18 / 53
18
しおりを挟む
わたしは家族の反対はあるだろうと予想していた。
どう考えても手間は増えるのだ。楽をしていただけに仕事が増えるのは歓迎されないのはわかっていた。これからの話の進め方で今後が変わると思いたい。
説得の材料としては、まずは宿屋のお客様の希望は認識ができたので次は客足の確認だ。経営者側が肌で感じているということは、数字で確認すればかなりハッキリするはずだ。
とらえずは出来る事とできない事をはっきりさせよう。なんでも必ずできると思ってもらっては困る。
「そうですね。わたしの案を採用したからと言って必ず客足が戻るとは限りません。ダメな可能性だって考えられます。あくまでも今回は提案にすぎません。決めるのはクライアントであるおじさんであり、家族で宿屋の経営を担っている皆さんになります」
「パルちゃん。おじさんから聞いたから話をしてるけど。子供はこんな話に首を突っ込むなんて感心しないよ」
「確かに、おばさんからみれば子供であるリサと同じ年なのでそう思われると思います。ですがわたしは依頼を受けてこの場にいます。遊びで首を突っ込んでいるつもりはありません」
「遊びじゃないって?子供が何ができるって言うつもり?」
「分析、提案、改善、この3つです」
「分析?」
空気を読まないお兄さんがわからないと質問をしてくる。おばさんの機嫌が悪くなっているのでお兄さんのこの発言はありがたい。空気の悪さが改善される。
やっぱりおばさんはわたしに対していい印象がないみたいだ。遊びに来たときはそうでもなかったので今回の事に口を挟んだのが気に入らないようだ。娘と同じ年のわたしから経営の事にアレコレ言われるのは面白くないのは当然のことだと思う。よく考えれば最初に話を聞いてくれたおじさんが異例だったのかも、もしかしたらそれだけ切羽詰まった状態だったのかもしれない。
「分析っていうのはさっきのお客様の希望とかのことですよ。誰が何を欲しがっている。こんな事を嫌がっている。その情報から次に必要な事を考えて行動することを検討するんです」
「それを分析って言うんだね。凄いね。僕じゃ考えられないよ。父さんは知ってた?」
おばさんの心境を思いつつお兄さんの質問に答えていく。
お兄さんはわたしの話に感心している。純粋な人だと思う。
おばさんはお兄さんの態度が気に入らないようだ、目が吊り上がって見えるので間違いないと思う。
この場の主導権はおじさんからおばさんへ移っていた、慎重にならないと、おばさんの説得が上手くいかなければ全てが無駄になるのは間違いなさそうだ。
「おばさん、わたしの話は一度忘れてもらって、現状の振り返りをしませんか?その上でわたしの話を考えて欲しいんです」
「現状の振り返りって、今の話でしょう?」
「それももちろんですが、収入と支出も含めてです。具体的な数字をわたしに言うのは抵抗があると思うので数字の話をご自分たちで確認してもらえたらと思います」
「支出って?」
お兄さんお約束の質問だ。これは来ると思っていたからわたしも慌てない。むしろ想像通りだ。今まで質問していたので無かったら逆にビックリだ。
「宿屋の経営で得た収入と経営に必要な経費の金額です。経費は宿屋の経営に必要不可欠なものに使用した金額です。煮炊きに使った薪の燃料代や洗濯の石鹸代なども含まれます。その差し引きで残ったものが純粋な収入になります」
「そうなんだ。残った金額が多ければ儲かってるって事だよね?」
「そうなりますね」
わたしは笑顔でお兄さんの言葉を肯定する。しかし気になっていることがある。
ここまでお客様の希望は気にしていないし、諸々わかっていないことも多いし。不安が残る。
もしかしたら帳簿なんてつけてない気がする。
どう考えても手間は増えるのだ。楽をしていただけに仕事が増えるのは歓迎されないのはわかっていた。これからの話の進め方で今後が変わると思いたい。
説得の材料としては、まずは宿屋のお客様の希望は認識ができたので次は客足の確認だ。経営者側が肌で感じているということは、数字で確認すればかなりハッキリするはずだ。
とらえずは出来る事とできない事をはっきりさせよう。なんでも必ずできると思ってもらっては困る。
「そうですね。わたしの案を採用したからと言って必ず客足が戻るとは限りません。ダメな可能性だって考えられます。あくまでも今回は提案にすぎません。決めるのはクライアントであるおじさんであり、家族で宿屋の経営を担っている皆さんになります」
「パルちゃん。おじさんから聞いたから話をしてるけど。子供はこんな話に首を突っ込むなんて感心しないよ」
「確かに、おばさんからみれば子供であるリサと同じ年なのでそう思われると思います。ですがわたしは依頼を受けてこの場にいます。遊びで首を突っ込んでいるつもりはありません」
「遊びじゃないって?子供が何ができるって言うつもり?」
「分析、提案、改善、この3つです」
「分析?」
空気を読まないお兄さんがわからないと質問をしてくる。おばさんの機嫌が悪くなっているのでお兄さんのこの発言はありがたい。空気の悪さが改善される。
やっぱりおばさんはわたしに対していい印象がないみたいだ。遊びに来たときはそうでもなかったので今回の事に口を挟んだのが気に入らないようだ。娘と同じ年のわたしから経営の事にアレコレ言われるのは面白くないのは当然のことだと思う。よく考えれば最初に話を聞いてくれたおじさんが異例だったのかも、もしかしたらそれだけ切羽詰まった状態だったのかもしれない。
「分析っていうのはさっきのお客様の希望とかのことですよ。誰が何を欲しがっている。こんな事を嫌がっている。その情報から次に必要な事を考えて行動することを検討するんです」
「それを分析って言うんだね。凄いね。僕じゃ考えられないよ。父さんは知ってた?」
おばさんの心境を思いつつお兄さんの質問に答えていく。
お兄さんはわたしの話に感心している。純粋な人だと思う。
おばさんはお兄さんの態度が気に入らないようだ、目が吊り上がって見えるので間違いないと思う。
この場の主導権はおじさんからおばさんへ移っていた、慎重にならないと、おばさんの説得が上手くいかなければ全てが無駄になるのは間違いなさそうだ。
「おばさん、わたしの話は一度忘れてもらって、現状の振り返りをしませんか?その上でわたしの話を考えて欲しいんです」
「現状の振り返りって、今の話でしょう?」
「それももちろんですが、収入と支出も含めてです。具体的な数字をわたしに言うのは抵抗があると思うので数字の話をご自分たちで確認してもらえたらと思います」
「支出って?」
お兄さんお約束の質問だ。これは来ると思っていたからわたしも慌てない。むしろ想像通りだ。今まで質問していたので無かったら逆にビックリだ。
「宿屋の経営で得た収入と経営に必要な経費の金額です。経費は宿屋の経営に必要不可欠なものに使用した金額です。煮炊きに使った薪の燃料代や洗濯の石鹸代なども含まれます。その差し引きで残ったものが純粋な収入になります」
「そうなんだ。残った金額が多ければ儲かってるって事だよね?」
「そうなりますね」
わたしは笑顔でお兄さんの言葉を肯定する。しかし気になっていることがある。
ここまでお客様の希望は気にしていないし、諸々わかっていないことも多いし。不安が残る。
もしかしたら帳簿なんてつけてない気がする。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる