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5章 希望の家と集う仲間
113 天寿全うまで待っとこう
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便利な足を手に入れた僕は、クエルク自治領から地理的に近かった懐かしい場所を訪れた。
希望の家だ。
懐かしい場所ではあったけれど、けっこう世代交代が進んでいた。
元年長組は既にここを去っている。
元年少組は町に仕事に出ているので、僕が到着した時間には会うことが無かった。
そしてエリザさんと会う。
あの儀式をしてもらうためだ。
勇者の血を引いている以上、僕も神の残滓を使えるはずだ。
以前に目撃した魔術師オルドウルの、矢を一発食らって即刻ノックアウトはトラウマ級だ。
あれは防がなければならない。
ちなみにサリアとブリューデンは町を観光中だ。
ド田舎なので面白いものは何も無いけれど、人間の姿で歩き回れるようになったドラゴンにとっては違うのかも知れない。
帰郷した僕を見るエリザさん。
「ようやく来たね。」
僕を待っていたらしい。
そもそもこの人、最初から僕の正体に気がついていたのかも知れない。
師匠以上に考えていることが読めない。
「もしかしたら死んじまうかも知れないから、その前に昔話でもしておこうかね。」
突然そんなことを言い出した。
いや、死なないから。
死なないよね?
もしかしてエリザさん、自分が天寿を全うして死んじゃうかも知れないって言っているのかな?
そうだよね?
そしてエリザさんは昔に何があったのかを教えてくれた。
あのジジイの話らしいのだが、当然師匠のことだろう。
僕はエリザさんの話を聞くことにした。
エリザさんを含め、あのジジイ、ヒーラーの娘とタンクの男を含む四人で冒険したそうだ。
あのジジイはヒーラーの娘が好きで、何度もアタックしていたらしい。
しかし真面目な性格の彼女は、何度も丁寧にお断りしたらしい。
師匠が少しかわいそうになった。
エリザさんの話には何故か個人名が一切出てこない。
みんな才能のある冒険者達で、色々なところで大活躍したようだ。
次々に難しいクエストを達成する四人。
無敵に近かった彼らは、ついに誰もが踏破できなかった古代遺跡に挑戦することにしたのだ。
僕と違って攻略情報無しの真っ正面からの挑戦だ。
人間離れした能力で神の仕掛けた様々な罠(セキュリティ)をかいくぐり、ついに情報端末室へと到達した。
そして四人は遙か昔の真実を知る。
特にヒーラーの娘は真実を知ると大きなショックを受けた。
自分の信仰していた神が、人間にとっては邪心だったからだ。
それぞれが複雑な思いを抱えながら、出口へ向かった。
その時、最強を欲しいままにした彼らではあったが、完全に気が抜けていた。
意気消沈していたヒーラーの娘が罠にかかってしまう。
タンク役だった男が助けに入るが、力が及ぶようなものでは無かった。
そこへ突入しようとするあのジジイを、エリザさんは糸で雁字搦(がんじがら)めにして止めたという。
救えるような状況では無かったらしい。
そんな中、ヒーラーの娘が残した最後の言葉は、「笑顔で、みんなを助けてあげて」だったらしい。
みんなというのが誰のことなのかは分からない。
それをあのジジイは人間を助けることだと解釈したようだ。
古代遺跡から生還したあのジジイは、何故がいつも笑うようになった。
そして王国の中枢に入り、権力を手にするようになる。
エリザさんはそれを何年も見守っていたが、ついには限界を悟り王国を後にすることにした。
もしかしたらエリザさんはあのジジイが好きだったのかも知れない。
まあそこは僕の勝手な妄想だけど。
師匠はヒーラーの娘の最後の言葉を今も守っているのだろうか?
だからあんな強引に事を進めようとしているのだろうか?
