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Hero of the Shadowルート (如月楓夜 編)
32話「錆び付いた現実」
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白い道をひたすら歩く。腹の傷は死ぬほど痛いが関係ない。たった1歩進む度に命が削られていく感覚がする。そろそろこの体も限界が来ているのかもしれない。
まだまだ死ぬ訳にはいかないんだ。もってくれよ、俺の体……。
……ー♪
何かが聞こえた。鼻歌のような感じの音だ。誰かがいる。男の声だから桃ではない。
……ンビー♪
なんだ。なんなんだ。下の階から聞こえてきている気がする。
……赤い月夜にやってくる。トゥトゥトゥ、クイーンビー♪
変な歌だ。聞いたこともない。どこか外国の歌だろうか。
……真っ赤なフックを携えて~♪鼻歌鳴らしてやってくる~♪トゥトゥトゥ、クイーンビー♪
「ワン!」
突然、ヒルのスピードが速くなった。桃の場所が近いのだろうがこの歌の主が分からない現状では色々と怖い。桃が無事でいてくれたらいいんだがな。
しばらくヒルについて行くと、下に行く階段を見つけた。階段なら色が変わるかと思ったが別に変わらなかった。
しかし、視界は変わらなかったが匂いが変わった。いつも通りだ。いつも嗅いでいる血の匂いだ。どうせまた下で人が死んでるんだろう。もう慣れたよ。
ただ一つだけ気になる匂いを見つけた。何かが腐ったような匂いがする。生ゴミのような、動物が腐ったような匂いだ。この匂いだけは気になる。
俺は慎重に階段を降りていった。弓に矢をつがえる。下で人が死んでいるなら殺したやつがいるんだろう。一応警戒はしておかないといけない。
下に着くと、異様な光景を見てしまった。まず周りの壁が風化したようにボロボロになっていた。匂いもなんだか臭い。
それと、真っ白の服を着た様々な年代の男女が地面に倒れていた。そこら辺に血が飛び散っているが、手足が欠損しているみたいなのは見られない。
その代わり手足は腐っていた。オレンジ色に染まっており、ウジが沸いているのが遠目から見ても分かってしまう。
死体の近くに近づくにつれて匂いがきつくなる。これまで散々死体は見てきたが、その中でもかなり上位に入る臭さだ。見た目も惨い。
「グ、クゥゥン……」
ヒルが苦しそうにしている。嗅覚が鋭い狼にここはキツかったな。
「すまんなヒル。できるだけ早く抜けようか」
「ワン……」
地面の血溜まりに波紋を浮かばせながら道を歩いていく。さっきの歌はこの階から聞こえてきたんだ。ここには何かがいる。それは横の死体からも分かる。できればさっさと抜けたいが、慎重にいかないといけない。
……ビー♪
また聞こえてきた。今度はやはりこの階から聞こえる。それと同時になにか壁が擦れるような音も聞こえてきた。また変なやつだろう。
――タッタッタッ
どこかからこっちに走ってくる音が聞こえてきた。情報量が多すぎて訳が分からなくなってきたぞ。音のした方向に弓を向ける。
音は少し先の曲がり角の奥から聞こえている。少しずつジリジリと後ろに寄りながら弓を構え続ける。
音は段々と近づいてきた。音だけでも十分威圧感がある。おそらく敵だろう。息を大きく吐く。
曲がり角から出てきたのは1人の少女だった。ずっと会いたかった少女だ。1度だけでなく2度も失ったと思った少女だ。俺が愛している少女だった。俺はその少女の名を呼ぼうとした。
「……桃――「助けて!!」
桃が食い気味に叫んだ。俺の所に駆け寄ってくる。
「な、なんだ。どうした」
「ヤバいやつがいるの!さっきまでそいつに襲われてて……」
「ヤバいやつ?ちょっと落ち着け。とりあえずここから出よ……え……?」
ふと桃の腹の部分に目をやった。腹から赤黒い血がボトボトと流れており、見るだけで痛々しい傷をつけていたのだ。
「……その傷、ヤバいやつにやられたのか」
「え?……う、うん。あたしが逃げてる時にやられて……」
「わかった。ヒル!桃を守ってろ」
「ワン!」
また弓を構えなおすと、俺は曲がり角に向かって歩いていった。桃に傷をつけたんだ。タダでは済まさない。
「ちょっ、別に戦わなくてもいいよ!とにかく逃げよ!」
「すぐに終わらせる。そこで待ってて」
俺は曲がり角から姿を出した。
クイーンビー♪白い明かりに照らされて♪地獄も腐らせやってくる~♪トゥトゥトゥ、クイーンビー♪
奥から男が歩いてきていた。男は白人で茶色いコートとウエスタンのような帽子を被っている。右手はフックになっており、フックには乾いた血が、元から柄としてあったかのように引っ付いている。
「トゥトゥトゥ……ってあら?また侵入者かよ~。もー疲れたわ」
「またって……他にもいるのかよ」
「あぁ!いるともいるとも。変なちっこいガキがそこら辺を動き回ってたんだぜ。まったく困るわ。ほんと」
ちっこいガキって……桃だろうな。やはりこいつがやったのか。
「裏切り者まで出てくるしよ……俺は中間管理職じゃねぇんだよ」
「なら休みが必要だな。そこで寝ててくれ。その間にお前を地獄に連れてってやるよ」
