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第十章
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「ちょっ、ちょっと、どうしようクイーズ君!」
いや、どうしようもないかな。
光が収まった後、全てのアンデットは消えうせていた。
そこに居たバルデスも、そしてラピスも。
「…………ねえ、暫くの間、ボクはカードで眠っていてもいい?」
「ラピスから逃げようとしても無駄じゃね? ほら見てみろ」
と、何もなかった空間に突如ラピスの姿が現れる。
どうやらスキル『テンカウント』でカシュアの攻撃をかわした模様。
「いい度胸ですねカシュア、まさか、味方に背中からバッサリやられるとは思いもしませんでした」
「あ、アハハハ……ワザトジャナインダヨ?」
「本日二回目ですね……そんなに私が嫌ならダンディに変わってもらいましょうか」
青筋を立てながら笑顔でカシュアに詰め寄るラピス。
骸骨は勘弁してくださいと、必死の形相で拝み倒すカシュア。
「つ~かお前ら、なんてことしてくれるんじゃ! わらわの王宮が雨漏りどころか吹き曝しではないか!」
カシュアの聖剣から放たれた光はアンデットだけではなく、王宮の壁まで喪失させていた。
相変わらずの威力だな。
これは所謂、隠しステータスって奴かもしれない。
前世のゲームでは、特定の装備でン万匹のモンスターを倒したら真の能力が解放されるとかあった。
きっとホーリーノヴァはそれに近いものではなかろか。
「ところでラピス、例の魔術師風の男はどうなったんだ」
「まあ結果オーライですかね。私にはテンカウントがありましたけど、向こうは逃げる余裕なんてなかったでしょうし」
そんな事を言っているラピスのお腹から一本の剣が生える。
「えっ……?」
遅れて血飛沫があがる!
『戻れ、ラピス!』
ラピスの背後に黒い渦が発生して、そこから剣を持った腕が伸びていた!
そうか、時空魔法!
奴が人形にしてたのはナイトスペクターだけじゃなく、時空魔法の使い手である、エフィール姫様も居たはず!
「カシュア!」
「分かっているよ!」
慌ててその黒い渦に斬りかかるカシュア。
しかし、寸前で渦は消える。
そして暫く離れた上空に渦が出来る。
「カシュア、さっきのをもう一発だ!」
「もう、えむぺーが無いよ!」
しかし、向こうさんも無事では済んでいないようで、渦から現れたバルデス、腰から下は消失して、体は激しく損傷し、あちこち骨がむき出しになっている。
「ぐふっ、はぁ……はぁ……、せめて、せめてその聖剣の女だけは、道連れにしてくれる!」
上空に無数の渦が発生しそこから剣が飛び出してくる。
それはカシュアに向かって猛スピードで降り注ぐ。
「ばかな! 名のある伝説の名剣だぞっ! なぜ防げる!」
カシュアは聖剣とセットになっている盾でそれを受け止める。
あの盾も結構な業物だからな。
ドラスレですら傷がつかない至高の一品だ。
「カラドボルグにアスカロン、デュランダルまでか、宝物庫の宝剣を大放出じゃのぉ。まあ、ここで使わんと何時使うって感じじゃしっ」
「なんか大層な名前の剣だな、一本ぐらいもらえないかな?」
「はっはっは、呪われておるぞぉ! それでもいいなら、これが終わったら持って行くが良い!」
呪われているんじゃなあ……
カシュアの盾に弾かれた剣は黒い渦になって消える。
そしてまた上空から放たれる。
「何度やっても一緒だよ! ボクのこの聖盾に敵う剣は存在しない!」
連発するのは諦めたのか、上空で一際巨大な黒い渦が発生する。
その渦は周りの空気を吸い込んで――――爆発する!
その勢いにのって複数の剣が一点に向かって飛んでくる。
――――ビキッ!
カシュアの盾にヒビが入る。
さすがに受けきれなかった模様。
それを見てカシュアが青い顔をする。
「うぉっ! ちょっとキミぃやばいよ、やばいよ!」
「落ち着け」
『戻れ、プリンセスナイト!』そして『出でよ、プリンセスナイト!』
はいこれで元通り。
カードに戻して再召還で装備は元に戻る。
「………………」
それを見て上空のバルデスが絶句している。
そしてゆっくりとオレの方へ目線を動かし凝視してくる。
「……そうか、お前か、お前が全ての」
やべっ、バレタ!?
