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(55)勉強教えてもらう
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次に赤点を取ればバスケが出来なくなってしまう陽巻。危機的状況を回避するため、学年トップである柳に勉強を教えてもらうよう頼むが……。
元気×優等生。
受けの気持ちは何でもお見通しな攻めが好きです。
柳 優斗(やなぎ ゆうと)
優等生。密かに陽巻に想いを寄せている。
陽巻 元気(ひまき げんき)
バスケ部期待の一年。名前の通り、皆の前では元気いっぱい。
本当は、プロットの段階では陽巻の母親に柳が殺され云々共倒れクソ鬱バッドエンドだったんですけど、序盤が思いがけず明るめになってしまったが故にハッピーエンドになった上、超能力設定まで付加されてしまいました……。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「頼む、柳! 俺に勉強教えてくれ!」
「へ……?」
期末試験まであと一週間を切った放課後。僕、柳 優斗(やなぎ ゆうと)は、憧れの人に頭を下げられていた。
「普段、絡みもないくせに、こんなことを頼むのはどうかと思う! 我ながら図々しいのは百も承知! でも、もう俺にはお前しかいないんだよ~!」
「あ、あの……」
ずいずい迫ってくる彼の気迫に押されて後退するも、ついに教室の端、鞄棚に背がぶつかり、汗が噴き出す。
「な、人助けだと思って! お礼に、俺にできることならなんだってするから! 頼むよ、柳~!」
「う……。その、じゃあ、少しだけ、なら……」
「マジ!? さっすが柳! 神柳!」
これだけ懇願されては断れない。元々気が弱いのと、想い人から頼られたのと。断れるわけがない。
「あう、手が、もげる……」
「あ、ごめんごめん!」
感謝の腕ブンから解放された僕は、改めてこれは現実なのだと思い知る。これ、明日筋肉痛になったりしないだろうな……?
「ええと。でも僕、人に勉強教えたことなんてないから、上手くできないかも」
「え。そうなの? 学年トップなんだから、きっと皆から頼られてると思ったんだけど」
皆から頼られる、か。
「残念ながら。僕は君と違って、皆から距離を置かれる存在だからね」
「距離を置かれる? ああ、それって柳が綺麗だからだろ?」
「は……?」
「なんだ、気づいてなかったんだ。柳ってさ、頭良いし、どっか気品ってか、しなやかってか。こう……、顔も整ってるし、細身だし、髪の毛綺麗な黒だし、さらさらだし……うわ、すっげー、さらさら! 猫の毛みたいで気持ち~!」
「ちょ、髪、触るな! というか、どうやったらそういう解釈になる? 僕は不愛想で偉そうで、無口なコミュ障だから距離を置かれてんだよ!」
はぁ。自分で言ってて虚しくなるな、コレ。てか、さすがは向日葵王子。なんでもポジティブな思考に持っていけるのがすごい。
「向日葵王子って、もしかして俺のこと?」
「っ! え、僕、声に出してた?」
「ふふ。柳も心の中ではあだ名とか使うんだね」
「い、いや、ちが! だって、クラスの女子がお前に隠れてそう呼んでるの聞いたから! それが残ってて……!」
陽巻 元気(ひまき げんき)だから向日葵王子。明るい性格に明るい髪色。まるで太陽のように咲く彼の笑顔は、まさに向日葵そのものだ。あだ名を考えた人は、中々センスがある。
「俺はちょっと気恥ずかしいけどね」
「うわ! えっ。僕、また声に出して……?」
うう、いくら想い人に頼られたからといって、浮つきすぎだ!
「うん。とにかくさ、俺はなんとしてもこの期末で赤点を回避しなければいけないんだよね~」
「ああ、そっか。確かバスケ部全員赤点取って、顧問がキレて……。次に赤点取った部員は問答無用でベンチだって……」
「そうそう。せっかくレギュラー取れたのに、こんなことで試合に出られないのは勘弁してほしいってか……」
いや、でも……。僕なんかが彼に教えるなんて、恐れ多いし。二人っきりで勉強とか、心臓が持つかどうか……。
「あの、でも、そういうことなら、プロに教わった方が……。家庭教師とか、さ」
「そうしたいのは山々なんだけどさ。俺んち、母子家庭だから金なくて。バスケも無理言ってやってるんだよね。母さんも病気でさ……。でも、バスケで活躍したって聞くと、すげー喜んでくれて……」
「えっ」
知らなかった……。僕にとっての光である彼に、そんな闇があるだなんて。
「柳にとって、負担でしかないことはわかってる。でも、同情でもいいから、手を貸してくれないかなって……」
う……。そんなにしょんぼりしないでくれ! 僕にだって良心はあるんだ!
「わ、わかったってば! 少しと言わず、しっかりサポートするよ……!」
「へへ! さっすが神柳様!」
「ぎゃ!」
思い切り抱き潰して頬ずりしてくる陽巻に、体温が急上昇する。
いくらなんでもスキンシップが激しすぎる! こんなんで、邪な感情を抱いている僕は耐えられるのだろうか……。
「ごめんな、柳。ほんと、赤点回避した暁には、なんでもするから!」
「いや、僕は何にもいらないから……」
二人きりの教室で、さっそく机を引っ付け、教科書を広げる。
「でも……」
「人に教えた方が覚えやすいんだ。お互い勉強ってことだよ」
「柳……!」
彼の瞳が信頼と感動で潤む。ああ、この好意は僕に向けられているんだ……。
今までは、一方的に見つめることしかできなかった遠い太陽。それが、今、こんなにも近くで僕を認識しているだなんて……。眩しさで潰れそうな瞳を薄める。
僕の恋が叶うことはない。だけど、せめて、君の役に立てるのならば。君に感謝される存在になれるのならば。何にもいらないどころではない。きっと僕の方が多く貰いすぎている。
そうして、二人で放課後勉強会をひっそり行うこと三日目。
「柳の教え方、ほんとに分かりやすくて助かる!」
「君の覚えが良いんだよ」
「そうやって褒めてくれるとこも、さ。ほんと上手いよなぁ」
「いや、ほんとに僕はそう思って……」
ノートから目を上げた瞬間、はた、と目が合う。が、それはすぐに逸らされる。
「いやー、なんか、そんなに真っ直ぐ褒められたことがないからさぁ! その、調子狂うな、あはは!」
「あ、ああ。うん、ごめんね……?」
彼のぎこちない笑顔に、胸がちくりと痛む。
この距離感に慣れたつもりだったけど……。幸せすぎて、少しやり過ぎたかな? でも、これくらい普通だよな……? 友達として。人間として。彼は褒めるに値する人物じゃないか。お世辞なんかで言ってるんじゃないし……。あ、でも友達からストレートに褒められたら気持ち悪い……? だめだ、友達がいたことなんてないから、わからない……!
