Guardian of Time ~ 時の守り人

RIKO

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第9話 江戸の火消し~時空を超えた修学旅行

2.り組”の町火消

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 ”あの火消しさん、かっこいい!”

 テンション高めの私の耳に、火事を知らせる半鐘の鐘が鳴り響く。
 
 辺りで一番高い屋根の上で、いなせなポーズをキメる町火消の青年フィギュア

 ♪芝で生まれて 神田で育ち
   今じゃ 火消しの纏持ち ♪

 彼が持つまといに付いた、白い馬簾ばれんが風に棚引いている。
 
「へえ、ああいう”男気溢れた”のが、石井の好み?」

 いつの間にか、村田が私の隣に来ていた。その横では、笹原がジオラマをのぞき込んでいる。
 
「好みも何も…… 馬っ鹿じゃないの。あんなちっちゃい人形なのに」

 でも……わりと好きだったりして。

 ナレーションまでが、江戸っ子風のいい声だ。

 ”『火事と喧嘩は江戸の華』と申しますが、 当時、江戸で起きた火事は約1800件。その対策として、隅田川の西の町に町火消の「いろは48組」と「本所・深川 16組」が設けられたのです”
 
 村田が、それに解説を付け加える。

「”石井の心の恋人”は、”十番組、り組”の町火消だ。担当地域”は、今の”浅草”辺りだ」

まとい? それって、あの火消さんが持ってる棒のこと?」

「そう!今の俺は、消防の歴史のことなら何でも答えられるぞ!  まといっていうのは、各組のシンボルで、ああみえても、とても重い。だから、”纏持ち”っていうのは、腕力もあり、真っ先に現場に駆け付ける素早さ、ここ一番では、危険を顧みぬ度胸のよさを持ち合わした町火消の花形なのだ!」

「へえ、町火消の花形かぁ……」

 ……と、その時、

「ふぅん……で、こっちの街って何?」

 ジオラマを見つめていた笹原が、火事現場の隣の街を指さして言った。江戸のジオラマの中で、そこだけが他から浮いていたからだ。門が一つある以外は、周りを堀で囲まれている。

「おお、そこは、江戸男子の”ユートピア”、吉原遊郭よしわらゆうかくだ! 出入口が、吉原大門一つなのも、堀で囲まれているのも、遊女たちが外に逃げないようにするためだ」

「ユートピア? どういう意味だ?」

「えっと、”修学旅行中の中三”の俺の口からは言えんわ。……で、吉原遊郭は独自の火消組織を持ってたんで、町火消は吉原内の火災には手を貸せなかった。それもあってか、明歴の大火から幕末までの210年間に、吉原は23回も全焼している」
 すると、ゆうちゃんが、話をむし返して来た。

「 遊郭っ……って、あの花魁《おいらん》がいる場所? 興味津々なのっ? うわぁ、意外!」

 そのツッコミが妙にムカつく。

「ゆうちゃん、笹原は別に……。あれっ? あいつ、どこへ行ったの?」

 姿を消してしまったクラスメート。すると、村田が屋外へ出る扉を指さして言った。

「隆太なら、屋外展示の防災ヘリを見に外へ出て行ったぞ」

「もうっ、私、外を見てくる!」

 あんな変人なのに、いないと気持ちが落ち着かない。
 その時、再び”アナウンスが始まった。

 ”火事でぃ、火事でぃ!”

 火事を知らせる半鐘の音が、ジオラマの江戸の町に繰り返し鳴り響いていた。


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