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最終日その2
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「やはり柏木、お前は生きていたんだな」
推理が真相に変わり、弐沙はニヒルな笑みを浮かべた。
「お前の死体だけは頭部が無く、顔を確認することが出来なかった。しかし、金上が柏木の着ていた服だけで判断した為、そのままになってしまったが、生死が分からなかったのはお前だけだ。恐らく、死体は前日の紅葉のものを再利用したのだろう。背格好は似ていたし、それに首をスパンと切っていたのに、出血がしていなかった」
「フフッ、さすがですね。どうも、自己紹介がまだでしたね。柏木直人は実は偽名ですよ。本当の名前は貴札直仁(きぶたなおひと)と申します。聖神(せいしん)の会の忠実な狗です。以後お見知りおきを」
柏木改め貴札は恭しく一礼をした。
「聖神の会って……?」
「この神暴きのスポンサーだ。金持ちの道楽としてこの神暴きを主催し、多額の金を投じている」
弐沙はこの世の恨みかの如く、貴札を睨む。
「杉溝の言っていた、新たな神というのはお前のことか?」
「半分正解です。“僕”は最初からこの神暴きに関わっていたのです。彼が勝手に勘違いをして私を新たな神と呼んでいたみたいですがね。正確には新たな神になるのは、主人たちであるあの人たちですよ」
「ということは、村長によからぬ事を吹き込んだのもお前か」
貴札はクスリと笑った。
「そうです。村長に神暴きを早めに行うように提案したのも、この“私”、君を殺せば神暴きというお祭り自体がなくなると嘯(うそぶ)いたのも、この“俺”、最高の素材を用意し、神暴きのシナリオを作り出したのも、この“僕”だ」
貴札は楽しそうにまるで歌うかのように話し始める。
“初日、木ノ里加理奈は前回の神暴きの狩り手。ニエという職務を全うし、磔(はりつけ)の刑。
二日目、平越俊克。窃盗の罪にて神暴きに参加。二度と盗ることの無いように、両手を切り取る。
三日目、田力緑。占い師の皮を被った詐欺師。その口で二度と騙される人が出ないように、口を丁寧に縫い合わせる。
四日目、安住香苗。人間の匂いに惑わされ、人で匂いを作り出す調香師であり、狩り手。二度と人を見ることが無いように、両目を無くしておこう。
五日目、紅葉信太。己の欲望に溺れる強姦魔。欲望に溺れないように彼の大事なものを切り落としておこう。
六日目、柏木直人。あぁ、私のことですね。一応仮想の罪は異性を誑かして破滅させたこと。その顔で騙される人が出ないように顔を切り落としておこうという設定で、紅葉信太の遺体を利用させて頂きました。。
七日目、高田太。薬に溺れて狂ってしまったコラムニスト。その薬で永遠に眠っててもらいましょう。
八日目、月丘カズ。国を反逆してでも正義を貫こうとした大学生。彼にはこの国の重みを貫いて息絶えてもらいましょう。
九日目、金上昭次。ひき逃げを両親の権力でもみ消した非道者。彼にはひき逃げで亡くなった人間の苦しみを味わってもらいましょう。
そして、十日目、酒井美安。己の美貌で男達を次々に略奪していった哀れな女優。彼女には物理的にハートを射止められてもらいましょう”
「以上が、この私が作りあげた神暴きのシナリオです。どうです? すばらしいでしょう?」
貴札はそう言って弐沙に笑いかける。
「どこが素晴らしいものか。反吐が出る」
「おやおやお気に召しませんでしたか? 貴方好みに仕立てたと思ったのですが」
「……」
にやりと笑う貴札を弐沙は無言で睨む。
「弐沙好みということは一体どういうことだい?」
怜は貴札に訊ねた。
「おや、貴方とあろう方であっても、彼の真の正体には気づいていなかったのですね。各国で伝説のスパイと謳われている、“ゼロ”」
「貴様、俺の正体も気が付いていたのか」
本当の名前と正体を明かされた怜が貴札に対して態度を豹変させる。
「私達の力は様々なところで及んでいますからね。ゼロ、貴方は最初で最後の任務の失敗により処分されたと噂されていましたが、こんなところに居たのですね。驚きです」
ニコニコと貴札は笑う。
「さて、話の続きですが、弐沙の正体は実に簡単ですよ」
「彼は“一沙様”を“継ぐ者”として不老不死となった、“弐沙”という名を与えられてね」
怜はその事実を知り、弐沙の方を見る。
「あの男のいう事は本当か、弐沙」
「……本当だ」
弐沙は真っ直ぐな目をしてこう言った。
