夜明けの冒険譚

葉月

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オ・マ・ケ

おまけ②(第2章読了後推奨)

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 これは、本編では語られない、しかし、確かにあったアルバ達の日常の1ページ。



  ◇ ◇ ◇



 ある日の朝、アルバが窓の外を見ると、ラルフが外にいるのが見えた。
 弓矢を構え、魔法で作った土の的を目掛けて射ている。
 アルバは、珍しい、と思いながらも、その場を通りすぎた。


 数時間後、お昼時になって、アルバがまた窓の外を眺めれば、ラルフはまだ射撃練習をしていた。
 アルバは外へ出て、ラルフに話しかける。

「あっ、アルバ。」
「よっ。弓の練習なんて珍しいな。どうしたんだ?」
「たまにはやっておこうと思って。それに、この前、大きな怪我もしたし、リハビリも兼ねてる。」

 アルバは、ラルフの言うを思い出して、申し訳ない顔をする。あの時は敵同士だったとはいえ、その怪我とはつまり、アルバがつけた傷だ。

「あ………すまない。」
「いいよいいよ。あのときはお互いそうするしかなかったんだしさ、気にしないで。」
「だが……。」
「…それに、この傷は僕にとって、ちゃんとけじめをつけた証みたいなものだからさ。」

 ラルフは笑ってそう言うが、アルバの表情は晴れない。
 そのとき、突然

ぐ~~

と、ラルフのお腹の虫が鳴った。
 2人は思わず、ふっと笑みがこぼれる。

「あはは。僕、お腹空いたー。今日のお昼ご飯、何?」
「サンドイッチだよ。ハムとレタスを挟んだやつと、玉子を挟んだやつをいくつか用意してる。」
「やったぁ!」

 アルバと、鼻歌を唄い上機嫌なラルフが、館の中へと戻っていった。



 シエルは学業の最中なので、アルバとラルフの2人で食事をする。
 食卓で、話を弾ませながら食べている。所謂雑談や世間話と呼ばれるものから、ほんの少しの話まで。
 ふと思い出したように、アルバがラルフに尋ねる。

「そういえば、ラルフは瘴気がだせないんだったよな? じゃあ、あの城の近くに漂ってた瘴気は誰のなんだ?」
「さあ? 知らなーい。」
「え?」
「だって、知らないもん。」
「………リベルタは?」

 少しだけ間が空いて、ラルフが目を開ける。

「リベルタとして答えるなら…知ってるよ。父さんの瘴気が残ってたんだ。さすがに、何年も経過してるから、薄まってはいたけどね。」
「なるほどな。」

 アルバは頷いて、それから、ラルフの方をじっと見た。

「な、なに?」
「…いや、改めて見ると、お前の瞳ってきれいだなぁと思って。」
「なっ!?」
「もう少し近くで見てもいいか?」
「い、いいけど。………近いよ…。」

 アルバが机に身を乗り出して、ラルフの瞳をじっくり見る。ラルフは、慣れないことに落ち着かないようだ。
 やがて、アルバは瞳を観察するのをやめ、席に座り直す。心なしか、ラルフがほっと息をつく。

「赤色の瞳といっても、完全に赤なわけじゃないんだな。ラルフのは、黄色がかっているというか…」
「え? あぁ、そうだね。魔族によって、結構違うよ。明るい色から暗い色まで。紫っぽい目の魔族もいるし。僕のは、父さんの遺伝かな。」
「へぇー。」

 知らない話に、アルバが感心する。
 ふと、あっ、とラルフが思い出しながら言う。

「そういや、魔王の瞳は不思議な色だったなぁ。普段は血のような赤色なんだけど、たまに緑色に見えることもあって……きれいだったな。」
「そうなのか。」

 アルバは驚いた。その様子にラルフはくすくす笑っている。

 それからサンドイッチが無くなった後も、アルバとラルフは楽しげに話し合っていた。


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