「いや、ごめん! 違うんだよ! 褒められたのはすげー嬉しい! ただ、柳に認められたの嬉しすぎて……。あと、柳の瞳が綺麗すぎて……!」
「僕の目?」
「ほら、えっと。嘘ついてない、澄み切った瞳が! っあ~! とにかく柳のことは大好きだから!」
「ああ、ありがとう……?」
び、びっくりした……。陽巻に大好きだって言われる日が来ようとは。彼はきっと友達みんなにそう言えるんだろうけど。僕みたいな日陰の存在には、やっぱり眩しすぎる……。
赤く染まる夕日を見つめる。紫に染まりつつある空に、少しだけ気持ちが落ち着いてゆく。
あと二日すれば、僕の夢も覚めてしまう。それまでに、浮ついた気持ちを沈めてしまわなくては。
「柳~!」
「うわっ」
四日目の朝。教室に入った途端、いきなり抱きつかれた僕は、思わず悲鳴を上げる。
みんな見てるのに……! どうしよ、僕が陽巻と親しげにしてるなんて、そりゃびっくりだよね。うう、恥ずかしい……。
「これ! 見て!」
「ん?」
周りの視線なんてお構いなしの陽巻は、僕を放すと同時に目の前に紙を突きつける。
「あっ、70点!?」
目を凝らして見ると、それは昨日行われたテストの答案用紙だった。なるほど、もう返されたのか。
皆の視線を避けながら、周りを見渡してみると、まだ来てない生徒の机には裏返された紙が置いてある。それは、僕の机にも勿論置いてあって。
「な? 俺、こんないい点数初めてだよ!」
柳のおかげだよ~!! と、もう一度抱きしめられた僕の心臓は、いよいよはち切れそうになる。
「は、放してくれ……!」
「あ、ごめんごめん。柳ってばこういうの苦手っぽいもんね」
う……。フォローされると、余計に恥ずかしい……! そんで、申し訳ない……! でも、これ以上抱きしめられたら、好きって気持ちを消せなくなる……。あと少しなんだ。あと少ししたら、この恋心も、すっぱり諦められるはず。僕だけの綺麗な思い出として、悔いなく終わらせられる。用済みになったら、陽巻から話しかけられることもなくなるはずだ。そしたら僕は潔く、この汚い恋を消せるはずで……。
「……柳?」
「へ……?」
一瞬、彼の瞳から光が消え、怒りの感情が僕に突き刺さる。
あれ、僕、なんか失敗した……? あ、スキンシップを拒否したからか? でも、さっきは笑って許してくれたのに……。うう……、わからない……。でも、こんな陽巻の表情、見たことないし……。怖い……。僕は、どうすれば……。
「あ、いや。ごめん。ちょっと俺、体調悪くて!」
「えっ。そうなのか? 保健室行かなくて平気か……?」
「うん。大丈夫。心配しないで。それよりさ、柳は何点だったの?」
「僕……?」
誤魔化されたような気もしたが、促されるまま机に伏せられたテストを手に取る。
「うわ、満点……」
「あはは」
覗き込まれた答案用紙は百点満点。でも、僕にとってはどうでもいいことのように思えた。
後ろから抱きついてきた陽巻の吐息がうなじに掛かる。それだけで舞い上がってしまいそうな自分に嫌気がさす。
いくら成績が良くたって、人の気持ちがわからないんじゃ、駄目だ……。
「柳」
「えっと。そうだ! ほら、この問題。君が聞いてくれたとこ。これ、僕も出るとは思ってなかったから、助かっちゃったよ!」
隠さなきゃ。せめてあと少しだけでも、彼の期待に応えなきゃ。彼の周りの友達みたいに、せめてもう少し、明るく振る舞わなくちゃ。そうじゃなきゃ、僕は、彼の隣にいられない……。
「そっか。それじゃあ、今日もよろしく頼む」
「うん。あと少し、気合入れていこうね!」
そうして最終日の放課後。
『おい、お前ら。勉強なら家でやれ。もう教室閉めるぞ?』
「え~! 先生無慈悲~! せっかく頑張ろうってとこだったのにさ!」
『やる気なのは嬉しいが、こちとらテスト準備で忙しいんだ。ほら、さっさと帰れ』
「そんな~! ど、どうしよ、柳~!」
がっくりと肩を落とした陽巻が、瞳を潤ませながら僕を見つめる。
「えっと。そうだ、図書室に行くのは?」
「それだ……!」
『図書室も閉まってんぞ。残念だったな』
「そんな~」
先生の言葉に、再び陽巻は肩を落とす。ぬか喜びさせちゃったな……。
「ウチは遠いし、母さんがいるしなぁ……。柳、どうしたらいいと思う……?」
「えっと……。それじゃあ、ウチに来る……?」
「えっ。いいの?!」
本当は、自分の部屋に陽巻を入れたくなかった。だって、絶対変に意識してしまうから。でも、彼の勉強を最後まで見たかったし。何より、少しでも長く彼に信頼される優越感に浸っていたかった。
「一人暮らしだから、大したお構いもできないけど」
「うわー、すげーきれー!」
マンションの一室。僕の味気ない部屋で、陽巻ははしゃぎながら辺りを見渡す。
「物がないだけだよ」
「あ。麦茶だ」
からりと氷を揺らしながら、運んできた麦茶を彼の前に出す。
「ごめん、ジュースとかなかった。あれだったら買いに行ってくるけど」
「や、俺こそごめん。買ってくればよかったな。そこまで気が回らなくて。ってかお構いなく」
「ごめんね? 僕、洗濯物入れてくるから。先にわかるとこやっといて」
「はーい」
改めて、何だか変な感じだ。僕が生活しているこの部屋に、他人、それも想い人がいるなんて。わかってたら、もっと掃除したのに。お菓子だって買っておいたのに。取り止めもない小さな後悔が溢れて、どうにも落ち着かない。
「ごめん。さ、始めようか」
洗濯物を畳み終わったところで、彼に向き合って座る。
「ふふ……!」
「え。なにかおかしいとこでもあった?」
いきなり笑い出す彼に、慌てて部屋を見渡す。なんだろ。本棚か? 本の趣味、おかしい? それとも、玄関に壊れた傘放置してるから? あっ。もしかして、テレビの上に飾ってあるマスコット?! 違うんだ、あれは飲み物のおまけについてきただけで……! 捨てるのが勿体なかったから……!
