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第42話 大切な宝物~もう一つの物語【佳乃side】~
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私には3つ下の弟が居る。彼は私の事が好き。私も彼の事が好き。相思相愛な関係。そんな二人にとって大切な宝物がある。彼はそのことを覚えてはいない。恐らく記憶から消去されてしまったのだろう。それは仕方がない事だから…これは私の心に留めておくことにする。
―――それは今からかなり時間を遡ること私小学6年、彼小学3年の夏休みの事だった。
「真ちゃん、今日はどこ行きたい?」
「お姉ちゃんが行きたいとこでいい~」
可愛い弟。私は彼の手を繋ぎ近くの公園に向かった。後ではお母さんが来てくれるって言ってたし。大丈夫。私が彼を守るもの。
彼と公園で遊んでいると一匹の犬を発見! そして彼に向かって……その後の事は私もあまり覚えてはいない。彼は大した怪我をしたわけではなかったが、病院の医者が言うには一部の怖い体験が彼の記憶から消されているらしいとのことだった。
―――それからまた時を戻す。
私がそのことを知ったのは暫く経ってから、母親から弟の事について話をしてくれた。
「真治の昔の記憶が消えてる可能性があるってことなの。だからと言って生活に支障はないわ。ただ、思い出せないことがあるっていう事をお姉ちゃんである佳乃には伝えておくわね」
「分かった…それで真ちゃんは今何処?」
「ああ、今日はお友達の所へ行くって、出てったわ」
「そう……私、真ちゃん迎えに行く」
「佳乃。真治の居場所分かるの?」
「うん……分かるよ。じゃ、行ってくるね」
私はそう言って玄関を飛び出し携帯を握りしめ画面の地図が指し示す場所へ向かった。駅前のゲームセンターでその赤い矢印は止まったまま。
「ここに居るのね……真ちゃん」
私は携帯をポケットにしまいゆっくりと店の入り口の自動ドアをすり抜けた。薄暗い店内には男子学生や女子高生、それに一般のお客さんで盛り上がっていた。
音が五月蠅くて耳を塞ぎたい気分だった。私は適当に歩き回り弟を探した。店内の奥にある景品を取るコーナー、そこに彼が知らない女と二人で遊んでいるのが目に入った。
「誰……あの女……」
私はゆっくり近づいて暫く彼等を観察することにした。私の知らない女を彼が楽しそうに笑いながら話しかけている。本当は今すぐにでも飛び込んでやりたい気分だった。でも、ここは辛抱して観察するべし。そして徐にポケットから携帯を取り出しカメラモードにセット。携帯を彼等に向けて中央のボタンを押す
『カシャっ』
携帯から放たれた機械音は店内の騒々しい音でかき消されている。私はそれから彼らの写真を撮り捲った。機械にボタンを押す彼とその横でべったりくっついてアピール女を…。
「そんなにくっついたらダメっ」
小さな声で口から洩れる本音と戦いながらぐっと堪えた。取れた景品を取り出し彼が女に縫いぐるみを渡していた。喜ぶ女を優しそうな表情で見つめる彼に私の怒りがマックスになった。
その後、彼等はコインゲームを愉しんでいた。私は見つからないように遠くで様子を伺う。一番いい場面で登場するために。彼らがそろそろ帰りそうな様子で店の入り口に向かって歩き出した。私は隠れていた場所からダッシュで店内を飛び出し店の真正面にあるビルの陰に隠れた。
「ここで待機して…入口から出てきた真ちゃんに問い詰めるんだ。私の真ちゃんを奪ったあの女に復讐してあげるんだから。真ちゃんは渡さない……誰にも渡さないよ。真ちゃんは私のものなの」
不敵な笑みを浮かべながらじっと耐え忍ぶ私。それから5分も経たないうちに彼らが店から出てきた。私は店の自動ドアから彼らが離れた瞬間を狙って後ろにこっそり付けて人気のない場所に来た時に声を掛けた。
「あら、真ちゃん? どうしたの、こんなところで…」
「え……? お、お姉ちゃん!?」
驚く彼と彼の傍で不思議そうに首をかしげる女。私はあたかも偶然ここであったかのように装い話を続けた。
「真ちゃん、だぁれぇ? その子……」
慌てた様子の彼を見ると心が躍る。『はぁ~困った真ちゃんも最高に可愛いっ!!』私心の叫びが高々と鳴り響く。