「それはダメだ。俺は痛いのが嫌いなんだ。地獄ならお前が行ってもらうぞ」
「……なら、一緒に行くか……」
「賛成だ」
俺は男が言葉を発し終えた瞬間に弦を引いた。
続く
まだまだ死ぬ訳にはいかないんだ。もってくれよ、俺の体……。
……ー♪
何かが聞こえた。鼻歌のような感じの音だ。誰かがいる。男の声だから桃ではない。
……ンビー♪
なんだ。なんなんだ。下の階から聞こえてきている気がする。
……赤い月夜にやってくる。トゥトゥトゥ、クイーンビー♪
変な歌だ。聞いたこともない。どこか外国の歌だろうか。
……真っ赤なフックを携えて~♪鼻歌鳴らしてやってくる~♪トゥトゥトゥ、クイーンビー♪
「ワン!」
突然、ヒルのスピードが速くなった。桃の場所が近いのだろうがこの歌の主が分からない現状では色々と怖い。桃が無事でいてくれたらいいんだがな。
しばらくヒルについて行くと、下に行く階段を見つけた。階段なら色が変わるかと思ったが別に変わらなかった。
しかし、視界は変わらなかったが匂いが変わった。いつも通りだ。いつも嗅いでいる血の匂いだ。どうせまた下で人が死んでるんだろう。もう慣れたよ。
ただ一つだけ気になる匂いを見つけた。何かが腐ったような匂いがする。生ゴミのような、動物が腐ったような匂いだ。この匂いだけは気になる。
俺は慎重に階段を降りていった。弓に矢をつがえる。下で人が死んでいるなら殺したやつがいるんだろう。一応警戒はしておかないといけない。
下に着くと、異様な光景を見てしまった。まず周りの壁が風化したようにボロボロになっていた。匂いもなんだか臭い。
それと、真っ白の服を着た様々な年代の男女が地面に倒れていた。そこら辺に血が飛び散っているが、手足が欠損しているみたいなのは見られない。
その代わり手足は腐っていた。オレンジ色に染まっており、ウジが沸いているのが遠目から見ても分かってしまう。
死体の近くに近づくにつれて匂いがきつくなる。これまで散々死体は見てきたが、その中でもかなり上位に入る臭さだ。見た目も惨い。
「グ、クゥゥン……」
ヒルが苦しそうにしている。嗅覚が鋭い狼にここはキツかったな。
「すまんなヒル。できるだけ早く抜けようか」
「ワン……」
地面の血溜まりに波紋を浮かばせながら道を歩いていく。さっきの歌はこの階から聞こえてきたんだ。ここには何かがいる。それは横の死体からも分かる。できればさっさと抜けたいが、慎重にいかないといけない。
……ビー♪
また聞こえてきた。今度はやはりこの階から聞こえる。それと同時になにか壁が擦れるような音も聞こえてきた。また変なやつだろう。
――タッタッタッ
どこかからこっちに走ってくる音が聞こえてきた。情報量が多すぎて訳が分からなくなってきたぞ。音のした方向に弓を向ける。
音は少し先の曲がり角の奥から聞こえている。少しずつジリジリと後ろに寄りながら弓を構え続ける。
音は段々と近づいてきた。音だけでも十分威圧感がある。おそらく敵だろう。息を大きく吐く。
曲がり角から出てきたのは1人の少女だった。ずっと会いたかった少女だ。1度だけでなく2度も失ったと思った少女だ。俺が愛している少女だった。俺はその少女の名を呼ぼうとした。
「……桃――「助けて!!」
桃が食い気味に叫んだ。俺の所に駆け寄ってくる。
「な、なんだ。どうした」
「ヤバいやつがいるの!さっきまでそいつに襲われてて……」
「ヤバいやつ?ちょっと落ち着け。とりあえずここから出よ……え……?」
ふと桃の腹の部分に目をやった。腹から赤黒い血がボトボトと流れており、見るだけで痛々しい傷をつけていたのだ。
「……その傷、ヤバいやつにやられたのか」
「え?……う、うん。あたしが逃げてる時にやられて……」
「わかった。ヒル!桃を守ってろ」
「ワン!」
また弓を構えなおすと、俺は曲がり角に向かって歩いていった。桃に傷をつけたんだ。タダでは済まさない。
「ちょっ、別に戦わなくてもいいよ!とにかく逃げよ!」
「すぐに終わらせる。そこで待ってて」
俺は曲がり角から姿を出した。
クイーンビー♪白い明かりに照らされて♪地獄も腐らせやってくる~♪トゥトゥトゥ、クイーンビー♪
奥から男が歩いてきていた。男は白人で茶色いコートとウエスタンのような帽子を被っている。右手はフックになっており、フックには乾いた血が、元から柄としてあったかのように引っ付いている。
「トゥトゥトゥ……ってあら?また侵入者かよ~。もー疲れたわ」
「またって……他にもいるのかよ」
「あぁ!いるともいるとも。変なちっこいガキがそこら辺を動き回ってたんだぜ。まったく困るわ。ほんと」
ちっこいガキって……桃だろうな。やはりこいつがやったのか。
「裏切り者まで出てくるしよ……俺は中間管理職じゃねぇんだよ」
「なら休みが必要だな。そこで寝ててくれ。その間にお前を地獄に連れてってやるよ」
「それはダメだ。俺は痛いのが嫌いなんだ。地獄ならお前が行ってもらうぞ」
「……なら、一緒に行くか……」
「賛成だ」
俺は男が言葉を発し終えた瞬間に弦を引いた。
続く
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