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女子高生 三枝文華
自殺未遂
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家に帰るなり私は眩暈と吐き気を覚え反射的に家を飛び出した。
あの男が家に来ていた。母の不倫相手が。
父が海外に居るのをいい事に母は不倫相手を家に連れ込んでいる。
私に居場所なんて無い。
私こそこの世で一番死ぬべき人間なのだと思う。
そんなことを考えながらあても無く歩き続け、ふと、歩道橋から道路を見下ろした。暗闇の中を沢山の車が走っている。
ここから飛び降りたら死ねるかな……?
そんなことを虚ろに考えながら私が柵に足を掛けようとした時、グイッと何かに引っ張られ私はそのまま後ろに倒れ尻餅をついた。
「あ、あの……」
私の目の前に差し伸べられた手。顔を上げると中学生くらいの女の子が心配そうに私を見ていた。どうやらこの子が私を引っ張ったらしい。
「だ…大丈夫…ですか?」
私は彼女の手を借りずに無言で立ち上がった。
ああ、このパターンね。ニュースでよく見るやつだわ。きっとこの子はこれから通報でもして私をダシに表彰されるつもりなのだ。『歩道橋から飛び降りようとした女子高生を救ったお手柄女子中学生』的な寒い見出しのニュースで人助けした自分に酔いしれながら笑顔で感謝状を受け取るこの子の姿が腐ったマスメディアに拡散される訳ね。ふざけないでよ。私の人生に責任なんて取れない癖に。
私は彼女に礼など言わず無言で踵を返した。
しかしその時、
「ごっ…ごめんなさいっ……!」
彼女の予想外の言葉に私は思わず振り返った。
「お姉さん…きっとすっごく勇気出して飛び降りようとしてたんですよね……それなのに私…衝動的に止めちゃって……。私、人の自殺止める奴なんか大っ嫌いなんです!それで賞賛されるなんてマジで気持ち悪い!そもそも自殺妨害なんて止める側のエゴでしかないのに何でそれを表彰するのか意味わかんないし…本当世の中腐ってる!」
「えっと…あの……」
まさか自殺を止めた事を謝られるとは思っていなかった私はどう返せばいいか分からず戸惑う。そんな私に構わず彼女は続けた。
「ここまで分かってるのに何で止めちゃったんだろう…これじゃあ私が嫌いな自殺妨害人間と同じだ……。お姉さん、本当に本っ当にすみませんでした!」
頭を深く下げる彼女に私は混乱する。彼女は私を利用して表彰されようなんて考えていなかった。それどころかそういった人間を嫌っていると言う。私は彼女を悪く思ってしまったことに罪悪感を感じた。
「大丈夫…。顔上げて。ごめんね…こんな人目に付く場所で自殺なんてしようとしたら止められるに決まってるよね…。」
私が謝ると彼女は首を横に振った。
「私…お姉さんの苦しみを消せる力なんてない…それなのに……ごめんなさい……」
泣きそうな顔の彼女。この子はきっと良い家族に囲まれて生きてきたんだろうな…。そんな事をふと思ってしまった。
「私こそこんな場所で死のうとして本当にごめんなさい。誰だって自分の目の前で人が死ぬなんて嫌だよね。自殺を止めるのは悪ではないよ…それを賞賛する風潮が悪いだけ。だからあなたは何も間違ってない。私の立場まで考えてくれてありがとね。」
ーーー
あの後私とその子は途中まで一緒に帰った。偶然家の方向が同じだったのだ。
帰り道で彼女は私に、自分があの場所に居た理由を話してくれた。実は彼女も歩道橋から飛び降りて自殺を図ろうとしていた所、偶然飛び降りる寸前の私を見つけて咄嗟に止めてくれたらしい。
そして、彼女の自殺願望の原因はいじめ。
私は彼女…レイナちゃんをいじめた加害者共を殺す事に決めた。
「それじゃ、レイナちゃん…いじめっ子のテストかプリント盗んできてね。必ず呪い殺してやるから。…この事は他の人には内緒だよ。」
「ありがとう。文華さん!さよなら!」
穢れの無い笑顔…。
この子からこの笑顔を奪って傷付けた鬼畜を私が殺すんだ。
あの男が家に来ていた。母の不倫相手が。
父が海外に居るのをいい事に母は不倫相手を家に連れ込んでいる。
私に居場所なんて無い。
私こそこの世で一番死ぬべき人間なのだと思う。
そんなことを考えながらあても無く歩き続け、ふと、歩道橋から道路を見下ろした。暗闇の中を沢山の車が走っている。
ここから飛び降りたら死ねるかな……?
