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拾日目その2
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「思ったんだけどさ、最終日には暴き手って暴露するの?」
ふと湧いた疑問を怜が訊いてくる。
「宣誓として言うんだ。そして、狩り手の名前を言うという流れだ」
「へぇー。じゃあ、やっぱり今日中に推理とかはまとめないと駄目なんだねー」
「そういうことになるな」
「俺は推理なんて専門外だから、弐沙がんばれー」
まるで他人事のように、怜は応援だけをする。
「一応私が暴き手ということにはなっているからな……」
弐沙は考えているようなポーズをとって動きが止まる。
「んー……」
「何か腑に落ちないとかいうのがあるの?」
「いや、どうしても死体の状況で気になっているものがあってだな」
「死体の状況?」
怜は首を傾げた。
「柏木の時だ。アイツだけ、頭部が見つからなくて本当に柏木なのかも確認できていないんだ」
「俺が寝込んでいたときだねー」
弐沙はそうだと返す。
「金上の証言で、着ていた服が柏木のものと分かったからそのままにしていたが、すり返られた可能性だってあるからな」
「もしそうだったら、柏木さんは生きているって事?」
「なんともいえない。しかし、村から恐らく出られない以上どこかで密かに隠れている可能性もある」
すると、いきなり怜がそうだ! と大声を出した。
「いきなりどうした?」
「その柏木さんがどこかに潜んでいる可能性があるのなら、これからガサ入れしようよ!」
「ガサ入れ?」
「そう。まだ民家には死んだ人たちの手荷物が残っているはずだから、それを漁りに行くんだよ。例のホストさんを探すついでに」
「何故?」
「ホストさんの正体とかも分かるかもしれないし」
そう言ってグイグイと引っ張られる弐沙。
「遺留品とかで分かることもあるかもしれないな。そんなに怜が急かすのであるなら行こう」
そう言って二人は外へと出たのだった。
まず向かったのは、五日目に殺された紅葉と7日目に殺された高田が住んでいた民家。
「おっじゃましまーす」
怜は意気揚々と入っていく。もちろん返事が返って来ることはなかった。
部屋はそのままの状態で残されていて、持ち主がまるで直ぐにでも戻ってくるかのように、時が止まったままの荷物が放置されていた。
「漁るか」
一応グローブを手にはめて弐沙は遺留品の物色を始めた。
「とは言っても高田のものは怜の治療をするときに拝借したから大体は知っている」
そういって、高田の鞄から怪しい薬品を取り出していく。すると、その中から手帳を見つけた。
ペラペラと捲ると、神暴き6日目の夜に【杉溝・誘い】という文字が書かれていた。
「そういえば、二人で話し合っていたと言っていたな」
その他には目ぼしい物が無かったので、手帳を鞄へ戻し、次は紅葉の所持品を漁り始める。
鞄の中は財布・携帯くらいしか入っていなかった。
「何も入っていないな」
そう言って携帯の中をチェックする。しかし、暗証番号でロックされているようで中が見えなかった。
「紅葉のほうは特に情報になりそうなものは無いな」
「じゃあ、次いこうか」
「そうだな」
弐沙は紅葉の所持品をきちんと元の位置へと戻し、民家を出る。
その後も、月丘・平越、安住、田力のそれぞれの宿泊地へ向かい、遺留品を漁る。
月丘の鞄には、強力な威力を発揮する爆弾の製造方法や、毒薬の作り方の本という危ないものが、平越の鞄の中に入っていた日記帳には、会社の上司にムチャクシャしてスッキリしたいという独白文が出てきた。
「月丘は本当にこれで反逆行為を行うつもりだったのか」
「それが成功してたら、一大事だったねー」
「平越の方は何やらストレスを溜めていた様だな」
「そのストレスから何か犯罪に手を染めちゃったのかな?」
安住のバッグからは、人間から香水を生成する方法が書かれたレシピが発見された。
「そういえば、安住はオルファクトフィリアと言っていたな」
「オルファクトフィリア?」
「人間の体臭を嗅いで興奮を覚える奴のことだ」
「あー、なるほどね。人間の匂いが好きだから人間から香水を作ろうなんて考えたのかーなるほどなるほど」
田力の鞄には何やら広告のようなものが入っていた。
「『これを身に付ければ貴方にも神のご加護がつく。水晶ペンダント』、明らかに霊感商法の類いの商品だな」
「田力さんプロデュースみたいだねー。こんなものを売りつけて儲けていたんだろうねぇ」
