Catastrophe

アタラクシア

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Execution of Justiceルート(山ノ井花音編)

9話「全て狂い尽くす」

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中を軽く見回す。中はまぁ普通のドラックストアって感じだった。棚に色々置かれていたり、カゴに商品が丁寧に置かれている。

ドラッグストア特有のなんか硬い匂いがほのかに香ってくる。大部分が腐臭の香りだけど。

「じゃあ行ってらっしゃい」
「え?ついてきてくれないの?」
「今何歳よ。私は行く気無かったんだから一人で行ってきて」

薄情だなぁと言いそうになったのを我慢した。私のワガママだから仕方ない。



中を見ていて分かったことがある。あんまりゾンビがいない。というかまったく居ない。どういうことだろう。

安心ではあるが不安だ。矛盾した状況になってる。薄暗いというのもあってなんだか怖い。


置いてあった包帯や風邪薬、痛み止めなんかをバックの中に入れる。普通だったら犯罪だけどこういう時なのだから仕方ない。

バックの重量が上がったがこれくらいなら走ることもできそうだ。時計はないけどだいたい5分程度でことを済ませられた。






ギギギ……。


なにか音が聞こえた。バックをその場に捨てて銃を構える。

聞こえた感じゾンビとかじゃない。なにかを擦るような音。何かを引くような音だ。

「……」

彩の声は聞こえない。彩は気がついてないのかも。





シュッッ

何かが頬を通り過ぎた。体が即座に反応して、その場からステップで離れた。


通り過ぎた頬に手を当ててみる。頬からは軽く血がにじみでていた。何が通り過ぎたのか分からない。

でも明らかにわかったことがある。ゾンビじゃない。人か人じゃないだった。


おそらく武器だ。何らかの武器。火薬音はしなかったから銃じゃない。通り過ぎた所の壊れ方から見て多分弓だと思う。

距離は分からないけどそこまで遠いところから撃ったわけでもないはずだ。音が聞こえるってことはそこまで遠いはずがないのだ。


撃ったと思われる方向に銃口を向ける。別に撃つ訳じゃない。また撃たれたら困るから脅すだけ。あんまり私も人を傷つけたくない。

「ねぇ!ちょっと攻撃やめてくれたりしない!?多分どっちもホモ・サピエンスなんだしさ!話し合おうよ!」

大声で聞いてみたが、返事がしない。相手も警戒してるんだろう。なら正面から見て話すしかない。


棚や柱を背にして徐々に近づく。こんな状況なんだし、できれば敵対はしたくないんだけどなぁ。


相手と棚1枚を隔てた場所まで到達した。棚から顔を出したら敵の姿や形が分かる。

「別になにかしたんなら謝るけど――」

そう喋った瞬間、私の頭の横を何かが通り過ぎて行った。ちょうど拳1つ分くらいの所をだ。

ちょっとでもズレてたら脳天を貫いてただろう。完全に殺る気だ。怖い。

「そっちから仕掛けてきたんだからね。ちょっと荒っぽいことするから……」

素早く、そして大きく息を吐く。足元を撃ったら怯むはず。そこから距離を詰める。作戦は固まった。




私は棚から体を出して銃を構えた。それと同瞬、背の高い大柄な男が私の目の前に立ち塞がった。

身長は目測180cm以上で筋肉質だ。腕の引き締まった筋肉を見るにボクシングか柔道の出身と見える。

その男は即座に私の銃を掴んで、みぞおちに蹴りを入れてきた。私は銃を撃つ暇もなく後ろに倒れた。


男が銃を遠くに投げ捨ててこちらに近づいてきた。腹、しかもみぞおちを蹴られたので痛い。ちょっとだけ吐いた。

「……なにをしに来た」

男にまた腹を蹴られた。今度は吐かなかったがそれでも痛いし苦しい。

「……いきなり……乙女の腹を……蹴るとはね……」

男が蹴って私をうつ伏せにしてきた。そのまま私の左手の薬指を握りしめてくる。

「言わないと指をへし折るぞ。あと仲間がいるなら言え」
「なに……拷問?……結婚指輪でもはめてくれるのかと思ったよ」
「黙れ。はやく言わないと本当に折るぞ――」

私は体を思い切り回転させて一気に仰向けになった。そして男が反応するよりもはやく、薬指を握っていた男の右腕を掴んで足を絡みつかせた。首と脇を足で同時に絞めるような感じだ。
そしてそのまま男の体を横に倒してマウントをとった。体重をかけて男を脚で締め上げる。俗に言う『前三角絞』と言うやつだ。

「――ッッッ」

男の肩と私の内ももで締め続ける。人によってはご褒美かもね。まぁこんな美少女にやってもらうならご褒美でしょ。

「私を蹴ったんだからこれでおあいこだよね――」

男が私の太ももを握りしめてきた。ビリビリする痛さが太ももにくる。くる……けど、このマウントを取ってる状況で簡単にマウントを外すわけがない。

「このまま気絶してもらうよ……もし後遺症が出てきたら頑張ってね……」

脚に力を込める。男がバタバタと暴れるが、この状況なら体重が軽い私でも放り投げられたりもしない。

このまま、このまま――。こういう時は素直に時が進んでくれないことがほとんどだ。



「その人を離せ!!」

声が聞こえてきた。聞こえてきた方を見る。そこには小さい女の子がいた。私より若干小さいくらいの女の子だ。

「その人を離して!さもないと撃つよ!」

少女の手には白い弓が置いてあった。弓は握っておらず、白い紐のようなものがつけられてあった。

弓を握っておらず、弓の材質が金属な所を見るに、種目はアーチェリーだ。

「はやく外して!はやく!」
「分かったよ分かったよ。そんなに急かさないでよ。外したら攻撃してこない?」
「うん。攻撃はしないからはやくして!」











「――いや、外さなくてもいいよ花音ちゃん」

後ろから彩の声が聞こえてきた。少し目を向けてみると、彩が女の子に向かってショットガンを向けているのが見えた。

「その弓を下ろして。弓より銃の方が速いのは分かるでしょ」
「銃の種類にもよる。同時に撃ったとしても、少なくともそこの女の子の頭は撃ち抜けるよ!」
「花音ちゃんに手を出したのはそっちでしょ。なんのためかは知らないけどそっちの方が悪いはずだ」

2人が睨み合っている。どっちが先に仕掛けてもおかしくない状況だ。……そもそもここで殺しあったところでどっちも得はない。なんなら協力した方がお得だ。

「ちょっ、ちょっと2人とも聞いて!」
「「何?」」

威圧感がすごい。ヒッって声が出た。

「この状況で言うのもなんだけどさ、一旦話し合おう!ほら、この人解放するから」

私は脚を外した。反撃されたくないのですぐさま男から離れる。

男は過呼吸になってフラフラしながら女の子の方に歩いていった。女の子は弓を構えるのをやめて、男に肩を貸した。

「ね!ね!とりあえず話し合おう!多分どっちも敵じゃ無いはずだから!」

私の思いが伝わったのか、彩も銃を下ろした。ホッとした。

「……」
「……」

と言いつつずっと睨み合ってる。怖い。下手したら外のゾンビの方がましなまである。こんなんで話し合えるのかな。不安だ。












続く
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