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第二章
スウィート・マティーニ
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あれから約一ヶ月。
うちの店も週末は少しばかり賑やかだ。
満――僕の親父であり、この「ヘルメティカ」のマスター――は多趣味で博識で、どんな客とも話を合わせる。そうして様々な客から仕入れた知識を、また別の客との話のタネにする。いかにも客商売って感じだ。酒よりも、マスターとのお喋りを楽しみに通う客も多い。
僕はといえば、不得手な話題だと感じたら――八割方はそうなのだが――聞き役に回るくらいしか芸がない。
別にいいじゃないか、僕は酒や料理を作るのが好きなだけだ。それで仕事は立ち行くはずだ。そんなに会話をお求めなら、スナックにでも行って頂きたい。
――あれから約一ヶ月、彼女は姿を見せていない。
閉店間際、新たに入店する人影があった。
「いらっしゃ… 」
入口へ視線を向けた雪は、言いかけた「あ」の形に口を開けたまま固まった。
彼女だ。
「なんだなんだ、どうした」
挨拶が途切れた雪の様子を見に来た満も、その目の先を見ると同じ顔になった。
「…いらっ、しゃいませ。お久しぶ」
ドン。
言い直した挨拶を遮るように、香は取り出したボトルをカウンターに突き立て、それ越しに僕達を睨めつけた。
「私、今日はこれしか飲みませんから」
「「…… はい」」
お客様、ミネラルウォーターのお持込みはちょっと。そんな事はとても言い出せなかった。
少し早仕舞いをした店内で、僕達はテーブルを囲んだ。
「まあまあ兎に角、よく来てくだすった。もう来て頂けないかと思いましたよ」
「…… 解らないままになる方が、より嫌だっただけです」
隙あらば棘を挟んでくる、彼女の物言い。元々愛想のいい客ではなかったが、口を開けばこれほどとは。
「じゃ早速、実践といきますか」
「「えっ」」
雪と香は息ぴったりに声をあげた。いや、彼女が来たからには勿論、あの夜の事件が本題ではあるけれども。親父、いくらなんでも話が早すぎるだろう。
「だから、今日はこれしか飲みませんって」
「しかしお嬢さん、貴女良い事を言いなすった。『解らないままになる方が嫌』とね。
… 今日このまま帰ったとして、後悔しませんか? この一ヶ月お悩みになって、それでも確かめるために、一大決心していらしたんじゃあないですか?」
「それは……」
彼女は口を尖らせて逡巡した後、絞り出すように呟いた。
「…… まあ」
「そうこなくっちゃ! お嬢さん、やっぱりあなた大した人だよ」
結局、この店に再び足を運んだからには、そのつもりはあったのだろう。とはいえあの拒絶ぶりだったのに、結局丸め込んでしまうのが、この親父なのだ。
雪は材料をずらりとカウンターに並べた。
「ご覧の通り、すべて普通の食材です。怪しい薬などは入っていません」
「本当に害はないんですか。元に戻らなかったり、しないでしょうね」
「勿論ですよ、大丈夫」
穏やかに宥める満の背中は「たぶんネ」と言っているように見えたが、雪は黙っておいた。
(さて……『秘蔵の製法、丹精込めた調合、命宿る息吹』だったか)
雪は注意深く、あの夜と同じカクテルを作り始めた。
(『心を通わせ、思いを込めて』…ってのが、どうもよくわからないが)
それでも、彼女の勇気に敬意を表して――表したつもりになって、出来上がったカクテルにそっと息を吹きかけた。
見た目は何も変わらない。これがあの怪奇現象を引き起こしたなんて、とても信じられない。
「どうぞ」
置かれたグラスを睨むことしばし、香は意を決して手を伸ばした。その華奢な指が震えているのを、雪は見た。
怖い、に決まっている。
誰よりも彼女が一番、怖いに決まっている。
でも彼女は向き合おうとしている。自分を襲った出鱈目な事態に、その秘密に。自分だったら、そんな行動が取れるだろうか。
と、その先を考える暇もなく、彼女は一息に杯を干した。いくらショートカクテルといっても、そこまで一気に呑む人はそう見かけない。感嘆に値する呑みっぷりだ。乾いた音でグラスを置くと、腕組みをして深く息をついた。
震えるその手を、見られまいとするかのように。