「それで、口の中に入れられていた被害者の言葉があんなに沢山あったのだな」
弐沙は馬鹿馬鹿しいと付け加える。
「ココが最後だねー」
そう言って弐沙達がやってきたのは金上と柏木が泊まっていた民家である。
入ると他の民家と明らかに違う点に気が付いた。
「一度金上の様子を見に来たときは気づかなかったが」
「ないね、柏木さんの荷物」
そう、柏木の荷物だけ忽然と消えているのである。
「村長たちが持って行ったのか、いや、待てよ」
「どうしたの?」
「柏木と思われる死体が発見される前の晩、銃声が聞こえた。柏木は荷物を持って村の出入り口を走りぬけて撃たれたから部屋に残っていないのか」
「でもさ、俺たちで確認したとき出入り口の狙撃にはサイレンサーが使われていてほぼ無音だったんだよ。銃声がするなんておかしいよ?」
怜の指摘に、あ! と弐沙は大きい声が出た。
「何か引っ掛かる部分があったのだが、それだよ怜。なんで今までサイレンサーで無音狙撃をしていたところをその日だけはわざわざ銃声が鳴ったのか。そこに引っ掛かっていたんだ」
頭の中で渦巻いていたものが晴れ、弐沙は内心嬉しそうにしている。
「恐らく誰かにわざと気づかせるつもりだったんだ。柏木が狙撃されて死んだように偽装させる為に」
「ということは、居なくなった柏木が狩り手なの?」
「いや、恐らく柏木ではない。死体の処理方法から、狩り手もしくは守護者は男性と女性のコンビだろう」
「あー、平越さんの死体の損壊具合雑だったもんね」
「それに田力の口を縫った縫い方も綺麗だったからな。しかし、安住の死から死体の処理がガラリと変わっている」
「あ、そういえば」
怜は五日目以降の死体の状況を思い出し納得する。
「それに私はまだ安住が狩り手という可能性を捨て切れていない」
「つまりは……?」
「狩り手は何者かに殺されて、誰かが狩り手を騙って神暴きを続けている可能性がある」
最後の夜。弐沙はなかなか寝付けず窓を見る。
今日はどうやら満月らしい。丸い月が窓からぼんやりと見える。
「明日には全てが明らかになる。神暴きも私の全ても」
そう呟く弐沙の表情はどこか物悲しい。
「あの時からこうなることは分かっていたのだろうか?」
そう呟くが、誰からも答えなんて返ってくるハズもなく、部屋には静寂が広がっていた。
「これで、満足だったのか?」
「……一沙」
ふと湧いた疑問を怜が訊いてくる。
「宣誓として言うんだ。そして、狩り手の名前を言うという流れだ」
「へぇー。じゃあ、やっぱり今日中に推理とかはまとめないと駄目なんだねー」
「そういうことになるな」
「俺は推理なんて専門外だから、弐沙がんばれー」
まるで他人事のように、怜は応援だけをする。
「一応私が暴き手ということにはなっているからな……」
弐沙は考えているようなポーズをとって動きが止まる。
「んー……」
「何か腑に落ちないとかいうのがあるの?」
「いや、どうしても死体の状況で気になっているものがあってだな」
「死体の状況?」
怜は首を傾げた。
「柏木の時だ。アイツだけ、頭部が見つからなくて本当に柏木なのかも確認できていないんだ」
「俺が寝込んでいたときだねー」
弐沙はそうだと返す。
「金上の証言で、着ていた服が柏木のものと分かったからそのままにしていたが、すり返られた可能性だってあるからな」
「もしそうだったら、柏木さんは生きているって事?」
「なんともいえない。しかし、村から恐らく出られない以上どこかで密かに隠れている可能性もある」
すると、いきなり怜がそうだ! と大声を出した。
「いきなりどうした?」
「その柏木さんがどこかに潜んでいる可能性があるのなら、これからガサ入れしようよ!」
「ガサ入れ?」
「そう。まだ民家には死んだ人たちの手荷物が残っているはずだから、それを漁りに行くんだよ。例のホストさんを探すついでに」
「何故?」
「ホストさんの正体とかも分かるかもしれないし」
そう言ってグイグイと引っ張られる弐沙。
「遺留品とかで分かることもあるかもしれないな。そんなに怜が急かすのであるなら行こう」
そう言って二人は外へと出たのだった。
まず向かったのは、五日目に殺された紅葉と7日目に殺された高田が住んでいた民家。
「おっじゃましまーす」
怜は意気揚々と入っていく。もちろん返事が返って来ることはなかった。
部屋はそのままの状態で残されていて、持ち主がまるで直ぐにでも戻ってくるかのように、時が止まったままの荷物が放置されていた。
「漁るか」
一応グローブを手にはめて弐沙は遺留品の物色を始めた。
