も在る! 幸せも在る! これ以上何を望むのです?」

 そんなに贅沢して、せめてお坊ちゃまは私にくださいよ。って言う。

「それはだめっ!」
「ふふっ、絶対に欲しい物は既に手に入れておいて、やっぱり贅沢じゃないですか」
「そっ、そうかもしれない」

 真っ赤な顔で俯くエクサリー。
 さてとっ、と話を変えてくるラピス。

「お坊ちゃま、少々めんどくさい事になりますが、聞かれますか?」

 なんだよぉ……めんどくさい事はお断りだぞ。なんだか嫌な予感がしてきた。
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