SCRAP

都槻郁稀

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本編 19.04 - 20.03

今際/469/ジャンル不明

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ㅤタクシーのメーターは丁度2000円を示している。左にウインカーを出して赤信号で止まった。

「そんで、死ぬってわかった瞬間、脳内麻薬を出すっていうんですよ」
「へー」

運転手が続ける。「死」と名付けられた、ベテランドライバーの話の引き出しの一つだ。

「ドーパミンとかセロトニンとかですね。どんな死に方をし」

ポーズしたように言葉が切れる。いや、それだけじゃない。たった今前を過ぎた歩行者も足を上げて止まっている。

「こんばんは」

いつの間にか隣にいたその人は、彼を見て微笑んだ。

「新藤悠里さんですね?ㅤ残念ですが、今から追突事故が起こります。運転手さんは骨折、そこの歩行者は無傷で済みますが、あなたは間に合いません」

ノイズのかかった声で流暢に話す。

「最期に、あなたが知っている時間と場所に、一日だけ飛ぶ権利が与えられます。自由に過ごしていただいて構いません。ご希望は?」


ㅤ死は、〝死ぬほど〟幸福なのかもしれない。


ㅤ止まっていた時間が進み出す。ブレーキ音を響かせながらトレーラーヘッドが突っ込んだ。リアガラスは粉砕され、後部座席は原型を留めていなかった。
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