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2章 放たれた魔銃と幸運の石
35 教授は今日中にはなれないものらしい
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所長が研究者の会合に出かけていった。
各所から責任者が集まって研究報告などを行うらしい。
近いうちに王国の重臣達を招いた研究発表会があるので、その打ち合わせもする。
僕の作ったモノは、今回の報告には含まれない事になっている。
アレは根回しをしてから、うまく段取りを踏まないと大混乱必至らしい。
ということで、同じく会合に出席する所長の師匠に相談してくるとのこと。
所長の師匠は宮廷魔術師クルデウスという。
「先輩、所長ってクルデウス卿の弟子なんですよね?」
「そうだよ。
王立エスファーン記念大学に所長が在籍していたときに、特別講師をしていたんだって。
発想力を買われて特別に色々なことを教えてもらったそうだ。」
「クルデウス卿は大学の先生をしていたんですか?」
「特別講師だから期間限定でね。
当時のクルデウス卿は冒険者として有名で、よく所長から昔の逸話を聞かされたよ。
所長は卒業後、大学の助手から助教授までいったんだ。
もうクルデウス卿は大学には席を置いていなかったんだけど、ちょくちょく相談に乗ってもらったんだって。
研究も順調で、もう一歩で教授になるところだったんだ。」
「だった?」
「詳しくは話してもらっていないんだけど、ある事件に巻き込まれたんだって。
その事件でエリザ様にお世話になったらしい。
ただ所長がそのことを少し語ってくれたときに、家族を持つのが怖くなって今も独身だと言っていたんだ。」
「どんな事件だったのか気になりますね。」
「話してくれるかどうかは所長次第だよ。」
ものはついでと言うことで、僕は聞きたかったのだけれど、なかなか言い出せなかったことを先輩に聞いてみることにした。
「先輩、ワイアデスという名前に心当たりはありませんか?」
それを聞いた先輩の表情が凍る。
「その名前は、絶対他の人に言わないようにね。」
某魔法使いの物語に出てくる「あの人」みたいな扱いだ。
「七年前にこの国を放逐されている魔術師だよ。
所長や他の魔術師、クルデウス卿も一目置いているほどだった。
扱える魔法の種類や質はクルデウス卿に匹敵し、マジックアイテムの製造技術では並ぶ者がいないほどだった。
この国にはあの人の作った魔法理論の書物やマジックアイテムが至る所にあるよ。
だけど自分の研究のためなら他者を顧みない態度や、国からの命令違反を問われてね。
しかも放逐される直前に、兵士や魔術師が何人か殺されたらしい。
もう誰もあの人の名前は口にしなくなったのに、君はいったいどこでその名前を聞いたんだい?」
たぶん放逐では無い。
暗殺のために兵士と魔術師が派兵されて返り討ちに遭ったのだろう。
そんなに優秀で危険な人間を、国がそのまま外に出すはずが無い。
「孤児院のあるデイボンの町の森に移り住んだようです。
僕は危うく賢者の石にされるところでした。」
僕は先輩に細かい事情を話した。
もちろん魔術師ワイアデスを倒したのは冒険者達とエリザさんだ。
僕はあくまで助けてもらっただけ。
精神魔法で魔術師を暴走させた誰かなどいない。
「そうなんだ。
あの人は死んだのか。
冒険者ギルドが絡んでいるということは王宮には報告が行っているはず。
そうか、あの人が・・・。」
先輩は信じられないという表情で、何かを納得する感情が交じった呟きを発した。
「君には驚かされてばかりだよ。
魔法に関わる研究は興味深い発見があると思っていたけど、君が来てからはその感覚が麻痺してきた。」
そして冒険者のことを話したときに、メイスを腰に下げて炎の魔法を使ったポリテオさんに先輩が反応した。
先輩の先輩で学園に通っていた頃、お世話になったとのことだ。
魔術回路の構築の早さは希代で類を見ないほど優秀で、卒業後の進路で色々なところから声をかけられた。
しかしそれらを全て蹴って冒険者になってしまったという。
無口だったけれど、型にはまらない自由な生き方をする人だったらしい。
「賢者の杖に賢者の石、そして魔族。
とんでもない事件に巻き込まれたものだね。
魂を物に封じ込めるというのも、理論上噂される程度だったのに本当にやってしまうとは。」