そんなことを漠然と考えているとエリザさんが言った。
「さあ、始めるよ。」
僕の思考は一気に現実へと引き戻された。
そして地獄が始まろうとしていた。
無双パーティーも気を抜くと脆いらしい。
希望の家だ。
懐かしい場所ではあったけれど、けっこう世代交代が進んでいた。
元年長組は既にここを去っている。
元年少組は町に仕事に出ているので、僕が到着した時間には会うことが無かった。
そしてエリザさんと会う。
あの儀式をしてもらうためだ。
勇者の血を引いている以上、僕も神の残滓を使えるはずだ。
以前に目撃した魔術師オルドウルの、矢を一発食らって即刻ノックアウトはトラウマ級だ。
あれは防がなければならない。
ちなみにサリアとブリューデンは町を観光中だ。
ド田舎なので面白いものは何も無いけれど、人間の姿で歩き回れるようになったドラゴンにとっては違うのかも知れない。
帰郷した僕を見るエリザさん。
「ようやく来たね。」
僕を待っていたらしい。
そもそもこの人、最初から僕の正体に気がついていたのかも知れない。
師匠以上に考えていることが読めない。
「もしかしたら死んじまうかも知れないから、その前に昔話でもしておこうかね。」
突然そんなことを言い出した。
いや、死なないから。
死なないよね?
もしかしてエリザさん、自分が天寿を全うして死んじゃうかも知れないって言っているのかな?
そうだよね?
そしてエリザさんは昔に何があったのかを教えてくれた。
あのジジイの話らしいのだが、当然師匠のことだろう。
僕はエリザさんの話を聞くことにした。
エリザさんを含め、あのジジイ、ヒーラーの娘とタンクの男を含む四人で冒険したそうだ。
あのジジイはヒーラーの娘が好きで、何度もアタックしていたらしい。
しかし真面目な性格の彼女は、何度も丁寧にお断りしたらしい。
師匠が少しかわいそうになった。
エリザさんの話には何故か個人名が一切出てこない。
みんな才能のある冒険者達で、色々なところで大活躍したようだ。
次々に難しいクエストを達成する四人。
無敵に近かった彼らは、ついに誰もが踏破できなかった古代遺跡に挑戦することにしたのだ。
僕と違って攻略情報無しの真っ正面からの挑戦だ。
人間離れした能力で神の仕掛けた様々な罠(セキュリティ)をかいくぐり、ついに情報端末室へと到達した。
そして四人は遙か昔の真実を知る。
特にヒーラーの娘は真実を知ると大きなショックを受けた。
自分の信仰していた神が、人間にとっては邪心だったからだ。
それぞれが複雑な思いを抱えながら、出口へ向かった。
その時、最強を欲しいままにした彼らではあったが、完全に気が抜けていた。
意気消沈していたヒーラーの娘が罠にかかってしまう。
タンク役だった男が助けに入るが、力が及ぶようなものでは無かった。
そこへ突入しようとするあのジジイを、エリザさんは糸で雁字搦(がんじがら)めにして止めたという。
救えるような状況では無かったらしい。
そんな中、ヒーラーの娘が残した最後の言葉は、「笑顔で、みんなを助けてあげて」だったらしい。
みんなというのが誰のことなのかは分からない。
それをあのジジイは人間を助けることだと解釈したようだ。
古代遺跡から生還したあのジジイは、何故がいつも笑うようになった。
そして王国の中枢に入り、権力を手にするようになる。
エリザさんはそれを何年も見守っていたが、ついには限界を悟り王国を後にすることにした。
もしかしたらエリザさんはあのジジイが好きだったのかも知れない。
まあそこは僕の勝手な妄想だけど。
師匠はヒーラーの娘の最後の言葉を今も守っているのだろうか?
だからあんな強引に事を進めようとしているのだろうか?
そんなことを漠然と考えているとエリザさんが言った。
「さあ、始めるよ。」
僕の思考は一気に現実へと引き戻された。
そして地獄が始まろうとしていた。
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