雪はふと思った。彼女は一度も、助けを求めはしなかった。拒絶こそしたものの、全てを自ら決定し、こちらに委ねはしなかった。
もしかして、彼女はそういう人なのではないか。強がって攻撃的に振る舞い、他人と距離を取るような人間には、そういうタイプもいるものだ。
弱味を見せたくない、人に頼りたくない、だから人を遠ざける。親しくなるのが怖いから――
雪は、やっと彼女の本当の顔を見たような気がした。
「あ」
と、小さな声をあげた香は、あの黄金の光輝に包まれていた。その光が急速に眩しさを増し、体の輪郭が一時見えなくなる。
雪は震える唇をぐっと結び、呼吸を落ち着けようと精一杯の努力を試みた。しかし胸は早鐘を打ち、深呼吸などできる訳もなかった。それは恐怖か高揚か、あるいは両方なのか、自分にもわからなかった。
光が収まるとそこには、あの日と同じ異形の姿が立ち現れていた。
琥珀色にうっすらと光を放つ半透明の人型。
継ぎ目も皺もない滑らかな表面はゼリーの質感。
顔の大きさの三分の一を占めようかという大きな眼。透けて見えるその形はラグビーボール状で、オリーブを思わせる暗緑色をしている。
口も鼻もないその顔から発せられる声は、やはり二重に聞こえる。耳に聞こえる肉声は、先程までの彼女と同じ声。そこにもう一つ、頭の中に直接響く声… としか表現できない、なぜだか感じるもの… が重なっている。
彼女は前回と同じように自分の肢体をゆっくりと眺めまわし、それからこちらを向いた。
『…… 見えてます?』
雪と満はもげるほど顔を縦に振った。
『やっぱり、気のせいじゃない…』
眉間(といっても眉は無い)に皺を寄せてそう呟く彼女に、雪は少々気が抜けてしまった。この事態を「気のせい」で片付ける気があったのか。強がりだけでなく実際、大物だ。
『もう一度、この前の説明を聞かせてもらえますか。よく覚えてなくて』
それはそうだろう、あんな状況であんな話が頭に入るわけがない。満は『酒精降ろしの巫女』について、『酒精』について、僕達と巫女の家系について、事細かに話した。
「そこでですね。立ち入った話で恐縮なんですがお嬢さん、お母様の旧姓を教えて頂けませんかね。巫女の血筋について、手掛かりを探しているんです」
『あ、私は両親を知らないんです。捨て子なんです』
えっ。
などと、相手のデリケートな情報に驚いてみせるのは当然よろしくないことだ。客商売ならば尚更だ。
「そうでしたか。これは失礼を」
かといって親父のように落ち着いた返しは出来ない。声に出さないのが精一杯だった。
(そうだったのか……)
一つ、また一つと、彼女の意外な面が見えてくる。
それから僕達は色々な話をし、気付けば小一時間が経とうとしていた。
なにせ動転してよく覚えていないが、前回は変身してから元に戻るまで、10分もなかった気がする。少なくともこれ程の時間は経っていない。
「酒は一杯の芸術、杯を干してこそ完成する。この間は一口しか飲まなかったから、すぐ解けたって訳か。成程ねえ」
『で、いつ元に戻れるんですか』
「ええとだね。そこが本日検証するべき最大の課題というかね」
彼女はぴたりと静止し、大きなその眼だけが脈打つように膨らんだ。張り手を食らったような威圧感が雪達を射竦めた。
まずい。
ですよね、そりゃ。
『ということは、判らないんですか。騙したんですか』
彼女の目には眉もなく、顔の中に表情を表すパーツはおよそ見当たらない。しかし烈火の如き怒りは肌を焦がして伝わってくる。流石の満も答えに窮し、雪は慌てて助け舟を出した。
「そうだ、あの同僚さんの話は落ち着いたんですか」
『…… 辞表を書いてると聞きました。』
彼女の顔は少しうつむき、先程の剣幕はみるみる萎んでいった。雪はほっとしかけて、彼女の落ち込みようから、中々に大きな事態が告げられた事に気付いた。
『私でもそうすると思います。個人の適性と実績を認めてくれない職場なんて、見限るのが正解だ。
法で裁けるような不正行為じゃないけど……。
いえ、だからこそ許せない…… 私… わた…… シ…… 』
「… 御坏さん?」
なにか、変だ。
耳に聞こえる声が小さくなり、頭に響く声の方が大きくなっていく。
そのとき、卓上の瓶やメニュー立てが微かに揺れ始めた。
窓も開けていないのに、風が?
