7 / 14
007 戦闘準備
しおりを挟む
〈何でも屋:シルバー〉が所有する工房にやってきた。
生産に必要な器具が一式揃っている便利な場所だが、いかんせん狭い。
数人が入るだけで窮屈感を抱きそうな空間だ。
今日はここに篭もってスキルの習得に励んでいた。
その為、俺の作ったアレコレが、工房の隅に置かれている。
セレナはその内の1つを手に取る。
「下水道の仕事が今日で良かったよ、はいこれ」
そう言って渡してきたのは剣だ。
鞘も含めて全てがシンプルで、大した特徴のない物。
短剣と長剣の間のような長さの剣で、俺が〈鍛冶〉で作った。
えらく出来が良いおかげで、売って金にする予定だった物だ。
「コレを装備すればいいんだな?」
「売って同じような物を店で買うより安上がりだろうし」
「たしかに」
受け取った剣を装備する。
装備方法はただ腰に付けるのではない。
ステータスの確認と同様に、「装備」と念じる。
手に持っていた剣がスッと消えて、腰の左側に自動で装備された。
この方法で装備すると、まるで接着剤でも使われているかのようにくっつく。
セレナが背中に装備している大きな弓が落ちないのもその為だ。
武器と同様、装備にもステータスが存在する。
手に持つことで、武器のステータスを確認することが可能だ。
俺の作った剣のステータスは、このようになっている。
====================
【名 前】名も無き剣
【属 性】無
【特 効】無
【攻撃力】C
【耐久力】C
====================
セレナ曰く「普通に良い品」とのこと。
初っ端から攻撃力及び耐久力がC級なのは異常らしい。
「あ、全部1個ずつ作ったせいで、ポーションが1個しかないね。念の為にもう1個作っていこうか。それぞれ1個ずつ持っていたら安心できるし、材料もちょうど1個分余ってるから」
「オーケー」
ポーションを作る方法は〈製薬〉と〈合成〉の二種類が存在する。
今回は専用の機械を使って作る〈製薬〉を使用するようだ。
「まずは材料の確認だったな」
「その通り! 私が既に確認したけど、自分でも確認してね」
機械の上部は無数に枝分かれしており、材料を入れる箱になっている。
全ての箱を確認した。丁寧に蓋を開き、中の材料が正しいかを。
問題なかったので、次は機械の最下部を確認する。
完成したポーションを入れる容器がセットされていた。
フラスコのような物だ。
「準備よし、始めるぜ」
機械の中央部に右手をかざし、魔力を注ぎ込む。
今まで死んでいた機械が息を吹き返し、動き始めた。
ドゴドゴと派手な音をたてながら左右に揺れる。
揺れはすぐに止まり、下の容器に赤い液体が注がれていく。
溢れるすこし手前で終わった。
俺は容器を取り出し、専用の蓋をキュキュっと閉める。
ポーションの完成だ。
====================
【名 前】HP回復ポーション
【効 果】飲むとHPが回復する
【ランク】C
====================
作ったポーションはこんな感じ。
ランクは品質を表しており、効果の強さと比例する。
「おっ?」
俺の足下から光の輪が現れた。
その輪はスーッと上に向かって進み、頭上を越えたところで消える。
「レベルアップじゃん! おめでとう!」
セレナが祝ってくれる。
本体ないしはスキルレベルが上がったようだ。
「どっちのレベルアップなんだ」
「この場合は本体レベルのことだけど、たぶんスキルレベルも上がってるんじゃない? 確認してみたら?」
「そうだな」
====================
【名 前】レイ・シノミヤ
【レベル】2
【H P】250/250
【M P】165/250
【適 性】
・戦闘系
├攻撃:S
├妨害:S
└回復:S
・生産系:S
・その他:S
【スキル】
・自動発動スキル
└英雄の加護:Lv.99
・任意発動スキル
├調理:Lv.1
├鍛冶:Lv.1
├製薬:Lv.2
├建築:Lv.1
├合成:Lv.1
├鑑定:Lv.1
└裁縫:Lv.1
====================
たしかに本体レベルとスキルレベルが上がっていた。
本体レベルの上昇によって、HPとMPも増えている。
「これで準備万端だね! くっさいくさい下水道に行くよー!」
「戦闘経験とかないけど、マジで大丈夫なのか?」
「私が皆殺しにするからだいじょーぶ!」
「期待しているぜ」
作ったポーションを懐にしまい、セレナに続いて工房を後にした。
