君は僕の財産目当て、かもしれない

鯛田オロロ

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だけどそれから、フェイラルの態度が少しぎこちなくなった。

なんだか、視線が合わないし、合ってもそっと外されるような。

この前、彼が落としたボールペンを拾うとき、同時に手を伸ばして手が触れたのだが、その時も彼は大げさに飛び退いた。

すごく嫌な考えが浮かんで離れない。

僕のフェイラルへの好意が知られたか。それとも、僕がオメガだとバレて、気持ち悪いと思われているか。

男に好かれるのも無理な人は無理だろうし、オメガの男を生理的に受け付けない人もいる。

優しいフェイラルは、見て見ぬふりをしてくれようとして、でも隠しきれないのかもしれない。

ものすごく憂鬱だ。



講義の予習をして、図書館で指定の本を探して、借りて読んで、大学に行って講義を受けて、レポートを書いて、洗濯して、自炊して、シャワーを浴びて、寝る。

ここ二週間ほど、フェイラルは僕の生活の中にいなかった。

彼からは連絡がなくて、こちらからするのも怖くて。

大教室で同じ講義を受講しているが、いつもは最前列で僕の隣で受けるのに、フェイラルは僕の隣に来なかった。

見回したら、隠れるみたいに、最後列に座って講義を聞いているのを見つけた。しかし、極度の美形は、遠くからでも目立つのだな、と苦笑してしまう。

ああ、もう、完全に終わったな。そう思った



ホルセと大学構内を歩いていて、フェイラルとすれ違った。フェイラルも別の友人と歩いている。

挨拶も、会釈も、手を挙げるのも、駄目だ。僕は彼に避けられてるんだから。

僕は悲しくてフェイラルを見ないように、うつむいて足早に通り過ぎた。



その晩、僕の携帯電話にフェイラルから久しぶりに連絡が来た。

液晶に表示されたフェイラルの名前に、手が震えた。

電話に出ると、久しぶりに彼の声を聞いた。

「ニコ、会って話したい」

それで、場所は僕のアパートがいいと言う。

今更、なんだろう、何を言われるんだかものすごく怖い。

「カフェとかじゃ駄目なの?」

と言ったけど、駄目だと。



三十分ほどして、怖い顔をしたフェイラルが、僕の家を訪ねてきた。

「ニコは、オメガだよね」

部屋に上げて、開口一番がこれだ。ああ、そっちか、そっちがバレていたのか。しかし、なんで、わかったんだろう。

「前に君を送ってきたとき、薬が見えたから。私の母がオメガだから。母が、君と同じ薬を飲んでいて」

僕の心の声がわかったのか、フェイラルが補足した。テーブルの上に出しっぱなしにしていたのが災いした。

「ああ……そうなんだ……」

僕は馬鹿みたいにそんなことしか言えなかった。

しばらく沈黙が続く。フェイラルは、僕がオメガかどうか確認しにきたのか、わざわざ。

どうして、そんな必要があるのだろう。

僕は、気持ち悪くなって吐き気がしてきたし、胸が締め付けられるような感じだし、冷や汗が出てる。

沈黙を破って、フェイラルが口を開いた。

「私は、ずっと君に言えなかったことが、ある」

怖い、なんだろう。聞きたくない。どうせ、ろくなことじゃない。

「……私は……ニコ、君が好きだ」

「……え?」

あまりに突飛に思えて、聞き間違いかと思う。

「君に惹かれていたけど、男同士だから、言わないほうがいいと思っていた。そのほうが、一緒にいられると、思って」

「いや、待ってよ。フェイラルは、好きな子いるんでしょ?」

僕は、なにかの悪い冗談のように感じて、左の口角がひくひくと上がって、歪な笑いを作っていた。

「好きな子って、君のこと」

からかっているのか?

だって、おかしすぎるじゃないか。僕相手に恋愛感情をフェイラルが持つなんて、ありえない。

フェイラルなら、あらゆる人と付き合えるのに。今日は、エイプリルフールか? それにしたって、悪趣味な嘘だ。

「でも、ちょっとでも可能性があれば、賭けてみたい」

フェイラルの声は震えていて、顔は真剣で、こわばっていて、それじゃあ、本当に?

フェイラルは、僕の返事を待っている。

僕は、やっとのこと、

「僕も……」

それだけ言うのが、精一杯だった。

フェイラルは、僕にそっと触れるだけのキスをした。

触れただけなのに、その甘い感触にさざ波のような震えが走った。
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