ルディンの件もある。
あの人の残した研究は調べておいた方が良さそうだ。
一歩間違うと、あの人無双だった。
各所から責任者が集まって研究報告などを行うらしい。
近いうちに王国の重臣達を招いた研究発表会があるので、その打ち合わせもする。
僕の作ったモノは、今回の報告には含まれない事になっている。
アレは根回しをしてから、うまく段取りを踏まないと大混乱必至らしい。
ということで、同じく会合に出席する所長の師匠に相談してくるとのこと。
所長の師匠は宮廷魔術師クルデウスという。
「先輩、所長ってクルデウス卿の弟子なんですよね?」
「そうだよ。
王立エスファーン記念大学に所長が在籍していたときに、特別講師をしていたんだって。
発想力を買われて特別に色々なことを教えてもらったそうだ。」
「クルデウス卿は大学の先生をしていたんですか?」
「特別講師だから期間限定でね。
当時のクルデウス卿は冒険者として有名で、よく所長から昔の逸話を聞かされたよ。
所長は卒業後、大学の助手から助教授までいったんだ。
もうクルデウス卿は大学には席を置いていなかったんだけど、ちょくちょく相談に乗ってもらったんだって。
研究も順調で、もう一歩で教授になるところだったんだ。」
「だった?」
「詳しくは話してもらっていないんだけど、ある事件に巻き込まれたんだって。
その事件でエリザ様にお世話になったらしい。
ただ所長がそのことを少し語ってくれたときに、家族を持つのが怖くなって今も独身だと言っていたんだ。」
「どんな事件だったのか気になりますね。」
「話してくれるかどうかは所長次第だよ。」
ものはついでと言うことで、僕は聞きたかったのだけれど、なかなか言い出せなかったことを先輩に聞いてみることにした。
「先輩、ワイアデスという名前に心当たりはありませんか?」
それを聞いた先輩の表情が凍る。
「その名前は、絶対他の人に言わないようにね。」
某魔法使いの物語に出てくる「あの人」みたいな扱いだ。
「七年前にこの国を放逐されている魔術師だよ。
所長や他の魔術師、クルデウス卿も一目置いているほどだった。
扱える魔法の種類や質はクルデウス卿に匹敵し、マジックアイテムの製造技術では並ぶ者がいないほどだった。
この国にはあの人の作った魔法理論の書物やマジックアイテムが至る所にあるよ。
だけど自分の研究のためなら他者を顧みない態度や、国からの命令違反を問われてね。
しかも放逐される直前に、兵士や魔術師が何人か殺されたらしい。
もう誰もあの人の名前は口にしなくなったのに、君はいったいどこでその名前を聞いたんだい?」
たぶん放逐では無い。
暗殺のために兵士と魔術師が派兵されて返り討ちに遭ったのだろう。
そんなに優秀で危険な人間を、国がそのまま外に出すはずが無い。
「孤児院のあるデイボンの町の森に移り住んだようです。
僕は危うく賢者の石にされるところでした。」
僕は先輩に細かい事情を話した。
もちろん魔術師ワイアデスを倒したのは冒険者達とエリザさんだ。
僕はあくまで助けてもらっただけ。
精神魔法で魔術師を暴走させた誰かなどいない。
「そうなんだ。
あの人は死んだのか。
冒険者ギルドが絡んでいるということは王宮には報告が行っているはず。
そうか、あの人が・・・。」
先輩は信じられないという表情で、何かを納得する感情が交じった呟きを発した。
「君には驚かされてばかりだよ。
魔法に関わる研究は興味深い発見があると思っていたけど、君が来てからはその感覚が麻痺してきた。」
そして冒険者のことを話したときに、メイスを腰に下げて炎の魔法を使ったポリテオさんに先輩が反応した。
先輩の先輩で学園に通っていた頃、お世話になったとのことだ。
魔術回路の構築の早さは希代で類を見ないほど優秀で、卒業後の進路で色々なところから声をかけられた。
しかしそれらを全て蹴って冒険者になってしまったという。
無口だったけれど、型にはまらない自由な生き方をする人だったらしい。
「賢者の杖に賢者の石、そして魔族。
とんでもない事件に巻き込まれたものだね。
魂を物に封じ込めるというのも、理論上噂される程度だったのに本当にやってしまうとは。」
ルディンの件もある。
あの人の残した研究は調べておいた方が良さそうだ。
一歩間違うと、あの人無双だった。
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