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Hero of the Shadowルート (如月楓夜 編)
43話「光速の粒子」
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「……あ」
「?どうした桃?」
「……そういえばワクチンは……」
「あ……」
ポケットにゆっくりと手を入れる。ヌルッとしたものが指にまとわりついた。ゆっくりと指を持ち上げる。
試験官の破片がキラキラと輝いていた。
「……な、なな、何やってんの!?」
彩さんが叫んだ。桃は目をぐるぐるとさせている。あまりの出来事に脳がショートしたんだろう。
チビが目を逸らした。こいつ……まじで敵だったら普通に殺してたのに。
「……」
「おい?チビ?こっち向かないの?」
「……まさかポケットに入れてるとは思わなくて……」
「……はぁ~」
思わずため息をついてしまった。すぎてしまったことはしょうがないと言うがこれはちょっと許されないぞ。
「どうしよう……」
「どうって……また1から作り直すしかないでしょ。起きてしまったからには仕方ないよ」
「……時間制限もあるわけじゃないんだ。気ままにやっていこうぜ」
……まぁ文句言っても直る訳でも無いからな。化け物に注意してたらすぐに作れるだろう。
「ならあの研究室に戻るの?」
「そうなるな」
「なら、先にヒルくん探そうよ。ヒルくんにバッグも持たせてるんでしょ?」
「……そういえばそうだったな。ヒルいないと困るわ」
バッグの中には包帯とか矢が入っている。割と死活問題だ。
「じゃあワクチンはどうするの?」
「彩さんとチビに任せるよ。俺らは作り方分かんないし」
あとあんまりチビの近くにいると殴られそうで怖い。まぁ俺の方が強いけどね。
「桃ちゃんは楓夜くんと一緒にいるの?」
「うん」
「……仲がいいね」
「えへへ」
可愛いな。今、心臓がロックを奏でたぞ。この子が俺を好きでいてくれてるのがもう本当に嬉しいわ。
重い腰を上げた。体をグイッと伸ばす。どうやら肋骨が何本か折れてるらしい。あと右頬。なんかとてつもなく痛かったので納得した。
「それじゃあまた生きてたら会おうね」
「……全部終わったらみんなでご飯でも食べに行こっか」
「それまでにはそこのチビに躾しといてくれよ」
「…………チビじゃないもん」
肩をコキコキと鳴らす。とてつもなく痛いがまぁ慣れっこだ。腕は折れてないから弓は撃てる。
「……あ、そうだ」
「ん?どうしたの?」
「彩さん、チビ」
念の為だ。通信機器を持たない俺らにとって唯一連絡できる手段は会って直接話すことだ。
「服よこせ」
ヒルが見つかった時に、ヒルに匂いを覚えさせればまた会うことができるだろう。
なんか凄い目で見られている。なんだろう、ゴミを見るような目というかなんというか……。
「はぁ?何言ってんの?」
「え?いやだから服よこせって――」
「いやあげるわけないじゃん」
「なんで?」
「なんでって……服だし」
あれ?なんでくれないんだろう。まぁ見栄えは少し悪くなるかもだが、別に裸になる訳でもないんだし。
「……楓夜もしかして『服の切れ端』が欲しいって言いたいの?」
「うん」
「……それなら早く言ってよ!私たち危うく楓夜さんのこと『弱みに漬け込んで美少女2人の服を剥ぎ取る変態』って思っちゃったよ!!」
やけに細かい説明だな。もしかして望んでたとか……ダメだこれ以上はマジの変態になる。
「あーごめんね。うちのヒルは狼でさ、鼻がいいんだよ。だからヒルに匂いを覚えさせればまた合流することができるかなってさ」
「なるほどね。いいよ」
彩さんが服の袖の部分をナイフで少し切り取った。
「ありがとね」
「どーいたしましてー」
……なんかチビはすっごく渋っている。別になんもしねーのに。
「ほ、ほんとに何もしない?犬に嗅がせるだけ?僕が犬だーとか言って私の嗅いだりとかしない?」
