『モンスターカード!』で、ゲットしてみたらエロいお姉さんになりました。

ぬこぬっくぬこ

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第十章

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 気が付いたらラピスに抱え込まれていた。

 そのラピス、なにやら先ほどまでと服装が変わっている。
 レオタードにタキシードを羽織って、頭にはウサ耳のシルクハット。
 あ、これはあれだ、スーパースターのグラフィックだ。

「あのくそバカシュア、色々試そうと思ってたことが全てパアじゃないですか!」

 何を試そうとしてたの?
 うん、怖いから聞かないでおく。
 ふと見ると、頭上には星空が瞬いている。

「何が起こったんだ?」

 どうやらカシュアを中心に魔力の爆発が起こったらしい。
 その爆発は、アンデットを一掃したどころか、洞窟を崩壊させ、地形をも変えたと言う。
 良く見ると、地面がボコボコで、そこら中にヒビ割れが覗いている。

 ラピスは一瞬で危険だと判断し、クリスタルカードでスーパースターにクラスチェンジ。
 スキル『テンカウント』を駆使して螺旋階段を駆け上がり、洞窟を脱出したそうな。

「再召喚が可能になったら折檻です!」

 そのラピスが持ってるカシュアのカード、名前の下にマックスの赤ゲージ。

「なに、生き埋めにでもなったのか?」
「いえ、どうやら……ヒットポイントまで使って必殺技を繰り出したようです」

 気合、溜め過ぎだろ?
 なんでこんなとこで、全生命力まで使って全力だしてるの?
 バカなのか? これぞまさしく、馬鹿なの? 死ぬの? って奴だな。

 というか、ラピスの機転がなければオレまでお陀仏だっただろ!

 なにやってんだほんとに、ちょっと見直したとたんコレだ。
 まあ、オレがあの場面で必殺技の事を伝えたのも悪かったんだろうが……

「ところでやはりそのスキル『テンカウント』は時を止める系だったのか?」
「いえ、このスキルは10秒以内の未来に跳ぶ事が出来るスキルでした」
「は?」

 スキル、テンカウントの性能は、10秒先までの未来が視え、その好きな時点に移動することが出来るらしい。

「未来跳躍……!?」
「そういう事ですね」

 すさまじいなおい!
 えっ、しかもクールタイム無しの連続使用が可能だって!?
 それ、好きな未来に行けるも同意語じゃねえか。

「10秒ずつという制限はありますけどね」
「いやいや十分だろ」

 さすがスーパースター! 未来を先取り! って奴ですね。

「エンペラーの時も思いましたが……上級職は、とんでもないポテンシャルを秘めていますね」
「上級って名の付くだけのことはあるって事か」

 とにかく、そのスキルで10秒後の未来を視ながら、スーパースターのスピードを持って螺旋階段を駆け上がって地上に出たとの事だ。

「カシュアの未来予見に瞬間移動を合わせた感じだな」
「移動と言っても場所は変わらないので、使いどころは難しいですけどね」

 ただそれを使えば、敵の攻撃を未来跳躍でかわし、攻撃終了後の未来に移動し反撃が可能だという事に成る。
 相手からすれば10秒間、この世界に存在しなくなるので攻撃のしようもない。
 熟練度が上がればイレブンカウント、ハンドレッドカウントとか上限も上がっていかないかな?

「命名のスキルも捨てがたいのですよね。何せ人を思うがままに操ることが出来るのですから」

 だから怖いんだよ。

 そんなスキル持ってる奴は大抵悪役だぞ?
 えっ、悪役結構? 物語では悪役はやられ役だが、現実では支配者のほとんどは悪役だって?
 だったら支配者にならなきゃいい話だ。

 オレは悪い支配者より、良い村人でいたいんだよ。

「お坊ちゃまにはハングリー精神がたりませんね」
「いらないからそんなハングリー」

「ご、ご無事でしたか!?」

 そこへ霊の美女が地面から浮き上がってきた。

「私のスキルで脱出させようと思ったのですが……この私が認識する間もなく移動するなんて、やはり、今代の担い手様方は途方もない力の持ち主なのですね」

 えっ、カシュアはどこ行ったかって?
 ちょっと休憩している。
 この様子なら後、二時間ぐらいしたら戻って来られるんじゃないか。

「いったいどこに行っているというのでしょうか? この地なら私に察知出来ない場所はないはずなんですが……」
「企業秘密です」

 便利だな企業秘密。
 ははぁ……たった三人でここに来るだけの事はありますね。って何やら感心している。
 しかしこのお嬢さん、あのカシュアの必殺技を食らって平気でいるのか?

「平気、とはいきません。あの時、気を抜いていれば私も持っていかれたでしょう。しかし、私には貴方様方を無事に送り返す使命がありましたので」

 そう言ってニコリと笑う。

 オレ達の為に残ってくれたのか? アンデットなのにいい人だなあ。
 そう言えば良く見てみれば、なんだか少し透き通って向こうの背景が透けて見える。
 結構なダメージを食らってはいるようだ。

 そんなお嬢さんにラピスがステッキを掲げてみせる。

「このステッキにも霊体を浄化させる性能がついています。どうしますか?」
「…………聖剣の聖女様にばかり負担を掛けさす訳にもまいりませんしね。ぜひ、お願いいたします」

 別に剣振っているだけだから負担には……ふむ、なんだか悲しそうに見えた?
 ……感情移入しすぎたのかもな。
 むやみに明るく振舞っている奴は感受性が強いと言う。

 特にカシュアなんて幼少から兄弟に命を狙われ続けたんだ。
 いつも明るく振舞っているが、その心には闇が潜んでいるのかもしれない。
 仕方ない、今回の事は水に流して、折檻は取りやめにしてやるか。
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