空気が渦巻き、彼女に吸い寄せられてゆく。
総身が粟立ち、彼女から目が離せない。
何だ?
何が起ころうとしている?
俯いていた彼女の顔が、突如虚空を見上げた。
『我ハ裁キ、我ハ摂理。
他者ノ尊厳ヲ踏ミ躙ル事、則チ不義ナリ。相応シキ因果ヲ与エン』
暗緑色の眼の中心に、深紅の光球が爛と輝いた。
彼女は足を踏みしめることなく立ち上がった。いや、浮き上がって立ち姿に移行した、という方が近い。瞬時にして、物理法則に反した動きで。そして素早く両手を掲げると、掌の間に金色の稲妻が走り、瞬く間に膨れ上がって光の塊となった。次の瞬間――
店内全体に衝撃が走った。雪達は咄嗟に頭を庇い、そのためにはっきりとは見えなかったが、その塊は窓から外へ撃ち出されたように見えた。
轟音は止んだ。雪達は恐る恐る手を下ろし、店内を見回した。一つの窓が割れ、風に煽られてばたばたと開閉している。
目の端に微かな光を感じ、はっとして振り返ると、彼女は人の姿に立ち戻ったところだった。両掌を割れた窓の方向へ突き出し、仁王立ちの体勢から、今まさに頽くずおれようとしていた。
「香さん!」
雪は咄嗟に駆け寄り、彼女を抱き留めた。
…体温はある。息もしている。顔色は少し悪いが、酔い潰れただけという程度だ。
「ほい」
「えっ」
いつの間に奥へ取りに行ったのか、満が毛布を差し出した。気分を悪くした客のため常備してあるのだ。
(今この状況で、そんな事に頭が回るって…尊敬を通り越して薄気味悪いわ。つくづく、この親父のメンタルはどうなってるんだ)
困惑しつつも雪は香をそっと寝かせると、割れた窓の外を見た。
その正面、遥か遠くのビルで不自然に照明が明滅し、かすかに煙が立ち昇っていた。やがて消防車のサイレンが聞こえ始めた。
何かの事故か、ガス爆発か。そう思いたいところだが、只の事故では済まされないと直感が告げる。
「親父、あれって……」
「うーん、よし。知らん知らん」
「おい!?」
「だってさ、証言する方が無理ってもんだべ。『お客が怪物になって雷を撃ちました』ってか? 見ろよ、あれだけ離れたビルと、うちとの間に何の関連性を証明できる。
何も無かったんだ。現実だと言えるような事は、何もな」
「ん……」
微かな声に振り返ると、香が目を開けたところだった。雪は慌てて駆け寄った。
「……私、寝てました?」
やや憔悴しているが、正常だ。聞き慣れた肉声が耳に届き、雪は腹の底から安堵した。
「どこまで覚えてます?」
「ううん、あのマティーニを呑んで、変身、して… 少し話をして… 同僚の話を始めた辺りから覚えてないですね。
情けない、一杯で潰れるなんて。疲れてたのかな」
(……じゃあ、あの状態は覚えてないのか)
あの時、彼女の肉声は聞こえず、頭に響く声だけが聞こえた。口調も妙だった。あれが、巫女の体を間借りしただけではない、酒精本来の姿、という事なのか…?