「いや、なんか。柳も人間なんだなって思って」
「は?」
「なんていうか。麦茶、自分で作ってる柳とか。洗濯物畳む柳とか。ここで柳が生活してんだなって思ったら、なんか、ね?」
「一人暮らしなんだから、当たり前だろ」
「うん。そうだけど。なんかさあ、愛おしくて」
「……? 君だってそれぐらいやるだろ?」
「あ~。俺はまぁ。甘えてばっかかな。だから、余計に柳が眩しく見えるよ」
そう言って、目を細める彼の方が僕にはよっぽど眩しい。
「ほら、冗談言ってる場合じゃない。土日開けたらテストなんだぞ。今の内わかんないところは聞いてくれ」
「ね、土日も一緒に勉強しちゃ駄目?」
「駄目。陽巻が一緒だと集中できない」
「ちぇ」
「わかったらとっととやる!」
それからしばらく。昨日、張り切って陽巻のために要点プリントを作っていたおかげで寝不足だった僕は、ついに睡魔に負けてしまった。
「ん……」
『柳』
夢の中の陽巻は、真っすぐに僕を見つめていた。
「陽巻……?」
駄目だよ。ちゃんと勉強しなくちゃ。どうして僕をそんなに見てくるんだ?
『柳、好きだよ……』
ああ。そうか。夢なんだっけ。これ。じゃあ、目の前の陽巻は、全部僕の願望ってわけだ。
頬を撫でてくる陽巻の手を、そっと掴んで遠ざける。でも、僕の手はすぐに掴み返されて、そのまま床に押し倒される。
は……? なんだよこれ。全然力が入んない……。
のしかかる陽巻の顔が、近づいてくる。
「や……!」
駄目だ。こんなの、夢の中でも、許されないのに……。
僕の欲を背負った陽巻は、されるがままの僕に向かって微笑む。
やめてくれ。違うんだ。こんなこと、しなくていい!
『柳、愛してるよ』
「っあ、は……」
こんなこと……。僕は、こんなことを望んでいるのか……?
『柳、可愛い』
「んっ……」
陽巻の手が触れたとこ全部が熱くて。気持ちいい。
『優斗。俺のモノになってよ』
「あ……」
込み上げる欲をかろうじて飲み込む。駄目だ。こんな浅ましい夢。汚らわしい。こんなこと、してる場合じゃ、ない。目を覚ませ。僕は、陽巻に頼られたんだ。しっかり、最後まで綺麗な思い出で、終わらせなくちゃ……!
「っ、陽巻!」
「わっ。びっくりした!」
悪夢から目覚めると、すぐ側に陽巻の顔があった。
「は……」
「え、えっと。なんか、うなされてるみたいだったから。大丈夫かなって」
珍しく動揺した陽巻の様子を見ながら、噴き出してくる汗を拭い、呼吸を整える。
「ごめん。ちょっと、悪夢を見てた……」
徐々に思い出される夢に、吐き気すらしてくる。
「大丈夫?」
「ん。大したこと、ないよ。それより、勉強はどう?」
「ばっちりだよ。柳のおかげ。後は土日で柳の作ってくれたプリントやれば完璧!」
屈託なく微笑む彼に、ようやく深く息をつく。
「よかった。それじゃあ、僕はそろそろ帰るね。わからないとこがあったら、電話で聞いて?」
「ああ。ありがとう。柳」
こうして。僕と陽巻の縁は切れた。
と思ったんだけど。
「柳~! 見て見て! これも平均取れた!」
「うぐっ。お、おめでと……」
テストが返ってくるたびに、僕は陽巻に抱き着かれて、クラスメイトの注目を受けた。
「柳のおかげで全教科平均以上だったよ! ほんと神柳!」
「いや、それは。陽巻が頑張ったからで……」
キラキラとした瞳に当てられて、僕は思わずそっぽを向く。早く僕を捨てて欲しかった。用無しになったんだから、もうこれ以上関わってきてほしくはなかった。だって。これ以上関わってしまえば、僕は、それ以上を求めてしまう。
「柳、お前さえよければ、これからも俺に勉強を教えてくれないか?」
心臓が跳ねる。彼が僕を必要としてくれている。でも、自分がどうするべきなのかもわかっている。
「それはできない。君はもう一人で勉強できるはずだ。それに、僕だって暇じゃない。どうしてもってんなら、今度は他の人に頼んでみたら?」
そう言い残して、僕は教室を後にする。靴を履き替え、外に出た瞬間、曇り空からぽつりぽつりと雨が落ち、あっという間に土砂降りとなる。
傘、持ってきて良かったな。
「柳! 待てってば!」
「……」
追いかけてきた陽巻を無視した僕は、傘を差し、歩き出す。地面を叩きつける雨音が、今は妙に心地良い。
「どうしてお前は俺から逃げようとするんだよ! 逃げるなよ! 何でも一人で決めつけて、勝手に終わらせようとするなよ!」
「……陽巻にはわからないよ」
叫ぶ彼に、ぼそりと言葉を漏らす。勿論、彼の耳には届いていないだろう。
「柳、俺のどこが駄目なんだよ……」
陽巻は駄目じゃない。駄目なのは僕なんだ。だから、もう構わないでくれ。
「さよなら!」
僕は走った。雨で靴と裾が濡れるのにも構わず。彼も途中までは追ってきていたが、いつの間にか後ろの方で、傘も差さず立ち尽くしていた。
激しかった雨も上がった翌日。
『陽巻くん、風邪でお休みらしいよ~』『え~。ショック~!』
登校した途端、女子たちの声を聞き、僕は罪悪感を覚える。
風邪でって。そんなの、明らかに昨日雨に打たれたのが原因じゃないか……。
なんとなく教室に入りづらくなった僕は、そのまま意味もなく廊下をうろつく。
『陽巻は風邪だってな』『ええ。ようやく勉強の調子が戻ってきたってのに』『ああ、そういえば前々回のテストだけ見事に全教科赤点取ったんだってな』『そうなんです。今まで良い点取ってたのに。今回だって、彼にしてはまだ低いぐらいですよ』
「え……?」
どういうことだ?
