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第十章
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「さて、ここらでいいでしょうかね?」
そう言ってロゥリを着地させ、その背から飛び降りるラピス。
「地上で見ると、こりゃまた壮観だな」
「太古の昔、ここ南の大地を支配していた巨大な王国があったようです」
そしてその王国には、独特の死生観があったようだ。
人の魂は、死した後も肉体に残り続ける。
例え動かなく成ったとしても、肉体がある限り人は生き続けている。
そう信じられていた。
そこで人々は、動かなくなった人間を2種類の方法で弔った。
一つは火葬。
肉体を灰と化し、魂を肉体から解放し天に送り還す。
一つは土葬。
動かなくなった後も生きていて欲しいと願った家族が、最も肥沃な大地でその肉体を横たえる。
その、最も肥沃な大地であるこの場所には、そう願った王国中の全ての死者が眠っていると言われている。
前者は貧しい人々が、後者の手段を選れべられなかった場合に行われ、裕福な人々のほとんどは後者を選んだと言う。
で、そんな裕福な人々は死者に出来る限りの着飾りを行った。
時には、伝説級の武器すら棺に入れたと言う。
そういう訳なんで、ここで現れるアンデットは数も多く、装備の充実した奴が多い。
また、そういった装飾品を狙って墓を暴こうとする盗賊との戦闘で熟練度も高い。
ダンジョンではないが、この世界でも有数の危険度を誇るエリアである。
「普通なら強いわ硬いわで、いい事無しだろうな」
「聖剣がどこまで通用するかですね。それ次第では無駄足になるかもしれません」
解放だとか言ってた割には気弱だな?
まあしかし、アレを見たら気弱にもならあな。
ズラッとオレ達を囲むように、地面を埋め尽くさんがばかりの完全武装のゾンビ達。
「ロゥリは上空にて待機して下さい」
「ロゥリモ、タタカウゾ?」
「いえ、あなたは万が一の場合、お坊ちゃまを抱えて脱出する係です。傷を負うことも、戦闘で疲労する事も避けてください」
あと、現状のロゥリのレベルではここは少々厳しいだろう。
せめて40レベルにならないとな。
今回はカシュアメインで、サポートでラピスとオレの三人だけだ。
敵のレベルが高過ぎて、他の奴では相手にならない。
オレ達も、カシュアの聖剣が役に立ちそうに無いと判断したら、即効ロゥリに乗って逃げる算段だ。
「いよいよボクの見せ場だね! まあ、見ていてくれたえ、ボクと、ボクの聖剣の力を!」
そう言って手を空に掲げる。
『出でよ! ボクの聖剣よっ!』
すると、掲げたカシュアの手から光の筋が立ち昇る。
その光は徐々に一本の剣を形どっていく。
光が収まった時、その手には、立派な聖剣が握られているのだった。
今にも襲いかかって来そうだったアンデット達が、それを見て慄くように後ずさる。
「ところでカシュア、その聖剣、名前は無いのですか?」
ラピスが、そんなかっこづけしてるカシュアを、冷めた目で見つめながらそういう。
確かに、どんなかっこ良くしても、名前がボクの聖剣じゃなあ。下手したら別の意味に聞こえるよ。今はもう無いのにな。何がとは言わない。
あとおめえ、また忘れて来てたのか?
えっ、どうせ召喚出来るんだから態々持ってくる必要はない? まあその通りなんだけどさ。
「私がその聖剣、名前をつけてあげましょうか?」
「せっかくのボクの見せ場にケチを付けないでくれないかな!」
そう言いながらもラピスに聖剣を渡すカシュア。
ラピスが受け取った聖剣を繁々と眺めながら呟く。
「そうですね…………貴方の名前はホーリークラウン。聖剣ホーリークラウンとします」
その瞬間だった!
カシュアからラピスに渡った事により消えていたキラキラエフェクトが突然復活した。
虹色の色彩を伴って!
「刀身が虹色に……!?」
「命名のスキル、無機物にも……!? いえ、これが特殊な武器だったからでしょうか?」
「それ光ってるって事は、ラピス君でも扱えるようになったって事かな?」
ラピスが試しにと、聖剣ホーリークラウンを振りかぶる。
そして一閃!
虹色の軌跡を伴って一陣の風が吹く。
その衝撃波を受けた正面のアンデット達の体が光の粒となって空に舞い上がって行く。
「おお……すげぇ……」
「なんかボクが使うより威力があるような?」
「私の方がレベルが高いからでしょうかね? それとも、支配下に置いた事で100%の能力が発揮出来るようになったとか?」
もうそれ、お前が使えばいいじゃない。
「ええ!? ボクのだからね! あげないよ?」
「まあ、それだとカシュアのレベルが上がりませんしね。おっとそうです、ちょっと、お坊ちゃまも使ってみてくれませんか?」
ふむ、エフェクトが無い状態の威力を確かめるのか?
そう思いながらラピスから聖剣を受け取る。
と、なんと! キラキラエフェクトが、オレが持っても残っているではないか!
「どうやら私の指示を聞くようですね。命令をすれば誰でもその能力を継続できそうです」
「ボクの聖剣なのに~」
泣くなって、ほら、返してやるから。
今度からはもっと大事に扱ってやれよな。じゃないと浮気されるぞ。
そう言ってロゥリを着地させ、その背から飛び降りるラピス。
「地上で見ると、こりゃまた壮観だな」
「太古の昔、ここ南の大地を支配していた巨大な王国があったようです」
そしてその王国には、独特の死生観があったようだ。
人の魂は、死した後も肉体に残り続ける。
例え動かなく成ったとしても、肉体がある限り人は生き続けている。
そう信じられていた。
そこで人々は、動かなくなった人間を2種類の方法で弔った。
一つは火葬。
肉体を灰と化し、魂を肉体から解放し天に送り還す。
一つは土葬。
動かなくなった後も生きていて欲しいと願った家族が、最も肥沃な大地でその肉体を横たえる。
その、最も肥沃な大地であるこの場所には、そう願った王国中の全ての死者が眠っていると言われている。
前者は貧しい人々が、後者の手段を選れべられなかった場合に行われ、裕福な人々のほとんどは後者を選んだと言う。
で、そんな裕福な人々は死者に出来る限りの着飾りを行った。
時には、伝説級の武器すら棺に入れたと言う。
そういう訳なんで、ここで現れるアンデットは数も多く、装備の充実した奴が多い。
また、そういった装飾品を狙って墓を暴こうとする盗賊との戦闘で熟練度も高い。
ダンジョンではないが、この世界でも有数の危険度を誇るエリアである。
「普通なら強いわ硬いわで、いい事無しだろうな」
「聖剣がどこまで通用するかですね。それ次第では無駄足になるかもしれません」
解放だとか言ってた割には気弱だな?
まあしかし、アレを見たら気弱にもならあな。
ズラッとオレ達を囲むように、地面を埋め尽くさんがばかりの完全武装のゾンビ達。
「ロゥリは上空にて待機して下さい」
「ロゥリモ、タタカウゾ?」
「いえ、あなたは万が一の場合、お坊ちゃまを抱えて脱出する係です。傷を負うことも、戦闘で疲労する事も避けてください」
あと、現状のロゥリのレベルではここは少々厳しいだろう。
せめて40レベルにならないとな。
今回はカシュアメインで、サポートでラピスとオレの三人だけだ。
敵のレベルが高過ぎて、他の奴では相手にならない。
オレ達も、カシュアの聖剣が役に立ちそうに無いと判断したら、即効ロゥリに乗って逃げる算段だ。
「いよいよボクの見せ場だね! まあ、見ていてくれたえ、ボクと、ボクの聖剣の力を!」
そう言って手を空に掲げる。
『出でよ! ボクの聖剣よっ!』
すると、掲げたカシュアの手から光の筋が立ち昇る。
その光は徐々に一本の剣を形どっていく。
光が収まった時、その手には、立派な聖剣が握られているのだった。
今にも襲いかかって来そうだったアンデット達が、それを見て慄くように後ずさる。
「ところでカシュア、その聖剣、名前は無いのですか?」
ラピスが、そんなかっこづけしてるカシュアを、冷めた目で見つめながらそういう。
確かに、どんなかっこ良くしても、名前がボクの聖剣じゃなあ。下手したら別の意味に聞こえるよ。今はもう無いのにな。何がとは言わない。
あとおめえ、また忘れて来てたのか?
えっ、どうせ召喚出来るんだから態々持ってくる必要はない? まあその通りなんだけどさ。
「私がその聖剣、名前をつけてあげましょうか?」
「せっかくのボクの見せ場にケチを付けないでくれないかな!」
そう言いながらもラピスに聖剣を渡すカシュア。
ラピスが受け取った聖剣を繁々と眺めながら呟く。
「そうですね…………貴方の名前はホーリークラウン。聖剣ホーリークラウンとします」
その瞬間だった!
カシュアからラピスに渡った事により消えていたキラキラエフェクトが突然復活した。
虹色の色彩を伴って!
「刀身が虹色に……!?」
「命名のスキル、無機物にも……!? いえ、これが特殊な武器だったからでしょうか?」
「それ光ってるって事は、ラピス君でも扱えるようになったって事かな?」
ラピスが試しにと、聖剣ホーリークラウンを振りかぶる。
そして一閃!
虹色の軌跡を伴って一陣の風が吹く。
その衝撃波を受けた正面のアンデット達の体が光の粒となって空に舞い上がって行く。
「おお……すげぇ……」
「なんかボクが使うより威力があるような?」
「私の方がレベルが高いからでしょうかね? それとも、支配下に置いた事で100%の能力が発揮出来るようになったとか?」
もうそれ、お前が使えばいいじゃない。
「ええ!? ボクのだからね! あげないよ?」
「まあ、それだとカシュアのレベルが上がりませんしね。おっとそうです、ちょっと、お坊ちゃまも使ってみてくれませんか?」
ふむ、エフェクトが無い状態の威力を確かめるのか?
そう思いながらラピスから聖剣を受け取る。
と、なんと! キラキラエフェクトが、オレが持っても残っているではないか!
「どうやら私の指示を聞くようですね。命令をすれば誰でもその能力を継続できそうです」
「ボクの聖剣なのに~」
泣くなって、ほら、返してやるから。
今度からはもっと大事に扱ってやれよな。じゃないと浮気されるぞ。
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