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第十四章

レベル222

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 水の壁を抜けた後も、執拗に竜巻は迫ってくる。

 壁の方だけではなく、海の方からも竜巻は昇ってくる。
 ここは島国、周り一面海で囲まれている。
 逃げるには海の上を飛ぶしかない。

 海面から無数に立ち上がる水の竜巻、あの中を飛んで無事に済むとは思えない。主にオレが。

 おい、いい加減、天の岩戸使えよ!
 えっ、自分だけ安全な所へ行くのはずるい?
 いやおめえ、そうだけどよ? 今はそんな事、言ってる状況じゃないだろ。

 結局海の方へ行くのは諦めて、島の中心部にある大きな山に向かう。
 そこでエフィールさんでも呼んで、時空魔法で運んでもらおうか。
 と、思っていた訳だが。

「どうやら島全体に特殊な魔法壁が張られている様で、時空魔法が使えないようです」

 再び呼び出したラピスがそう言ってくる。
 なるほど、島に閉じ込められたという事か。

「きっと私に注意が向いたのも、そんな状況なのに外から来た事に驚いたのではないでしょうか」
「まだ言ってんのかお前。今回の件、実はお前の所為なんだろ?」
「違いますよぉ。ほんと向こうには、あまり相手にされてなかったんですから」

「そこのウサギの言っている事は本当の事ですわよ」

 ギョッとして振り向くと、例の海神様と言われていた美女が立っている。
 ラピスが敵いませんねぇと呟きながら目を細める。

「種族の壁なのか、レベルが足りていないのか、どちらにしろ考えを改めなければなりませんね」
「今はそんな事、言ってる場合じゃないだろ、どうすんだよコレ」

 着地してからロゥリを人型に変えて結構移動していたのだが、向こうには位置がバレバレだったようだ。
 島全体に魔法を張り巡らせているんだ。
 そりゃ位置検索も余裕という事か。

「さて、かの白竜はどこに行かれましたの? 隠しだてすると、よく有りませんわよ」

 ん? どうやらロゥリが人型に変わっているのは気づいていない模様。
 なるほど、じゃあちょっとは交渉の余地がありそうだな。
 そう思ってオレは、その糸目の美女に問いかける。

「いったいあの白竜になんの用なんだ?」
「かつて世界を席巻した金竜王ニース。そのニースが後継者に指定した存在。その力を、私は知りたいだけですわ」

 は? なんのこと?
 お前、知ってるか?
 えっ、知らない?

 このおばさんの勘違いかな?

「ハイフレムには密かに期待していましたのよ。彼の野望が私たち竜の新たな息吹とならんことを願って」

 だというのに、名も知らぬ白竜に討伐されたというではないか。
 しかもその場所には竜王ニースも居て、その白竜を後継者に名指したと言う。
 是非ともその存在を知ろうと、わざわざ嫌いな人間に取り入って白竜を連れて来さそうとしていたとか。

 ふむ……ハイフレム戦は獅子王の方ばかりに気をとられていたからな。
 そんなやり取りがあったのは知らなかったな。
 というか、なんでお前も知らないのだ。

 とりあえず手っ取り早く本人を呼び出すか。

『出でよ! 竜王ニース!』

「また私の認識外から……時空魔法でもなさそうですし……」

 現れたニースを怪訝げな顔で見やる海神様。
 その表情がだんだん驚きの形に変わって行く。
 細かった糸目がクヮって広げられる。

 そして、なにやらソワソワしだして、髪を手ですいたり、服装を整えだした。

「久しいなウィルマ」
「ええ、ええ! 千年ぶりかしら!」

 ニースに話しかけられて慌てたように答える、海神ウィルマ。
 ロゥリの事は気づかないようだが、ニースは人型でも気づいたんだな。
 まあこっちは、クラスチェンジした訳じゃないし、ただ、形が変わっただけだ。

「人間嫌いのお前が、人の姿をとっているとは珍しいな」
「それはあなたが……い、いえっ! 人の姿でいれば、エネルギーの消費を押さえられ、老化を遅らせることが出来るのですわ」
「なるほど、そういう手があったのか」

 感心したように頷くニース。
 ウィルマは茹で蛸のように真っ赤になっている。
 もしかして、このおばはん……

 ほんとニースの奴は隅に置けないよな。いででで、だから何でお前はオレのほっぺを抓るのよ?

「老いたと聞いていたのに、何も変わっていませんのね」

 いや随分変わっていると思うんだが。
 竜にとっては見た目はあまり関係ないのだろうか?

「それだけの力があれば後継者など必要ないでしょう。あなたが再び立ち上がれば、私共は、諸手をあげて迎えますわ」
「いや、この力には代償がある。そして、私は一度負けた身、次なる王にはそこの白竜こそがふさわしい」

 何言ってんのこのじっちゃん、みたいな顔で見やるロゥリ。
 アレきっと、幼女と遊ぶ時間おしさで自分に押し付けてる、と言う。
 そうなのかニース?

「うっ、コホン! そもそも竜の時代はもう終わったのじゃ。終わったと言うのなら潔く身を引くのも一つの答えじゃろう。過去の遺物が未練がましく足掻く姿ほど見ていて不快なものはない」

 そのセリフを聞いて始めて不服な表情を見せるウィルマ。

「終わらせたのはあなたの責任ではないですか。あなたがさっさとホウオウと子でもなしておれば、我等もまた、それにならって子を産んだはず」
「どうしてそういう超理論が出てくるのじゃ?」
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