魔王の息子に転生したら、いきなり魔王が討伐された

ふぉ

文字の大きさ
42 / 262
2章 放たれた魔銃と幸運の石

42 また誘拐って言うのかい

しおりを挟む
 僕は許可を得て証拠品の再確認を行った。
 思った通りの結果が出た。
 さて、あとは師匠から話を聞くだけだ。

 僕が師匠の元へ戻ると、既にお茶を用意がされていた。
 恐ろしいほどに全てお見通しのようだ。

「ご苦労だったの。
 それで何を聞きたい?」

 何を質問するかも知っているんだろうな、この人は。

「この青いペンダントのことです。
 ジェイソン所長にも渡していますよね?」

 師匠は昔のことを懐かしむかのように答えた。

「ふむ、確かにジェイソンにも渡しておる。
 あれからもう二十年以上も経つとは、時の流れは早いものよ。」

 所長は独身だ。
 つまり何らかの事情で別れることになったのだろう。

「続けて聞きますが、ジェイソン所長はその後、誰にペンダントを渡したんですか?
 もちろん知っているんですよね。」

「ジェイソンには恋人がおってな。
 エイニアという名じゃ。
 彼女と結婚の約束をしたときに渡したと、ニヤついて報告しに来おった。
 その先の顛末についても聞きたいのだろう?」 

「はい、お願いします。」

 当時助教授だったジェイソン所長は、彼女との結婚も間近、教授になるのも間違いないと順風満帆だった。
 しかしエスファーン記念大学の教授選の当日に、エイニアさんが誘拐されてしまったのだ。
 大学の規定で教授選当日は必ず大学にいないと、選考から外されてしまうと言うのがあるらしい。
 そんなことは顧みず、ジェイソン所長は何の迷いも無く大学から抜け出し、彼女を捜し回った。
 師匠は冒険者仲間だったエリザさんに協力を頼み、最終的に無事ジェイソン所長の彼女を救い出すことに成功した。
 誘拐の実行犯はエリザさんによって全員捕縛された。

 実行犯の取り調べが行われたが、誰かに依頼されたということしか掴めなかった。
 当時の状況から、一番怪しいのは候補から外されてしまったジェイソン所長の代わりに教授になったエムルライド氏だ。
 しかし何の証拠も出なかったため、物言いを付けることは出来なかった。

 その後、彼女を自分のせいで危険な目に遭わせたと思った所長は彼女と別れた。
 上京していた彼女は、自分の両親が住む田舎へ帰った。

「エイニアさんはその時、妊娠していませんでしたか?」

「ジェイソンからは何も聞いておらん。
 当時は何も知らなかったのだろう。」

 師匠は聞いていないとは言っているけれど、知らないとは言っていない。
 当時の黒幕も現在の状況も、全て把握しているんじゃ無いだろうか。

 その後、病を患った彼女は専門の医者にかかるため、娘と共に再び上京してきた。

「ちなみに師匠は彼女の子供が娘で、ブラニカという名前だというのもご存じですよね。」

「ほう、子供がブラニカというのはどうしてそう思った?」

「彼女は青いペンダントを身につけていました。
 そしてジェイソン所長にだけ、余所余所しい態度をとっていました。」

 僕は最初にブラニカさんに出会ったときの事を思い出す。
 ジェイソンさんの名前を出したときの彼女の表情を。

「二年前にエイニアが上京して来た時、ジェイソンは彼女のことにすぐ気がついたようじゃ。
 ジェイソンは不器用な奴での。
 結局エイニアには会いに行っておらぬ。
 気付かれぬように手を回してエイニアを治験扱いに偽装し、医療費の援助をしておった。
 そして取引先に頼んで娘に仕事を斡旋したのじゃ。」

 きっちり調べ上げているよ、この白髭の人。

「師匠、ありがとうございます。
 必要なピースは揃いました。
 準備が出来たら関係者を集めたいと思うのですが。」

「ヌシに任せた件じゃ。
 好きにするが良かろう。」

 白髭の老人はにこやかに答えた。
 エリザさんの冒険者仲間という時点で、この人も色々なベクトルで化け物に違いない。

 僕はこの事件の幕引きの準備に取りかかった。


 

 なんでもお見通し無双の人がいた。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

結婚前夜に婚約破棄されたけど、おかげでポイントがたまって溺愛されて最高に幸せです❤

凪子
恋愛
私はローラ・クイーンズ、16歳。前世は喪女、現世はクイーンズ公爵家の公爵令嬢です。 幼いころからの婚約者・アレックス様との結婚間近……だったのだけど、従妹のアンナにあの手この手で奪われてしまい、婚約破棄になってしまいました。 でも、大丈夫。私には秘密の『ポイント帳』があるのです! ポイントがたまると、『いいこと』がたくさん起こって……?

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

神のミスで転生したけど、幼女化しちゃった! 神具【調薬釜】で、異世界ライフを楽しもう!

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
旧題:神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜  ※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!  電子書籍は、2026/3/9に発売です!  書籍は2026/3/11に発売(予約受付中)です!メロンブックス様より、特典の描き下ろしSSペーパーがあります。詳しくは、メロンブックス様へお願い致します。  イラストは、にとろん様です。よろしくお願い致します!  ファンタジー小説大賞に投票して頂いた皆様には、大変感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

【完結】転生したら断罪イベントの真っ最中。聖女の嘘を暴いたら、王太子が真っ青になりました

丸顔ちゃん。
恋愛
王太子は私――エリシアに婚約破棄を宣言し、 隣では甘ったるい声の“聖女”が「こわかったんですぅ♡」と泣き真似をしている。 だが私は知っている。 原作では、この聖女こそが禁術で王太子の魔力を吸い取り、 私に冤罪を着せて処刑へ追い込んだ張本人だ。 優しい家族を守るためにも、同じ結末は絶対に許さない。 私は転生者としての知識を武器に、 聖女の嘘と禁術の証拠を次々に暴き、 王太子の依存と愚かさを白日の下に晒す。 「婚約は……こちらから願い下げです」 土下座する王太子も、泣き叫ぶ聖女も、もう関係ない。 私は新しい未来を選ぶ。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...