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お茶会-1
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ルゥが龍と出会ってから半日ほど経過した、ちょうどお日様が天辺から少しだけ傾き掛けた頃、禁足地の洞窟の奥で動く生き物が1匹。
その生き物の名は”欲深なドラゴン”。その龍は微睡みから覚めると、大きなあくびを1つ。
「昨日のおチビちゃんたちは、どうしているのかねェ」
久々のお客にも関わらず、龍は普段と変らぬ様子であった。龍は日課である、壁にその鋭い爪で傷を1つ付けると再度寝転んだ。
「まあ、二度と会うことなんて無いだろうけどねェ……」
龍に取っては、昨夜の予想外の訪問者など、取るに足らない些事であった。龍は長いことこの洞窟に居て、これまでに何度も予想外の訪問者は現れていたからであった。
訪問者は男、女、子供、大人、老人と様々であった。彼らは龍に襲いかかるもの、逃げ出すもの、命乞いするものと様々な反応があった。
龍は自身を襲うものを除いて、昨夜にルゥに掛けた魔法と同じものを掛けて帰したのだった。
そして、魔法を掛けられた彼らが、龍の前に姿を現すことは無かった。
「さて、今日は何をしようかねェ?」
龍は足下にある隠し扉を開くと、隠し部屋の中から古ぼけた剣のようなものを取り出す。
その剣は龍の手の中で熱を帯びるとともに、赤く光り出した。
「まったく、我ながら嫌な体質だこと……”遺物《アーティファクト》”が無いと生きられないとはねェ」
その剣は龍の手の中でゆっくりと光を無くして、ただの剣となる。その様子を見ると、龍は再びその剣を隠し部屋へと戻した。
龍がため息を吐いて天井を見つめて、ゆっくりまぶたを閉じる。いつもと変らない退屈な1日が流れる、はずであった。
「おーい! ドラゴン!」
元気な少年の声が洞窟の入り口から響く。その声の持ち主はルゥ。その横を歩く少女が1人。
「ちょっと、ルゥ! いきなりそんな大声を出したら、ドラゴンさんに迷惑でしょう!?」
その少女の名は、ルゥ。
「おやおや、こんなのは初めてだねェ」
その声に反応した龍は目を細める。多くの刻を生きた龍に取ってこの様なことは、今までなかったのだ。
「ドラゴン! こんにちは!」
「こんにちは、ルゥ」
「こ、こんにちは、ドラゴンさん!」
「こんにちは、お嬢ちゃん。そういえばアナタの名前は聞いてなかったわねェ?」
「わ、わたしの名前はメイっていうの」
「じゃあ、これからよろしくねェ、メイ」
「よ、よろしくお願いしますっ」
そうして2人と龍は挨拶を済ませると、龍は改めて2人を見渡して口を開いた。
「誰にも言わないなんて、良い心がけじゃないィ、ルゥ?」
「こんなこと誰にも言う訳がないよ! せっかくドラゴンに会えたのに!」
龍はルゥの言葉に目を丸くすると、少しだけ笑う。
「それなら、なおのこと誰かに言うもんじゃないのかねェ」
そして龍は軽いため息をついた。心なしか、龍は嬉しそうな雰囲気を漂わせる。
「こ、これ、ドラゴンさんに持ってきたの!」
突然、メイがドラゴンに話しかける。その手にはツタで編まれたバスケットが握られており、その上には黄色のスカーフが掛けられていた。
そのスカーフをゆっくりと外すと中から、綺麗に焼き上げられた果実パイが現れた。
「あら、嬉しいわねェ。こういう気遣いが出来る子って好きよォ」
その様子を見たルゥは鼻を鳴らすと、大きく胸を張る。
「おれもお土産を持ってきているんだ!」
そうしてルゥがポケットを漁ると、そのポケットから深い青色をした小石を取り出す。そしてそれを見せつけるように掲げる。
「おれの宝物! これをあげるよ!」
「あらあら、今日は贈り物が多いことさねェ」
龍は口元をほころばして、目を細める。その前に立つ、満面の笑みで小石をかがけ続けるルゥ、そしてメイ。
「その小石は、分けられないけどねェ」
龍はゆっくりと、その巨体を揺らしながら2人に近づいてくる。そしてメイが持ったバスケットを指さす。
「そのパイは、私たちで分けられるさねェ」
ルゥとメイはきょとんとした表情になったが、すぐに意味を理解して笑みを取り戻す。
