天空の蒼鷲 ーされど地に伏す竜 ー

すだちかをる

文字の大きさ
20 / 25
ヤナン村

恐怖との対峙-Ⅲ-

しおりを挟む
 灰色の魔法装束と、頭にはとんがり帽。
 手にもった大きな杖でSAWの斧を受け止めている見慣れた顔の老婆。

「ばあさん!」

 そこには、ヤントゥムのばあさんが立っていた。
 ばあさんが斧を杖で押しのけ、何かを呟く。
 すると杖の先端が眩く光り出し、次の瞬間、光の玉がSAWに向かって飛び出した。
 虚を付かれたSAWは避ける暇もなくそれをまともに食らい、絶叫を上げながら消えてなくなった。

「・・・立てるかい?」
 
 ばあさんがアランに手を差し伸べた。
 苦悶の表情を浮かべるも、アランは婆さんの手を取り何とか片足で立ち上がってみせる。
 ふらつくアランと周囲を警戒するばあさんの元に、ようやく自分が歩み寄ると、
 ばあさんが肩を貸すよう指示を出し、アランの体をこちらに預けた。
 
「すまねぇな、カッシム」

 自分のせいなのに、アランが申し訳なさそうに謝る。
 首を振り「お前のせいじゃねぇよ」と応えると横からばあさんの声が飛んできた。
 
「友情ごっこに浸っている場合じゃないよ!
 周囲を見てみな。
 さっきのSAWやつ絶叫せいで、お仲間さん達が集まってきたようだ」
 
 言われるまま周囲を見回すと、揺らめく炎の中から幾つものSAWが、ぬらりぬらりと現れた。
 数にして八匹。
 ぎらつく赤眼でこちらを見るや、威嚇するかのように咆える。
 アランと自分はお互い腰に下げた直剣を片手で引き抜き、身構えた。
 けれど、ばあさんはそんな自分達へ背中越しに冷たく言い放つ。
 
「あたしが道を作ってやる。その隙にお前達は逃げな、いいね?」
 
 端っから自分達を戦力として考えていないのか。
 ばあさんはそう言うと、また何かを呟いた。
 今度は、ばあさんの全身が瞬く間に眩い光に包まれていく。 
 そしてその眩さが弾け、鈍い光膜オーラを纏ったばあさんを見て驚いた。
 そこに立っていたのが"ばあさん"ではなく、紛れも無い"美少女"だったからだ。
 その美少女から、聞きなれた声が零れる。
 
「あたしが合図するまで、此処を動くんじゃないよ」

  間違いない、ばあさんだ!
  聞き返そうとするも、次の瞬間。
  美少女となったばあさんは 物凄い速度スピードで奴らの群れに突っ込んでいった。
  そこからは、正に圧巻の乱舞だった。
  一匹のSAWが突進してきたばあさんに片手斧ハンドアックスを振り下ろした。
  しかしそれを半身で交わしたばあさんが、すかさずそいつの脇腹に杖を叩き込む。
  衝撃で吹っ飛び、そいつは後方にいた四匹の仲間を巻き込みながらぶっ倒れた。
  起き上がった四匹が、怒り狂ったように四方から同時にばあさんへ飛びかかる。
  けれど、ばあさんは冷静だった。
  杖の下先で地面を叩くとばあさんを中心に光の輪が広がっていき、
  それに触れた四体のSAWは叫ぶ間もなく焼け焦げて地に落ちた。
  残りは、三匹。
  その三匹が焼け焦げた仲間を見て一瞬怯んだのを、ばあさんは見逃さなかった。
  最初の一匹を頬、二匹目を杖で下顎を強打し仕留め、
  完全に戦意喪失し敗走する最後の一匹には杖から光弾を放ち、爆死させた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

処理中です...