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1章 血塗れになったエルフ
第14話 歩けヘキオン!
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「――カエデさぁぁん。ちょっと休みましょうよー」
「もうへばったのか?体力ないなー」
辺り一面。見渡す限り。そんな言葉がつくほどに、森の中は緑色だらけだった。
舗装なんてされてるはずがない。尖った石やら、謎に地中から出ている根っこやら、無駄に滑る葉っぱやらが落ちている。
回避しようにも体力を使う。じゃあ踏み荒らす。それだって体力を使う。結局は山の道を歩く以上、どんなことにも体力を使うことになるのだ。
「もう1時間くらい歩きっぱなしじゃないですか。本当にこの道で合ってるんですか?」
「大丈夫だよ。俺の勘を信じて」
「はぁい――え、勘!?勘ですか!?」
額から流れる汗を拭いながら驚く。
「山の中を!?勘で!?私たち歩いてるんですか!?」
「そうだよ」
「あーもう死にました。私は死にましたー。遺書でも書いてくりゃ良かったなぁ」
「もう2回くらい死にかけてただろ。こんくらい問題ないって。なんなら状況的には一番マシだぞ」
「うぇーん」と子供みたいにヘキオンは泣く。山の中だと何かの動物の鳴き声みたいだ。カエデはそんなことを想像していた。
――数時間前。
「――カ、カエデさんって17歳なんですか!?」
「そこか?もっと不思議な情報出したと思うけど?」
「いやぁ……私と1歳しか変わらないのがびっくりで……」
「なんかショックなんだけど」
「ごめんなさい」
2人で仲良く歩きながら雑談をしていた。まだ周りの景色は平和だ。魔物もいない。鹿が群れで歩いてるだけだ。
「えーっと何が不思議……無職!?レベル9999!?」
「反応が嘘くさいなぁ」
「あはは……それでなんでそんなにレベルが高いんですか?」
――ジョブというのは説明しただろう。下位職と上位職に分けられる冒険者の役割。戦闘にあたって必ず必要な知識となる。
そして『無職』というのは、その全てに属さない職業だ。まずそもそも無職はジョブではない。
冒険者になるためには、一般人から戦闘のために体を変化させる必要がある。その変化させた状態が無職だ。そこから手続きを済ませてジョブ転生の儀式をおこなって、そのジョブに変化させる。
無職というのは、例えるなら卵の殻に入ったひよこ。技や魔法を扱うことはできない。それは戦闘においてかなりのバッドアドバンテージになる。
そもそも無職になってからの手続き、ジョブ転生はその日のうちにおこなうのだ。他のジョブと違い、無職は人物に定着してしまう。そうなってしまうと他の職業に変えることができなくなってしまうのだ。
だからそうならないようにジョブ転生は1日で終わらせる。なので無職になることはあっても、無職のままは存在しないはずなのだ。
「無職はレベルが上がりやすいんだ。その代わりに最初はびっくりするくらい弱い。俺も最初は常に死にかけてた」
「知らなかったです。そんなこと」
「普通は無職なんてならないからな」
「ははっ」と陽気に笑う。
「じゃあなんで無職なんですか?」
――。会話が止まった。カエデの顔が暗く、曇っていく。
「……ちょっとそれは言えない」
「そう……ですか」
ヘキオンもカエデの変化を感じ取ったのか、話を止めた。
「……悪かったな。話を変えよう」
「は、はい」
「目的地がないんだよな?このまま真っ直ぐ行くのか?」
「そのつもりですが」
歩きながらパッと地図を広げた。ここら辺の情報が描かれてある地図だ。
「このまま真っ直ぐ行くと……クライムフォレストって所に当たるな」
「クライムフォレストかぁ」
「……ここ知ってるのか?」
「え?はい。アレッサさんに話を聞きました」
カエデが知らないことを知ってる。そのことが嬉しいのか、「ムフー」と胸を張りながら、ヘキオンは解説を始めた。
「クライムフォレスト。魔物は少ないものの、独特の文化を築いているエルフの原住民がいるらしいんです。だから普通の冒険者はここを通らない」
相槌を打ちながら話を聞いている。
「ここには不思議な噂があってですね。大昔に封印された伝説の魔物『麒麟』がいる、呪いを生業とする魔女が夜な夜な黒魔術をしている、とのことです」
「んー眉唾だな」
「でもロマンはあります!」
目をキラキラさせながら話している。噂やワクワクする話が好きなようだ。カエデもニッコニコになっている。
「山登りの経験は?」
「ないです!」
「その自信はどこから来てんだ」
「心です!」