「あ、あのね…お姉ちゃん。この人は……あの……」
言葉に困る彼を横目で見ていた女がゆっくりと口を開く。
「あのぉ~私嶋君とお礼がしたくって、ちょっと遊んでたんです」
はぁ~? お礼? 何なの、この女。
「お礼? お礼ってなにかなぁ~。ねぇ、真ちゃぁん?」
私の怒りがマックスに達した。そのことを察した彼は余計慌ててその女に私の事を説明した後、私にこのことについての説明を始めた。
彼が言うには、その女が男どもに絡まれてそれを見かねた『優しい私の大好きな弟』が偶々助けてやったらしい。それに勘違いした女が色気を使って『私の可愛い弟』を誘惑しているそうだ。
……私にはそう聞こえた。
「それで、違うんだってば、お姉ちゃん。この人は僕の一つ上の先輩で、木浦さん。分かる? 今日はさっき言ったようにお礼出来ただけだって」
「うん。それはさっき聞いたわ。それでどうして、私の可愛い真ちゃんがこの人と遊んでるのかなってきになるんだけどなぁ~」
私はそう言って、ポケットから携帯を取り出して写真フォルダ―からさっき取ったばかりの2人の写真を彼の前に突き出した。それを見た彼はため息をついて横に居る女にここで別れると言い残し私の手首を取ってあの女と離れた。
彼は黙ったまま歩き私は手を握られて駅前の商店街に出た。
「真ちゃん……どうしたの。ちょっと……ねぇってばぁっ」
「お姉ちゃん……どうして僕の居場所が分かった?」
ぎくっ……言えない。言える訳ない。前にこそっと彼の部屋に忍び込んで携帯のGPSを設定して自分の携帯でいつでもどこでもチェックしているってことは絶対言えないぃぃ~!
「た、偶々だよぉ~」
無理な言い訳だ…馬鹿だ…私ぃ~!
「お姉ちゃん…まさか…G―」
「あああ!! 聞きたくなーーい!! 真ちゃんがわるんだもーん!! 私はわるくなーい!!」
「はぁ……お姉ちゃん。もういいよ。それより帰ろ」
「うんっ!! 真ちゃんだーい好きっ!」
私は彼の腕にしがみ付くようにして帰路を辿った。勿論、私の豊満なおっぱいを押し当てながら……きゃんっ!!
――――私の真ちゃんは絶対に誰にも渡さない。これからもずっと私の大切な宝物。そして大切な私の愛する彼なんだからっ! 絶対結ばれてやるんだから! この私の愛で姉弟の垣根なんか軽く超えてやるんだいっ!!
……これは佳乃の妄想です。でも本気です(はーと)っ!
―――それは今からかなり時間を遡ること私小学6年、彼小学3年の夏休みの事だった。
「真ちゃん、今日はどこ行きたい?」
「お姉ちゃんが行きたいとこでいい~」
可愛い弟。私は彼の手を繋ぎ近くの公園に向かった。後ではお母さんが来てくれるって言ってたし。大丈夫。私が彼を守るもの。
彼と公園で遊んでいると一匹の犬を発見! そして彼に向かって……その後の事は私もあまり覚えてはいない。彼は大した怪我をしたわけではなかったが、病院の医者が言うには一部の怖い体験が彼の記憶から消されているらしいとのことだった。
―――それからまた時を戻す。
私がそのことを知ったのは暫く経ってから、母親から弟の事について話をしてくれた。
「真治の昔の記憶が消えてる可能性があるってことなの。だからと言って生活に支障はないわ。ただ、思い出せないことがあるっていう事をお姉ちゃんである佳乃には伝えておくわね」
「分かった…それで真ちゃんは今何処?」
「ああ、今日はお友達の所へ行くって、出てったわ」
「そう……私、真ちゃん迎えに行く」
「佳乃。真治の居場所分かるの?」
「うん……分かるよ。じゃ、行ってくるね」
私はそう言って玄関を飛び出し携帯を握りしめ画面の地図が指し示す場所へ向かった。駅前のゲームセンターでその赤い矢印は止まったまま。
「ここに居るのね……真ちゃん」
私は携帯をポケットにしまいゆっくりと店の入り口の自動ドアをすり抜けた。薄暗い店内には男子学生や女子高生、それに一般のお客さんで盛り上がっていた。
音が五月蠅くて耳を塞ぎたい気分だった。私は適当に歩き回り弟を探した。店内の奥にある景品を取るコーナー、そこに彼が知らない女と二人で遊んでいるのが目に入った。
「誰……あの女……」