「じゃあ、お茶はないけど、お茶会にしようかねェ」
そうして、ルゥとメイ、龍のお茶会が始まったのであった。
その生き物の名は”欲深なドラゴン”。その龍は微睡みから覚めると、大きなあくびを1つ。
「昨日のおチビちゃんたちは、どうしているのかねェ」
久々のお客にも関わらず、龍は普段と変らぬ様子であった。龍は日課である、壁にその鋭い爪で傷を1つ付けると再度寝転んだ。
「まあ、二度と会うことなんて無いだろうけどねェ……」
龍に取っては、昨夜の予想外の訪問者など、取るに足らない些事であった。龍は長いことこの洞窟に居て、これまでに何度も予想外の訪問者は現れていたからであった。
訪問者は男、女、子供、大人、老人と様々であった。彼らは龍に襲いかかるもの、逃げ出すもの、命乞いするものと様々な反応があった。
龍は自身を襲うものを除いて、昨夜にルゥに掛けた魔法と同じものを掛けて帰したのだった。
そして、魔法を掛けられた彼らが、龍の前に姿を現すことは無かった。
「さて、今日は何をしようかねェ?」
龍は足下にある隠し扉を開くと、隠し部屋の中から古ぼけた剣のようなものを取り出す。
その剣は龍の手の中で熱を帯びるとともに、赤く光り出した。
「まったく、我ながら嫌な体質だこと……”遺物《アーティファクト》”が無いと生きられないとはねェ」
その剣は龍の手の中でゆっくりと光を無くして、ただの剣となる。その様子を見ると、龍は再びその剣を隠し部屋へと戻した。
龍がため息を吐いて天井を見つめて、ゆっくりまぶたを閉じる。いつもと変らない退屈な1日が流れる、はずであった。
「おーい! ドラゴン!」
元気な少年の声が洞窟の入り口から響く。その声の持ち主はルゥ。その横を歩く少女が1人。
「ちょっと、ルゥ! いきなりそんな大声を出したら、ドラゴンさんに迷惑でしょう!?」
その少女の名は、ルゥ。
「おやおや、こんなのは初めてだねェ」
その声に反応した龍は目を細める。多くの刻を生きた龍に取ってこの様なことは、今までなかったのだ。
「ドラゴン! こんにちは!」
「こんにちは、ルゥ」
「こ、こんにちは、ドラゴンさん!」
「こんにちは、お嬢ちゃん。そういえばアナタの名前は聞いてなかったわねェ?」
「わ、わたしの名前はメイっていうの」
「じゃあ、これからよろしくねェ、メイ」
「よ、よろしくお願いしますっ」
そうして2人と龍は挨拶を済ませると、龍は改めて2人を見渡して口を開いた。
「誰にも言わないなんて、良い心がけじゃないィ、ルゥ?」
「こんなこと誰にも言う訳がないよ! せっかくドラゴンに会えたのに!」
龍はルゥの言葉に目を丸くすると、少しだけ笑う。
「それなら、なおのこと誰かに言うもんじゃないのかねェ」
そして龍は軽いため息をついた。心なしか、龍は嬉しそうな雰囲気を漂わせる。
「こ、これ、ドラゴンさんに持ってきたの!」
突然、メイがドラゴンに話しかける。その手にはツタで編まれたバスケットが握られており、その上には黄色のスカーフが掛けられていた。
そのスカーフをゆっくりと外すと中から、綺麗に焼き上げられた果実パイが現れた。
「あら、嬉しいわねェ。こういう気遣いが出来る子って好きよォ」
その様子を見たルゥは鼻を鳴らすと、大きく胸を張る。
「おれもお土産を持ってきているんだ!」
そうしてルゥがポケットを漁ると、そのポケットから深い青色をした小石を取り出す。そしてそれを見せつけるように掲げる。
「おれの宝物! これをあげるよ!」
「あらあら、今日は贈り物が多いことさねェ」
龍は口元をほころばして、目を細める。その前に立つ、満面の笑みで小石をかがけ続けるルゥ、そしてメイ。
「その小石は、分けられないけどねェ」
龍はゆっくりと、その巨体を揺らしながら2人に近づいてくる。そしてメイが持ったバスケットを指さす。
「そのパイは、私たちで分けられるさねェ」
ルゥとメイはきょとんとした表情になったが、すぐに意味を理解して笑みを取り戻す。
「じゃあ、お茶はないけど、お茶会にしようかねェ」
そうして、ルゥとメイ、龍のお茶会が始まったのであった。
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