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本編 20.04 - 21.03
密室/631
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人がひとり、床に転がっている。いや、人だったもの、と言い換えたほうが良いかも知れない。私は医者でもないし監察医でもないが、動く気配もなく、体温もなく、呼吸もないのできっと死んでいるだろう。
気がついたときにはこうなっていた。殺風景な部屋には窓も棚も時計も無いし、唯一のドアには取っ手や鍵穴どころか暗証番号を入力するようなテンキーさえ無い。おまけに私は、ここまでの道のりや経緯も知らなければ、個人を特定できる一切の記憶もなくしている。これが私達を閉じ込めた誰かの仕業なのか、それとも事故なのかはわからないけど、だからといってこの状況を見ない振りはできない。
どれくらい経っただろう。同居人は腐りもせず膨らみもせず、或いはぼうっと光って消えることもせずそこへ転がっている。朝夕の区別もつかないし、壁の向こうの物音もしない。誰かが助けに来てくれる気配もない。ここままでは飢えて乾いて死ぬかもしれない。……この男のように。
そう、終わりを感じたとき、突然彼は動き出した。呻きながら身体を起こし、ゆっくりと辺りを見回した。そして私を見つけると、突然走り出した。
殴ってしまった。反射的に、全力で。真後ろを向いて倒れると、そのまま、彼は動かなくなった。
また、いくらかの時間が流れた。部屋の外が騒がしくなり、ようやっと扉が開いた。一人が私の生存を伝えに戻り、もう一人がゆっくりと近寄ってきた。私の前で屈む。一瞬の後、彼は気味が悪いほどに口角を上げて笑った。笑って、そして、
目が覚めた。
気がついたときにはこうなっていた。殺風景な部屋には窓も棚も時計も無いし、唯一のドアには取っ手や鍵穴どころか暗証番号を入力するようなテンキーさえ無い。おまけに私は、ここまでの道のりや経緯も知らなければ、個人を特定できる一切の記憶もなくしている。これが私達を閉じ込めた誰かの仕業なのか、それとも事故なのかはわからないけど、だからといってこの状況を見ない振りはできない。
どれくらい経っただろう。同居人は腐りもせず膨らみもせず、或いはぼうっと光って消えることもせずそこへ転がっている。朝夕の区別もつかないし、壁の向こうの物音もしない。誰かが助けに来てくれる気配もない。ここままでは飢えて乾いて死ぬかもしれない。……この男のように。
そう、終わりを感じたとき、突然彼は動き出した。呻きながら身体を起こし、ゆっくりと辺りを見回した。そして私を見つけると、突然走り出した。
殴ってしまった。反射的に、全力で。真後ろを向いて倒れると、そのまま、彼は動かなくなった。
また、いくらかの時間が流れた。部屋の外が騒がしくなり、ようやっと扉が開いた。一人が私の生存を伝えに戻り、もう一人がゆっくりと近寄ってきた。私の前で屈む。一瞬の後、彼は気味が悪いほどに口角を上げて笑った。笑って、そして、
目が覚めた。
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