『おっ。柳じゃないか。どうした、突っ立って』『丁度良かった。お前、最近陽巻と仲良いらしいな。ってことで、放課後職員室寄ってくれ。プリント届けるの頼むから』
「えっ。僕が?」
『なんだ。予定でもあるのか?』
「い、いえ。そういうわけじゃ……」
『じゃ、よろしく頼むぞ』
あああ! またやってしまった! どうしても人の頼みが断れない!
「……。ポストに入れたら、黙って帰ろう」
放課後。教わった住所に辿り着く。陽巻も言ってた通り、少し遠い場所にそれはあった。そう。
「大豪邸……」
そこにあったのは、広大な敷地面積。立派な庭。お城のような家。
「これ、間違えたかな……?」
地図アプリと豪邸を何回も見直すうちに、ふと門前に表札があることに気づく。
「陽巻……」
紛れもないその二文字。珍しいその名字が早々あるわけもない。
どういうことだよ。貧乏っていうのは……?
「と、とりあえず、ポスト……」
こんな大豪邸にポストという概念があるのかも怪しいが、キョロキョロせずにはいられない。
『君。ウチに何のようかね?』
「ひっ」
突然、後ろから声を掛けられ、僕は情けないほど首を竦める。
『ん。その制服。もしかして元気の友達か?』
「えっ。ええと……」
目の前の厳つい男に、何と答えていいかわからず狼狽えていると、男はふいに笑い出す。
あ……。笑った時の目が、陽巻と似てる……。
『そんなに怖がらなくていい。私は元気の父だ。お見舞いに来てくれたんだろう? ささ、あがってくれ』
父親……?! 母子家庭じゃないじゃないか!
形容しがたい感情を余していると、陽巻の父親が執事らしき男に何か命じて僕の鞄を奪い取って渡す。
「あ、ちょっと。僕はプリントを渡しに来ただけで……!」
『いいからゆっくりしていきなさい。元気も風邪とは言っているが、ほとんど熱もない。謂わばズル休みさ。きっと学校で何かあったんだろう』
それを聞いて、昨日の陽巻を思い出す。一方的に別れを告げた後、彼は酷く落ち込んでいるようだった。
僕のせいだろうか。僕が彼の気持ちも考えず、逃げたから。だったら、謝るべきだろう。それに、彼がどうして嘘を重ねたのかも知りたかった。
「ん~。誰~。悪いけど、今は寝かせてくんないかな~」
「陽巻。思ったより元気そうだな」
「は? ちょ、なんで柳が!」
だだっ広い部屋の如何にも高そうなベッドの上で、陽巻は飛び起きると僕に向かって指を差す。
「プリント。先生から届けるように言われた」
動揺する陽巻に近づいた僕は、押し付けるようにプリントの束を押し付ける。
「……怒ってんのか?」
「さあね」
「……そうか。俺の嘘がバレたか」
「君が嘘つきだろうと、僕にはもう関係ないさ」
「だったら、そんなに怒るなよ」
「怒ってない!」
「怒ってる」
変に決めつけてくる陽巻に余計に腹が立つ。僕の心が読めるわけでもあるまいし。
「君に僕の気持ちがわかるわけないだろ!」
「……わかるよ。だって俺、人の心が読めるし」
「は……?」
真剣な瞳で堂々と嘘を吐く陽巻に肩透かしを食らう。よくもまあそんなファンタジーじみたことを……。
「また嘘ついてるって思ってるでしょ。でもさ、これは本当。俺の家系、なんかそういう力があるらしくってさ。お前、親父に案内されたんだろ?」
「えっと」
そりゃあ、案内されたけど……。それと今の話に何の関係が……。
「関係あるんだよ。普段はさ、親父も交友関係に厳しくって。友達でも家に入れないことが多いんだけどさ。多分、親父にもわかったんだろ。俺たちが相思相愛だって」
「ん……?」
そうしそうあい……?
「柳さ、俺のこと好きだろ」
「は……?」
どっ、と全身から汗が噴き出す。待て、何でバレた? コイツ、本当に……。
「クラス一緒になってから、ずっとお前の感情は伝わってたんだよ。普通はさ、読もうと思わない限り、人の感情なんてわかんないんだけどさ。自分に向けられた強い思いだけはわかっちゃうんだよな」
「……」
いや、いやいやいや! え、本当に、僕の気持ちは、ずっと……?
「うん。ずっと好き好きオーラ出されてちゃさあ、俺だってお前のことが気になっちゃうわけで。気づいたら、俺もお前のことを目で追うようになっててさ。それで……」
「嘘だ……」
「ほんと。嘘ついてたのは悪かった。でも、こうでもしないと柳に近づけなかったから。勉強教えてもらって、いい雰囲気にできればなって」
陽巻の言ってることが本当だったとして、彼が本当に僕のことを、す……好き、だとして……、その上で、ずっと僕の思考が駄々洩れだったとして……。
「あ、あのさ……。それって、まさかとは思うけど、夢の中までは透視できたりしないよね……?」
読まれて一番恥ずかしいそれに思い当たり、祈るような気持で陽巻を見つめる。
「ああ。あの夢か。うん。夢も読もうと思えば読めるよ」
「え、それって。まさか、読ん」
「そりゃ読むでしょ。あんなに俺を求められてちゃさ」
「もと……そんなんじゃない! あ、あれは、そんな気、全然なかったのに、その……」
「ふふ。ごめんごめん。あれさ、実は俺が耐え切れなくなってさ。柳が寝てる隙に、色々と触っちゃったんだよね。それが夢に出たわけで」
「は……?! 君、人が寝てる間に、何をっ!」
「知りたい?」
「っ……」
近づいてくる陽巻の瞳から顔を逸らす。こんなの、卑怯だ。僕ばっかり気持ちを知られて! こんなの、恥ずかしすぎる……!
「だったらさ、今度は俺が教えてあげる。柳にもわかりやすいように、じっくりと、ね?」
逸らしたばかりの視線が、無理やり元に戻される。陽巻の瞳は、僕を捕らえて離さない。
「……お手柔らかに頼むよ」
頬に触れる陽巻の手にそっと手を重ね、そっと息を吐く。それを見た彼は、向日葵のように明るい髪を嬉しそうに揺らして眩しく微笑んだ。
元気×優等生。
受けの気持ちは何でもお見通しな攻めが好きです。
柳 優斗(やなぎ ゆうと)
優等生。密かに陽巻に想いを寄せている。
陽巻 元気(ひまき げんき)
バスケ部期待の一年。名前の通り、皆の前では元気いっぱい。
本当は、プロットの段階では陽巻の母親に柳が殺され云々共倒れクソ鬱バッドエンドだったんですけど、序盤が思いがけず明るめになってしまったが故にハッピーエンドになった上、超能力設定まで付加されてしまいました……。
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「頼む、柳! 俺に勉強教えてくれ!」
「へ……?」
期末試験まであと一週間を切った放課後。僕、柳 優斗(やなぎ ゆうと)は、憧れの人に頭を下げられていた。
「普段、絡みもないくせに、こんなことを頼むのはどうかと思う! 我ながら図々しいのは百も承知! でも、もう俺にはお前しかいないんだよ~!」
「あ、あの……」
ずいずい迫ってくる彼の気迫に押されて後退するも、ついに教室の端、鞄棚に背がぶつかり、汗が噴き出す。
「な、人助けだと思って! お礼に、俺にできることならなんだってするから! 頼むよ、柳~!」
「う……。その、じゃあ、少しだけ、なら……」
「マジ!? さっすが柳! 神柳!」
これだけ懇願されては断れない。元々気が弱いのと、想い人から頼られたのと。断れるわけがない。
「あう、手が、もげる……」
「あ、ごめんごめん!」
感謝の腕ブンから解放された僕は、改めてこれは現実なのだと思い知る。これ、明日筋肉痛になったりしないだろうな……?
「ええと。でも僕、人に勉強教えたことなんてないから、上手くできないかも」
「え。そうなの? 学年トップなんだから、きっと皆から頼られてると思ったんだけど」
皆から頼られる、か。
「残念ながら。僕は君と違って、皆から距離を置かれる存在だからね」
「距離を置かれる? ああ、それって柳が綺麗だからだろ?」
「は……?」
「なんだ、気づいてなかったんだ。柳ってさ、頭良いし、どっか気品ってか、しなやかってか。こう……、顔も整ってるし、細身だし、髪の毛綺麗な黒だし、さらさらだし……うわ、すっげー、さらさら! 猫の毛みたいで気持ち~!」
「ちょ、髪、触るな! というか、どうやったらそういう解釈になる? 僕は不愛想で偉そうで、無口なコミュ障だから距離を置かれてんだよ!」
はぁ。自分で言ってて虚しくなるな、コレ。てか、さすがは向日葵王子。なんでもポジティブな思考に持っていけるのがすごい。
「向日葵王子って、もしかして俺のこと?」
「っ! え、僕、声に出してた?」
「ふふ。柳も心の中ではあだ名とか使うんだね」
「い、いや、ちが! だって、クラスの女子がお前に隠れてそう呼んでるの聞いたから! それが残ってて……!」
陽巻 元気(ひまき げんき)だから向日葵王子。明るい性格に明るい髪色。まるで太陽のように咲く彼の笑顔は、まさに向日葵そのものだ。あだ名を考えた人は、中々センスがある。
「俺はちょっと気恥ずかしいけどね」
「うわ! えっ。僕、また声に出して……?」
うう、いくら想い人に頼られたからといって、浮つきすぎだ!
「うん。とにかくさ、俺はなんとしてもこの期末で赤点を回避しなければいけないんだよね~」
「ああ、そっか。確かバスケ部全員赤点取って、顧問がキレて……。次に赤点取った部員は問答無用でベンチだって……」
「そうそう。せっかくレギュラー取れたのに、こんなことで試合に出られないのは勘弁してほしいってか……」
いや、でも……。僕なんかが彼に教えるなんて、恐れ多いし。二人っきりで勉強とか、心臓が持つかどうか……。
「あの、でも、そういうことなら、プロに教わった方が……。家庭教師とか、さ」
「そうしたいのは山々なんだけどさ。俺んち、母子家庭だから金なくて。バスケも無理言ってやってるんだよね。母さんも病気でさ……。でも、バスケで活躍したって聞くと、すげー喜んでくれて……」
「えっ」
知らなかった……。僕にとっての光である彼に、そんな闇があるだなんて。
「柳にとって、負担でしかないことはわかってる。でも、同情でもいいから、手を貸してくれないかなって……」
う……。そんなにしょんぼりしないでくれ! 僕にだって良心はあるんだ!