「しないよ。俺をなんだと思ってるの?」
こいつまさか俺の事ただの変態だと思ってるな。腹立つわこいつ。
「あはは……それじゃあまた」
「うん。生きて英雄になろうね」
まぁ結構強いしな。俺よりは下だけど。だから死ぬことは多分ないだろう。できればそう信じたいんだけどな。
「……ねぇ」
「ん?」
「そりゃあさ、わかるよ。いきなり襲われたんだもんね。いい印象がないのはわかるよ。でももうちょっと花音ちゃんに態度緩めたらいいんじゃない?」
「桃がそういうなら緩めるけど……ねぇ?」
桃と白い廊下を歩く。ヒルを探すと言っても正直探す手だてがない。だから行き当たりばったりで歩いていかないと。
「でもいい人たちでしょ?」
「初っ端から殴って脅してくる人達がいい人ねぇ」
正直、完全に信用してると言ったら嘘になる。あの時も何か変な行動をした瞬間に殺そうとも考えていた。
「……楓夜のその疑り深い性格は治した方がいいと思うよ」
「桃の信じやすい性格も治した方がいいよ。それ以外は治さないでね。今の桃が俺は好きだから」
「褒めてるのか貶してるのか分かんない……」
「もちろん褒めてるさ」
しばらく廊下を歩いていると突き当たりのところに開きかけの扉を見つけた。ちょうどヒルが入れそうな隙間だ。
扉に近づく。真っ白の扉に黄色のドアノブ。このおかしくなるほど白い空間の中に一人ポツンと黄色いドアノブ。まるで入ってくださいと言っているようなものだ。
「……入ってみる?」
「そりゃあそうでしょ」
ドアをゆっくりと開ける。どうやら材質は木製だったようで、開ける時にギシギシと軋むような音が鳴った。なんで木製なんだろ。他は普通に鉄製とかなのに。
中は思っていたよりも暗かった。中身は正方形のような空間で真ん中に机と椅子、橋には本棚みたいなのが置いてあった。
恐らく所長室みたいなもんだろう。校長先生の部屋とかもこんなのだったし。
「……ヒルくんいないね」
「あぁ。でもここには何かありそうだな。少し物色するか」
俺は真ん中の机に置いてあった本のようなものに手を伸ばした。
続く
「?どうした桃?」
「……そういえばワクチンは……」
「あ……」
ポケットにゆっくりと手を入れる。ヌルッとしたものが指にまとわりついた。ゆっくりと指を持ち上げる。
試験官の破片がキラキラと輝いていた。
「……な、なな、何やってんの!?」
彩さんが叫んだ。桃は目をぐるぐるとさせている。あまりの出来事に脳がショートしたんだろう。
チビが目を逸らした。こいつ……まじで敵だったら普通に殺してたのに。
「……」
「おい?チビ?こっち向かないの?」
「……まさかポケットに入れてるとは思わなくて……」
「……はぁ~」
思わずため息をついてしまった。すぎてしまったことはしょうがないと言うがこれはちょっと許されないぞ。
「どうしよう……」
「どうって……また1から作り直すしかないでしょ。起きてしまったからには仕方ないよ」
「……時間制限もあるわけじゃないんだ。気ままにやっていこうぜ」
……まぁ文句言っても直る訳でも無いからな。化け物に注意してたらすぐに作れるだろう。
「ならあの研究室に戻るの?」
「そうなるな」
「なら、先にヒルくん探そうよ。ヒルくんにバッグも持たせてるんでしょ?」
「……そういえばそうだったな。ヒルいないと困るわ」
バッグの中には包帯とか矢が入っている。割と死活問題だ。
「じゃあワクチンはどうするの?」
「彩さんとチビに任せるよ。俺らは作り方分かんないし」
あとあんまりチビの近くにいると殴られそうで怖い。まぁ俺の方が強いけどね。
「桃ちゃんは楓夜くんと一緒にいるの?」
「うん」
「……仲がいいね」
「えへへ」
可愛いな。今、心臓がロックを奏でたぞ。この子が俺を好きでいてくれてるのがもう本当に嬉しいわ。
重い腰を上げた。体をグイッと伸ばす。どうやら肋骨が何本か折れてるらしい。あと右頬。なんかとてつもなく痛かったので納得した。
