幼馴染は人気グラドル

杏仁豆腐

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「あら。今まで通りのお仕事だったらいいでしょ? 普通のグラビア撮影だったら問題ないって貴女私にそう言って出てったのよ。覚えてないわけないでしょ?」
「それは……」


愛紀が押されてる。
やっぱ本当は仕事してーんじゃねーか。
この社長に見透かされてっぞ。こんな愛紀見た事ねーわ。
やれやれ~。
どんどん追い詰めてやれ~。


「で……大塚さん。どうなんですか? うちに入って仕事、して貰えるのかしら」
「あ……えーっと……今の会社を辞めるってことは出来るのか……いきなり辞めれなと思いますが」
「貴方の会社出版社だったわよね。たしか……ミドリ書房……だったかしら」


おい。
何故俺の仕事先の事を知っている? 
俺の事調べらがったな。こんな短時間に。
どんだけすげー人なんだ。
この人。


「あはは……そう、ですけど」
「あの会社、私の事務所と取引があってね。社長さん、私の知り合いなの。だからもうこの話は伝えてあってね。どうぞどうぞ、ですって」


まじかぁ~!! 
俺って簡単に売られる存在だったのかぁ~。
ま、仕方がないよな。
勤めて2年目だが営業成績悪すぎだったし。
俺が居なくても会社は回っていくんだろうし。
あ、そう言えば給料今の二倍出すって言ってたな。
仕方ない。
背に腹は代えられぬっ!



「そこまで話が進んでいるのでしたら、仕方ないです、ね」
「ちょ、ちょっと拓ぅっ! 私、アイドルやらないって言ってんじゃんっ! 嫌よ。私」
「愛紀。お前はやれば出来る子だろ。そろそろ充電期間も終わったことだ。復帰しなさい」
「拓のばかぁ~!! 簡単に陥落されてんじゃないわよぉ~!! もぉ~、ばかばかばかぁ」
「話は着いたわね。それじゃ、今日の所はこれくらいにしましょう。また明日正式な手続きをしましょう。今日は春日部さんに送って貰って。あ、大塚さん。会社には私からも連絡入れておきます」
「はい……宜しくお願いします」
「むぅ~……」


膨れてんじゃねーよ。
しかたねーだろ。
もう俺たちは最初っからハメられたんだって。
この社長さんにな。
しっかし、美人で頭良くって、先回りがうまい。
この社長、やり手だな……。




俺と愛紀は事務所を出て春日部さんに車でアパートに送って貰った。
帰りの車内で愛紀はむくれた状態のまま一言も発することはなかった。
俺も何も言わず後部座席に座って夜の景色を眺めていた。な
んだか知らんが俺は芸能事務所に再就職する羽目になってしまった。


「拓のばか。あの社長、ホントムカつくぅ~」
「まだ言ってのか。仕方ねぇだろ。あんだけ用意周到に事が進んじゃってんだからよぉ~。でも俺に芸能の仕事なんて出来っかなぁ~」
「なぁにぃ。もう事務所スタッフ気取り? 拓は私専属の付き人なのよ。こうなったらいっぱいお世話させてやるんだらかっ!」


愛紀はそう言って布団の中に頭を突っ込んだまま寝てしまった。
ああ、何か知らんが俺巻き込まれたよな。
コレいいんか? 
はぁ~。
明日会社に行って辞表出すんだよな~。


気がおもっ。

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