神暴き

黒幕横丁

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最終日その5

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 次の日、まだ朝霧が立ち込めるような早朝に荷物を整えて弐沙達は民家を出る。
 村の北の出入り口の前に立ち、民家から拝借した枕を思いっきり投げると。
 それは弧を描いて地面へと落ちた。
「念のためにやってみたけど、居ないみたいだね」
「怜が粗方始末したのがそいつらだったのだろう。新たに増援とかされたら厄介だ、今の内に門をくぐろう」
 弐沙がそういうと怜が無言で頷き、身を潜めるように移動しながら門を出た。
「やっと村から出られたね」
「そうだな。ところで、イサの社がもうちょっと歩いた所にあるが、そこに見せたいものがある」
 そう言って弐沙はその場所へと怜を導いていく。

 社はまるで人力で掘られた山の洞穴というような感じであった。
 中に入ると、冷気が漂っているのかひんやりと冷たい。
 進んでいくと、自然に溶け合っていないプレハブ小屋が現れた。
「ここは?」
「モニタールームだ。ここで参加者の監視をしていた」
 小屋のドアを開けると施錠はされていなかったらしく、ドアは簡単に開いた。
 中へ入ると、一面にモニターが並べられていて、村の監視カメラの様子がリアルタイムに映し出されていた。
「それにしても凄い数だねぇー。プライバシーのへったくれもないや」
「狩り手のミスの一つで存続が危うくなるような祭りだからな。ここで監視して綻びが見つかれば、どんな手を使っても修正するというワケだ」
「おー、こわ」
 怜はそう言って身震いをするようなマネをする。
「そしてコレが連絡用のマイクだ」
 弐沙はモニタールームに取り付けられているマイクを指差した。
「連絡用のマイク? ドコに?」
「まぁ、見ていろ」
 弐沙は慣れたような手つきでマイクのスイッチをオンにする。
「やぁやぁ、聖神の会の紳士淑女の皆様御機嫌よう」
 弐沙がマイクに語りかけると、マイクの横にあったスピーカーから声が発せられる。
『何故お前が其処に居るんだ弐沙』
『そうだ、お前は始末されたはずじゃ』
 男女の声が重なり合ってスピーカーから漏れる。
「残念ながら、今回の神暴きは私達暴き手の勝利だ。紳士淑女の方々に置いては誠に残念な結果になってしまったことを私はとても嬉しく思うぞ」
 弐沙は楽しそうに話す。
『ふざけるな!』
『あぁ、私の全財産が』
 泣き叫ぶような声もスピーカーから漏れた。
『お前だけは絶対許さない。我らに歯向かった事を後悔させてやる』
「……どうぞご勝手に。私は逃げも隠れもしないからいつでも相手するぞ」
 弐沙はそう言ってマイクの回線を切った。
「あらあら、そんなに煽って良かったの?」
「アイツらにはコレぐらいは丁度いい。それに、そのうちアイツらはその内に解体しそうだからな」
「その根拠は?」
「内緒だ。さて、鬱憤も晴らしたことだし、さらに奥に行くぞ」
 そう言って弐沙はモニタールームの主電源を切った。監視カメラの映像は1つずつ電源が落とされ、完全に真っ暗になって沈黙する。
 モニタールームから出ると弐沙は更に奥に進んで行く。進んでいくごとに洞穴に取り付けられている電源は少なくなって、歩きづらくなっていく。
「ここだ」
 急にそう言って弐沙が立ち止まると、後ろからついて来ていた怜がぶつかる。
「おっと、急に止まらないでよ弐沙。真っ暗で何も見えないんだけど、でもなんだか臭うね。もしかしてここって……」
 鼻につく匂いを感じ取って怜はここが何をするところなのか、察した。
 弐沙は持っていた懐中電灯を付ける。真っ暗な場所に向けて懐中電灯を向けると、
 其処には今回の神暴きで殺されて村長たちの手によって回収された者と、白骨化された遺体があった。
「もしかして死体置き場?」
「正確には捨て場だな。殺された死体はここで何の供養もされずに、ただ投げ込まれるだけだ」
 弐沙はその場へと座り込んで、両手を合わせる。
 怜もそれに習って両手を合わせて、鎮魂の言葉を紡いだ。
「さて、行くか」
「そうだねー。ところで弐沙。よくモニタールームのことや死体捨て場のことなんて知ってたねー」
「ココに数年くらい幽閉されたことがあるからな」
「ゆ、幽閉!?」
 サラッといった一言に怜が驚く。
「聖神の会が神暴きを始めたばかりのころに、捕らえられて、数年ここで飲まず食わずのままで幽閉されていた。よほど神というシンボルが欲しかったらしい。あの頃は死ぬかと思ったが、結局死ねなかったな」
 嫌な思い出を思い出したらしく、弐沙は顔を引きつかせる。
「数年たった後、急に私はお払い箱になり、空腹と喉の渇きで死んだように寝転がることしか出来なかった私は、そこら辺の林道に投げ捨てられた」
 今思い出しても腹立たしいと弐沙が文句を言うと、怜が笑う。
「何がおかしい?」
「いや、不老不死も楽じゃないんだねーって思っただけ」
「何を言うか、不老不死は嫌なことばかりだ。私は罰ゲームだって思っている」
 そう弐沙は怒った。
「さぁ、そろそろこんな所から出るとしよう」
「そうだねー。帰ったら色々としなきゃ」
 怜は楽しそうに笑う。
「それより前に、無事に人里に辿り着けるかがネックだけどな」
「えー! そこから?! ……不安だ」
 弐沙の不穏な言葉に、怜のテンションはどんどん落ちていく。
「つべこべ言わずに、さぁ、行くぞ」

 洞穴を抜けて暫く歩くと、この場の雰囲気に全く似つかわしくない豪華さの洋館が建っていた。
「なんだ、この洋館」
 余りの豪華絢爛具合に怜は目を丸くする。
「俺たちが車で来たときには見えたっけコレ?」
「車が通れるコースはこの奥の方だからな。見えないハズだ」
「ここは、誰かの屋敷だったりするの?」
「神暴き中の村人の宿泊施設だ」
 弐沙の説明に怜は驚きを隠せないでいた。
「いやいや、豪華すぎでしょ」
「所詮は金持ちが考えることだからな」
 呆れたような顔でその洋館を眺める弐沙。
「そういえば、神暴きが終わったんだから村人の皆は村へ帰ったの?」
「最初に言っただろ。あの村はもとより“存在しない”村だ。だから、村人なんて元々居なかったんだよ」
「まって、そんなにバンバン真実を言われると脳みそが追いついてない」
 怜は頭を抱えて混乱を始めた。
「村人は秘密結社が雇った、所謂エキストラみたいなものだ」
「へぇ……エキストラねぇ」
「村も神暴きが無いときは自由に行き来出来るから、ちょっとした田舎暮らしがしたい奴らなら丁度いいだろうな。お金も貰える。そして、神暴きが始まればこんな豪華な洋館に住めるのだから」
「……そんな仕事に飛びつく人多そうだねぇ」
 そういう怜の顔は笑っていなかった。
「恐らく、まだ村長からの終了宣言を聞けて居ないはずだから、洋館に篭もっているままだろう。見つかっても大事だし、ここはそっと帰ることにしよう」
「……そうだね」
 なんだか神暴きの知ってはいけないような部分にも触れてしまった怜は人里に着く前にどっと疲れたような感じがした。
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