「それじゃあまた生きてたら会おうね」
「……全部終わったらみんなでご飯でも食べに行こっか」
「それまでにはそこのチビに躾しといてくれよ」
「…………チビじゃないもん」
肩をコキコキと鳴らす。とてつもなく痛いがまぁ慣れっこだ。腕は折れてないから弓は撃てる。
「……あ、そうだ」
「ん?どうしたの?」
「彩さん、チビ」
念の為だ。通信機器を持たない俺らにとって唯一連絡できる手段は会って直接話すことだ。
「服よこせ」
ヒルが見つかった時に、ヒルに匂いを覚えさせればまた会うことができるだろう。
なんか凄い目で見られている。なんだろう、ゴミを見るような目というかなんというか……。
「はぁ?何言ってんの?」
「え?いやだから服よこせって――」
「いやあげるわけないじゃん」
「なんで?」
「なんでって……服だし」
あれ?なんでくれないんだろう。まぁ見栄えは少し悪くなるかもだが、別に裸になる訳でもないんだし。
「……楓夜もしかして『服の切れ端』が欲しいって言いたいの?」
「うん」
「……それなら早く言ってよ!私たち危うく楓夜さんのこと『弱みに漬け込んで美少女2人の服を剥ぎ取る変態』って思っちゃったよ!!」
やけに細かい説明だな。もしかして望んでたとか……ダメだこれ以上はマジの変態になる。
「あーごめんね。うちのヒルは狼でさ、鼻がいいんだよ。だからヒルに匂いを覚えさせればまた合流することができるかなってさ」
「なるほどね。いいよ」
彩さんが服の袖の部分をナイフで少し切り取った。
「ありがとね」
「どーいたしましてー」
……なんかチビはすっごく渋っている。別になんもしねーのに。
「ほ、ほんとに何もしない?犬に嗅がせるだけ?僕が犬だーとか言って私の嗅いだりとかしない?」
「しないよ。俺をなんだと思ってるの?」
こいつまさか俺の事ただの変態だと思ってるな。腹立つわこいつ。
「あはは……それじゃあまた」
「うん。生きて英雄になろうね」
まぁ結構強いしな。俺よりは下だけど。だから死ぬことは多分ないだろう。できればそう信じたいんだけどな。
「……ねぇ」
「ん?」
「そりゃあさ、わかるよ。いきなり襲われたんだもんね。いい印象がないのはわかるよ。でももうちょっと花音ちゃんに態度緩めたらいいんじゃない?」
「桃がそういうなら緩めるけど……ねぇ?」
桃と白い廊下を歩く。ヒルを探すと言っても正直探す手だてがない。だから行き当たりばったりで歩いていかないと。
「でもいい人たちでしょ?」
「初っ端から殴って脅してくる人達がいい人ねぇ」
正直、完全に信用してると言ったら嘘になる。あの時も何か変な行動をした瞬間に殺そうとも考えていた。
「……楓夜のその疑り深い性格は治した方がいいと思うよ」
「桃の信じやすい性格も治した方がいいよ。それ以外は治さないでね。今の桃が俺は好きだから」
「褒めてるのか貶してるのか分かんない……」
「もちろん褒めてるさ」
しばらく廊下を歩いていると突き当たりのところに開きかけの扉を見つけた。ちょうどヒルが入れそうな隙間だ。
扉に近づく。真っ白の扉に黄色のドアノブ。このおかしくなるほど白い空間の中に一人ポツンと黄色いドアノブ。まるで入ってくださいと言っているようなものだ。
「……入ってみる?」
「そりゃあそうでしょ」
ドアをゆっくりと開ける。どうやら材質は木製だったようで、開ける時にギシギシと軋むような音が鳴った。なんで木製なんだろ。他は普通に鉄製とかなのに。
中は思っていたよりも暗かった。中身は正方形のような空間で真ん中に机と椅子、橋には本棚みたいなのが置いてあった。
恐らく所長室みたいなもんだろう。校長先生の部屋とかもこんなのだったし。
「……ヒルくんいないね」
「あぁ。でもここには何かありそうだな。少し物色するか」
俺は真ん中の机に置いてあった本のようなものに手を伸ばした。
続く
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