17 / 32
16話目:イタズラの報い
しおりを挟む
「はぁ、だっりー」
3階の一番奥まった女子トイレの個室でスマートフォンをいじくり回しながら、二宮は悪態をついていた。ここの階は音楽室を除いてあとは準備室という名の物置部屋。しかもこの女子トイレは唯一他生徒が利用する音楽室から一番離れた場所に位置し、また薄暗く陰鬱な雰囲気を醸し出すこの場所にわざわざ近づこうとする物好きなど居なかった。
そして独占状態となったこのトイレで、教室を飛び出した二宮は時間を潰していた。
「うっぜーな、あのばばあ。ちょっと脚引っかけただけじゃん。あの天野とかいう転校生がちょっとトロかっただけじゃん。あー、ほんと不快」
友人と『ラーインアプリ』でこの後、どこに遊びに行くか連絡する。
だが、相手は授業中で教師に監視でもされているのか、既読はついてもなかなか返信が来ない。遠くから聞こえる合唱の音以外は静かなこのトイレで二宮は既読のついた画面をイライラしながら見つめていると、上から水滴が降ってきて画面にそれが付着する。
「水漏れ……? えっ、なにこれ」
画面についた水滴を指でのばす。その水滴は粘度があり、指で拭っても銀色が薄く広がるだけ。
画面に付着したその銀色に光る薄く広がったものを数度指で擦ったときに画面に再度、その銀の水滴が降ってくる。
ぽつ、ぽつ。
画面にだけではない。二宮は頭部付近にも水滴が降ってきたのを感じる。
そしてゆっくりと上を見上げると、ちょうど真上から銀の液体が降ってくるところであった。
「え?」
500mL程しかない銀の液体、それはリリから分離して保健室から通気口を通って二宮を探していた奏矢であった。
そしてちょうど真上を向いた二宮の顔面に取り付き、口の中へと入り込む。口の中に収まりきれなかった分は、二宮をまるで猿ぐつわするように口元から髪の掛かる首回りまでをぐるりと伸ばして拘束する。
突然のことで立ち上がろうとした二宮、だが分離した銀色の液体が脚に絡まり、腕にも細く伸びてロープの様にがんじがらめになる。二宮はうめき声に近い声ではあるが、必死に叫び声をあげるが誰も来ることはない。二宮はここで思い出す。普段誰も来ない場所だからこそ、ここでサボっていたのだと。
(よう、クソガキ。さっきは良くもやってくれたな。おっと暴れんなよ。首が真ぷったつになりたくなけりゃあな)
二宮の頭の中に声が響く。
そしてうなじの辺りが真一文字に熱くなったかと思うと、そこに冷たい何かが入り込んでくる。
(ひぐっ、ひっ)
(冗談? 何が冗談だよ。笑えねぇよ、ああ?)
二宮はがくがくと脚を震わせて、目には恐怖から涙が浮かぶ。えづき、まともに息を吸うことも出来ない。
だが奏矢はそんな二宮の様子を見ても拘束を緩めることも、口から離れることもなかった。
(謝れ。俺に。早く)
(ひぐっ、ひっ……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい)
(俺だけじゃねぇよ。今、保健室で気を失ってるリリにも謝れ)
(ひっ、ひうっ。謝りますがら……たすっ、殺さないでくだ、ざい)
えづきながら、二宮は頭の中に響く声に頭の中で必死に謝罪する。その間にも身体に張り巡らされた拘束はぎちぎちと二宮の身体を締上げていき、骨が段々と悲鳴を上げていく。そしてうなじには熱と一方で直接脊髄を触られているかのような冷たさを感じていた。
ただただ謝罪を重ねていく二宮、たびたび”冗談”をして相手に謝罪を求められてもまともに対応したことのなかった二宮であったが、自身の命が懸かっているとなっては話は別。何が悪いのかを考えすらせずに必死に謝るのみ。奏矢は無言でただただ頭の中に響く謝罪を聞いていたが、ふと良いことを思いついたように謝罪を受け入れる。
(良いよ、”俺は”許してやるよ)
(ひぐっ、ひっ……ありがとう、ございます)
ひとまずは殺されないことに安堵する二宮。二宮にとっては奏矢は理解を超えた怪物であり、何をされるのか不安と恐怖で心も身体も支配されていた。
その様子を窺いながら、奏矢は二宮に提案をする。
(じゃあ、その代わりお前には”犬”になってもらおうか)
3階の一番奥まった女子トイレの個室でスマートフォンをいじくり回しながら、二宮は悪態をついていた。ここの階は音楽室を除いてあとは準備室という名の物置部屋。しかもこの女子トイレは唯一他生徒が利用する音楽室から一番離れた場所に位置し、また薄暗く陰鬱な雰囲気を醸し出すこの場所にわざわざ近づこうとする物好きなど居なかった。
そして独占状態となったこのトイレで、教室を飛び出した二宮は時間を潰していた。
「うっぜーな、あのばばあ。ちょっと脚引っかけただけじゃん。あの天野とかいう転校生がちょっとトロかっただけじゃん。あー、ほんと不快」
友人と『ラーインアプリ』でこの後、どこに遊びに行くか連絡する。
