上 下
7 / 21

夫の助言②

しおりを挟む
夕飯もお風呂も終わり、真美は今晩もまた推し活タイムだ。
いつものように配信を見ている。
ああ、推し嬉しそうだな、うわー今のは悔しいだろうな、なんて推しの気持ちを思いながら配信を眺めている。

推し気持ち。

ファンがいる推しの気持ち。

またいつもの疑問だ。

そういえば、紀典が言ってたな。歌ってみた動画やってみればって。いやいや、そんな甘い世界じゃないから。ちょっとカラオケで歌えるぐらいの人がやっても箸にも棒にもかからない世界だから。

なんて、やったことないから知らないけど。

紀典は真美があまりお金をかけずにやっている趣味のことは口出しをしてきたりしない。宝くじよりも当たる可能性が高いと思うとも言っていたが、別にそれも期待はしていないだろう。お金を稼いでほしくて言ってきたわけではないのだ。ゲームをするぐらい暇なのだったら、暇つぶしになるようなことを提案してみよう、そんな軽い気持ちだろう。

真美はゲームが好きなのだ。
時間を見つけてゲームをしているのだ。
そして、同じゲームをしているからこその推しに感じる親近感。それがなくなるのは嫌だ。

でも、もしかして、これは!

そうか。推しと同じ方法でファンをつけなくても、違う何かで私のファンになってくれる人がいれば。わかるぞ。ファンがいるってどんな感じなのか。

全く興味のなかった歌ってみた動画。

ちょっとやってみてもいいかな。
気持ちが傾き始めた。
しおりを挟む

処理中です...