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第7話 ヒーロー・インタビュー
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「タコ、お前にインタビューしたいって小学生が来てるぞ」
この世に降り立つなり、店主に声を掛けられる。彼は心なしか急いでマヨネーズをつけてくれた。
「僕の今日のヘアーは変じゃないか? 」
「そう聞くと思って、バッチリ仕上げといたぞ!」
片足を上げてよくわからない決めポーズをする店主は褒めて欲しそうだった。一応『たこ焼き屋』の看板を背負っているのであれば、毎回バッチリ仕上げていただきたいものだ。
「そうか、ありがとう」
僕には店主と言い合っている時間はない。小学生達にヒーローの心意気を伝えねばならぬのだ。新聞に僕の記事が載れば、世の中の悪人どもは恐れをなして悪事を働くことをやめるだろう。
ガラッ
「タコちゃん、待ってたわよ」
畳の部屋には、小学校低学年位の男の子と幸子さんが座っていた。お茶を飲んでいたらしく、男の子はみたらし団子を今まさに口に入れたところだった。
うごぉ、ごぉふっ、ごふっ
僕の姿を見て、男の子は団子を喉に詰まらせた。慌てて幸子さんが背中を叩くと、ぽろりと団子が口から出てきた。
「はぁ、はぁ……」
「大丈夫? ごめんなさいね。憧れの人に会えてびっくりしちゃったのね」
優しく彼の背中を擦り、お茶を飲ませる幸子さん。
憧れの人……
その言葉は僕の心にキラキラの金粉を振り撒いて、心を輝かせる。長年辛いこともあったけれど、ヒーロー活動をしてきて良かったと思える瞬間だった。
「大丈夫かい? 驚かせてしまって悪かったね」
声を掛けると彼は目を見開いた。
「本当だ!噂通りだ。団子が喋ってる!! 」
団子? ホワーイ?
僕が固まっていると幸子さんがすかさずフォローに入る。
「正男くん、タコちゃんはね。たこ焼きなのよ。私がお団子出したから紛らわしかったのよね。ごめんね」
「あっ、そっか、何か緑のかかってるし、へにょへにょ気色悪く動いてるのはかつお節か! 」
言い方に悪意を感じるが、まだ幼き少年に注意するときではないだろう。いつか分かる君にも僕の心が。
「正男くんって言うのか。僕はタコヤキ・マン。ヒーローをやっているものだ。僕にインタビューをしたいんだって? 」
「ヒーロー? 都市伝説の妖怪じゃなくて? 」
彼は不思議そうに首を傾げた。僕も不思議で首を傾げる。
「シルエットはアン○ンマンだけど、串が刺さってて。いつの間にか消えていなくなる謎の妖怪を探してたんだ。
串が刺さってるって言うから俺は『団子』だと思ってたんだけど、それ爪楊枝だったんだね」
彼はたこ焼きよりも団子派なのかもしれない。確かに同じおやつの分野ではしのぎを削っている強敵だ。
「そうか、団子でなくて申し訳ないが、消えるのは本当だ」
「えっ?!ほんと?じゃあ今から消えて見せてよ! 」
子どもは残酷だ。今僕の生命力が更に少なくなった気がする。やる気も当然なくす。
「正男くん、申し訳ないが僕は死ぬと消えるんだ。もうすぐ消える……。でも、毎日作ってもらっているからまたきっと会えるよ。消えるところも見てていいけど、心の傷にならないか心配だ」
「大丈夫だよっ!消えるなんてすげぇ!あっでもインタビューが……」
「幸子さん、店主あとはおねがい……します」
何故かスーツを着た店主が、さりげなく部屋の隅に来ていたのは気づいていた。量のない髪の毛がカチカチに固めてある。
「おーーーー!!すっげぇーーー!!!」
少年の歓喜の声と共に僕は悲しい気持ちで旅立った。
でもいいんだ。きっと僕の活動は店主達が伝えてくれるから。彼も、周りの人も次に会ったときには僕のことをもっとよく知っていてくれるだろうし、正義の心に目覚めるだろう。ヒーローフォーエバー。
【なぞのようかい、タコヤキマンはっけん】1ねん3くみ こしば まさお
ぼくはなぞのようかいをみつけました。「タコヤキマン」というそうです。目のまえできえました。とてもすごいとおもいました。
3ぷんくらいできえるそうです。とてもレアキャラなので、みつけたらラッキーだそうです。いきているときはゴミひろいとか、たねまきとかやっているみたいです。
おだんごおいしかったです。おばさんやさしかったです。おじさんのかみがたはへんでした。またおだんごをたべにいきたいです。
おわり
「丈夫さん、タコちゃんっていつも何してるのかしら? 『助ける人いなくて暇なときどうしよう』って前に悩んでたから、私が提案したゴミ拾いと種まきしかわかんなかったわ」
「すぐ出てって消えるからわかんねーなー。悪いことはしないし、助けようとはしてるだろうけど。まぁ、そんなもんだろ? 」
お団子を食べる平和な夫婦にタコヤキ・マンの心は届いていなかった。
この世に降り立つなり、店主に声を掛けられる。彼は心なしか急いでマヨネーズをつけてくれた。
「僕の今日のヘアーは変じゃないか? 」
「そう聞くと思って、バッチリ仕上げといたぞ!」
片足を上げてよくわからない決めポーズをする店主は褒めて欲しそうだった。一応『たこ焼き屋』の看板を背負っているのであれば、毎回バッチリ仕上げていただきたいものだ。
「そうか、ありがとう」
僕には店主と言い合っている時間はない。小学生達にヒーローの心意気を伝えねばならぬのだ。新聞に僕の記事が載れば、世の中の悪人どもは恐れをなして悪事を働くことをやめるだろう。
ガラッ
「タコちゃん、待ってたわよ」
畳の部屋には、小学校低学年位の男の子と幸子さんが座っていた。お茶を飲んでいたらしく、男の子はみたらし団子を今まさに口に入れたところだった。
うごぉ、ごぉふっ、ごふっ
僕の姿を見て、男の子は団子を喉に詰まらせた。慌てて幸子さんが背中を叩くと、ぽろりと団子が口から出てきた。
「はぁ、はぁ……」
「大丈夫? ごめんなさいね。憧れの人に会えてびっくりしちゃったのね」
優しく彼の背中を擦り、お茶を飲ませる幸子さん。
憧れの人……
その言葉は僕の心にキラキラの金粉を振り撒いて、心を輝かせる。長年辛いこともあったけれど、ヒーロー活動をしてきて良かったと思える瞬間だった。
「大丈夫かい? 驚かせてしまって悪かったね」
声を掛けると彼は目を見開いた。
「本当だ!噂通りだ。団子が喋ってる!! 」
団子? ホワーイ?
僕が固まっていると幸子さんがすかさずフォローに入る。
「正男くん、タコちゃんはね。たこ焼きなのよ。私がお団子出したから紛らわしかったのよね。ごめんね」
「あっ、そっか、何か緑のかかってるし、へにょへにょ気色悪く動いてるのはかつお節か! 」
言い方に悪意を感じるが、まだ幼き少年に注意するときではないだろう。いつか分かる君にも僕の心が。
「正男くんって言うのか。僕はタコヤキ・マン。ヒーローをやっているものだ。僕にインタビューをしたいんだって? 」
「ヒーロー? 都市伝説の妖怪じゃなくて? 」
彼は不思議そうに首を傾げた。僕も不思議で首を傾げる。
「シルエットはアン○ンマンだけど、串が刺さってて。いつの間にか消えていなくなる謎の妖怪を探してたんだ。
串が刺さってるって言うから俺は『団子』だと思ってたんだけど、それ爪楊枝だったんだね」
彼はたこ焼きよりも団子派なのかもしれない。確かに同じおやつの分野ではしのぎを削っている強敵だ。
「そうか、団子でなくて申し訳ないが、消えるのは本当だ」
「えっ?!ほんと?じゃあ今から消えて見せてよ! 」
子どもは残酷だ。今僕の生命力が更に少なくなった気がする。やる気も当然なくす。
「正男くん、申し訳ないが僕は死ぬと消えるんだ。もうすぐ消える……。でも、毎日作ってもらっているからまたきっと会えるよ。消えるところも見てていいけど、心の傷にならないか心配だ」
「大丈夫だよっ!消えるなんてすげぇ!あっでもインタビューが……」
「幸子さん、店主あとはおねがい……します」
何故かスーツを着た店主が、さりげなく部屋の隅に来ていたのは気づいていた。量のない髪の毛がカチカチに固めてある。
「おーーーー!!すっげぇーーー!!!」
少年の歓喜の声と共に僕は悲しい気持ちで旅立った。
でもいいんだ。きっと僕の活動は店主達が伝えてくれるから。彼も、周りの人も次に会ったときには僕のことをもっとよく知っていてくれるだろうし、正義の心に目覚めるだろう。ヒーローフォーエバー。
【なぞのようかい、タコヤキマンはっけん】1ねん3くみ こしば まさお
ぼくはなぞのようかいをみつけました。「タコヤキマン」というそうです。目のまえできえました。とてもすごいとおもいました。
3ぷんくらいできえるそうです。とてもレアキャラなので、みつけたらラッキーだそうです。いきているときはゴミひろいとか、たねまきとかやっているみたいです。
おだんごおいしかったです。おばさんやさしかったです。おじさんのかみがたはへんでした。またおだんごをたべにいきたいです。
おわり
「丈夫さん、タコちゃんっていつも何してるのかしら? 『助ける人いなくて暇なときどうしよう』って前に悩んでたから、私が提案したゴミ拾いと種まきしかわかんなかったわ」
「すぐ出てって消えるからわかんねーなー。悪いことはしないし、助けようとはしてるだろうけど。まぁ、そんなもんだろ? 」
お団子を食べる平和な夫婦にタコヤキ・マンの心は届いていなかった。
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