だが、相手は授業中で教師に監視でもされているのか、既読はついてもなかなか返信が来ない。遠くから聞こえる合唱の音以外は静かなこのトイレで二宮は既読のついた画面をイライラしながら見つめていると、上から水滴が降ってきて画面にそれが付着する。
「水漏れ……? えっ、なにこれ」
画面についた水滴を指でのばす。その水滴は粘度があり、指で拭っても銀色が薄く広がるだけ。
画面に付着したその銀色に光る薄く広がったものを数度指で擦ったときに画面に再度、その銀の水滴が降ってくる。
ぽつ、ぽつ。
画面にだけではない。二宮は頭部付近にも水滴が降ってきたのを感じる。
そしてゆっくりと上を見上げると、ちょうど真上から銀の液体が降ってくるところであった。
「え?」
500mL程しかない銀の液体、それはリリから分離して保健室から通気口を通って二宮を探していた奏矢であった。
そしてちょうど真上を向いた二宮の顔面に取り付き、口の中へと入り込む。口の中に収まりきれなかった分は、二宮をまるで猿ぐつわするように口元から髪の掛かる首回りまでをぐるりと伸ばして拘束する。
突然のことで立ち上がろうとした二宮、だが分離した銀色の液体が脚に絡まり、腕にも細く伸びてロープの様にがんじがらめになる。二宮はうめき声に近い声ではあるが、必死に叫び声をあげるが誰も来ることはない。二宮はここで思い出す。普段誰も来ない場所だからこそ、ここでサボっていたのだと。
(よう、クソガキ。さっきは良くもやってくれたな。おっと暴れんなよ。首が真ぷったつになりたくなけりゃあな)
二宮の頭の中に声が響く。
そしてうなじの辺りが真一文字に熱くなったかと思うと、そこに冷たい何かが入り込んでくる。
(ひぐっ、ひっ)
(冗談? 何が冗談だよ。笑えねぇよ、ああ?)
二宮はがくがくと脚を震わせて、目には恐怖から涙が浮かぶ。えづき、まともに息を吸うことも出来ない。
だが奏矢はそんな二宮の様子を見ても拘束を緩めることも、口から離れることもなかった。
(謝れ。俺に。早く)
(ひぐっ、ひっ……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい)
(俺だけじゃねぇよ。今、保健室で気を失ってるリリにも謝れ)
(ひっ、ひうっ。謝りますがら……たすっ、殺さないでくだ、ざい)
えづきながら、二宮は頭の中に響く声に頭の中で必死に謝罪する。その間にも身体に張り巡らされた拘束はぎちぎちと二宮の身体を締上げていき、骨が段々と悲鳴を上げていく。そしてうなじには熱と一方で直接脊髄を触られているかのような冷たさを感じていた。
ただただ謝罪を重ねていく二宮、たびたび”冗談”をして相手に謝罪を求められてもまともに対応したことのなかった二宮であったが、自身の命が懸かっているとなっては話は別。何が悪いのかを考えすらせずに必死に謝るのみ。奏矢は無言でただただ頭の中に響く謝罪を聞いていたが、ふと良いことを思いついたように謝罪を受け入れる。
(良いよ、”俺は”許してやるよ)
(ひぐっ、ひっ……ありがとう、ございます)
ひとまずは殺されないことに安堵する二宮。二宮にとっては奏矢は理解を超えた怪物であり、何をされるのか不安と恐怖で心も身体も支配されていた。
その様子を窺いながら、奏矢は二宮に提案をする。
(じゃあ、その代わりお前には”犬”になってもらおうか)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~
わんた
ファンタジー
「今日中に出ていけ! 半年も家賃を滞納してるんだぞ!」
現代日本にダンジョンとスキルが存在する世界。
渋谷で錬金術師として働いていた裕真は、研究に没頭しすぎて店舗の家賃を払えず、ついに追い出されるハメになった。
私物と素材だけが残された彼に残された選択肢は――“現地販売”の行商スタイル!
「マスター、売ればいいんですよ。死にかけの探索者に、定価よりちょっと高めで」
提案したのは、裕真が自作した人工精霊・ユミだ。
家事万能、事務仕事完璧、なのにちょっとだけ辛辣だが、裕真にとっては何物にも代えがたい家族でありパートナーでもある。
裕真はギルドの後ろ盾、そして常識すらないけれど、素材とスキルとユミがいればきっと大丈夫。
錬金術のスキルだけで社会の荒波を乗り切る。
主人公無双×のんびり錬金スローライフ!
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい
夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。
彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。
そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。
しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる