死人は口ほどにモノを言う

黒幕横丁

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9話 夢見

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 父さんからの書斎から自分の部屋へ向かう道中、自分なりに推理をしてみる。
 栗林は先輩が私達に相談する内容を知り、逆上でもして先輩に手をかけた?
 もしかして、相談事は関係ないもしれないけれど、私にしては結構いい線をいってるんじゃないかしら。
 さて、明日は警察署へ行って情報収集してやろうかしらね。父さんは大人しくしてなさいって言っていたけど、大人しく待ってなんて居られない。
 どうせなら、私達で解決してあげようかしら?
 そんな事を思って廊下を歩いていると、梨緒の部屋から唸り声が聞こえる。

「まだ、梨緒のやつ起きているのかしら?」

 私が軽くノックをして入ると、部屋は真っ暗で、ベッドでかなり魘されている梨緒の姿が見えた。

「あら、かなり魘されているみたいね」

 無理も無いか、今日一日で沢山のことが起きたのだから。梨緒の脳内が上手く処理しきれていないのかもしれない。
 私が物音を立てないように近づき、そっと梨緒のおでこを撫でようとした時、

「ゆぅちゃん、ごめんな……さい……、僕のせいで……僕のせいで……」

 そう寝言を呟き、一筋の涙が流れる梨緒。

「またあの時の記憶か……」

 私は、ゆっくりと屈み、梨緒の頭を優しく撫でながら囁く。

「私は気にしてないから大丈夫よ。今はゆっくり眠りなさい。朝まで、おやすみ」

 すると、魘された梨緒の呼吸が次第に穏やかになってくる。そして、深い眠りへと入った。

「これで大丈夫ね。ん?」

 暗い部屋に目が慣れたところで、梨緒の机の上に何かが置いてあるのを見つけた私は、そっと机へ近づき、ソレを手に取った。
 よく見たら、今回の事件の概要を梨緒なりにまとめていたものだった。

「こんなものまで書いて、だから夢見が悪くなるのよ」

 持った紙をクシャっと丸めて捨ててしまおうかと考えたが、朝起きたら梨緒が泣いて迫ってきそうな予感がして、元の場所へと紙を戻す。

「梨緒も梨緒なりに考えていると言うわけか……」

 父さんに言われた、『少しずつ、りーくんの自由にさせてあげなさい』という言葉が脳裏をかすめた。
 そんな事を考えながら私は欠伸を漏らす。いけない、そろそろ本当に寝なきゃ。
 私はそっと梨緒の部屋から抜け出す。

「そんなに考え込まなくていいのよ、梨緒。私が貴方を絶対に不幸にさせないから」

 私はそう呟いて、梨緒の部屋から出て行った。



「さぁ、絶好の捜査日和ね!」

 朝、雲ひとつない青空。絶好のお出かけ日和。
 意気揚々と紺に赤色チェックのチュニックワンピにベージュのキュロットパンツでキメた私は、警察署に向かって歩いていく。

「え、警察署に行くの?」

 今、今日の予定を聞かされた梨緒は嫌そうな声をだした。

「行くわよー。進展を聞かなきゃいけないし」

 私は大きな籠バックをブンブンと振り回しながら軽い足取りで歩いていく。

「進展って。今朝、静さん言っていたじゃない。警察の動向を見守りましょうって」
「そんなこと言ってたかなぁ? 私は知らないなぁー」

 私はとぼけた様な声で笑った。
 確かに、朝、父さんは『くれぐれも督くんのお仕事の邪魔をしに行こうだなんて考えちゃダメですよ。警察の動向を見守りましょう』と念を押された。
 しかし、そんな事知ったこっちゃない。

「叔父さんにバレなきゃいいのよ」
「えー、バレ無きゃいいの? そんなに上手くいくのかなぁ……」
「大丈夫だって」

 私は、そう言いながらスマホである画面を梨緒見せる。

「叔父さんは、今聞き込みの真っ最中だから!」

 画面には先輩のマンションの付近の地図に浮かぶ赤い印が一つ表示されていた。

「……まさか、発信機か何かつけたの?」
「ご名答。昨日叔父さんのベルトに忍ばせておいたの」

 昨日、警察署へ取り調べする前にコッソリと叔父さんの背中に回りこんでベルト部分に貼り付けておいたのだ。事件が起こればなかなか家に帰れない。だから、まだズボンに付いたままだと予想したら、ちゃんと発信機は叔父さんの場所を克明に知らせてくれていた。

「さて、叔父さんが帰ってこないうちに仕事をしないとねぇ」

 私が企むような笑みで笑うと、梨緒が若干だが引いたように見えた。

「有加、怖い」
「え、怖く見える? 演技が身に付いたと捉えて、私もそろそろ生身の人間の役でも挑戦しようかしら?」

 私がそういうと、事務所の人に許可取らなきゃダメだよー、梨緒は焦っていた。もちろん、冗談だ。
 梨緒は私が死体役専門しか許されていないという本当の理由を知らない。事務所が余りにも私の演技が下手だから許可をしていないと思っているのだが、実は違う。
 梨緒は一生知らない方がいい話だ。

「さて、そうこうしている内に、着いたわね」

 警察署。受付で、叔父さんではなく、叔父さんの部下の人を呼んでもらう。
 数分後、待合室へ叔父さんの部下の一人である妹尾さんが出てきた。

「すいません、司馬先輩も同期の児島もちょっと聞き込みに出払っていて、代わりに僕が。今日は何の御用でしょうか?」

 目を爛々と輝かせて私達に挨拶をする妹尾さん。これは、すぐにバラしてくれそうな人だわ。

「叔父さんにちょっと昨日の御礼を言いに来たのですが、そうですか。居ないですか……、ちょっと残念です。ちょっと、頼みたいこともあったのに……」

 私がしゅんとした顔をすると。妹尾さんは、

「ぼ、僕でよければ、聞きますが」

 と食い気味に答える。
 かかった。

「えっと、事件のことについてなんですけど、先輩の日記帳か手帳のコピーなんか貰えませんか? お願いします」

 私が両手を合わせて頼み込む姿を梨緒は驚愕しつつ止める。

「ダメだよ。そんな、事件に関連する資料を貰うだなんて……」
「いいですよ。コピーですね」

 妹尾さんはニッコリと承諾する。その状況を目の当たりして梨緒は

「え? どうして?」

 驚きの表情のまま、硬直していた。
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