「……疲れたからって『おぶって』とか言ったらダメだよ」
「そーんな私16歳ですよ?子供じゃああるまいしそんなことあるわけ――」
「もうへばったのか?体力ないなー」
辺り一面。見渡す限り。そんな言葉がつくほどに、森の中は緑色だらけだった。
舗装なんてされてるはずがない。尖った石やら、謎に地中から出ている根っこやら、無駄に滑る葉っぱやらが落ちている。
回避しようにも体力を使う。じゃあ踏み荒らす。それだって体力を使う。結局は山の道を歩く以上、どんなことにも体力を使うことになるのだ。
「もう1時間くらい歩きっぱなしじゃないですか。本当にこの道で合ってるんですか?」
「大丈夫だよ。俺の勘を信じて」
「はぁい――え、勘!?勘ですか!?」
額から流れる汗を拭いながら驚く。
「山の中を!?勘で!?私たち歩いてるんですか!?」
「そうだよ」
「あーもう死にました。私は死にましたー。遺書でも書いてくりゃ良かったなぁ」
「もう2回くらい死にかけてただろ。こんくらい問題ないって。なんなら状況的には一番マシだぞ」
「うぇーん」と子供みたいにヘキオンは泣く。山の中だと何かの動物の鳴き声みたいだ。カエデはそんなことを想像していた。
――数時間前。
「――カ、カエデさんって17歳なんですか!?」
「そこか?もっと不思議な情報出したと思うけど?」
「いやぁ……私と1歳しか変わらないのがびっくりで……」
「なんかショックなんだけど」
「ごめんなさい」
2人で仲良く歩きながら雑談をしていた。まだ周りの景色は平和だ。魔物もいない。鹿が群れで歩いてるだけだ。
「えーっと何が不思議……無職!?レベル9999!?」
「反応が嘘くさいなぁ」
「あはは……それでなんでそんなにレベルが高いんですか?」
――ジョブというのは説明しただろう。下位職と上位職に分けられる冒険者の役割。戦闘にあたって必ず必要な知識となる。
そして『無職』というのは、その全てに属さない職業だ。まずそもそも無職はジョブではない。
冒険者になるためには、一般人から戦闘のために体を変化させる必要がある。その変化させた状態が無職だ。そこから手続きを済ませてジョブ転生の儀式をおこなって、そのジョブに変化させる。
無職というのは、例えるなら卵の殻に入ったひよこ。技や魔法を扱うことはできない。それは戦闘においてかなりのバッドアドバンテージになる。
そもそも無職になってからの手続き、ジョブ転生はその日のうちにおこなうのだ。他のジョブと違い、無職は人物に定着してしまう。そうなってしまうと他の職業に変えることができなくなってしまうのだ。
だからそうならないようにジョブ転生は1日で終わらせる。なので無職になることはあっても、無職のままは存在しないはずなのだ。
「無職はレベルが上がりやすいんだ。その代わりに最初はびっくりするくらい弱い。俺も最初は常に死にかけてた」
「知らなかったです。そんなこと」
「普通は無職なんてならないからな」
「ははっ」と陽気に笑う。
「じゃあなんで無職なんですか?」
――。会話が止まった。カエデの顔が暗く、曇っていく。
「……ちょっとそれは言えない」
「そう……ですか」
ヘキオンもカエデの変化を感じ取ったのか、話を止めた。
「……悪かったな。話を変えよう」
「は、はい」
「目的地がないんだよな?このまま真っ直ぐ行くのか?」
「そのつもりですが」
歩きながらパッと地図を広げた。ここら辺の情報が描かれてある地図だ。
「このまま真っ直ぐ行くと……クライムフォレストって所に当たるな」
「クライムフォレストかぁ」
「……ここ知ってるのか?」
「え?はい。アレッサさんに話を聞きました」
カエデが知らないことを知ってる。そのことが嬉しいのか、「ムフー」と胸を張りながら、ヘキオンは解説を始めた。
「クライムフォレスト。魔物は少ないものの、独特の文化を築いているエルフの原住民がいるらしいんです。だから普通の冒険者はここを通らない」
相槌を打ちながら話を聞いている。
「ここには不思議な噂があってですね。大昔に封印された伝説の魔物『麒麟』がいる、呪いを生業とする魔女が夜な夜な黒魔術をしている、とのことです」
「んー眉唾だな」
「でもロマンはあります!」
目をキラキラさせながら話している。噂やワクワクする話が好きなようだ。カエデもニッコニコになっている。
「山登りの経験は?」
「ないです!」
「その自信はどこから来てんだ」
「心です!」
「……疲れたからって『おぶって』とか言ったらダメだよ」
「そーんな私16歳ですよ?子供じゃああるまいしそんなことあるわけ――」
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