SCRAP

都槻郁稀

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本編 19.04 - 20.03

悪夢/755/ホラー

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ㅤすぐ逃げよう。

後ろから声が聞こえる。彼女は僕の手を取り、道路脇に止めてあった軽トラに乗り込んだ。額に手を押しあて、何かを僕から抜き取った。
「よく聞いて。」

ㅤ記憶にはないが、今日、僕は悪魔と契約をしてしまったらしい。三つの願いを叶える代わりに、死ぬまで軽い悪夢に苛まれるらしい。しかし、それは嘘で、寿命が1%縮むどころか一年も経たずに精神を病んで死ぬ。おまけに三つの願いも叶えられない。とんだ詐欺だな。

ㅤ赤い球体が流れるホースを銃器で妨害しながら高速に乗った。“頭”があるのは東京だから、できるだけ離れたいとのことで、北へ向けて走らせた。
ㅤが、彼女はトンネル前で高速を降り、山道を走り始めた。
「新潟まで行かないの?」
「敵が多いからね。この近くにシェルターがある」

長いトンネルを抜けてすぐ、車を停める。
「チッ。ガス欠かよ」
鍵を挿したまま路肩に止めて、残りの道を歩く。どこから持ってきた車なのかは知らないが、多分大丈夫だろう。

ㅤ何かが居た気がして、トンネルを振り返る。何もない。振り向いた瞬間、目の前が真っ暗になる。頭蓋が軋み、頬骨に親指が食い込む。足が浮く。その腕を掴もうと手を伸ばしたとき、光が戻った。

ㅤ悪魔だった。黒い服に黒い羽、どことなく生気の抜けた雰囲気。
「もう忘れたの?ㅤ願いは叶ったはずだけど」
「聞くな。乗っ取られるぞ」
彼女は背中に白い羽を広げ、風圧で悪魔を吹き飛ばす。
「逃げよう」
僕の手を引っ張り、空へ飛ぶ。

ㅤ微かな残光も消え去ったとき、悪魔の手によって二人とも引きずり降ろされた。うつ伏せに押さえつけられる。赤い玉を食ったら終わりだ。俺は無理矢理に、ホースの先を悪魔の口へ入れた。中身は次々と悪魔の身体へ入っていき、粉になって消えた。

ㅤ肩を上下させながら振り向いたとき、俺は天使に撃たれて死んだ。
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