SCRAP

都槻郁稀

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本編 19.04 - 20.03

ロストワールド/418/終末

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ㅤどうやら、魔女もロボットも死ねないようだね。

ㅤリリーが言う。前時代的な文法だ。彼女が生まれたときには既に、文明は崩壊していた。親は一人分のワクチンと、二本の鍵をEf-βに残して消えた。

ㅤEf-βはクスリと笑う。生体スキンが自然な表情を作る。
「ねぇ、イヴ。明日はどこに行くの?」
彼女が二人じゃない誰かを認識し始めたときから、リリーはEf-βをイヴと呼んでいる。
「リリーはどうしたい?」
「あの町に行きたい」

ㅤ外郭の縁を夕陽がかすめる。都市の中から突き出た塔と、いくつかのビルが紅い地平を眺めていた。

「あの町には、まだ誰かいるかな?」
「どうだろうね」

人称に呼応する動詞の変化は消えている。語末の不安定さにイライラする人間はもういない。

ㅤリリーは知らない。この世界にもう、誰も存在しないことを。
ㅤイヴは知らない。彼女が何故、この世界に残されたのかを。

ㅤ日が沈む。大切な物を抱え込んで、地平の向こうに。知らないものを吐き出しながら、明日の朝に。
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