「私は神暴きの“最初の暴き手”として神を暴き、その代償として呪われて神になった」
推理が真相に変わり、弐沙はニヒルな笑みを浮かべた。
「お前の死体だけは頭部が無く、顔を確認することが出来なかった。しかし、金上が柏木の着ていた服だけで判断した為、そのままになってしまったが、生死が分からなかったのはお前だけだ。恐らく、死体は前日の紅葉のものを再利用したのだろう。背格好は似ていたし、それに首をスパンと切っていたのに、出血がしていなかった」
「フフッ、さすがですね。どうも、自己紹介がまだでしたね。柏木直人は実は偽名ですよ。本当の名前は貴札直仁(きぶたなおひと)と申します。聖神(せいしん)の会の忠実な狗です。以後お見知りおきを」
柏木改め貴札は恭しく一礼をした。
「聖神の会って……?」
「この神暴きのスポンサーだ。金持ちの道楽としてこの神暴きを主催し、多額の金を投じている」
弐沙はこの世の恨みかの如く、貴札を睨む。
「杉溝の言っていた、新たな神というのはお前のことか?」
「半分正解です。“僕”は最初からこの神暴きに関わっていたのです。彼が勝手に勘違いをして私を新たな神と呼んでいたみたいですがね。正確には新たな神になるのは、主人たちであるあの人たちですよ」
「ということは、村長によからぬ事を吹き込んだのもお前か」
貴札はクスリと笑った。
「そうです。村長に神暴きを早めに行うように提案したのも、この“私”、君を殺せば神暴きというお祭り自体がなくなると嘯(うそぶ)いたのも、この“俺”、最高の素材を用意し、神暴きのシナリオを作り出したのも、この“僕”だ」
貴札は楽しそうにまるで歌うかのように話し始める。
“初日、木ノ里加理奈は前回の神暴きの狩り手。ニエという職務を全うし、磔(はりつけ)の刑。
二日目、平越俊克。窃盗の罪にて神暴きに参加。二度と盗ることの無いように、両手を切り取る。
三日目、田力緑。占い師の皮を被った詐欺師。その口で二度と騙される人が出ないように、口を丁寧に縫い合わせる。
四日目、安住香苗。人間の匂いに惑わされ、人で匂いを作り出す調香師であり、狩り手。二度と人を見ることが無いように、両目を無くしておこう。
五日目、紅葉信太。己の欲望に溺れる強姦魔。欲望に溺れないように彼の大事なものを切り落としておこう。
六日目、柏木直人。あぁ、私のことですね。一応仮想の罪は異性を誑かして破滅させたこと。その顔で騙される人が出ないように顔を切り落としておこうという設定で、紅葉信太の遺体を利用させて頂きました。。
七日目、高田太。薬に溺れて狂ってしまったコラムニスト。その薬で永遠に眠っててもらいましょう。
八日目、月丘カズ。国を反逆してでも正義を貫こうとした大学生。彼にはこの国の重みを貫いて息絶えてもらいましょう。
九日目、金上昭次。ひき逃げを両親の権力でもみ消した非道者。彼にはひき逃げで亡くなった人間の苦しみを味わってもらいましょう。
そして、十日目、酒井美安。己の美貌で男達を次々に略奪していった哀れな女優。彼女には物理的にハートを射止められてもらいましょう”
「以上が、この私が作りあげた神暴きのシナリオです。どうです? すばらしいでしょう?」
貴札はそう言って弐沙に笑いかける。
「どこが素晴らしいものか。反吐が出る」
「おやおやお気に召しませんでしたか? 貴方好みに仕立てたと思ったのですが」
「……」
にやりと笑う貴札を弐沙は無言で睨む。
「弐沙好みということは一体どういうことだい?」
怜は貴札に訊ねた。
「おや、貴方とあろう方であっても、彼の真の正体には気づいていなかったのですね。各国で伝説のスパイと謳われている、“ゼロ”」
「貴様、俺の正体も気が付いていたのか」
本当の名前と正体を明かされた怜が貴札に対して態度を豹変させる。
「私達の力は様々なところで及んでいますからね。ゼロ、貴方は最初で最後の任務の失敗により処分されたと噂されていましたが、こんなところに居たのですね。驚きです」
ニコニコと貴札は笑う。
「さて、話の続きですが、弐沙の正体は実に簡単ですよ」
「彼は“一沙様”を“継ぐ者”として不老不死となった、“弐沙”という名を与えられてね」
怜はその事実を知り、弐沙の方を見る。
「あの男のいう事は本当か、弐沙」
「……本当だ」
弐沙は真っ直ぐな目をしてこう言った。
「私は神暴きの“最初の暴き手”として神を暴き、その代償として呪われて神になった」
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