----
「匂うな」
「匂うね」
ビルの屋上に、二つの人影。手摺りにもたれかかった一人が顔を上げ、くんくんと嗅ぐような仕草をした。
「酒精の香りだ」
「ええ」
「ほかの“巫女”に会えるのかな。どんな奴かな」
「焦らないの。いずれ引き合うわ、必ずね」
----
数日後、窓を修繕したヘルメティカに香の姿があった。
なんでも例の同僚氏は、退職せず望みのポストに就ける事になったらしい。
というのも、あの時彼女が撃ったビルが――ニュースでは落雷と報道されたが――、元凶の外注社員の所属先だったというのだ。その会社は大混乱に陥り、外注社員の異動は立ち消えてしまったという。
恐ろしい偶然もあるものだ、などと楽天的に考えられる訳はない。
彼女は、いや、あの酒精は確かに裁きを下したのだ。知り得ないはずの情報と、推測し得ないはずの因果を用いて、人知を超えた力で。
しかし彼女はそれを知らない。ビルを壊したのが自分だという事も覚えていないのだ。故に本気で、件の企業に「偶然」不運な事故があり、結果として同僚は不遇から脱したと思っているのだ。
「こう言っていいものか分かりませんが… ありがとうございました」
「いやいや私共はなにも。運命だったんですよ、きっと」
礼など言い出す香が妙に大人しく見えて、雪は少々気に掛かった。
「ところでお嬢さん、折り入ってご相談があるんですがね」
拭いたグラスを丁寧に置き、満が切り出した。
「貴女のあの力、“巫女”の資質…… お話しした通り、それは私共が代々追い求めてきたもの。私は是非その力を解明したい。そして貴女にとっても、あの力が不用意に発動しちゃ困るでしょう。現状、貴女の力を制御し守れるのは私らだけって事になる。
どうだろう、これからも店に来て、私共の“巫女”になっちゃくれませんか。
どんな条件でどんな力が現れ、どうすればコントロールできるのか、ともに解き明かしたい。これは貴女自身を知り、貴女だけが持つ力を見出すことでもある。どうか、ご協力頂けないでしょうか」
(私にしか…… できないこと……)
自分は求められなかった赤子、存在しなくてもよかった人間。物心ついて以来、香の奥底にはずっと微かな引け目があった。特別な人間になりたくて努力しても、結局は凡庸な会社員。いくらでも代わりのいる存在。
そんな中、降って湧いたこの異常事態。信じられないと思う一方、逃げ出してはならないと引き止める自分がいた。これこそが縋るべき砦、自分の存在意義なのではと。
もう来なければいいと思いながら、この店に舞い戻ってきたのも、根底はそうなのだ。
この出鱈目な状況を理解も納得もできてはいない。できる筈がない。それでも、知ってしまったものに蓋をして生きたくはない――
「………… はい」
「ありがとう。それじゃ、宜しく頼みます」
満は深い安堵の息をつき、頭を下げた。雪は一緒に頭を下げながら、事の順調さに一抹の不安を感じていた。
「そこでですね、お嬢さん。今後の活動を円滑に進めるために、ここの店員になってみないかな」
香は一度目をぱちくりすると、軽蔑といっていい程の呆れ顔で返した。
「そこまでは無理です。副業も禁止です」
「収入を得なければ、良いんじゃないの」
「あのですね」
「まあまあ。これから貴女には、巫女の力を貸してもらう事になる。まさか客の前で変身はできないし、再三厨房へ入ってもらうのも目立つだろう。実際働く訳じゃなくても、従業員って体ていにしておけば秘密を守りやすいと思うんだよ。どうかな」
「…… そういう… ことなら……」
不承不承、満お得意の口八丁に丸め込まれた彼女は、張り上げかかった怒声をもごもごと引っ込めていった。つくづく、狸親父恐るべし。
そうこうしている間にカクテルが出来上がり、香の前に差し出された。
「どうぞ」
見覚えのある琥珀色のマティーニだった。香は露骨に身を引き、刺すような視線を雪に向ける。
「ベルモットをスイートに換えたから、あのレシピとは違いますよ。それに息吹も掛かっていない。変身はしないはずだ」
「でも… あなたが作るだけで信用ないんだけど」
「そう思われるのも仕方ないですが、大丈夫ですって」
「怖い」でも「不安」でもなく「信用がない」ときた。いつも通りの物言いに雪は少し安心しつつも、その棘の多さに溜息をついた。
眉間に深い皺を寄せ、香はしばしグラスを睨んだ後、恐る恐るほんの僅かを舐めるようにした。
「美味しい……」
その目から険しさは消えていた。
(そんな顔が見られるなら… 悪くないかもな)
ふと、バーテンとして初めて客に喜んでもらえた日の、こそばゆい誇らしさを思い出した。そんな雪の顔にも、柔らかな微笑が宿っていた。
うちの店も週末は少しばかり賑やかだ。
満――僕の親父であり、この「ヘルメティカ」のマスター――は多趣味で博識で、どんな客とも話を合わせる。そうして様々な客から仕入れた知識を、また別の客との話のタネにする。いかにも客商売って感じだ。酒よりも、マスターとのお喋りを楽しみに通う客も多い。
僕はといえば、不得手な話題だと感じたら――八割方はそうなのだが――聞き役に回るくらいしか芸がない。
別にいいじゃないか、僕は酒や料理を作るのが好きなだけだ。それで仕事は立ち行くはずだ。そんなに会話をお求めなら、スナックにでも行って頂きたい。
――あれから約一ヶ月、彼女は姿を見せていない。
閉店間際、新たに入店する人影があった。
「いらっしゃ… 」
入口へ視線を向けた雪は、言いかけた「あ」の形に口を開けたまま固まった。
彼女だ。
「なんだなんだ、どうした」
挨拶が途切れた雪の様子を見に来た満も、その目の先を見ると同じ顔になった。
「…いらっ、しゃいませ。お久しぶ」
ドン。
言い直した挨拶を遮るように、香は取り出したボトルをカウンターに突き立て、それ越しに僕達を睨めつけた。
「私、今日はこれしか飲みませんから」
「「…… はい」」
お客様、ミネラルウォーターのお持込みはちょっと。そんな事はとても言い出せなかった。
少し早仕舞いをした店内で、僕達はテーブルを囲んだ。
「まあまあ兎に角、よく来てくだすった。もう来て頂けないかと思いましたよ」
「…… 解らないままになる方が、より嫌だっただけです」
隙あらば棘を挟んでくる、彼女の物言い。元々愛想のいい客ではなかったが、口を開けばこれほどとは。
「じゃ早速、実践といきますか」
「「えっ」」
雪と香は息ぴったりに声をあげた。いや、彼女が来たからには勿論、あの夜の事件が本題ではあるけれども。親父、いくらなんでも話が早すぎるだろう。
「だから、今日はこれしか飲みませんって」
「しかしお嬢さん、貴女良い事を言いなすった。『解らないままになる方が嫌』とね。
… 今日このまま帰ったとして、後悔しませんか? この一ヶ月お悩みになって、それでも確かめるために、一大決心していらしたんじゃあないですか?」
「それは……」
彼女は口を尖らせて逡巡した後、絞り出すように呟いた。
「…… まあ」
「そうこなくっちゃ! お嬢さん、やっぱりあなた大した人だよ」
結局、この店に再び足を運んだからには、そのつもりはあったのだろう。とはいえあの拒絶ぶりだったのに、結局丸め込んでしまうのが、この親父なのだ。
雪は材料をずらりとカウンターに並べた。
「ご覧の通り、すべて普通の食材です。怪しい薬などは入っていません」
「本当に害はないんですか。元に戻らなかったり、しないでしょうね」
「勿論ですよ、大丈夫」
穏やかに宥める満の背中は「たぶんネ」と言っているように見えたが、雪は黙っておいた。
(さて……『秘蔵の製法、丹精込めた調合、命宿る息吹』だったか)
雪は注意深く、あの夜と同じカクテルを作り始めた。
(『心を通わせ、思いを込めて』…ってのが、どうもよくわからないが)
それでも、彼女の勇気に敬意を表して――表したつもりになって、出来上がったカクテルにそっと息を吹きかけた。
見た目は何も変わらない。これがあの怪奇現象を引き起こしたなんて、とても信じられない。
「どうぞ」
置かれたグラスを睨むことしばし、香は意を決して手を伸ばした。その華奢な指が震えているのを、雪は見た。
怖い、に決まっている。
誰よりも彼女が一番、怖いに決まっている。
でも彼女は向き合おうとしている。自分を襲った出鱈目な事態に、その秘密に。自分だったら、そんな行動が取れるだろうか。
と、その先を考える暇もなく、彼女は一息に杯を干した。いくらショートカクテルといっても、そこまで一気に呑む人はそう見かけない。感嘆に値する呑みっぷりだ。乾いた音でグラスを置くと、腕組みをして深く息をついた。
震えるその手を、見られまいとするかのように。