「わ、わかったってば! 少しと言わず、しっかりサポートするよ……!」
「へへ! さっすが神柳様!」
「ぎゃ!」
思い切り抱き潰して頬ずりしてくる陽巻に、体温が急上昇する。
いくらなんでもスキンシップが激しすぎる! こんなんで、邪な感情を抱いている僕は耐えられるのだろうか……。
「ごめんな、柳。ほんと、赤点回避した暁には、なんでもするから!」
「いや、僕は何にもいらないから……」
二人きりの教室で、さっそく机を引っ付け、教科書を広げる。
「でも……」
「人に教えた方が覚えやすいんだ。お互い勉強ってことだよ」
「柳……!」
彼の瞳が信頼と感動で潤む。ああ、この好意は僕に向けられているんだ……。
今までは、一方的に見つめることしかできなかった遠い太陽。それが、今、こんなにも近くで僕を認識しているだなんて……。眩しさで潰れそうな瞳を薄める。
僕の恋が叶うことはない。だけど、せめて、君の役に立てるのならば。君に感謝される存在になれるのならば。何にもいらないどころではない。きっと僕の方が多く貰いすぎている。
そうして、二人で放課後勉強会をひっそり行うこと三日目。
「柳の教え方、ほんとに分かりやすくて助かる!」
「君の覚えが良いんだよ」
「そうやって褒めてくれるとこも、さ。ほんと上手いよなぁ」
「いや、ほんとに僕はそう思って……」
ノートから目を上げた瞬間、はた、と目が合う。が、それはすぐに逸らされる。
「いやー、なんか、そんなに真っ直ぐ褒められたことがないからさぁ! その、調子狂うな、あはは!」
「あ、ああ。うん、ごめんね……?」
彼のぎこちない笑顔に、胸がちくりと痛む。
この距離感に慣れたつもりだったけど……。幸せすぎて、少しやり過ぎたかな? でも、これくらい普通だよな……? 友達として。人間として。彼は褒めるに値する人物じゃないか。お世辞なんかで言ってるんじゃないし……。あ、でも友達からストレートに褒められたら気持ち悪い……? だめだ、友達がいたことなんてないから、わからない……!
「いや、ごめん! 違うんだよ! 褒められたのはすげー嬉しい! ただ、柳に認められたの嬉しすぎて……。あと、柳の瞳が綺麗すぎて……!」
「僕の目?」
「ほら、えっと。嘘ついてない、澄み切った瞳が! っあ~! とにかく柳のことは大好きだから!」
「ああ、ありがとう……?」
び、びっくりした……。陽巻に大好きだって言われる日が来ようとは。彼はきっと友達みんなにそう言えるんだろうけど。僕みたいな日陰の存在には、やっぱり眩しすぎる……。
赤く染まる夕日を見つめる。紫に染まりつつある空に、少しだけ気持ちが落ち着いてゆく。
あと二日すれば、僕の夢も覚めてしまう。それまでに、浮ついた気持ちを沈めてしまわなくては。
「柳~!」
「うわっ」
四日目の朝。教室に入った途端、いきなり抱きつかれた僕は、思わず悲鳴を上げる。
みんな見てるのに……! どうしよ、僕が陽巻と親しげにしてるなんて、そりゃびっくりだよね。うう、恥ずかしい……。
「これ! 見て!」
「ん?」
周りの視線なんてお構いなしの陽巻は、僕を放すと同時に目の前に紙を突きつける。
「あっ、70点!?」
目を凝らして見ると、それは昨日行われたテストの答案用紙だった。なるほど、もう返されたのか。
皆の視線を避けながら、周りを見渡してみると、まだ来てない生徒の机には裏返された紙が置いてある。それは、僕の机にも勿論置いてあって。
「な? 俺、こんないい点数初めてだよ!」
柳のおかげだよ~!! と、もう一度抱きしめられた僕の心臓は、いよいよはち切れそうになる。
「は、放してくれ……!」
「あ、ごめんごめん。柳ってばこういうの苦手っぽいもんね」
う……。フォローされると、余計に恥ずかしい……! そんで、申し訳ない……! でも、これ以上抱きしめられたら、好きって気持ちを消せなくなる……。あと少しなんだ。あと少ししたら、この恋心も、すっぱり諦められるはず。僕だけの綺麗な思い出として、悔いなく終わらせられる。用済みになったら、陽巻から話しかけられることもなくなるはずだ。そしたら僕は潔く、この汚い恋を消せるはずで……。
「……柳?」
「へ……?」
一瞬、彼の瞳から光が消え、怒りの感情が僕に突き刺さる。
あれ、僕、なんか失敗した……? あ、スキンシップを拒否したからか? でも、さっきは笑って許してくれたのに……。うう……、わからない……。でも、こんな陽巻の表情、見たことないし……。怖い……。僕は、どうすれば……。
「あ、いや。ごめん。ちょっと俺、体調悪くて!」
「えっ。そうなのか? 保健室行かなくて平気か……?」
「うん。大丈夫。心配しないで。それよりさ、柳は何点だったの?」
「僕……?」
誤魔化されたような気もしたが、促されるまま机に伏せられたテストを手に取る。
「うわ、満点……」
「あはは」
覗き込まれた答案用紙は百点満点。でも、僕にとってはどうでもいいことのように思えた。
後ろから抱きついてきた陽巻の吐息がうなじに掛かる。それだけで舞い上がってしまいそうな自分に嫌気がさす。
いくら成績が良くたって、人の気持ちがわからないんじゃ、駄目だ……。
「柳」
「えっと。そうだ! ほら、この問題。君が聞いてくれたとこ。これ、僕も出るとは思ってなかったから、助かっちゃったよ!」
隠さなきゃ。せめてあと少しだけでも、彼の期待に応えなきゃ。彼の周りの友達みたいに、せめてもう少し、明るく振る舞わなくちゃ。そうじゃなきゃ、僕は、彼の隣にいられない……。
「そっか。それじゃあ、今日もよろしく頼む」
「うん。あと少し、気合入れていこうね!」
そうして最終日の放課後。
『おい、お前ら。勉強なら家でやれ。もう教室閉めるぞ?』
「え~! 先生無慈悲~! せっかく頑張ろうってとこだったのにさ!」
『やる気なのは嬉しいが、こちとらテスト準備で忙しいんだ。ほら、さっさと帰れ』
「そんな~! ど、どうしよ、柳~!」
がっくりと肩を落とした陽巻が、瞳を潤ませながら僕を見つめる。
「えっと。そうだ、図書室に行くのは?」
「それだ……!」
『図書室も閉まってんぞ。残念だったな』
「そんな~」
先生の言葉に、再び陽巻は肩を落とす。ぬか喜びさせちゃったな……。
「ウチは遠いし、母さんがいるしなぁ……。柳、どうしたらいいと思う……?」
「えっと……。それじゃあ、ウチに来る……?」
「えっ。いいの?!」
本当は、自分の部屋に陽巻を入れたくなかった。だって、絶対変に意識してしまうから。でも、彼の勉強を最後まで見たかったし。何より、少しでも長く彼に信頼される優越感に浸っていたかった。
「一人暮らしだから、大したお構いもできないけど」
「うわー、すげーきれー!」
マンションの一室。僕の味気ない部屋で、陽巻ははしゃぎながら辺りを見渡す。
「物がないだけだよ」
「あ。麦茶だ」
からりと氷を揺らしながら、運んできた麦茶を彼の前に出す。
「ごめん、ジュースとかなかった。あれだったら買いに行ってくるけど」
「や、俺こそごめん。買ってくればよかったな。そこまで気が回らなくて。ってかお構いなく」
「ごめんね? 僕、洗濯物入れてくるから。先にわかるとこやっといて」
「はーい」
改めて、何だか変な感じだ。僕が生活しているこの部屋に、他人、それも想い人がいるなんて。わかってたら、もっと掃除したのに。お菓子だって買っておいたのに。取り止めもない小さな後悔が溢れて、どうにも落ち着かない。
「ごめん。さ、始めようか」
洗濯物を畳み終わったところで、彼に向き合って座る。
「ふふ……!」
「え。なにかおかしいとこでもあった?」
いきなり笑い出す彼に、慌てて部屋を見渡す。なんだろ。本棚か? 本の趣味、おかしい? それとも、玄関に壊れた傘放置してるから? あっ。もしかして、テレビの上に飾ってあるマスコット?! 違うんだ、あれは飲み物のおまけについてきただけで……! 捨てるのが勿体なかったから……!
「いや、なんか。柳も人間なんだなって思って」
「は?」
「なんていうか。麦茶、自分で作ってる柳とか。洗濯物畳む柳とか。ここで柳が生活してんだなって思ったら、なんか、ね?」
「一人暮らしなんだから、当たり前だろ」
「うん。そうだけど。なんかさあ、愛おしくて」
「……? 君だってそれぐらいやるだろ?」
「あ~。俺はまぁ。甘えてばっかかな。だから、余計に柳が眩しく見えるよ」
そう言って、目を細める彼の方が僕にはよっぽど眩しい。
「ほら、冗談言ってる場合じゃない。土日開けたらテストなんだぞ。今の内わかんないところは聞いてくれ」
「ね、土日も一緒に勉強しちゃ駄目?」
「駄目。陽巻が一緒だと集中できない」
「ちぇ」
「わかったらとっととやる!」
それからしばらく。昨日、張り切って陽巻のために要点プリントを作っていたおかげで寝不足だった僕は、ついに睡魔に負けてしまった。
「ん……」
『柳』
夢の中の陽巻は、真っすぐに僕を見つめていた。
「陽巻……?」
駄目だよ。ちゃんと勉強しなくちゃ。どうして僕をそんなに見てくるんだ?
『柳、好きだよ……』
ああ。そうか。夢なんだっけ。これ。じゃあ、目の前の陽巻は、全部僕の願望ってわけだ。
頬を撫でてくる陽巻の手を、そっと掴んで遠ざける。でも、僕の手はすぐに掴み返されて、そのまま床に押し倒される。
は……? なんだよこれ。全然力が入んない……。
のしかかる陽巻の顔が、近づいてくる。
「や……!」
駄目だ。こんなの、夢の中でも、許されないのに……。
僕の欲を背負った陽巻は、されるがままの僕に向かって微笑む。
やめてくれ。違うんだ。こんなこと、しなくていい!
『柳、愛してるよ』
「っあ、は……」
こんなこと……。僕は、こんなことを望んでいるのか……?
『柳、可愛い』
「んっ……」
陽巻の手が触れたとこ全部が熱くて。気持ちいい。
『優斗。俺のモノになってよ』
「あ……」
込み上げる欲をかろうじて飲み込む。駄目だ。こんな浅ましい夢。汚らわしい。こんなこと、してる場合じゃ、ない。目を覚ませ。僕は、陽巻に頼られたんだ。しっかり、最後まで綺麗な思い出で、終わらせなくちゃ……!
「っ、陽巻!」
「わっ。びっくりした!」
悪夢から目覚めると、すぐ側に陽巻の顔があった。
「は……」
「え、えっと。なんか、うなされてるみたいだったから。大丈夫かなって」
珍しく動揺した陽巻の様子を見ながら、噴き出してくる汗を拭い、呼吸を整える。
「ごめん。ちょっと、悪夢を見てた……」
徐々に思い出される夢に、吐き気すらしてくる。
「大丈夫?」
「ん。大したこと、ないよ。それより、勉強はどう?」
「ばっちりだよ。柳のおかげ。後は土日で柳の作ってくれたプリントやれば完璧!」
屈託なく微笑む彼に、ようやく深く息をつく。
「よかった。それじゃあ、僕はそろそろ帰るね。わからないとこがあったら、電話で聞いて?」
「ああ。ありがとう。柳」
こうして。僕と陽巻の縁は切れた。
と思ったんだけど。
「柳~! 見て見て! これも平均取れた!」
「うぐっ。お、おめでと……」
テストが返ってくるたびに、僕は陽巻に抱き着かれて、クラスメイトの注目を受けた。
「柳のおかげで全教科平均以上だったよ! ほんと神柳!」
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キラキラとした瞳に当てられて、僕は思わずそっぽを向く。早く僕を捨てて欲しかった。用無しになったんだから、もうこれ以上関わってきてほしくはなかった。だって。これ以上関わってしまえば、僕は、それ以上を求めてしまう。
「柳、お前さえよければ、これからも俺に勉強を教えてくれないか?」
心臓が跳ねる。彼が僕を必要としてくれている。でも、自分がどうするべきなのかもわかっている。
「それはできない。君はもう一人で勉強できるはずだ。それに、僕だって暇じゃない。どうしてもってんなら、今度は他の人に頼んでみたら?」
そう言い残して、僕は教室を後にする。靴を履き替え、外に出た瞬間、曇り空からぽつりぽつりと雨が落ち、あっという間に土砂降りとなる。
傘、持ってきて良かったな。
「柳! 待てってば!」
「……」
追いかけてきた陽巻を無視した僕は、傘を差し、歩き出す。地面を叩きつける雨音が、今は妙に心地良い。
「どうしてお前は俺から逃げようとするんだよ! 逃げるなよ! 何でも一人で決めつけて、勝手に終わらせようとするなよ!」
「……陽巻にはわからないよ」
叫ぶ彼に、ぼそりと言葉を漏らす。勿論、彼の耳には届いていないだろう。
「柳、俺のどこが駄目なんだよ……」
陽巻は駄目じゃない。駄目なのは僕なんだ。だから、もう構わないでくれ。
「さよなら!」
僕は走った。雨で靴と裾が濡れるのにも構わず。彼も途中までは追ってきていたが、いつの間にか後ろの方で、傘も差さず立ち尽くしていた。
激しかった雨も上がった翌日。
『陽巻くん、風邪でお休みらしいよ~』『え~。ショック~!』
登校した途端、女子たちの声を聞き、僕は罪悪感を覚える。
風邪でって。そんなの、明らかに昨日雨に打たれたのが原因じゃないか……。
なんとなく教室に入りづらくなった僕は、そのまま意味もなく廊下をうろつく。
『陽巻は風邪だってな』『ええ。ようやく勉強の調子が戻ってきたってのに』『ああ、そういえば前々回のテストだけ見事に全教科赤点取ったんだってな』『そうなんです。今まで良い点取ってたのに。今回だって、彼にしてはまだ低いぐらいですよ』
「え……?」
どういうことだ?
『おっ。柳じゃないか。どうした、突っ立って』『丁度良かった。お前、最近陽巻と仲良いらしいな。ってことで、放課後職員室寄ってくれ。プリント届けるの頼むから』
「えっ。僕が?」
『なんだ。予定でもあるのか?』
「い、いえ。そういうわけじゃ……」
『じゃ、よろしく頼むぞ』
あああ! またやってしまった! どうしても人の頼みが断れない!
「……。ポストに入れたら、黙って帰ろう」
放課後。教わった住所に辿り着く。陽巻も言ってた通り、少し遠い場所にそれはあった。そう。
「大豪邸……」
そこにあったのは、広大な敷地面積。立派な庭。お城のような家。
「これ、間違えたかな……?」
地図アプリと豪邸を何回も見直すうちに、ふと門前に表札があることに気づく。
「陽巻……」
紛れもないその二文字。珍しいその名字が早々あるわけもない。
どういうことだよ。貧乏っていうのは……?
「と、とりあえず、ポスト……」
こんな大豪邸にポストという概念があるのかも怪しいが、キョロキョロせずにはいられない。
『君。ウチに何のようかね?』
「ひっ」
突然、後ろから声を掛けられ、僕は情けないほど首を竦める。
『ん。その制服。もしかして元気の友達か?』
「えっ。ええと……」
目の前の厳つい男に、何と答えていいかわからず狼狽えていると、男はふいに笑い出す。
あ……。笑った時の目が、陽巻と似てる……。
『そんなに怖がらなくていい。私は元気の父だ。お見舞いに来てくれたんだろう? ささ、あがってくれ』
父親……?! 母子家庭じゃないじゃないか!
形容しがたい感情を余していると、陽巻の父親が執事らしき男に何か命じて僕の鞄を奪い取って渡す。
「あ、ちょっと。僕はプリントを渡しに来ただけで……!」
『いいからゆっくりしていきなさい。元気も風邪とは言っているが、ほとんど熱もない。謂わばズル休みさ。きっと学校で何かあったんだろう』
それを聞いて、昨日の陽巻を思い出す。一方的に別れを告げた後、彼は酷く落ち込んでいるようだった。
僕のせいだろうか。僕が彼の気持ちも考えず、逃げたから。だったら、謝るべきだろう。それに、彼がどうして嘘を重ねたのかも知りたかった。
「ん~。誰~。悪いけど、今は寝かせてくんないかな~」
「陽巻。思ったより元気そうだな」
「は? ちょ、なんで柳が!」
だだっ広い部屋の如何にも高そうなベッドの上で、陽巻は飛び起きると僕に向かって指を差す。
「プリント。先生から届けるように言われた」
動揺する陽巻に近づいた僕は、押し付けるようにプリントの束を押し付ける。
「……怒ってんのか?」
「さあね」
「……そうか。俺の嘘がバレたか」
「君が嘘つきだろうと、僕にはもう関係ないさ」
「だったら、そんなに怒るなよ」
「怒ってない!」
「怒ってる」
変に決めつけてくる陽巻に余計に腹が立つ。僕の心が読めるわけでもあるまいし。
「君に僕の気持ちがわかるわけないだろ!」
「……わかるよ。だって俺、人の心が読めるし」
「は……?」
真剣な瞳で堂々と嘘を吐く陽巻に肩透かしを食らう。よくもまあそんなファンタジーじみたことを……。
「また嘘ついてるって思ってるでしょ。でもさ、これは本当。俺の家系、なんかそういう力があるらしくってさ。お前、親父に案内されたんだろ?」
「えっと」
そりゃあ、案内されたけど……。それと今の話に何の関係が……。
「関係あるんだよ。普段はさ、親父も交友関係に厳しくって。友達でも家に入れないことが多いんだけどさ。多分、親父にもわかったんだろ。俺たちが相思相愛だって」
「ん……?」
そうしそうあい……?
「柳さ、俺のこと好きだろ」
「は……?」
どっ、と全身から汗が噴き出す。待て、何でバレた? コイツ、本当に……。
「クラス一緒になってから、ずっとお前の感情は伝わってたんだよ。普通はさ、読もうと思わない限り、人の感情なんてわかんないんだけどさ。自分に向けられた強い思いだけはわかっちゃうんだよな」
「……」
いや、いやいやいや! え、本当に、僕の気持ちは、ずっと……?
「うん。ずっと好き好きオーラ出されてちゃさあ、俺だってお前のことが気になっちゃうわけで。気づいたら、俺もお前のことを目で追うようになっててさ。それで……」
「嘘だ……」
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読まれて一番恥ずかしいそれに思い当たり、祈るような気持で陽巻を見つめる。
「ああ。あの夢か。うん。夢も読もうと思えば読めるよ」
「え、それって。まさか、読ん」
「そりゃ読むでしょ。あんなに俺を求められてちゃさ」
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「だったらさ、今度は俺が教えてあげる。柳にもわかりやすいように、じっくりと、ね?」
逸らしたばかりの視線が、無理やり元に戻される。陽巻の瞳は、僕を捕らえて離さない。
「……お手柔らかに頼むよ」
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