98 / 279
第六章
レベル98
しおりを挟む
「な、なんだこの人間は!? 我の鱗がこうも容易く切り裂かれるはずがない!」
「人ではない、そ奴もまた竜、ただ人の姿をとっているに過ぎない」
そう言うと人間の姿に戻る、竜王ニース。
その手にはしっかりと聖剣が握られている。
「な、なんだと……?」
「古来より、悪い竜を退治するのは、人の仕事であろう?」
「敵わぬと知って気でも狂ったか?」
エロドラゴンになっているロゥリが隣に並ぶ。
「アイツ、ヤッテイイノカ?」
「ふうむ、今のお主ではちと厳しいかのぉ?」
「バカニスルナ!」
ロゥリが駆け出す。
竜王ハイフレムから数々の魔法が放たれる。
だが、それらは竜王ニースが手を上げた瞬間に掻き消える。
「なにっ!? 老いたお前にこんな芸当が出来るはずが……」
「余所見をしている暇は無いぞ」
ハイフレムに辿り着いたロゥリが、ドラスレを高く掲げ斬りかかっていく。
同時にニースも動き出す。
ロゥリが持つドラゴンスレイヤー。
それは、生物の中でもっとも硬い鱗を持つ竜を、容易く切り裂いていく。
ニースが持つ初代聖剣。
竜に対してはドラスレほどの切れ味はないが、それでも鱗を切り裂く程度の切れ味は持つ。
そんな我等の最凶コンビにズタズタに切り裂かれていく、竜王ハイフレム。
爪で切り裂こうとも、的の小さい人間サイズ、しかも動きは達人並み。捉える事はままならない。
魔法で攻撃しようとも、より上位の能力を持つニースによって全て掻き消されてしまう。
「我輩が加勢するまでもないであるな」
「ああ、ダンディ達は周りの雑魚共を頼む」
「承知した」
そしてオレはカシュアを連れて白銀の獅子王の元へ向かう。
「カシュア、回復魔法を頼む!」
「任せてくれたまえ!」
カシュアの回復魔法を受けて僅かに目を見開く白銀の王。
「わ、我の妻と子は……」
オレは首を振る。
残念ながら、あの二匹は既に息をしていなかった。
「ここにモンスターカードが一枚ある。コレを使う。いいな?」
「待ってくれ、そのカードを使えばどんなに弱っていても蘇る事が出来るのであろう!?」
生きてさえ、いればな。
命の尽きたものには、使えない。
「ならば、この子を頼みます」
ふと背中から声がかかる。
そこにはズルズルと這い寄ってくる子供を抱えたライオンのメスが居た。
「まだ生きていたのか!?」
「私達は9つの命があると言われるほどしぶといのです。たとえ心臓が止まろうとも、暫くは……持ちこたえる事ができます」
だからまだ、この子にも可能性があると。そう呟く。
奥さんは息を吹き返していたとしても、子供の方は、ピクリとも動かない。
「……カードは今、一枚しかないが、もうすぐもう一枚増える予定だ」
助かるかどうか分からない子供に使うよりかは、この夫婦に使ったほうがいいのではないか?