雪はふと思った。彼女は一度も、助けを求めはしなかった。拒絶こそしたものの、全てを自ら決定し、こちらに委ねはしなかった。
もしかして、彼女はそういう人なのではないか。強がって攻撃的に振る舞い、他人と距離を取るような人間には、そういうタイプもいるものだ。
弱味を見せたくない、人に頼りたくない、だから人を遠ざける。親しくなるのが怖いから――
雪は、やっと彼女の本当の顔を見たような気がした。
「あ」
と、小さな声をあげた香は、あの黄金の光輝に包まれていた。その光が急速に眩しさを増し、体の輪郭が一時見えなくなる。
雪は震える唇をぐっと結び、呼吸を落ち着けようと精一杯の努力を試みた。しかし胸は早鐘を打ち、深呼吸などできる訳もなかった。それは恐怖か高揚か、あるいは両方なのか、自分にもわからなかった。
光が収まるとそこには、あの日と同じ異形の姿が立ち現れていた。
琥珀色にうっすらと光を放つ半透明の人型。
継ぎ目も皺もない滑らかな表面はゼリーの質感。
顔の大きさの三分の一を占めようかという大きな眼。透けて見えるその形はラグビーボール状で、オリーブを思わせる暗緑色をしている。
口も鼻もないその顔から発せられる声は、やはり二重に聞こえる。耳に聞こえる肉声は、先程までの彼女と同じ声。そこにもう一つ、頭の中に直接響く声… としか表現できない、なぜだか感じるもの… が重なっている。
彼女は前回と同じように自分の肢体をゆっくりと眺めまわし、それからこちらを向いた。
『…… 見えてます?』
雪と満はもげるほど顔を縦に振った。
『やっぱり、気のせいじゃない…』
眉間(といっても眉は無い)に皺を寄せてそう呟く彼女に、雪は少々気が抜けてしまった。この事態を「気のせい」で片付ける気があったのか。強がりだけでなく実際、大物だ。
『もう一度、この前の説明を聞かせてもらえますか。よく覚えてなくて』
それはそうだろう、あんな状況であんな話が頭に入るわけがない。満は『酒精降ろしの巫女』について、『酒精』について、僕達と巫女の家系について、事細かに話した。
「そこでですね。立ち入った話で恐縮なんですがお嬢さん、お母様の旧姓を教えて頂けませんかね。巫女の血筋について、手掛かりを探しているんです」
『あ、私は両親を知らないんです。捨て子なんです』
えっ。
などと、相手のデリケートな情報に驚いてみせるのは当然よろしくないことだ。客商売ならば尚更だ。
「そうでしたか。これは失礼を」
かといって親父のように落ち着いた返しは出来ない。声に出さないのが精一杯だった。
(そうだったのか……)
一つ、また一つと、彼女の意外な面が見えてくる。
それから僕達は色々な話をし、気付けば小一時間が経とうとしていた。
なにせ動転してよく覚えていないが、前回は変身してから元に戻るまで、10分もなかった気がする。少なくともこれ程の時間は経っていない。
「酒は一杯の芸術、杯を干してこそ完成する。この間は一口しか飲まなかったから、すぐ解けたって訳か。成程ねえ」
『で、いつ元に戻れるんですか』
「ええとだね。そこが本日検証するべき最大の課題というかね」
彼女はぴたりと静止し、大きなその眼だけが脈打つように膨らんだ。張り手を食らったような威圧感が雪達を射竦めた。
まずい。
ですよね、そりゃ。
『ということは、判らないんですか。騙したんですか』
彼女の目には眉もなく、顔の中に表情を表すパーツはおよそ見当たらない。しかし烈火の如き怒りは肌を焦がして伝わってくる。流石の満も答えに窮し、雪は慌てて助け舟を出した。
「そうだ、あの同僚さんの話は落ち着いたんですか」
『…… 辞表を書いてると聞きました。』
彼女の顔は少しうつむき、先程の剣幕はみるみる萎んでいった。雪はほっとしかけて、彼女の落ち込みようから、中々に大きな事態が告げられた事に気付いた。
『私でもそうすると思います。個人の適性と実績を認めてくれない職場なんて、見限るのが正解だ。
法で裁けるような不正行為じゃないけど……。
いえ、だからこそ許せない…… 私… わた…… シ…… 』
「… 御坏さん?」
なにか、変だ。
耳に聞こえる声が小さくなり、頭に響く声の方が大きくなっていく。
そのとき、卓上の瓶やメニュー立てが微かに揺れ始めた。
窓も開けていないのに、風が?
空気が渦巻き、彼女に吸い寄せられてゆく。
総身が粟立ち、彼女から目が離せない。
何だ?
何が起ころうとしている?
俯いていた彼女の顔が、突如虚空を見上げた。
『我ハ裁キ、我ハ摂理。
他者ノ尊厳ヲ踏ミ躙ル事、則チ不義ナリ。相応シキ因果ヲ与エン』
暗緑色の眼の中心に、深紅の光球が爛と輝いた。
彼女は足を踏みしめることなく立ち上がった。いや、浮き上がって立ち姿に移行した、という方が近い。瞬時にして、物理法則に反した動きで。そして素早く両手を掲げると、掌の間に金色の稲妻が走り、瞬く間に膨れ上がって光の塊となった。次の瞬間――
店内全体に衝撃が走った。雪達は咄嗟に頭を庇い、そのためにはっきりとは見えなかったが、その塊は窓から外へ撃ち出されたように見えた。
轟音は止んだ。雪達は恐る恐る手を下ろし、店内を見回した。一つの窓が割れ、風に煽られてばたばたと開閉している。
目の端に微かな光を感じ、はっとして振り返ると、彼女は人の姿に立ち戻ったところだった。両掌を割れた窓の方向へ突き出し、仁王立ちの体勢から、今まさに頽くずおれようとしていた。
「香さん!」
雪は咄嗟に駆け寄り、彼女を抱き留めた。
…体温はある。息もしている。顔色は少し悪いが、酔い潰れただけという程度だ。
「ほい」
「えっ」
いつの間に奥へ取りに行ったのか、満が毛布を差し出した。気分を悪くした客のため常備してあるのだ。
(今この状況で、そんな事に頭が回るって…尊敬を通り越して薄気味悪いわ。つくづく、この親父のメンタルはどうなってるんだ)
困惑しつつも雪は香をそっと寝かせると、割れた窓の外を見た。
その正面、遥か遠くのビルで不自然に照明が明滅し、かすかに煙が立ち昇っていた。やがて消防車のサイレンが聞こえ始めた。
何かの事故か、ガス爆発か。そう思いたいところだが、只の事故では済まされないと直感が告げる。
「親父、あれって……」
「うーん、よし。知らん知らん」
「おい!?」
「だってさ、証言する方が無理ってもんだべ。『お客が怪物になって雷を撃ちました』ってか? 見ろよ、あれだけ離れたビルと、うちとの間に何の関連性を証明できる。
何も無かったんだ。現実だと言えるような事は、何もな」
「ん……」
微かな声に振り返ると、香が目を開けたところだった。雪は慌てて駆け寄った。
「……私、寝てました?」
やや憔悴しているが、正常だ。聞き慣れた肉声が耳に届き、雪は腹の底から安堵した。
「どこまで覚えてます?」
「ううん、あのマティーニを呑んで、変身、して… 少し話をして… 同僚の話を始めた辺りから覚えてないですね。
情けない、一杯で潰れるなんて。疲れてたのかな」
(……じゃあ、あの状態は覚えてないのか)
あの時、彼女の肉声は聞こえず、頭に響く声だけが聞こえた。口調も妙だった。あれが、巫女の体を間借りしただけではない、酒精本来の姿、という事なのか…?
