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第6話 〇〇〇

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 『おーーい、起きてくれー。』

 「う~ん。…………」

 誰かが起こそうとする声が聞こえ、その声で起きた氷魔はゆっくりと上半身を起こし自分の周囲を見渡した。すると、周りが真っ白な空間の中でポツリと存在している場違いなこたつを発見し、思考が止まっていると、こたつに入っている金髪の青年から声をかけられる。

 『やっと起きたかい?涼川 氷魔くん。』

 突然知らない人に声をかけられただけではなく、自分の名前をも言われたことで、氷魔は少しばかりパニックりなりそうだった。

 『あ~。難しく考えなくていいよ。下手に考えるとパニックになるだろうし。……う~んそうだな。君が最近何をしていたか、考えてごらん?』

 (最近何をしていたか?俺は、………異世界で生きるために、………あれ?だとここは。)

 『おっ!やっと落ちついて考えることが出来たね。そう!君は今は夢の中。ただ、ここがただの夢の中って訳じゃない。そうだね……君が最近文句を言っていた人物が、とある力で夢の中に乗り込んできたってところかな?』

 (まさか?!……いやそんなわけ、あるか。ていうか、心の声聞こえてますよね?
最初っから声だしてないですよね、俺。)

 『ハハハッ。そうそう、そういう反応が見たかった。そうだよ、心の声しっかり聞こえているから。…じゃあもう、ネタバラシでいいね。君が思っている通り、僕は神様だよ。ただ、たくさんいる中の1柱だけどね。』

 「そんな神様が俺に何のようですか?どうせ、神の遊戯者関連でしょ?」

 『ふふふっ、そうだよ。まさしくその通り。ただ、僕の話は最後まで聞こうね?』

 場の空気が一気に重くなった。氷魔は神様と話しているときに、立ちあがりこたつの方に歩いていたが、空気の重さに耐えらず、真っ白な空間で片膝をつき、潰されそうになる。

 「うぐっ!」

 『あ~ごめんごめん。ちょっとイラッとしちゃたから。』

 神様が謝ると、空気の重さがもとに戻る。
そのあと、動けるようになった氷魔は、体勢を変え、あぐらの状態になる。

 『ん?こたつまで来ないのかい?警戒しているのか。まぁいいか、それじゃ続けるよ。神の遊戯に招かれた参加者は、君が考えていた通り、バスに乗っていた人も含まれる。なんと総勢46人。この遊戯は死ぬはずだった皆を異世界に転移させ、本来持つことのない力を与えて、どういう道をたどるのかをただみるだけ。君たちが、何かしなければいけないということはない。ただ単に、英雄のような人生を歩むのか、魔物に殺されるだけの人生になるのかを神達で賭け事のように見守るだけなのさ。……………質問は、あるかい?』

 「その………遊戯の趣旨はわかった。参加者の人生をみることなんだろ?ならなんで、夢の中だとしても俺に接触したんだ?」

 『その通り。みることが僕たちの趣旨だ。それに、何故君に接触をしたのか君ならすぐに疑問に思うと思っていたよ。……何故接触をしたのか。それは、今回の報酬をあげるためだ。』

 (報酬?)

 『君が疑うのもわかるが、これは僕たち神の、いや遊戯のルールなんだ。今回は、参加者の中で一番最初にスキルレベルを10まで上げたものに、遊戯の趣旨の説明と報酬として神にして欲しいことを叶えるということさ。ただ、無理な願いをするものにはなにもあげないのがこの遊戯のルールだと言うことを忘れないように。わかったかな?』

 「わかった。」

 『なら、いってみたまえ。』

 「………ステータスの能力値を自分で割り振れるようにしてくれるか?」

 『そんなことなら簡単だ。ふふっ。そんなに警戒しなくてもいいよ。てっきり、ステータスの説明について文句を言われると思っていたから、何もあげない予定だったけど。こんなに簡単なことなら、他にもして欲しいことはあるかい?』

 氷魔は神が怒らない範囲の願いを必死に考えていた。

 (『昔の遊戯の参加者達は、バカなやつらが多かったけど、今回はなかなか面白くなりそうだ。それに、この涼川 氷魔くんのジョブは面白い。彼が一番の目玉になるだろうな。他の神に気づかれないように、接点を持っておくのも悪くないな。』)

 「なら、称号についている鑑定をより強力なものにできますか?」

 『加護?………本当だ。加護なんてあったんだ。う~ん、いいよ。ただ、これでおしまいだからね。』

 「はい、ありがとうございます。」

 『じゃあ、これで終わりだね。ステータスは、後で確認するといいよ。……そうだ、オマケで教えてあげる。まず1つ目は、今回のような報酬について。報酬は他にもあるけど、もし自分で報酬を貰えなかったら、参加者の誰かが報酬を獲得していることを忘れないように。あと、今回のようなスキルLv.10に到達した報酬とか関係なくすべてが早い者勝ちだから。次に2つ目。ジョブレベル5までは、遊戯参加者特典があるから気を付けて。最後に、あとでスキルツリーを確認した方がいいよ?』

 「?  わかりましたけど、遊戯参加者特典って、『じゃあ』えっ?」

 氷魔がしゃべろうとすると、神様から中断され、意識が遠のいていく。

 (こんな……急…………に……………)

 真っ白な空間から氷魔が消えていき、残ったのは、こたつに入っている神様だけになった。



 すると、神様の少し後ろから、黒い渦が現れた。

 『おやっ?珍しいな。何で君がここに?』

 神様が黒い渦に向かって声をかけながら振りかえる。黒い渦からは、銀髪を腰元までのばした女性が現れる。

 『なんでって、私が今回の遊戯を担当しているのよ。それにしても、バゼル。貴方、彼に何かしたんじゃないでしょうね?』

 『お~怖い。まだなにもしてないよ、サニファ。』

 サニファと言われた女性は、つり目気味の綺麗な水色の瞳で、金髪の青年バゼルを睨み付ける。

 『いま、まだって言ったわね?』

 『うぐっ?!いやぁ~言ったかな~。ハハハッ。』

 金髪の青年バゼルは、痛いところを突かれたようで苦笑いをしている。それを見ていた銀髪の女性サニファは、よりバゼルを警戒するのだった。

 『とりあえず、サニファが今回の遊戯を担当しているからここに来たってことはわかったけど。なんでいまなんだい?彼がいるときでもいいだろうに。会いたかったんだろ?』

 『ええ、もちろん逢いたいわ。だけど、彼と逢うにはまだはやいの、彼が成長したあとに逢うことに意味があるもの。神は、未来を知っているけど伝えられないし、変えることも出来ない。けど、そのときになれば神の私でも助けられるようになる。うふふっ。』

 (『神がたまに知れる未来は、自分の司ることに関わることのはず。魔を司る神サニファ。いったいどんな未来をみて、彼のどんな所に惹かれたのか。』)

 神様同士の語らいはまだまだ続く。いったいどんな秘密を喋っているのか、遊戯の参加者は誰ひとりとして知らない。




 
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