オレはライオンの夫婦を見渡す。
「ならば、妻と子を頼む」
「あなた!?」
「我は寿命が尽きるほどの時を生きた。我が今以上の時間を欲したのも全てお前達が居たからだ。どちらか片方でも失うと言うのならば、それでは意味の無い事なのだ」
どうする? どうしたらいい? 時間はあまり残されていない。
カードが二枚になるのならこの夫婦に、一枚だけならば……
今の合計レベルは170、この数なら……180に届くはず。
だが、無情にもカードは増えなかった。
竜王ハイフレムが断末魔の悲鳴を上げて沈む。
辺りに居たモンスター共も全て消えうせた…………合計レベルは178で止まってしまった。
「我が子を頼む!」
「その子をお願いします!」
それを告げたオレに間髪をいれず答える白銀の獅子王夫婦。
「いいのか? もしかしたら全員助からないかも……」
「構わぬ」
「構いません」
濡れた瞳で我が子を見やる二匹の獣。
「分かった……」
『モンスターカード!』
◇◆◇◆◇◆◇◆
オレの手の中には、スヤスヤと眠る一人の少女が居る。
その少女の種族名は『ライオンハート』猛々しきライオンの心を持つ少女。
モンスターカードでゲットした、最新のモンスター。
あの子ライオンは一命を取りとめたのだった。だが、
「この子の名前を教えてくれないか?」
目の前には虫の息のライオンが二頭。
「人間よ感謝する。そこ子の名はハーモア」
「私達はハーと呼んでいました」
その夫婦ライオンの前にニース達が集まってくる。
「駄目なのですかカシュア」
「……今のボクじゃどうしようもないみたいだ」
「竜王ハイフレムはどうした?」
「ヤツナラシンダ」
ロゥリが答える。
いや死んでおらんよ。とニースは答える。
「竜王はそう簡単には死なぬ。四肢を切断してなお、各部位は生き続ける。後で奴の体をバラバラにし、各地で封印を行う」
封印? ……封印!?
「その封印とは、時間を止めれたりするのか!?」
ならばこの白銀の獅子王も、カードが増えるまで封印しておけないか?
しかしニースは首を振る。
そんなに便利な物は無い。時を止める存在など、どこにもない。そう答える。封印したからといって零れる命を止める術は無い。
「だめ……なのか?」
「時を、止める方法は……いや、一つだけ方法が無い事も無いか?」
出来るのか!
「時を止める事は出来ぬ。だが、時を進める事は出来る。いや、言い方がおかしいか……同じ魂で新たな時を刻むことが出来る」
そう、私のスキル、輪廻転生によって。
「人ではない、そ奴もまた竜、ただ人の姿をとっているに過ぎない」
そう言うと人間の姿に戻る、竜王ニース。
その手にはしっかりと聖剣が握られている。
「な、なんだと……?」
「古来より、悪い竜を退治するのは、人の仕事であろう?」
「敵わぬと知って気でも狂ったか?」
エロドラゴンになっているロゥリが隣に並ぶ。
「アイツ、ヤッテイイノカ?」
「ふうむ、今のお主ではちと厳しいかのぉ?」
「バカニスルナ!」
ロゥリが駆け出す。
竜王ハイフレムから数々の魔法が放たれる。
だが、それらは竜王ニースが手を上げた瞬間に掻き消える。
「なにっ!? 老いたお前にこんな芸当が出来るはずが……」
「余所見をしている暇は無いぞ」
ハイフレムに辿り着いたロゥリが、ドラスレを高く掲げ斬りかかっていく。
同時にニースも動き出す。
ロゥリが持つドラゴンスレイヤー。
それは、生物の中でもっとも硬い鱗を持つ竜を、容易く切り裂いていく。
ニースが持つ初代聖剣。
竜に対してはドラスレほどの切れ味はないが、それでも鱗を切り裂く程度の切れ味は持つ。
そんな我等の最凶コンビにズタズタに切り裂かれていく、竜王ハイフレム。
爪で切り裂こうとも、的の小さい人間サイズ、しかも動きは達人並み。捉える事はままならない。
魔法で攻撃しようとも、より上位の能力を持つニースによって全て掻き消されてしまう。
「我輩が加勢するまでもないであるな」
「ああ、ダンディ達は周りの雑魚共を頼む」
「承知した」
そしてオレはカシュアを連れて白銀の獅子王の元へ向かう。
「カシュア、回復魔法を頼む!」
「任せてくれたまえ!」
カシュアの回復魔法を受けて僅かに目を見開く白銀の王。
「わ、我の妻と子は……」
オレは首を振る。
残念ながら、あの二匹は既に息をしていなかった。
「ここにモンスターカードが一枚ある。コレを使う。いいな?」
「待ってくれ、そのカードを使えばどんなに弱っていても蘇る事が出来るのであろう!?」
生きてさえ、いればな。
命の尽きたものには、使えない。
「ならば、この子を頼みます」
ふと背中から声がかかる。
そこにはズルズルと這い寄ってくる子供を抱えたライオンのメスが居た。
「まだ生きていたのか!?」
「私達は9つの命があると言われるほどしぶといのです。たとえ心臓が止まろうとも、暫くは……持ちこたえる事ができます」
だからまだ、この子にも可能性があると。そう呟く。
奥さんは息を吹き返していたとしても、子供の方は、ピクリとも動かない。
「……カードは今、一枚しかないが、もうすぐもう一枚増える予定だ」
助かるかどうか分からない子供に使うよりかは、この夫婦に使ったほうがいいのではないか?