私はゆっくり近づいて暫く彼等を観察することにした。私の知らない女を彼が楽しそうに笑いながら話しかけている。本当は今すぐにでも飛び込んでやりたい気分だった。でも、ここは辛抱して観察するべし。そして徐にポケットから携帯を取り出しカメラモードにセット。携帯を彼等に向けて中央のボタンを押す
『カシャっ』
携帯から放たれた機械音は店内の騒々しい音でかき消されている。私はそれから彼らの写真を撮り捲った。機械にボタンを押す彼とその横でべったりくっついてアピール女を…。
「そんなにくっついたらダメっ」
小さな声で口から洩れる本音と戦いながらぐっと堪えた。取れた景品を取り出し彼が女に縫いぐるみを渡していた。喜ぶ女を優しそうな表情で見つめる彼に私の怒りがマックスになった。
その後、彼等はコインゲームを愉しんでいた。私は見つからないように遠くで様子を伺う。一番いい場面で登場するために。彼らがそろそろ帰りそうな様子で店の入り口に向かって歩き出した。私は隠れていた場所からダッシュで店内を飛び出し店の真正面にあるビルの陰に隠れた。
「ここで待機して…入口から出てきた真ちゃんに問い詰めるんだ。私の真ちゃんを奪ったあの女に復讐してあげるんだから。真ちゃんは渡さない……誰にも渡さないよ。真ちゃんは私のものなの」
不敵な笑みを浮かべながらじっと耐え忍ぶ私。それから5分も経たないうちに彼らが店から出てきた。私は店の自動ドアから彼らが離れた瞬間を狙って後ろにこっそり付けて人気のない場所に来た時に声を掛けた。
「あら、真ちゃん? どうしたの、こんなところで…」
「え……? お、お姉ちゃん!?」
驚く彼と彼の傍で不思議そうに首をかしげる女。私はあたかも偶然ここであったかのように装い話を続けた。
「真ちゃん、だぁれぇ? その子……」
慌てた様子の彼を見ると心が躍る。『はぁ~困った真ちゃんも最高に可愛いっ!!』私心の叫びが高々と鳴り響く。
「あ、あのね…お姉ちゃん。この人は……あの……」
言葉に困る彼を横目で見ていた女がゆっくりと口を開く。
「あのぉ~私嶋君とお礼がしたくって、ちょっと遊んでたんです」
はぁ~? お礼? 何なの、この女。
「お礼? お礼ってなにかなぁ~。ねぇ、真ちゃぁん?」
私の怒りがマックスに達した。そのことを察した彼は余計慌ててその女に私の事を説明した後、私にこのことについての説明を始めた。
彼が言うには、その女が男どもに絡まれてそれを見かねた『優しい私の大好きな弟』が偶々助けてやったらしい。それに勘違いした女が色気を使って『私の可愛い弟』を誘惑しているそうだ。
……私にはそう聞こえた。
「それで、違うんだってば、お姉ちゃん。この人は僕の一つ上の先輩で、木浦さん。分かる? 今日はさっき言ったようにお礼出来ただけだって」
「うん。それはさっき聞いたわ。それでどうして、私の可愛い真ちゃんがこの人と遊んでるのかなってきになるんだけどなぁ~」
私はそう言って、ポケットから携帯を取り出して写真フォルダ―からさっき取ったばかりの2人の写真を彼の前に突き出した。それを見た彼はため息をついて横に居る女にここで別れると言い残し私の手首を取ってあの女と離れた。
彼は黙ったまま歩き私は手を握られて駅前の商店街に出た。
「真ちゃん……どうしたの。ちょっと……ねぇってばぁっ」
「お姉ちゃん……どうして僕の居場所が分かった?」
ぎくっ……言えない。言える訳ない。前にこそっと彼の部屋に忍び込んで携帯のGPSを設定して自分の携帯でいつでもどこでもチェックしているってことは絶対言えないぃぃ~!
「た、偶々だよぉ~」
無理な言い訳だ…馬鹿だ…私ぃ~!
「お姉ちゃん…まさか…G―」
「あああ!! 聞きたくなーーい!! 真ちゃんがわるんだもーん!! 私はわるくなーい!!」
「はぁ……お姉ちゃん。もういいよ。それより帰ろ」
「うんっ!! 真ちゃんだーい好きっ!」
私は彼の腕にしがみ付くようにして帰路を辿った。勿論、私の豊満なおっぱいを押し当てながら……きゃんっ!!
――――私の真ちゃんは絶対に誰にも渡さない。これからもずっと私の大切な宝物。そして大切な私の愛する彼なんだからっ! 絶対結ばれてやるんだから! この私の愛で姉弟の垣根なんか軽く超えてやるんだいっ!!
……これは佳乃の妄想です。でも本気です(はーと)っ!
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