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5章 希望の家と集う仲間

135 かみ合わない神の遺物

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 サリアの精霊魔法によってリプリアは体力をかなり回復したはずだ。
 しかしまだ顔色が青かった。

「リプリア、話は出来る?」

「大丈夫です、オキス様。」

 僕はリプリアに道中で何があったのか聞いた。
 リプリアは直前までこの地域に潜伏している魔族達の所にいたらしい。
 そしてそこにクルセイダーズの急襲を受けたのだ。
 こっちにもいたのか?
 彼らは確実におかしいとリプリアは言う。

 まず装備がおかしい。
 武器や防具が人間の技術を超えているというのだ。
 僕のような科学チートではなく、こちらの世界の上位互換だ。
 武器は残滓の力を増幅し、凄まじい攻撃力を発揮したという。
 カイデウスさんが持っているような上位レベルの武器でも、残滓を効果的に纏わせる程度の効果だ。
 防具の方は魔法を抑え込んで、力の発揮を妨害する装備だという。
 一般的に最上位の装備でも、攻撃を受けたときに魔法の力を軽減する程度だ。

 そして人間がおかしい。
 動きが素人臭いのに、大隊規模で揃いも揃って神の残滓の能力者だという。
 フェイベル王国に師団規模の軍勢を派遣している上に、教会が一体どこからそんな戦力を持ってきたのだろう?
 ブリデイン王国の正規軍でさえ、残滓使いはそれほど多くはない。

 もはやクルセイダーズの件は何から何までおかしい。
 そもそも教会は神魔砲に反対していたはずなのに、現在は師匠と協力関係にある状態だ。
 リーフの件も含めて、おかしくないところが何一つ無い。
 一体何なんだ?

 リプリアの潜伏先の魔族達は、子飼いにしていた魔物を含め壊滅した。
 彼女は逃げるので精一杯だったものの、追っ手が連携が無い素人臭い動きだったため難を逃れたらしい。

「クルセイダーズ、もしかして素人集団なのかな。」

 話を来た僕はそう推理した。

「神の残滓を使う奴が素人って事は無いだろう。」

 話を聞いたカイデウスさんが僕に突っ込む。

「いや、あり得ますよ。
 エリザさんみたいな人がいれば。」

「・・・アレか。
 俺はアレを受ける前から残滓使いだったからな。
 ブリデイン王国にいたとき他人にしているのを見ただけだ。」

 やっぱりカイデウスさんも知っていたのか。
 エリザさんは神の残滓を強制的に使用可能にする事が出来る。

「もしかしてエリザさんのアレって、神の遺物なんですか?」

 僕はカイデウスさんに聞く。

「いや、分からん。
 だがたぶん戦闘用に使っている糸とは別のやつだ。」

「パメラは何か知ってる?」

 糸の使い方を継承しているのはパメラだけだ。

「私も分からないわ。
 どうやってやるかもさっぱり。
 私が真似しても、攻撃にしかならないわよ。」

 エリザさんの強制的に神の残滓を使えるようにする能力。
 あれが神の遺物による機能だとすると、同じような物があってもおかしくはない。

「こんなことなら古代遺跡の遺物のカタログをチェックしておくんだった。
 どんなバックドアが仕込まれているか分からないから、自分では極力頼らないようにしようと思ってあえて確認しなかったんだけど。」

 毎度抜けてるなあ、僕は。
 とにかくは今ある情報でクルセイダーズについて推理することにした。








 素人集団無双らしい。
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