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27 二人の考え

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「其方達にも色々あろうとは思うがこれは決定事項な事なのだ。今更またマリア―ヌのように破棄するなどと言わないことだ」
「はい。それは重々承知しております」
「それだけわかればよい。下がりなさい」
「はい」

私は一礼するとソファから立ち上がり扉の前で踵を返しまた一礼した後部屋を後にした。
部屋に戻るとソファに腰かけ一息ついた。
マリエットにどういえばいいのだろう。
パーティーの事もそうだが国王が心配していることを伝えるべきなのだろうか。
悩んでいると侍女が扉をノックした。
私は返事をして部屋の扉を開けると湯浴みの準備が出来たと報告に来た。
湯に浸かって色々整理するのもいいかもしれない。
私は湯浴みの準備をして部屋を後にした。





*****

「マリエット。貴女王太子との婚約の事、決めたのね」

お茶を飲んでいた私にそう言ったのはクリシア。
私はコップを置くと小さく頷いた。
別に隠していた訳ではなし、既に国民に公になっていることだから何も問題ない。
するとクリシアは続けて話をした。


「あれだけ嫌がっていたのにどうしたの?」


確かに嫌がっていたというか、マリア―ヌ様の事があったから了承しないと言っただけなのだが、クリシア達にはそう思われてしまっていると気が付いた。
私は口を開いて話し出した。


「確かに……でも、今は両親にも言われたの事だけれど両家が決めたことに従うつもりなの。拒む理由もなくなったわけだし……。」


それを訊いていたリエットが口を開く。


「それはマリア―ヌ様の事ですか?」
「ええ。そうよ。リエット」
「マリア―ヌ様はご納得されたのですね。それにしてもわたくしは少し王太子の事がいい印象を持ちません。一旦婚約した相手に対して失礼ではないですか……」

それはそうだ、と私も思った。
王太子の立ち振る舞いを見ただけではリエットがそう思うのも無理はない。
しかしそれは誤解なのだと私は言いたかった。
王太子は何も自分の都合だけで今回の事を決めたのではない。
そこには国王の思惑があったからだ。
お父様もお母様もそれが無ければ今回の話を了承する訳がない。
しかしそれを言ったところでこの二人には理解してもらえるだろうか。
一抹の不安を抱えた。
私が話を躊躇しているのを見たクリシアが再び話を始めた。


「リエット。それは二人の問題よ。確かにマリア―ヌさんの事は残念だと私も思うわ。けれどそれと今回の婚約発表の事は多分別な話だと思うの。マリエットもそれは分かっているから今回了承したのでしょう?」


そう言って私の顔を見つめたクリシア。
私は二人を交互に見た後口を開いた。


「二人とも心配してくれて有難う。今回の事は本当にもう大丈夫なん事なの。私も納得しているわ」

私はそう言うと再びカップを手にして紅茶を啜った。
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