「とは言っても高田のものは怜の治療をするときに拝借したから大体は知っている」
そういって、高田の鞄から怪しい薬品を取り出していく。すると、その中から手帳を見つけた。
ペラペラと捲ると、神暴き6日目の夜に【杉溝・誘い】という文字が書かれていた。
「そういえば、二人で話し合っていたと言っていたな」
その他には目ぼしい物が無かったので、手帳を鞄へ戻し、次は紅葉の所持品を漁り始める。
鞄の中は財布・携帯くらいしか入っていなかった。
「何も入っていないな」
そう言って携帯の中をチェックする。しかし、暗証番号でロックされているようで中が見えなかった。
「紅葉のほうは特に情報になりそうなものは無いな」
「じゃあ、次いこうか」
「そうだな」
弐沙は紅葉の所持品をきちんと元の位置へと戻し、民家を出る。
その後も、月丘・平越、安住、田力のそれぞれの宿泊地へ向かい、遺留品を漁る。
月丘の鞄には、強力な威力を発揮する爆弾の製造方法や、毒薬の作り方の本という危ないものが、平越の鞄の中に入っていた日記帳には、会社の上司にムチャクシャしてスッキリしたいという独白文が出てきた。
「月丘は本当にこれで反逆行為を行うつもりだったのか」
「それが成功してたら、一大事だったねー」
「平越の方は何やらストレスを溜めていた様だな」
「そのストレスから何か犯罪に手を染めちゃったのかな?」
安住のバッグからは、人間から香水を生成する方法が書かれたレシピが発見された。
「そういえば、安住はオルファクトフィリアと言っていたな」
「オルファクトフィリア?」
「人間の体臭を嗅いで興奮を覚える奴のことだ」
「あー、なるほどね。人間の匂いが好きだから人間から香水を作ろうなんて考えたのかーなるほどなるほど」
田力の鞄には何やら広告のようなものが入っていた。
「『これを身に付ければ貴方にも神のご加護がつく。水晶ペンダント』、明らかに霊感商法の類いの商品だな」
「田力さんプロデュースみたいだねー。こんなものを売りつけて儲けていたんだろうねぇ」
「それで、口の中に入れられていた被害者の言葉があんなに沢山あったのだな」
弐沙は馬鹿馬鹿しいと付け加える。
「ココが最後だねー」
そう言って弐沙達がやってきたのは金上と柏木が泊まっていた民家である。
入ると他の民家と明らかに違う点に気が付いた。
「一度金上の様子を見に来たときは気づかなかったが」
「ないね、柏木さんの荷物」
そう、柏木の荷物だけ忽然と消えているのである。
「村長たちが持って行ったのか、いや、待てよ」
「どうしたの?」
「柏木と思われる死体が発見される前の晩、銃声が聞こえた。柏木は荷物を持って村の出入り口を走りぬけて撃たれたから部屋に残っていないのか」
「でもさ、俺たちで確認したとき出入り口の狙撃にはサイレンサーが使われていてほぼ無音だったんだよ。銃声がするなんておかしいよ?」
怜の指摘に、あ! と弐沙は大きい声が出た。
「何か引っ掛かる部分があったのだが、それだよ怜。なんで今までサイレンサーで無音狙撃をしていたところをその日だけはわざわざ銃声が鳴ったのか。そこに引っ掛かっていたんだ」
頭の中で渦巻いていたものが晴れ、弐沙は内心嬉しそうにしている。
「恐らく誰かにわざと気づかせるつもりだったんだ。柏木が狙撃されて死んだように偽装させる為に」
「ということは、居なくなった柏木が狩り手なの?」
「いや、恐らく柏木ではない。死体の処理方法から、狩り手もしくは守護者は男性と女性のコンビだろう」
「あー、平越さんの死体の損壊具合雑だったもんね」
「それに田力の口を縫った縫い方も綺麗だったからな。しかし、安住の死から死体の処理がガラリと変わっている」
「あ、そういえば」
怜は五日目以降の死体の状況を思い出し納得する。
「それに私はまだ安住が狩り手という可能性を捨て切れていない」
「つまりは……?」
「狩り手は何者かに殺されて、誰かが狩り手を騙って神暴きを続けている可能性がある」
最後の夜。弐沙はなかなか寝付けず窓を見る。
今日はどうやら満月らしい。丸い月が窓からぼんやりと見える。
「明日には全てが明らかになる。神暴きも私の全ても」
そう呟く弐沙の表情はどこか物悲しい。
「あの時からこうなることは分かっていたのだろうか?」
そう呟くが、誰からも答えなんて返ってくるハズもなく、部屋には静寂が広がっていた。
「これで、満足だったのか?」
「……一沙」
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