上 下
9 / 28

9 修羅場

しおりを挟む
後ろから大きな声で男の人の声が響き渡った。
私を囲んでいた令嬢達が振り返るとそこにいたのはダリウスだった。
ダリウスはゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
令嬢たちはあわれた様子でヒソヒソ話をし始めた。


「お前たち、此処で何をしていると聞いている。何故マリエットを苛めているのだ!?」


私の前に立ち私を庇うかのような恰好でマリア―ヌ令嬢とその取り巻き達を睨みつけていた。
マリア―ヌ嬢は口を尖らせ悔しそうな表情だった。
誰もその問いに答えることはなくその場を立ち去って行った。
私は立ち上がりスカートの裾を持ち上げて埃を落とした。


「大丈夫か? マリエット」
「あ、有難う…御座います。王太子様」
「その『王太子様』というのは止めてくれ。昔好の仲ではないか。ダリウスで構わない。それよりあれは何だ? いったい何があったのだ?」


あんたの所為よ。
とは言えない。
乙女ゲームで言うところの主人公を助ける貴公子と言ったところか。
私はふ~っとため息をついて彼女達とはお話をしていただけだと告げた。
しかし、そんな言い訳は通用しなかった。
執拗に私に詰め寄るダリウス。
鬱陶しいと思ってしまう私だったがあの状況で助けてくれたことには感謝している。


「本当に大丈夫だから。本当に有難う」
「まさか、あいつらに苛められていたのではないか? もしそれが本当だとしたら……」
「違うのっ! ただ本当にお話をしていただけなの。これは女同士の事だから。男の人には関係のない事よ。ダリウス」
「そ、そうなのか……ならば良いのだが。それよりマリエットあの話なのだが」


ああ、またその話。
私は馬車の待つ場所に向かって歩き出した。
ダリウスも私についてくる。
馬車の前について私は彼に話をした。


「ダリウスとの婚約は出来ないわ。貴女にはマリア―ヌ様との婚約があるでしょ? 私と貴方とでは釣り合わないと思うの。それに私には……」
「私には、何だ? そんなことで諦められるわけがないだろう? 私には責任を取る必要があるのだ。どうしても其方との婚約を果たしたい。私は決して諦めたりはしない」


諦めてよ……。
私には他に好きな人が居るんだから。
そう言ってしまおうと思った時、私たちの前にアドルフとカミーユがやって来た。


「二人とも何を話しているんだ? ダリウス、マリエット」


運悪く、二人が私たちの所へやって来てしまった。
私は何で今のタイミングでこんなことになるのよ、と心の中で呟いた。
ダリウスはアドルフに話をしだした。


「今大事は話をしている。用事が無いのなら席を外してくれないか、アドリフ、カミーユ」
「大事な話? 私にはマリエットが困っているように見えるのだがな。なぁ、カミーユ」
「そうだね。いったい何があったのか、気になるところだよ」


イケメン達三人が私の目の前で目をバチバチさせて睨み合っている。
そこに沢山の生徒たちが見物していることは言うまでもない。
いったいどうすればいいの、この修羅場っ!!
しおりを挟む

処理中です...