とたん、オレに向かって先ほどの剣が飛んでくる。
とっさに鉱石Mで防御したのだが、なんと! サックリ切り裂いてオレの目前にその剣が!
――――ガキンッ!
ギリギリの所でロゥリがドラスレで弾き飛ばす。
やばかった、ナイスだエロドラゴン!
しかし、このままではいい的だ。こっちにも飛び道具があればいいんだが、残念ながらカシュアのホーリーノヴァも魔力切れで使えない。
ロゥリはオレの傍から離れられない。
「もうやめましょうバルデス。ペンテグラムも先ほどの輝きで逝きました。あなたの部下も、ほとんどが空に還り、もうこれ以上戦う必要などありはしないでしょう」
「…………あれだけは、アレだけは放置しておくことは出来ない」
「なぜなのです、どうしてあなたは、そうまでして戦おうとするのですか?」
「ねえ様は、いいかげん気づいてあげるべきだと思うのじゃがなぁ」
お姫様とバルデスが揉めているところへ、小さな女王様がため息を吐きながらそう言う。
「何のため? そんなの一つしかなかろうて、バルデスは、いや、とう様だって、皆、ねえ様の為に戦ったのではないかのう」
「それはどういう意味……」
「わらわはバルデスの考えには反対した、血なまぐさい戦争など、まっぴらじゃったから。だからと言って、ねえ様にも付いて行く気にはなれなんだ」
小さな女王様、ローゼマリアは、なんの感情もみせない瞳で上空のバルデス達を見つめる。
「それは私が、あなたの事を齧ってしまったから……」
「そうではない、そうではないんじゃよ。ねえ様、そなたは空を自由に飛べる羽が欲しいと言っておった。だが、いざその羽を手に入れたとたん、それはまがい物だと言って飛ぼうとはしない」
不老不死と言う羽を手に入れておきながら、ずっと悲しい顔をしている。
ならばそれを与えた者はどう思っておるか。
飛べないのはきっと、飛ぶべき空がないからではないかと思う。
だから、とう様も、バルデスも、その空を用意しようとした。
全ての世界をアンデットの物とし、アンデットこそが常識になるという空を。
ゆっくりとバルデスの方へ振り返る人形にされたお姫様、エフィール姫。
「私が……私の所為で……」
「ちっ、違いますぞっ! 全てはこのバルデスの野心が招いた結果! 決してエフィール姫様の所為ではありませんぞ!」
「そう……そうだったのね」
「なってしまったものはしょうがない、起こってしまったものは変えられない。ねえ様は終わらすことより先に、始める事を考えねばならなかったのではないかのぉ」
ローゼマリア様! と攻撃を止めたバルデスが慌てて叫ぶ。
ローゼマリアはそんなバルデスへ視線を向ける。
「バルデスよ、お主のやり方は間違っておる。何かの犠牲の上に作られた空を、ねえ様が喜んで飛ぶと思うのか?」
そして次に、バルデスが手に持っているエフィール姫の人形へ目を向ける。
「ねえ様も、正しさばかり見つめるのではなく、罪の本質を探らねばならぬ。なぜ間違っておるのか、その理由を知ろうとしなければならない」
結局は互いに黙って行動するのではなく、もっと言葉を交わして、意思の疎通を図らなければならなかったのだろう。
「不死者として蘇った私は、不死者としての生き方を模索しなければならなかった……なのに、わたしは……ワタシハ……」
なにやらブツブツと呟き始めるエフィール姫。
それまで感情を映した事の無いローゼマリアの瞳がふと揺らめく。
「のう、汝なら分かると思うが、強いスキルを持っていたとしても、決して心まで強い訳ではない」
じゃが周りの者はそうは思っておらぬ場合が多い。と言ってオレの方へ振り返る。
「ねえ様と合成されておるアンデットはリッチという高位のアンデットじゃ。じゃから……ねえ様が今の生を受け入れた場合……」
取り込まれる可能性が非常に高い。
なのでわらわは、今までこの事を言いたくとも伝えることができなんだ。
万が一、そうなった場合には……
そこには、不安そうな瞳でオレの方を向いてくる、一人の少女がいた。
それは今までの小さな女王様ではない、ただ普通の、姉の事を案じている一人の子供。
オレはそっとその子の頬へ手を当てる。
冷たい、死者のようなその肌、オレはその感触を確かめながらしっかりと頷く。
―――バリンッ!