オレはライオンの夫婦を見渡す。
「ならば、妻と子を頼む」
「あなた!?」
「我は寿命が尽きるほどの時を生きた。我が今以上の時間を欲したのも全てお前達が居たからだ。どちらか片方でも失うと言うのならば、それでは意味の無い事なのだ」
どうする? どうしたらいい? 時間はあまり残されていない。
カードが二枚になるのならこの夫婦に、一枚だけならば……
今の合計レベルは170、この数なら……180に届くはず。
だが、無情にもカードは増えなかった。
竜王ハイフレムが断末魔の悲鳴を上げて沈む。
辺りに居たモンスター共も全て消えうせた…………合計レベルは178で止まってしまった。
「我が子を頼む!」
「その子をお願いします!」
それを告げたオレに間髪をいれず答える白銀の獅子王夫婦。
「いいのか? もしかしたら全員助からないかも……」
「構わぬ」
「構いません」
濡れた瞳で我が子を見やる二匹の獣。
「分かった……」
『モンスターカード!』
◇◆◇◆◇◆◇◆
オレの手の中には、スヤスヤと眠る一人の少女が居る。
その少女の種族名は『ライオンハート』猛々しきライオンの心を持つ少女。
モンスターカードでゲットした、最新のモンスター。
あの子ライオンは一命を取りとめたのだった。だが、
「この子の名前を教えてくれないか?」
目の前には虫の息のライオンが二頭。
「人間よ感謝する。そこ子の名はハーモア」
「私達はハーと呼んでいました」
その夫婦ライオンの前にニース達が集まってくる。
「駄目なのですかカシュア」
「……今のボクじゃどうしようもないみたいだ」
「竜王ハイフレムはどうした?」
「ヤツナラシンダ」
ロゥリが答える。
いや死んでおらんよ。とニースは答える。
「竜王はそう簡単には死なぬ。四肢を切断してなお、各部位は生き続ける。後で奴の体をバラバラにし、各地で封印を行う」
封印? ……封印!?
「その封印とは、時間を止めれたりするのか!?」
ならばこの白銀の獅子王も、カードが増えるまで封印しておけないか?
しかしニースは首を振る。
そんなに便利な物は無い。時を止める存在など、どこにもない。そう答える。封印したからといって零れる命を止める術は無い。
「だめ……なのか?」
「時を、止める方法は……いや、一つだけ方法が無い事も無いか?」
出来るのか!
「時を止める事は出来ぬ。だが、時を進める事は出来る。いや、言い方がおかしいか……同じ魂で新たな時を刻むことが出来る」
そう、私のスキル、輪廻転生によって。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
辺境の最強魔導師 ~魔術大学を13歳で首席卒業した私が辺境に6年引きこもっていたら最強になってた~
日の丸
ファンタジー
ウィーラ大陸にある大国アクセリア帝国は大陸の約4割の国土を持つ大国である。
アクセリア帝国の帝都アクセリアにある魔術大学セルストーレ・・・・そこは魔術師を目指す誰もが憧れそして目指す大学・・・・その大学に13歳で首席をとるほどの天才がいた。
その天才がセレストーレを卒業する時から物語が始まる。
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる