鬼畜系 短編BL小説集

鯛田オロロ

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獣のカロル

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人類には二つの型が存在する。

すなわち、カロルとフィグスだ。カロルは熱型人類、フィグスは冷型人類とも呼ばれる。

カロルは思春期以降、月に一度、新月の前後一週間ほど、狂しい性衝動に駆られる。カロルはその期間、法律で外出を禁じられている。性衝動抑制剤ーーと言っても三割抑制できるほどとされているーーを服用した上、自宅に待機し、学校も仕事も休まなければいけない。

しかし、人口五%ほどのカロルは男女とも高い知能と優れた肉体、美しい容姿を持ち、この致命的とも言える欠点を補ってあまりあった。政界、財界、スポーツ界、芸能界、ありとあらゆる分野で社会的に成功を収めていた。

一方、人口の九五%を占めるのがフィグスである。

氷見理人もありふれたフィグスの一人であった。

飲み会でしたたかに酔った理人は、居酒屋のトイレの個室でげえげえと吐いていた。散々吐いたあと、個室を出て水道で口をゆすぎ、ふと目の前の鏡を見る。

貧相で濁った目をした幽霊のような男が映っていた。それは氷見本人だった。

四月一日の辞令で、氷見の同期、火野太陽が課長に昇進したのだ。今日はその昇進祝いだった。

入社六年目、会社史上最年少の課長だという。

係長にもなっていない氷見は面白くなかった。

火野が優秀なのは当たり前だ、彼はカルロなのだから。

大体一月のうち、自宅待機が必ず必要で仕事に穴を開ける火野が課長なんて、と考えたが、見事に火野は自身でスケジュールを調整しているのだから文句のつけようもない。

性衝動に抗えない獣のくせに、とそう見下すことでカロルの火野に対する溜飲を下げていた。

「カロルなんて獣のくせに」

酔って思いの外大きく声が出た拍子に、トイレのドアが開いた。

びくっと振り返って見ると、火野が立っていた。

さっと血の気が引く。聞かれただろうか。

「氷見、大丈夫か?」

火野の憎たらしいほど整った男らしく精悍な顔には心配の色しか浮かんでいなかった。どうやら聞かれてはいなかったようでほっと胸をなでおろす。

カロルを獣に例えるのは、明らかな差別発言で社会通念上到底許されるものではない。

「ああ、大丈夫……」

そういうそばから吐き気がして、個室に逆戻りする。

おええ、ともう吐くものが無く胃液を吐き出す。食道が胃液の酸に焼ける。

それに体が熱い。酔うと冷えるほうだったのに、今日はおかしい。

「大丈夫か?」

その背中を火野がさする。

大嫌いな火野に擦られ、氷見の背中がぞわぞわと総毛立つが振り払うだけの余力もない。

「一緒に店、出るか」

そこからはよく覚えていない。

不本意ながら氷見は火野にほとんど抱えられるようにして居酒屋を後にしたのだった。


氷見は体の異常な火照りと息苦しさに目を覚ました。

手足が思うように動かない。できうる限り現状を確認ずる。

第一に全裸だった。加えて、膝裏に通された棒についた手枷足枷で拘束で固定されて、膝は胸につきそうに折り曲げられ、さながら体育座りをこてんと転がされたような姿勢を強制されていた。

「なんら、これ……」

呂律が回らず、体も自由に動かない。見知らぬ部屋で、酔いが残っている頭はただ混乱するばかりだった。

がちゃりという音に目をやると、見知った顔だった。

「ひの! これ、外してくれよ」

例えそれが大嫌いな火野であっても安心した。助かった。きっと火野が助けに来てくれたのだ。

「よかった、元気そうだ」

火野が笑う。

どこかに氷見をこんな風に拘束した頭のおかしい犯人がいて、もう戻ってくるかもしれない。

悠長な火野の様子に氷見は焦りと苛立ちを覚えた。

「なあ、いいから外してくれよ、火野」

「火野課長、だろ?」

困ったなあとでも言うような火野を、氷見は目を見開いて凝視した。

そして気がついた。

火野が氷見を拘束した張本人なのだと。普段の火野の好青年ぶりからその予測がまるで立たなかった。

「なんてね。プライベートではどんな風に呼んでくれてもいいよ」

火野が微笑む。

「てめ、ふざけんら、なんろつもりら……!」

「今月一日早く来ちゃったみたいなんだよ、発情期」

カロルの性衝動が抑えられない期間を発情期というのは前時代的な言い方で、今は差別的として使われていない。現在は単に、自宅待機が法律で義務付けられていることから待機期間と呼ばれている。

発情期、という言葉を火野は明らかに選んで使った。

馬鹿でもわかる。氷見は今、火野に強姦されようとしている。

「おまえ、正気か!? 俺は男らぞ!!?」

「ほら、俺は獣だからそんなの関係ないよ。氷見も言ってただろう」

「……!!!」

カルロなんて獣のくせに。トイレでの差別発言は聞かれていたようだ。

「こんらことして許されると思ってるろか!?」

「獣だからね、俺は」

心の底から楽しそうに笑いながら、火野が続ける。

「それにカロルは法では裁けないよ」

「……!!」

日本は法治国家だし、そんなのは都市伝説だと思っていた。しかし、火野の薄ら笑いを見て、どうやら本当なのだと悟った。

それは氷見がいくら被害を訴えでようと、カロルの同胞たちによってもみ消すことができる、ということだ。

火野が衣服を脱ぎ捨てる。痩せぎすの氷見と違い、程よく筋肉のついた均整の取れた肉体だ。パンツを脱ぐとぶるりと完全に勃起した雁高で日本刀のように反り返り、血管が浮き出た立派なペニスがあらわになった。

恐怖だった。

氷見が転がされているベッドに火野が上がった。大人の男が二人のって余裕のあるサイズだ。

火野がベットの宮に手を伸ばし、ボトルを取る。

これみよがしにキャップを開け、逆さまにしてどろりとした中身を手に取った。

「らめ、やめろ! やら!」

口はともかく、体は緩慢な動きしか取れなかった。抵抗と言っても右へ左へ体を揺するぐらいが限度であった。

逃げ出せないまま、むき出しの氷見のアヌスへローションを帯びた火野の指が触れた。そんなところ、物心ついてから誰にも触らせたことがない。

「ひっ! ばか! やめろ!」

ひんやりした感触は一瞬だった。火照った体に、すぐに馴染んだ。

ぬちぬちと音を立てながら、アヌスのふちをくるくると指が旋回する。精一杯力を込めて侵入を防ごうとしたが、抵抗虚しく第一関節がつぷりと入ってしまった。

「やら、きもいっ! やめろばかっ! あっ♡ ひっ♡ ひんっ♡」

いたずらに中で指を軽く曲げられるとくちくちと肉が音を立てた。ゆっくりと小さく抜き差しされると、気持ち悪いはずなのに、甘ったるい声が出た。

「きもいのにチンコ勃つんだ?」

「……!!」

勃起したなど、氷見にはにわかに信じられないことであった。涙がじわりとにじむ。

人差し指がずっぷりと根元まで突き入れられた。

「~~~~~っっ♡♡♡」

それは、紛れもない快感だった。肉の壁を指が擦れてえもいわれぬ快感が走った。

陰嚢や蟻の戸渡りを左手でもんだり押したりしながら、くりゅんくりゅんと、中のしこりを火野の指ががもてあそぶ。

「おっ♡ おおおっ♡ やめっ♡」

ぐりゅっ、ぐりゅっと今度は、しこりが押しつぶされる。

「うぎゅっっ♡ うぐううう♡ ひぐ♡ あぐっ♡」

「氷見、普段はすましてるくせに、酷い顔だな」

くすくすと火野が笑う。

氷見の口の端からは唾液がだらしなくつたい、滲んだ涙が幾つも筋を描いた。喉からはひっきりなしに濁った喘ぎが漏れた。

「今、指増やしたんだけどわかる?」

肛門が拡げられてより擦れる感じが増す。半ば乱暴に指を抜き差しされる。

「や、やらあ♡♡ んんんっ♡ ひの、謝る、あやまるからっ♡ おおおっ♡♡♡」

「ん? じゃ、謝ってみて」

「ふぐうっっ♡ ひぎっ♡♡ おごおおおお♡♡♡」

「謝んないの?」

「ごめ、うぎっ♡♡ あぎゅ♡ ごべ、あがっ♡♡」

ぐちゅんぐちゅんと下品な水っぽい音が立つ。

それと同時に、痛いくらいに立ち上がったペニスから先走りがたらたらと腹の上に水たまりを作っていた。

「謝るんでしょ?」

「はっ♡ ご、うぎゅっ♡ ごべ、ごべんなっ、あひいっっ♡♡♡」

「幼稚園児だってもっとちゃんと謝れるぞ」

呆れた様子の火野は、ぐちゅりと指を引き抜くとヘッドボードに再び手を伸ばした。

みっともなくアヌスが火野の指を求めてひくついていた。

氷見は息が上がり、声が出なかった。目も焦点が合わない。

「おしおき」

そう火野が言うと、凄まじい衝撃が氷見を襲った。

刺激もないのにすでにしこり立っていた乳首を洗濯バサミで挟まれ激痛が走ったのだ。

「~~~~~っっっ!!!」

じんじんとした痛みに苛まれながらも、氷見の勃起は収まらなかった。

「全然萎えてないのな」

火野が軽く陰茎を指で弾いた。

「ひぎっ♡」

「淫乱」

「ひの、やだ、ほんとごめん、だから」

「体で払うって?」

「ちが! あ゛あ゛ああああっ♡♡♡」

ぐちゅんと火野の剛直が不意に突き入れられた。体に丸太でも突き刺されたのかと思う程だったが、ぐじゅぐじゅにほぐれたアヌスはどうにか切れずに咥え込んだ。

「お゛ごっ、ひっ……♡」

目一杯に広げられて肉壁をこすられ、どすんとしこりを押し込むように突かれる。押しつぶされひしゃげられた そこから、目の眩むような快感が全身を甘いしびれとなって駆け回る。

もう何も考えられなかった。

「ぐっ♡ おごっ♡ あ゛っ♡ あ゛っ♡ お゛お゛っ♡♡♡」

「どう? 馬鹿にしてたカロルのチンポは?」

潰されて押し出されるように、どろりと勢いなく射精していた。

「たまんないな、氷見。才能あるよ」

氷見が射精しても火野は腰を止めなかった。

「ひいっ♡ あ゛っ♡ も、やだ、やだあ♡」

今度は、奥をがんがんとえぐるように腰を打ち付けられた。

凄まじい衝撃が内臓を突き上げる。

「うぎっ♡ はっ♡ ~~~っっっ♡♡♡」

ひたひたと、今まで感じたことのないとてつもない快楽が押し寄せようとしていた。

「あ゛、あ゛あ゛!!? うぐっ♡ うっ♡ お゛お゛お゛お゛おおお!!?」

馬鹿みたいに性液がペニスからどろりと溢れた。

「すごい中うねってる、熱いよ氷見の中、すごくいい」

腰を使いながら、思い出したように乳首の洗濯バサミを火野が弾いた。

「はぎっ♡」

「あっ、中締まった」

火野が続けて何度も両の乳首の洗濯バサミを弾いた。

「ぎっ♡ あがっ♡ うぐっ♡ やべ、やべでっ♡ い゛い゛いいい♡♡♡」

「すごいな、抜かないでって絡みついてくる」

「ちがっ♡ ぢがううう♡♡」

最奥をがんがんと突かれ、捏ねられて、こりこりとしたしこりも一緒に押しつぶされて、頭が馬鹿になる物質が何か出ているようだ。

激しい快感に体は激しく反応しているのに、脳はぼわっとした得たいのしれない快感にひたされている。

「お゛お゛!!? あ゛あ゛あ゛~~~♡」

痛々しく真っ赤に充血した乳首は、もはや快感のスパイスでしかない。引っ張られ、弾かれ、ねじられるたびに氷見は腰を跳ねさせた。

「あ゛あ゛!!? おごっ♡ あがっ♡ お゛ほおおおお♡♡♡」

ぐりぐりと、こりゅこりゅと、前立腺から結腸までを巨大なものが擦る。えぐる。突き上げる。カロルの無尽蔵な体力がそれを可能にしていた。

もはや出るものない氷見の陰茎は萎れていたが、むしろ萎れてからのほうが余計に鋭敏に快感を感じる羽目になった。

「っっっ♡♡♡ っっっ♡♡♡」

ついに、声もなくなった。声もない快感は体の中に閉じ込められ暴力的なまでに、人間としての矜持や理性を破壊していった。

氷見は、何度も射精のないまま絶頂した。一際強く打ちつけられ、火野の動きが止まる。

中に熱い迸りを感じた。火野がずるりと己を抜き去った。

「あ、う……」

その途端、しょろしょろと、氷見の陰茎から生あたたかい小水が溢れ出した。飲酒のせいもあり、なかなか止まらない。

「氷見はしょうがないやつだな。犬猫でもトイレでするのにな」

「うっ、あっ……」

排泄を見られ、あまつさえ馬鹿にされたことは、快感にずたずたにされた氷見の理性を蘇らせた。

「やだ……みるな……みるなあ……」

羞恥に身を焼かれながらも、全身を真っ赤に火照らせ、ふうふうと苦しげに息を吐きながら、収まらないドライオーガズムに体を引くつかせている氷見は滑稽ですらあった。

氷見の排尿がようやくおさまると、火野は手首足首から拘束具を外した。

ようやく終わったのだ。そう思った力の入らない氷見の体を、火野はくるりと裏返した。

小水の汚さと、もう冷えてしとどに濡れた感触とが不快で仕方ない。

そうして両の手で氷見の腰を掴むとぐいと持ち上げて、自らの方へ引き寄せた。

「な、に」

いきなり、いきり立った物が再び最奥までねじ込まれ、ぐいっと極めつけに奥に押し付けられる。

「ひぐうっっ♡」

結腸を突かれて、氷見はたまらず汚い喘ぎを発した。

「も、やだ、うぐっ♡ あ゛っ♡ お゛っ♡」

その様子を見て、火野が言う。

「さ、へばんないで。発情期は始まったばっかりなんだから」



おわり



初出:2021年3月23日
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