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第一八章
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「えっ、クイーズ君の居場所を知らないかって? 困るよキミィ、ボクの代わりにちゃんと護衛してくれないと、またラピス君にどやされるじゃないか」
「ガウガウ!」
「イダダダ、冗談、冗談だからって、ちょっと齧らないでよ!」
この世界にも様々な観光地がある。
とはいえ、生涯、生まれた土地から出た事がないといった人が大半な時代。
観光地を巡れる人は、ごく限られている。
地上を移動するには馬車ぐらいしかなく、道中ではモンスターの襲撃という脅威もある。
飛竜という空を飛ぶ交通網もあるが、専用のスキルを持った人物が必要なので数が少ない。
定期便なども存在せず、国から依頼を受けて貴族を運ぶ、といった限定的な運用になっている。
その為、観光業で町おこし、なんてものは考えられもしていなかった。
だが、それを一変させる人物が現れる。
それが、古代王国の末裔であるエフィールだ。
彼女は時空魔法・極というスキルを持ち、その熟練度も千年を超えるほどの人材。
彼女はまず、最も魔境に近い場所に根差した街、サンフレアのあちこちに転移魔方陣を描いていく。
その転移魔方陣を用いれば、同じ魔方陣が描かれた場所へ瞬時に移動できるのだ。
本来、転移魔方陣というものは、時空魔法の使い手がいなければ発動できないのだが。
転移先を固定する事により、魔力を持つ者さえ居れば、誰でも発動できるように改良したのだった。
世界各地の国々と契約し、様々な場所へ、その街を起点として移動できる。
そんな風に変わっていった。
となると、人の動きも活発になり、新たな観光地も生まれてくる。
その最も有名な場所が、聖皇国の首都、聖王都である。
音の都と呼ばれるその地は街中に音楽が溢れている。
軒先でも、店の中でも、常に音楽が流れている。
その街は、ただ居るだけで楽しい気分にさしてくれる。
元々、世界最大級の都市であり、大広場では様々な催しも行われている。
転移魔方陣が普及して以降、最初に人々が目指したのが、その場所であった。
そしてここ、ピクサスレーンの下町でも、新たな観光地が出来ていた。
聖王都が音の都と呼ばれるようになった原因が、クイーズ・ファ・ゼラトースという人物が始めた楽器店である事は多くの人が認識している。
ここでも、それは同様で、彼が始めたライブハウスが原点となっている。
そのため、聖王都の音の都にちなみ、ここは食の都と呼ばれるようになっていた。
「ほら、ロゥリ君もどうたい、兄上と姉上が無料パスなんてものをくれてね。どこでも食べ放題なんだよ!」
「ガツガウ」
「そこのキミ! メニューの端から端までを持ってきてくれたまえ」
元々は、聖王都で楽器店を立ち上げるため、エクサリーが居なくなった事から始まった。
ライブハウスの目玉はお料理セットで作られる、様々な変わった料理。
それはとても美味で街中の評判であった。
食事時はいつも満席で、その名前は国外にまで轟くほど。
しかし、その料理を作っていたエクサリーが居なくなった訳だ。
居なくなって暫くは、おやっさんが料理を作っていたのだが、お料理セットを使ってもエクサリーのレベルには遠く及ばない。
お客さんからはブーイングの嵐。
そんなにブーブー言うんなら、自分で作りやがれ! という話になって。
そしたら、とある料理人がお料理セットで食事を作った訳だ。
するとだ、自分が生まれて来た上での最高傑作の料理が出来上がる。
お料理セットにはオート料理というスキルがある。そのスキルは、何が自分に足りなかったが、何が余分であったのか、それを知ることが出来たのだ。
料理人の世界は狭い世界、あっという間に料理人ネットワークを伝い、その情報が各地へ伝達された。
そうしたら、我も我もと、高名な料理人達がお料理セットを使わせてくれと集まってきた。
そこでおやっさん。ピキーンと、あ、こいつらに料理させたら人件費浮くんじゃね。と思いつく。
お料理セットを使う代わりに、お客に料理を提供させる。
そうすれば、材料費だけで料理人の人件費は浮く。
料理人としても作った料理の感想を、その場で大勢の人々に聞くことが出来る。
その発想自体は良かったのだろうが、後の事を考えていないおやっさん。
各地から集まってきた料理人達がその後どうするか?
