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1章
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しおりを挟む「面白い子ですね苓は、あの方を思い出します」
陸の言葉に周は彼を一瞥して焚火の中に小枝を放り投げる。
「全然似てはないはずなのにな」
自嘲すると、不意に陸から強い視線を感じる。
「深入りしてはいけませんよ」
釘を刺すようなその言葉に、周はさらに自嘲した笑みを濃くする。
「分かっているよ。苓を巻き込むわけにはいかない」
二人の背後で、丸くなってすうすうと寝息を立てている苓を一瞥する。
昼間にしっかり歩き、慣れない馬に乗ったせいか、彼女は疲れて夕食後すぐに眠ってしまった。
朝からいろいろな事があったとは言え、硬い地面でも抵抗なくあっさり眠ってしまったのには二人とも驚いた。
「項さんとやらに引き渡したら、もう会うこともないさ。せめていい奉公先だといいな」
もう一度視線を焚火に戻して、周はぼんやり呟いた。
そんな二人のやり取りを苓が夢うつつながら聞いていたとは露ほども思わず。
++++
翌日の道中はそれはそれは平和なものだった。
しっかり眠って体力を回復した苓は、この日は陸の馬に乗せられて、筋肉痛と戦っていた。
「慣れない馬上だからね、しばらくは我慢してね」
「うぅ、、、頑張るっ」
「泣き言を言わないところが苓の良いところだよね」
「だって言ってるような場合じゃあないじゃない・・・そんな事言ってても王都に着くわけじゃぁないんだし」
「うん・・・まぁそうなんだけどね。」
いったい誰と比べているの?そんな言葉が喉から出かかって慌てて飲み込んだ。
昨日の二人の話をひそかに聞いてしまったことがバレてしまうのはなんとなくよろしくない気がしたのだ。
なんとなく二人の中に苓ではない誰かがいることは分かった。
だけどそれは苓には関係ないことで、苓と彼らは、王都に着いてしまえば何の関係もない他人になるのだ、だから苓も彼らに深入りしないと決めたのだ。
昨日二人は「苓を巻き込みたくない」と言っていた。二人が王都でやろうとしていることが何なのかは知らないけれど、それは苓を守るためなのだろうという事は理解ができた。
だったら彼らの意のままに何も知らないふりをしていたらいい。
なんだか寂しい気もするが、ただ行先と利害が一致しただけの旅なのだ。
多少の寂しさを感じながら、仕方ないと自分に言い聞かせた。
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