◇
適当な路地裏から下水道に侵入した。
事前に臭いとは聞いていたが、本当に鼻をえぐりたくなる臭さだ。
下水道は街の全体に伸びていて、色々な所から侵入が可能だ。
俺にはどこも同じに見えるが、細かな区画分けがされている。
今回、俺達が依頼されているのは、C区画の魔物退治だ。
他の区画にも魔物が現れるようだが、無視しても問題ないらしい。
セレナ曰く「金、金、金! 金にならない仕事に興味なし!」とのこと。
俺達はB区画から侵入して、お隣のC区画を目指している。
さながら迷路のように入り組んだ道を歩いて行く。
俺だけだと迷子になることは間違いなかった。
「おっ、魔物を発見!」
まだCに到着する前、俺達は魔物に遭遇した。
約10メートル前方の突き当たりに、巨大なネズミが4匹。
「あれが魔物なのか?」
俺にはただの大きなネズミに見えるが、立派な魔物のようだ。
「スタンラット。牙や爪に麻痺毒を備えた危険な奴よ。ランクはたしかD級だったかな」
「「チュー!?」」
ラット共はこちらに気づくと突っ込んできた。
「初戦でラットと戦わせるのは危険だから、私が倒すね」
セレナが弓を構えて、素早く矢を番える。
ポンポンポンっとテンポよく矢を連射していく。
あっという間に3匹のラットが矢に貫かれて死んだ。
しかし、1匹だけ、仲間を盾に矢をくぐり抜けた奴が居る。
敵が素早く間合いを詰めてきた。
矢を番える余裕がない。
「危ない!」
「問題ないよ」
セレナは矢を番えなかった。
右手で矢筒から矢を取ると、それを直接ラットに突き刺したのだ。
ラットは即死だった。
「おお……」
鮮やかなお手並みに感動する。
「ふっふっふ。だから言ったでしょ? 私って、結構強いんだ」
「これならセレナだけでも余裕そうだな」
「もちろん! このクラスの敵を初っ端から戦わせるのは怖いし、今日のレイは私の後ろでプルプル怯えながら観戦することねー!」
上機嫌で笑うセレナ。
それを見て、俺も頬を緩める。
「今日は見て学ばせてもらうよ、セレナ先輩」
「おーおー! そうしてくれたまえ! レイ後輩!」
――この後に待ち受ける危機を、俺とセレナはまだ知らなかった。
生産に必要な器具が一式揃っている便利な場所だが、いかんせん狭い。
数人が入るだけで窮屈感を抱きそうな空間だ。
今日はここに篭もってスキルの習得に励んでいた。
その為、俺の作ったアレコレが、工房の隅に置かれている。
セレナはその内の1つを手に取る。
「下水道の仕事が今日で良かったよ、はいこれ」
そう言って渡してきたのは剣だ。
鞘も含めて全てがシンプルで、大した特徴のない物。
短剣と長剣の間のような長さの剣で、俺が〈鍛冶〉で作った。
えらく出来が良いおかげで、売って金にする予定だった物だ。
「コレを装備すればいいんだな?」
「売って同じような物を店で買うより安上がりだろうし」
「たしかに」
受け取った剣を装備する。
装備方法はただ腰に付けるのではない。
ステータスの確認と同様に、「装備」と念じる。
手に持っていた剣がスッと消えて、腰の左側に自動で装備された。
この方法で装備すると、まるで接着剤でも使われているかのようにくっつく。
セレナが背中に装備している大きな弓が落ちないのもその為だ。
武器と同様、装備にもステータスが存在する。
手に持つことで、武器のステータスを確認することが可能だ。
俺の作った剣のステータスは、このようになっている。
====================
【名 前】名も無き剣
【属 性】無
【特 効】無
【攻撃力】C
【耐久力】C
====================
セレナ曰く「普通に良い品」とのこと。
初っ端から攻撃力及び耐久力がC級なのは異常らしい。
「あ、全部1個ずつ作ったせいで、ポーションが1個しかないね。念の為にもう1個作っていこうか。それぞれ1個ずつ持っていたら安心できるし、材料もちょうど1個分余ってるから」
「オーケー」
ポーションを作る方法は〈製薬〉と〈合成〉の二種類が存在する。
今回は専用の機械を使って作る〈製薬〉を使用するようだ。
「まずは材料の確認だったな」
「その通り! 私が既に確認したけど、自分でも確認してね」
機械の上部は無数に枝分かれしており、材料を入れる箱になっている。
全ての箱を確認した。丁寧に蓋を開き、中の材料が正しいかを。
問題なかったので、次は機械の最下部を確認する。
完成したポーションを入れる容器がセットされていた。
フラスコのような物だ。