当然、近場に料理店を作り出す。
おやっさんが、あっ、やべっ。って思った頃には、周りは商売敵だらけ。
料理店が集まれば人も集まって活気ができる、とは言うが、さすがに世界の果ての下町。こんな所においしい広場を作っても、圧倒的にパイが少ない。
切磋琢磨して品質は良くなるだろうが、売上には結び付きゃしない。
サンフレアの転移魔法陣の始動がなければ、人も集まらなく、破滅していたことは請け合い。
時期的にも結構ギリギリで、まさしく紙一重の出来事であった。
というより、ラピスに泣きついたおやっさんが原因で、転移魔方陣の開発が都市復興より優先され間に合った訳だ。
その転移魔方陣のおかげで、各地から大勢の人が集まり、一大観光地へと発展していく。
今はお料理セットはもうここにはないが、それでも、これだけの人が集まる場所。
ここに来て、刺激を受ける料理人も居る。
そうしたら、またしても料理店が増えていく。
ここに来れば、世界中の郷土料理が味わえる。と更に有名になっていく。
「いや~、うまいね! なかなやるじゃないか、ここのシェフも! 褒めて遣わそう」
「ガウガウ」
「えっ、ボクが偉そうにするなって? ハッハッハ、ボクは偉いんだよ。なんたって、このパスには王様用って書いてるしね。ん、王様用?」
そんな場所をカシュアが見逃す理由がない。
ラピスが暫く留守にするのをこれ幸いと、なんだかんだで甘いクイーズに泣きつき、お小遣いをもらってピクサスレーンに戻ってくる。
そうしたらなんか、カユサルの部下とか言う人が、どこでも食べ放題なチケットをくれた。
何も考えずにそれを使って、食道楽を堪能しているカシュア。
もちろん、そのチケットには裏がある訳で……
「食った食った、余は満足じゃ。なんてね」
「ガプゥ~」
「それでは殿下、お城にお戻り頂きます」
「ん? ボクはお城になんか戻らないけど?」
お店の入り口から、大量の騎士達が入って来てカシュアを取り囲む。
「次期、国王陛下であるカシュア様には、何としてでもお城に戻って頂くようにとの、お達しでありますので」
「へっ?」
「ガウガウ!」
「イダダダ、冗談、冗談だからって、ちょっと齧らないでよ!」
この世界にも様々な観光地がある。
とはいえ、生涯、生まれた土地から出た事がないといった人が大半な時代。
観光地を巡れる人は、ごく限られている。
地上を移動するには馬車ぐらいしかなく、道中ではモンスターの襲撃という脅威もある。
飛竜という空を飛ぶ交通網もあるが、専用のスキルを持った人物が必要なので数が少ない。
定期便なども存在せず、国から依頼を受けて貴族を運ぶ、といった限定的な運用になっている。
その為、観光業で町おこし、なんてものは考えられもしていなかった。
だが、それを一変させる人物が現れる。
それが、古代王国の末裔であるエフィールだ。
彼女は時空魔法・極というスキルを持ち、その熟練度も千年を超えるほどの人材。
彼女はまず、最も魔境に近い場所に根差した街、サンフレアのあちこちに転移魔方陣を描いていく。
その転移魔方陣を用いれば、同じ魔方陣が描かれた場所へ瞬時に移動できるのだ。
本来、転移魔方陣というものは、時空魔法の使い手がいなければ発動できないのだが。
転移先を固定する事により、魔力を持つ者さえ居れば、誰でも発動できるように改良したのだった。
世界各地の国々と契約し、様々な場所へ、その街を起点として移動できる。
そんな風に変わっていった。
となると、人の動きも活発になり、新たな観光地も生まれてくる。
その最も有名な場所が、聖皇国の首都、聖王都である。
音の都と呼ばれるその地は街中に音楽が溢れている。
軒先でも、店の中でも、常に音楽が流れている。
その街は、ただ居るだけで楽しい気分にさしてくれる。
元々、世界最大級の都市であり、大広場では様々な催しも行われている。
転移魔方陣が普及して以降、最初に人々が目指したのが、その場所であった。
そしてここ、ピクサスレーンの下町でも、新たな観光地が出来ていた。
聖王都が音の都と呼ばれるようになった原因が、クイーズ・ファ・ゼラトースという人物が始めた楽器店である事は多くの人が認識している。
ここでも、それは同様で、彼が始めたライブハウスが原点となっている。
そのため、聖王都の音の都にちなみ、ここは食の都と呼ばれるようになっていた。
「ほら、ロゥリ君もどうたい、兄上と姉上が無料パスなんてものをくれてね。どこでも食べ放題なんだよ!」
「ガツガウ」
「そこのキミ! メニューの端から端までを持ってきてくれたまえ」
元々は、聖王都で楽器店を立ち上げるため、エクサリーが居なくなった事から始まった。
ライブハウスの目玉はお料理セットで作られる、様々な変わった料理。
それはとても美味で街中の評判であった。
食事時はいつも満席で、その名前は国外にまで轟くほど。
しかし、その料理を作っていたエクサリーが居なくなった訳だ。
居なくなって暫くは、おやっさんが料理を作っていたのだが、お料理セットを使ってもエクサリーのレベルには遠く及ばない。
お客さんからはブーイングの嵐。
そんなにブーブー言うんなら、自分で作りやがれ! という話になって。
そしたら、とある料理人がお料理セットで食事を作った訳だ。
するとだ、自分が生まれて来た上での最高傑作の料理が出来上がる。
お料理セットにはオート料理というスキルがある。そのスキルは、何が自分に足りなかったが、何が余分であったのか、それを知ることが出来たのだ。
料理人の世界は狭い世界、あっという間に料理人ネットワークを伝い、その情報が各地へ伝達された。
そうしたら、我も我もと、高名な料理人達がお料理セットを使わせてくれと集まってきた。
そこでおやっさん。ピキーンと、あ、こいつらに料理させたら人件費浮くんじゃね。と思いつく。
お料理セットを使う代わりに、お客に料理を提供させる。
そうすれば、材料費だけで料理人の人件費は浮く。
料理人としても作った料理の感想を、その場で大勢の人々に聞くことが出来る。
その発想自体は良かったのだろうが、後の事を考えていないおやっさん。
各地から集まってきた料理人達がその後どうするか?
当然、近場に料理店を作り出す。
おやっさんが、あっ、やべっ。って思った頃には、周りは商売敵だらけ。
料理店が集まれば人も集まって活気ができる、とは言うが、さすがに世界の果ての下町。こんな所においしい広場を作っても、圧倒的にパイが少ない。
切磋琢磨して品質は良くなるだろうが、売上には結び付きゃしない。
サンフレアの転移魔法陣の始動がなければ、人も集まらなく、破滅していたことは請け合い。
時期的にも結構ギリギリで、まさしく紙一重の出来事であった。
というより、ラピスに泣きついたおやっさんが原因で、転移魔方陣の開発が都市復興より優先され間に合った訳だ。
その転移魔方陣のおかげで、各地から大勢の人が集まり、一大観光地へと発展していく。
今はお料理セットはもうここにはないが、それでも、これだけの人が集まる場所。
ここに来て、刺激を受ける料理人も居る。
そうしたら、またしても料理店が増えていく。
ここに来れば、世界中の郷土料理が味わえる。と更に有名になっていく。
「いや~、うまいね! なかなやるじゃないか、ここのシェフも! 褒めて遣わそう」
「ガウガウ」
「えっ、ボクが偉そうにするなって? ハッハッハ、ボクは偉いんだよ。なんたって、このパスには王様用って書いてるしね。ん、王様用?」
そんな場所をカシュアが見逃す理由がない。
ラピスが暫く留守にするのをこれ幸いと、なんだかんだで甘いクイーズに泣きつき、お小遣いをもらってピクサスレーンに戻ってくる。
そうしたらなんか、カユサルの部下とか言う人が、どこでも食べ放題なチケットをくれた。
何も考えずにそれを使って、食道楽を堪能しているカシュア。
もちろん、そのチケットには裏がある訳で……
「食った食った、余は満足じゃ。なんてね」
「ガプゥ~」
「それでは殿下、お城にお戻り頂きます」
「ん? ボクはお城になんか戻らないけど?」
お店の入り口から、大量の騎士達が入って来てカシュアを取り囲む。
「次期、国王陛下であるカシュア様には、何としてでもお城に戻って頂くようにとの、お達しでありますので」
「へっ?」
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