その時、何かが割れる音がしたかと思うとバルデスが地面に叩き付けられる。
そしてバルデスがさっきまで居た空中には――――ボロボロのドレスを羽織った一体のアンデットが浮かんでいた。
いや、どうしようもないかな。
光が収まった後、全てのアンデットは消えうせていた。
そこに居たバルデスも、そしてラピスも。
「…………ねえ、暫くの間、ボクはカードで眠っていてもいい?」
「ラピスから逃げようとしても無駄じゃね? ほら見てみろ」
と、何もなかった空間に突如ラピスの姿が現れる。
どうやらスキル『テンカウント』でカシュアの攻撃をかわした模様。
「いい度胸ですねカシュア、まさか、味方に背中からバッサリやられるとは思いもしませんでした」
「あ、アハハハ……ワザトジャナインダヨ?」
「本日二回目ですね……そんなに私が嫌ならダンディに変わってもらいましょうか」
青筋を立てながら笑顔でカシュアに詰め寄るラピス。
骸骨は勘弁してくださいと、必死の形相で拝み倒すカシュア。
「つ~かお前ら、なんてことしてくれるんじゃ! わらわの王宮が雨漏りどころか吹き曝しではないか!」
カシュアの聖剣から放たれた光はアンデットだけではなく、王宮の壁まで喪失させていた。
相変わらずの威力だな。
これは所謂、隠しステータスって奴かもしれない。
前世のゲームでは、特定の装備でン万匹のモンスターを倒したら真の能力が解放されるとかあった。
きっとホーリーノヴァはそれに近いものではなかろか。
「ところでラピス、例の魔術師風の男はどうなったんだ」
「まあ結果オーライですかね。私にはテンカウントがありましたけど、向こうは逃げる余裕なんてなかったでしょうし」
そんな事を言っているラピスのお腹から一本の剣が生える。
「えっ……?」
遅れて血飛沫があがる!
『戻れ、ラピス!』
ラピスの背後に黒い渦が発生して、そこから剣を持った腕が伸びていた!
そうか、時空魔法!
奴が人形にしてたのはナイトスペクターだけじゃなく、時空魔法の使い手である、エフィール姫様も居たはず!
「カシュア!」
「分かっているよ!」
慌ててその黒い渦に斬りかかるカシュア。
しかし、寸前で渦は消える。
そして暫く離れた上空に渦が出来る。
「カシュア、さっきのをもう一発だ!」
「もう、えむぺーが無いよ!」
しかし、向こうさんも無事では済んでいないようで、渦から現れたバルデス、腰から下は消失して、体は激しく損傷し、あちこち骨がむき出しになっている。
「ぐふっ、はぁ……はぁ……、せめて、せめてその聖剣の女だけは、道連れにしてくれる!」
上空に無数の渦が発生しそこから剣が飛び出してくる。
それはカシュアに向かって猛スピードで降り注ぐ。
「ばかな! 名のある伝説の名剣だぞっ! なぜ防げる!」
カシュアは聖剣とセットになっている盾でそれを受け止める。
あの盾も結構な業物だからな。
ドラスレですら傷がつかない至高の一品だ。
「カラドボルグにアスカロン、デュランダルまでか、宝物庫の宝剣を大放出じゃのぉ。まあ、ここで使わんと何時使うって感じじゃしっ」
「なんか大層な名前の剣だな、一本ぐらいもらえないかな?」
「はっはっは、呪われておるぞぉ! それでもいいなら、これが終わったら持って行くが良い!」
呪われているんじゃなあ……
カシュアの盾に弾かれた剣は黒い渦になって消える。
そしてまた上空から放たれる。
「何度やっても一緒だよ! ボクのこの聖盾に敵う剣は存在しない!」
連発するのは諦めたのか、上空で一際巨大な黒い渦が発生する。
その渦は周りの空気を吸い込んで――――爆発する!
その勢いにのって複数の剣が一点に向かって飛んでくる。
――――ビキッ!
カシュアの盾にヒビが入る。
さすがに受けきれなかった模様。
それを見てカシュアが青い顔をする。
「うぉっ! ちょっとキミぃやばいよ、やばいよ!」
「落ち着け」
『戻れ、プリンセスナイト!』そして『出でよ、プリンセスナイト!』
はいこれで元通り。
カードに戻して再召還で装備は元に戻る。
「………………」
それを見て上空のバルデスが絶句している。
そしてゆっくりとオレの方へ目線を動かし凝視してくる。
「……そうか、お前か、お前が全ての」
やべっ、バレタ!?
とたん、オレに向かって先ほどの剣が飛んでくる。
とっさに鉱石Mで防御したのだが、なんと! サックリ切り裂いてオレの目前にその剣が!