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「匂うな」
「匂うね」
ビルの屋上に、二つの人影。手摺りにもたれかかった一人が顔を上げ、くんくんと嗅ぐような仕草をした。
「酒精の香りだ」
「ええ」
「ほかの“巫女”に会えるのかな。どんな奴かな」
「焦らないの。いずれ引き合うわ、必ずね」
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数日後、窓を修繕したヘルメティカに香の姿があった。
なんでも例の同僚氏は、退職せず望みのポストに就ける事になったらしい。
というのも、あの時彼女が撃ったビルが――ニュースでは落雷と報道されたが――、元凶の外注社員の所属先だったというのだ。その会社は大混乱に陥り、外注社員の異動は立ち消えてしまったという。
恐ろしい偶然もあるものだ、などと楽天的に考えられる訳はない。
彼女は、いや、あの酒精は確かに裁きを下したのだ。知り得ないはずの情報と、推測し得ないはずの因果を用いて、人知を超えた力で。
しかし彼女はそれを知らない。ビルを壊したのが自分だという事も覚えていないのだ。故に本気で、件の企業に「偶然」不運な事故があり、結果として同僚は不遇から脱したと思っているのだ。
「こう言っていいものか分かりませんが… ありがとうございました」
「いやいや私共はなにも。運命だったんですよ、きっと」
礼など言い出す香が妙に大人しく見えて、雪は少々気に掛かった。
「ところでお嬢さん、折り入ってご相談があるんですがね」
拭いたグラスを丁寧に置き、満が切り出した。
「貴女のあの力、“巫女”の資質…… お話しした通り、それは私共が代々追い求めてきたもの。私は是非その力を解明したい。そして貴女にとっても、あの力が不用意に発動しちゃ困るでしょう。現状、貴女の力を制御し守れるのは私らだけって事になる。
どうだろう、これからも店に来て、私共の“巫女”になっちゃくれませんか。
どんな条件でどんな力が現れ、どうすればコントロールできるのか、ともに解き明かしたい。これは貴女自身を知り、貴女だけが持つ力を見出すことでもある。どうか、ご協力頂けないでしょうか」
(私にしか…… できないこと……)
自分は求められなかった赤子、存在しなくてもよかった人間。物心ついて以来、香の奥底にはずっと微かな引け目があった。特別な人間になりたくて努力しても、結局は凡庸な会社員。いくらでも代わりのいる存在。
そんな中、降って湧いたこの異常事態。信じられないと思う一方、逃げ出してはならないと引き止める自分がいた。これこそが縋るべき砦、自分の存在意義なのではと。
もう来なければいいと思いながら、この店に舞い戻ってきたのも、根底はそうなのだ。
この出鱈目な状況を理解も納得もできてはいない。できる筈がない。それでも、知ってしまったものに蓋をして生きたくはない――
「………… はい」
「ありがとう。それじゃ、宜しく頼みます」
満は深い安堵の息をつき、頭を下げた。雪は一緒に頭を下げながら、事の順調さに一抹の不安を感じていた。
「そこでですね、お嬢さん。今後の活動を円滑に進めるために、ここの店員になってみないかな」
香は一度目をぱちくりすると、軽蔑といっていい程の呆れ顔で返した。
「そこまでは無理です。副業も禁止です」
「収入を得なければ、良いんじゃないの」
「あのですね」
「まあまあ。これから貴女には、巫女の力を貸してもらう事になる。まさか客の前で変身はできないし、再三厨房へ入ってもらうのも目立つだろう。実際働く訳じゃなくても、従業員って体ていにしておけば秘密を守りやすいと思うんだよ。どうかな」
「…… そういう… ことなら……」
不承不承、満お得意の口八丁に丸め込まれた彼女は、張り上げかかった怒声をもごもごと引っ込めていった。つくづく、狸親父恐るべし。
そうこうしている間にカクテルが出来上がり、香の前に差し出された。
「どうぞ」
見覚えのある琥珀色のマティーニだった。香は露骨に身を引き、刺すような視線を雪に向ける。
「ベルモットをスイートに換えたから、あのレシピとは違いますよ。それに息吹も掛かっていない。変身はしないはずだ」
「でも… あなたが作るだけで信用ないんだけど」
「そう思われるのも仕方ないですが、大丈夫ですって」
「怖い」でも「不安」でもなく「信用がない」ときた。いつも通りの物言いに雪は少し安心しつつも、その棘の多さに溜息をついた。
眉間に深い皺を寄せ、香はしばしグラスを睨んだ後、恐る恐るほんの僅かを舐めるようにした。
「美味しい……」
その目から険しさは消えていた。
(そんな顔が見られるなら… 悪くないかもな)
ふと、バーテンとして初めて客に喜んでもらえた日の、こそばゆい誇らしさを思い出した。そんな雪の顔にも、柔らかな微笑が宿っていた。
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