1 / 6
もふりたい
しおりを挟む
もふ、もふ
もふ、もふ
「何?」
もふっ
「もふもふじゃない……」
「悪かったな、人間で」
もふ、もふ、もふ、もふ
頭の中でいくら効果音をつけようと、ひまりの彼氏の頭は『もふもふ』ではなかった。少し色素は薄いが黒いストレートの髪、柔らかめの髪質。うん、やっぱり『もふもふ』じゃない。
ここはどうかな?と思い、ひまりは彼の顎に手を伸ばす。休みの日だからといって剃っていない髭は当然『もふもふ』ではなかった。スマホをいじりながらも、されるがままになってくれているところは忠犬のようにも見えるが。
「ざりざりで痛い……」
好きなだけ触っておきながら、ひまりは不機嫌に頬を膨らませた。こんなのでは到底ひまりの欲望は満たされない。
「そんなに『もふりたい』なら猫カフェでもいけば?俺は行かないけど」
視線はスマホに向けたまま、彼氏の朔也(さくや)が声をかける。
「抗アレルギー剤、もうないもん」
ひまりは猫好きだが、猫アレルギー持ちでもある。手持ちの薬は飲みきってもうない。
「病院行って処方してもらうだけだろ?」
朔也は即答したが、ひまりはそれを拒否した。
「今、花粉症の季節じゃないじゃん。何て言って処方してもらうの?
にゃんこを『もふりたい』から、薬下さいって?嫌だよ。恥ずかしいし、耳鼻科行くといつも痛い目にあうから出来るだけ行きたくない」
ひまりの頭の中に、鼻の中に器具を入れられ苦しくて涙した思い出が浮かんでくる。
「ゴキブリアレルギーでもあるんだろ?そろそろ暖かくなってきたから、ゴキ対策で薬だけ欲しいって言えば?」
「嫌なこと思い出させないで!Gなんてこの家にはいないもん!」
ひまりは以前猫カフェにいった後、酷い鼻炎になり耳鼻科受診をした。そのとき初めてしたアレルギー検査でほぼ全ての項目に陽性が出たのだ。猫が陽性だったのはショックだっだが、ゴキブリにもプラスマークが書いてあって、何故か嫌な気分になった。もし彼らと共存できる身体であってもそれも嫌だが。
「じゃあ、行けないな。『もふもふ』は諦めろ。俺は夜通し隣で鼻水啜られるのも、酷くなってから病院連れてくのもごめんだから」
朔也の声が冷たくて、ひまりは彼の腕の毛を擦った。
さわさわ、わさわさ
髪の毛よりも柔らかくて、まばらに生えた毛の触り心地は、肌の温かさも相まって思ったよりは悪くなかった。そのまま、触り続ける。
さわさわ、わさわさ
「くすぐったい」
そう言われ、腕が遠ざけられた。
「そんな殺生なー」
ひまりが悲しい声を出すと、朔也がスマホの画面を目の前に出す。
画面を見ると、有名な動画サイトが映し出されていた。ひまりの好きそうな動物を検索してくれたらしく、動物の動画が一覧で並んでいる。
「さっくんー」
言ってくる言葉自体は優しくないが、行動は優しい。ひまりは朔也のそういうところが好きだった。
「ここの動画と今から何か触り心地が『もふもふ』したもの用意してやるから、あとは得意の妄想でその欲望何とかして?」
こうして、ひまりの『もふもふ』が始まった。
もふ・もふ
もふ、もふ
「何?」
もふっ
「もふもふじゃない……」
「悪かったな、人間で」
もふ、もふ、もふ、もふ
頭の中でいくら効果音をつけようと、ひまりの彼氏の頭は『もふもふ』ではなかった。少し色素は薄いが黒いストレートの髪、柔らかめの髪質。うん、やっぱり『もふもふ』じゃない。
ここはどうかな?と思い、ひまりは彼の顎に手を伸ばす。休みの日だからといって剃っていない髭は当然『もふもふ』ではなかった。スマホをいじりながらも、されるがままになってくれているところは忠犬のようにも見えるが。
「ざりざりで痛い……」
好きなだけ触っておきながら、ひまりは不機嫌に頬を膨らませた。こんなのでは到底ひまりの欲望は満たされない。
「そんなに『もふりたい』なら猫カフェでもいけば?俺は行かないけど」
視線はスマホに向けたまま、彼氏の朔也(さくや)が声をかける。
「抗アレルギー剤、もうないもん」
ひまりは猫好きだが、猫アレルギー持ちでもある。手持ちの薬は飲みきってもうない。
「病院行って処方してもらうだけだろ?」
朔也は即答したが、ひまりはそれを拒否した。
「今、花粉症の季節じゃないじゃん。何て言って処方してもらうの?
にゃんこを『もふりたい』から、薬下さいって?嫌だよ。恥ずかしいし、耳鼻科行くといつも痛い目にあうから出来るだけ行きたくない」
ひまりの頭の中に、鼻の中に器具を入れられ苦しくて涙した思い出が浮かんでくる。
「ゴキブリアレルギーでもあるんだろ?そろそろ暖かくなってきたから、ゴキ対策で薬だけ欲しいって言えば?」
「嫌なこと思い出させないで!Gなんてこの家にはいないもん!」
ひまりは以前猫カフェにいった後、酷い鼻炎になり耳鼻科受診をした。そのとき初めてしたアレルギー検査でほぼ全ての項目に陽性が出たのだ。猫が陽性だったのはショックだっだが、ゴキブリにもプラスマークが書いてあって、何故か嫌な気分になった。もし彼らと共存できる身体であってもそれも嫌だが。
「じゃあ、行けないな。『もふもふ』は諦めろ。俺は夜通し隣で鼻水啜られるのも、酷くなってから病院連れてくのもごめんだから」
朔也の声が冷たくて、ひまりは彼の腕の毛を擦った。
さわさわ、わさわさ
髪の毛よりも柔らかくて、まばらに生えた毛の触り心地は、肌の温かさも相まって思ったよりは悪くなかった。そのまま、触り続ける。
さわさわ、わさわさ
「くすぐったい」
そう言われ、腕が遠ざけられた。
「そんな殺生なー」
ひまりが悲しい声を出すと、朔也がスマホの画面を目の前に出す。
画面を見ると、有名な動画サイトが映し出されていた。ひまりの好きそうな動物を検索してくれたらしく、動物の動画が一覧で並んでいる。
「さっくんー」
言ってくる言葉自体は優しくないが、行動は優しい。ひまりは朔也のそういうところが好きだった。
「ここの動画と今から何か触り心地が『もふもふ』したもの用意してやるから、あとは得意の妄想でその欲望何とかして?」
こうして、ひまりの『もふもふ』が始まった。
もふ・もふ
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる