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瞬間
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春の日差しはあたたかく、頭がとろけそうな蜜の香り、その下。
きみのことを、好きだと思うのに時間はかからなかった。
気付いた時にはもう、
それはそれは、深く深い愛の海に沈んでいた。
出会いはなんてことないつまらないもの。高校入学でただ同じクラスになって、クラスメイトになっただけ。
「おはよう」
振り返る。
『あ、おはよ』
笑顔をくれるきみ。
朝の挨拶ひとつで、笑顔ひとつで、こんなにも心が色めき立つのは16年の人生で初めてだった。
笑顔で朝の挨拶をしてくれるようになったのは、2年の夏、修学旅行の自由行動班が一緒になったからだ。それまでは笑顔を交わすどころか、挨拶をすることも稀だった。
男女それぞれが2人組を作って男女4人のグループを作る、なんていう合コン紛いな思春期ミッションをこなしたら、なんだか流れでこうなった。自分とペアになったやつが、彼女のペアの子が気になってて仕組んだことらしい。水臭いやつだ。
『ちゃんと話すの初めてだね』
「そうだね…なんか緊張する、」
『わ、ひどい!!わたしのことなんだと思ってるの!!』
笑い顔だか怒り顏だかわからない素直なその表情をくれるきみに、
その瞬間に惹かれてたんだと思う。
「あ、俺ここ見たい、ってか行きたい」
『わ、いいね!せっかくだからついでにマリンスポーツしてこうよ!バナナボート、バナナボート!』
「は~?バナナボートはないでしょ、ラフティングとかのがいいよ」
『えぇ~?ないかなぁ、、、残念…だけどラフティングも楽しそう!わたしラフティングする!』
「はは、単純…なんでそんなに元気なの、」
『え、だって!修学旅行だし、、、憧れの人と同じ班だし??』
「は?」
『え?』
「なに、あいつのこと好きなの?」
親友の頭を後ろから指差す俺。
『違うよ、こっち』
向こうを指してる俺の人差し指ごと、俺の鼻の頭に導くきみの冷たい指。
「…なに、アイスおごってもらおうって魂胆?」
『えへへ、ばれた?』
なんて、
頬を薄ら染めるきみを見て見ぬフリして、自分の耳が熱いことも隠した。
そんなこんなで、なんとなく自信があった俺は修学旅行マジックとやらに見事に飲み込まれ、クラスみんなでした海辺の花火、その後ろできみに気持ちを伝えた。
時が経ち最終学年、また同じクラスになれた。運命だなんて、安い言葉を使ってもいいだろうか。
「次の土曜、空いてる?」
『うーん、ランチだけバイトだからその後なら…?』
「ん、うちおいでよ」
『…じゃあ、お母さんに、またあのシューアイスでいいかな?』
「あ、いないから」
『へ?』
「母さん実家に帰ってる」
『…あ、、、そうなんだ、』
「うん、夏休みだから弟も一緒にね、俺だけ残ってんのいま」
『わたしのため?』
ふざけて笑いながら問うきみ。
「そうだよ、覚悟、できてんでしょ?」
悔しくて、でも本心で、
きみの熱を上げる。
ほらね、きみはすぐに頬を染める。
気付いてないのが、可愛くて、でも狡くて、でもそんなきみに溺れてる自分ですらも愛おしくなるから不思議だ。
『…ばか、ずるい』
俯きがちで小さく答えたきみに、俺の方が保たなくなったなんて。これは秘密。
むかえる土曜日、結局うちに泊まることにしたらしいきみが、大きなトートバッグを抱えて待ち合わせ場所にいた。
「服、貸したのに」
彼シャツさせたかったから。
『いいよいいよ!洗濯物増えるし悪いもん!』
こういう計算がないところもきみらしくて可愛いけど、たまにはこちらに乗っかるくらいでいてほしいなんて、贅沢にも残念に思いながら。
「借して、先にごはんいこ」
『うん、あ、ありがと』
きみの荷物を奪うように持てば、目が線になるほどの明るい笑顔をくれる。こういうきみが見たくて、ついつい優しく紳士ぶっちゃうんだから、きみはある意味魔性の女かもね。
ファミレスでオムライスを食べて、家の近くのコンビニでアイスと飲み物を買って、
2人でドギマギしながら家に帰り、下心みえみえでありがちにホラー映画なんか観たりして。
『うわ、あんまい…』
「だから、言ったでしょ?なんでチョコのアイスとフルーツオレなんて組み合わせたの…」
『げー…どっちも好きだからなんだけど…甘いと甘いはいかんね…甘すぎる、ポテチほしい』
「買ってこよっか?」
『えっ、いいよ!行かないで!今部屋で1人は怖すぎる』
「じゃあ一緒に行こ?」
『やだやだ、ここいて?』
自分の隣をポンポンと叩くきみ。だめだ、あざとすぎる。
「そんなん言うと、ほんとに襲うよ」
『だから、いいよってば』
きみを怯ませるつもりで言った冗談が、まさか自分を怯ませるなんて。
理性がぶっ飛ぶ1秒前、なんとかきみにシャワーを浴びさせた。
お風呂上がりの素肌のきみ、頬を撫でながら、いつ始まるか予測できない甘さに溺れた。
『ねぇ…好き、』
「…うん、俺も、」
『ずるい、』
「ちゃんと言うって、ここで、」
抱きすくめるようにゆっくりとベッドへ運び横に倒すと、きみの耳元に唇を寄せる。
普段より幾分低く幾分甘く、きみが欲しいであろう言葉を紡いだ。
「好き」
『もっと』
「好きだよ」
『もっと、』
「、愛してる」
『…ふふ、なんかドラマみたいでうれしい』
「そんなこと言う余裕あんの、なんとなくむかつく、」
きみの髪を撫でて、目を見つめて、そのまま繰り返せば。指が耳を掠めたのであろう、肩を竦めたきみ。
「え、なに着けてないの?」
ゆるく大きめな俺のTシャツ、貸したことを後悔する。開いた肩口を指でなぞれば、くすぐったいと身を捩る。
『だって寝るときいつも外すもん…』
開いた肩口から素肌を、俺のシャツに隠された膨らみの上を、何度も何度も往復すればきみは身を捩るのみならず高めの吐息を吐き出す。
意地悪、したくなるな。
「どうしてほしい?」
『…わかんない』
そう言いながらも、俺の手を自分の胸元、服の中へ導くきみは、本当に本当にずるい。
「優しく、しないから」
そう宣言して、きみの大胆さにのっかり手を進める。俺は言葉とは裏腹に到達する先を優しく優しく掠め、徐々に力を込めてゆく。
吐息が声に、声が吐息に。
きみの反応を確かめながら。
わかったことはたくさんあるよ。
耳元に唇を寄せて、音が響く距離で話されることが好い。
強くされるより優しく転がされる方が好い。
そして中より外が好い。
何分そうしたかわからない、2人の熱で湿度が上がった部屋でまた熱を帯びる。
俺の手で、纏うものをなくした肌色のきみは、わりと積極的に俺を肌色にし、そのまま首に巻きついてきた。
こんなことに慣れてるなんて、妬ける。
その嫉妬をぶつけるように、きみの下肢に指を這わせ、潤いが止まらないほどに焦らし続けた。
さっきと同様、俺の手を好いところに導くきみの耳元で、
「俺の手、貸してあげるから好きに使いなよ」
だなんて、悪魔の囁きをお見舞いした。
少し躊躇ったきみの手の下、
『…貸して』
誘導に乗って弾くようにそこに触れれば。待ち望んだ快感と、急に訪れた快感と、きみは驚くように甘く声を上げた。
そのまま外を、一点を、ひたすらに刺激し続ければ呆気なく根を上げるきみ。
息が整わないきみの中へと指を沈めれば、少しだけ痛そうに歪むきみの眉。
「痛い?」
『痛くないけど…また…』
「いいよ、もう一回、」
『や、、、ほんと、に、だめ…』
二度目の白を見たきみのそこへ自分の熱を沈め、きみの表情ごと快楽に溺れた。
『そんな、見ないでよ…変態』
「男はみんなこんなもんなの」
『や、』
「すごい可愛い、」
「愛してるよ、」
果てる瞬間に囁けば、最後のその1秒、きみは目尻を光らせた。
朝、俺の腕の中で寝返りを打つきみ
そのきみの動きで俺が目を覚ます1秒。
きみの髪を撫でるこの手
その俺の動きできみが目を覚ます1秒。
愛してると囁き合って、視線と笑みを交わす
その微笑みを作る1秒。
耐えられなくなって口付ける俺、目を瞑りそれを受け止めるきみ
そのキス、1秒。
きみとの一瞬、1秒は、
俺にとっての永遠であればいいのに
…なんて。
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