「準備よし、始めるぜ」
機械の中央部に右手をかざし、魔力を注ぎ込む。
今まで死んでいた機械が息を吹き返し、動き始めた。
ドゴドゴと派手な音をたてながら左右に揺れる。
揺れはすぐに止まり、下の容器に赤い液体が注がれていく。
溢れるすこし手前で終わった。
俺は容器を取り出し、専用の蓋をキュキュっと閉める。
ポーションの完成だ。
====================
【名 前】HP回復ポーション
【効 果】飲むとHPが回復する
【ランク】C
====================
作ったポーションはこんな感じ。
ランクは品質を表しており、効果の強さと比例する。
「おっ?」
俺の足下から光の輪が現れた。
その輪はスーッと上に向かって進み、頭上を越えたところで消える。
「レベルアップじゃん! おめでとう!」
セレナが祝ってくれる。
本体ないしはスキルレベルが上がったようだ。
「どっちのレベルアップなんだ」
「この場合は本体レベルのことだけど、たぶんスキルレベルも上がってるんじゃない? 確認してみたら?」
「そうだな」
====================
【名 前】レイ・シノミヤ
【レベル】2
【H P】250/250
【M P】165/250
【適 性】
・戦闘系
├攻撃:S
├妨害:S
└回復:S
・生産系:S
・その他:S
【スキル】
・自動発動スキル
└英雄の加護:Lv.99
・任意発動スキル
├調理:Lv.1
├鍛冶:Lv.1
├製薬:Lv.2
├建築:Lv.1
├合成:Lv.1
├鑑定:Lv.1
└裁縫:Lv.1
====================
たしかに本体レベルとスキルレベルが上がっていた。
本体レベルの上昇によって、HPとMPも増えている。
「これで準備万端だね! くっさいくさい下水道に行くよー!」
「戦闘経験とかないけど、マジで大丈夫なのか?」
「私が皆殺しにするからだいじょーぶ!」
「期待しているぜ」
作ったポーションを懐にしまい、セレナに続いて工房を後にした。
◇
適当な路地裏から下水道に侵入した。
事前に臭いとは聞いていたが、本当に鼻をえぐりたくなる臭さだ。
下水道は街の全体に伸びていて、色々な所から侵入が可能だ。
俺にはどこも同じに見えるが、細かな区画分けがされている。
今回、俺達が依頼されているのは、C区画の魔物退治だ。
他の区画にも魔物が現れるようだが、無視しても問題ないらしい。
セレナ曰く「金、金、金! 金にならない仕事に興味なし!」とのこと。
俺達はB区画から侵入して、お隣のC区画を目指している。
さながら迷路のように入り組んだ道を歩いて行く。
俺だけだと迷子になることは間違いなかった。
「おっ、魔物を発見!」
まだCに到着する前、俺達は魔物に遭遇した。
約10メートル前方の突き当たりに、巨大なネズミが4匹。
「あれが魔物なのか?」
俺にはただの大きなネズミに見えるが、立派な魔物のようだ。
「スタンラット。牙や爪に麻痺毒を備えた危険な奴よ。ランクはたしかD級だったかな」
「「チュー!?」」
ラット共はこちらに気づくと突っ込んできた。
「初戦でラットと戦わせるのは危険だから、私が倒すね」
セレナが弓を構えて、素早く矢を番える。
ポンポンポンっとテンポよく矢を連射していく。
あっという間に3匹のラットが矢に貫かれて死んだ。
しかし、1匹だけ、仲間を盾に矢をくぐり抜けた奴が居る。
敵が素早く間合いを詰めてきた。
矢を番える余裕がない。
「危ない!」
「問題ないよ」
セレナは矢を番えなかった。
右手で矢筒から矢を取ると、それを直接ラットに突き刺したのだ。
ラットは即死だった。
「おお……」
鮮やかなお手並みに感動する。
「ふっふっふ。だから言ったでしょ? 私って、結構強いんだ」
「これならセレナだけでも余裕そうだな」
「もちろん! このクラスの敵を初っ端から戦わせるのは怖いし、今日のレイは私の後ろでプルプル怯えながら観戦することねー!」
上機嫌で笑うセレナ。
それを見て、俺も頬を緩める。
「今日は見て学ばせてもらうよ、セレナ先輩」
「おーおー! そうしてくれたまえ! レイ後輩!」
――この後に待ち受ける危機を、俺とセレナはまだ知らなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,568
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる