悪役令嬢

悪役令嬢

社交界への乱入者
華やかな世界で、一際目を惹く存在
人呼んで、女神とも魔女とも
瞬く間に社交界の黒幕、頂点へ上り詰めた私

さあ怯えなさい、田舎娘
口答えは許さなくてよ
さあ身の程を弁えなさい
跪き、道を譲るのよ

まあ愉快な見世物だこと
拒み合いなさい、絡み合いなさい
私は此処から見ているから

ある事、無い事、噂話ばかりの世界
それが、蹴落とし合う為の諸刃の剣とも知らず

ほら、ねえ
喜劇でしかないでしょう

愛が無い？
虚しい人？
私を哀れんでいるの？

好きになさい、どうでも良いもの
つまらない者達の言葉なんて、気に留めるに値しないわ

お前達は所詮、名も無き登場人物
私が築き上げた、醜く歪な塔の一部

だったら、ねえ

正義とか慈愛とかそんなものより、私は
それを踏み付け笑う、世界一美しい毒薔薇でありたい

後に、自由への革命によって、その薔薇は儚く散らされるのだけれど
けれど、例えその未来を知っていても、私は何も変わらないでしょう

平凡な未来なんて、一瞬夢見れば充分
幸福の価値なんて、私にしか分からないのだから

バルコニーから飛び降りて、赤い空を纏って
世界一美しく笑い、この人生を誇る

多くを奪われてしまったけれど
この美しさだけは失わなかったわ

｢間違い無く、私は主人公だった｣

拒み合いなさい、絡み合いなさい
私は此処から見ているから