――――ガキンッ!
ギリギリの所でロゥリがドラスレで弾き飛ばす。
やばかった、ナイスだエロドラゴン!
しかし、このままではいい的だ。こっちにも飛び道具があればいいんだが、残念ながらカシュアのホーリーノヴァも魔力切れで使えない。
ロゥリはオレの傍から離れられない。
「もうやめましょうバルデス。ペンテグラムも先ほどの輝きで逝きました。あなたの部下も、ほとんどが空に還り、もうこれ以上戦う必要などありはしないでしょう」
「…………あれだけは、アレだけは放置しておくことは出来ない」
「なぜなのです、どうしてあなたは、そうまでして戦おうとするのですか?」
「ねえ様は、いいかげん気づいてあげるべきだと思うのじゃがなぁ」
お姫様とバルデスが揉めているところへ、小さな女王様がため息を吐きながらそう言う。
「何のため? そんなの一つしかなかろうて、バルデスは、いや、とう様だって、皆、ねえ様の為に戦ったのではないかのう」
「それはどういう意味……」
「わらわはバルデスの考えには反対した、血なまぐさい戦争など、まっぴらじゃったから。だからと言って、ねえ様にも付いて行く気にはなれなんだ」
小さな女王様、ローゼマリアは、なんの感情もみせない瞳で上空のバルデス達を見つめる。
「それは私が、あなたの事を齧ってしまったから……」
「そうではない、そうではないんじゃよ。ねえ様、そなたは空を自由に飛べる羽が欲しいと言っておった。だが、いざその羽を手に入れたとたん、それはまがい物だと言って飛ぼうとはしない」
不老不死と言う羽を手に入れておきながら、ずっと悲しい顔をしている。
ならばそれを与えた者はどう思っておるか。
飛べないのはきっと、飛ぶべき空がないからではないかと思う。
だから、とう様も、バルデスも、その空を用意しようとした。
全ての世界をアンデットの物とし、アンデットこそが常識になるという空を。
ゆっくりとバルデスの方へ振り返る人形にされたお姫様、エフィール姫。
「私が……私の所為で……」
「ちっ、違いますぞっ! 全てはこのバルデスの野心が招いた結果! 決してエフィール姫様の所為ではありませんぞ!」
「そう……そうだったのね」
「なってしまったものはしょうがない、起こってしまったものは変えられない。ねえ様は終わらすことより先に、始める事を考えねばならなかったのではないかのぉ」
ローゼマリア様! と攻撃を止めたバルデスが慌てて叫ぶ。
ローゼマリアはそんなバルデスへ視線を向ける。
「バルデスよ、お主のやり方は間違っておる。何かの犠牲の上に作られた空を、ねえ様が喜んで飛ぶと思うのか?」
そして次に、バルデスが手に持っているエフィール姫の人形へ目を向ける。
「ねえ様も、正しさばかり見つめるのではなく、罪の本質を探らねばならぬ。なぜ間違っておるのか、その理由を知ろうとしなければならない」
結局は互いに黙って行動するのではなく、もっと言葉を交わして、意思の疎通を図らなければならなかったのだろう。
「不死者として蘇った私は、不死者としての生き方を模索しなければならなかった……なのに、わたしは……ワタシハ……」
なにやらブツブツと呟き始めるエフィール姫。
それまで感情を映した事の無いローゼマリアの瞳がふと揺らめく。
「のう、汝なら分かると思うが、強いスキルを持っていたとしても、決して心まで強い訳ではない」
じゃが周りの者はそうは思っておらぬ場合が多い。と言ってオレの方へ振り返る。
「ねえ様と合成されておるアンデットはリッチという高位のアンデットじゃ。じゃから……ねえ様が今の生を受け入れた場合……」
取り込まれる可能性が非常に高い。
なのでわらわは、今までこの事を言いたくとも伝えることができなんだ。
万が一、そうなった場合には……
そこには、不安そうな瞳でオレの方を向いてくる、一人の少女がいた。
それは今までの小さな女王様ではない、ただ普通の、姉の事を案じている一人の子供。
オレはそっとその子の頬へ手を当てる。
冷たい、死者のようなその肌、オレはその感触を確かめながらしっかりと頷く。
―――バリンッ!
その時、何かが割れる音がしたかと思うとバルデスが地面に叩き付けられる。
そしてバルデスがさっきまで居た空中には――――ボロボロのドレスを羽織った一体のアンデットが浮かんでいた。
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