そんなことを虚ろに考えながら私が柵に足を掛けようとした時、グイッと何かに引っ張られ私はそのまま後ろに倒れ尻餅をついた。
「あ、あの……」
私の目の前に差し伸べられた手。顔を上げると中学生くらいの女の子が心配そうに私を見ていた。どうやらこの子が私を引っ張ったらしい。
「だ…大丈夫…ですか?」
私は彼女の手を借りずに無言で立ち上がった。
ああ、このパターンね。ニュースでよく見るやつだわ。きっとこの子はこれから通報でもして私をダシに表彰されるつもりなのだ。『歩道橋から飛び降りようとした女子高生を救ったお手柄女子中学生』的な寒い見出しのニュースで人助けした自分に酔いしれながら笑顔で感謝状を受け取るこの子の姿が腐ったマスメディアに拡散される訳ね。ふざけないでよ。私の人生に責任なんて取れない癖に。
私は彼女に礼など言わず無言で踵を返した。
しかしその時、
「ごっ…ごめんなさいっ……!」
彼女の予想外の言葉に私は思わず振り返った。
「お姉さん…きっとすっごく勇気出して飛び降りようとしてたんですよね……それなのに私…衝動的に止めちゃって……。私、人の自殺止める奴なんか大っ嫌いなんです!それで賞賛されるなんてマジで気持ち悪い!そもそも自殺妨害なんて止める側のエゴでしかないのに何でそれを表彰するのか意味わかんないし…本当世の中腐ってる!」
「えっと…あの……」
まさか自殺を止めた事を謝られるとは思っていなかった私はどう返せばいいか分からず戸惑う。そんな私に構わず彼女は続けた。
「ここまで分かってるのに何で止めちゃったんだろう…これじゃあ私が嫌いな自殺妨害人間と同じだ……。お姉さん、本当に本っ当にすみませんでした!」
頭を深く下げる彼女に私は混乱する。彼女は私を利用して表彰されようなんて考えていなかった。それどころかそういった人間を嫌っていると言う。私は彼女を悪く思ってしまったことに罪悪感を感じた。
「大丈夫…。顔上げて。ごめんね…こんな人目に付く場所で自殺なんてしようとしたら止められるに決まってるよね…。」
私が謝ると彼女は首を横に振った。
「私…お姉さんの苦しみを消せる力なんてない…それなのに……ごめんなさい……」
泣きそうな顔の彼女。この子はきっと良い家族に囲まれて生きてきたんだろうな…。そんな事をふと思ってしまった。
「私こそこんな場所で死のうとして本当にごめんなさい。誰だって自分の目の前で人が死ぬなんて嫌だよね。自殺を止めるのは悪ではないよ…それを賞賛する風潮が悪いだけ。だからあなたは何も間違ってない。私の立場まで考えてくれてありがとね。」
ーーー
あの後私とその子は途中まで一緒に帰った。偶然家の方向が同じだったのだ。
帰り道で彼女は私に、自分があの場所に居た理由を話してくれた。実は彼女も歩道橋から飛び降りて自殺を図ろうとしていた所、偶然飛び降りる寸前の私を見つけて咄嗟に止めてくれたらしい。
そして、彼女の自殺願望の原因はいじめ。
私は彼女…レイナちゃんをいじめた加害者共を殺す事に決めた。
「それじゃ、レイナちゃん…いじめっ子のテストかプリント盗んできてね。必ず呪い殺してやるから。…この事は他の人には内緒だよ。」
「ありがとう。文華さん!さよなら!」
穢れの無い笑顔…。
この子からこの笑顔を奪って傷付けた鬼畜を私が殺すんだ。
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