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1 転生しました?
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チーン。りんを鳴らして手を合わせる。毎日一緒だった愛猫アレクサンダーはもういない。
10年という長い月日を一緒に暮らしてくれてありがとうアレクサンダー。もっと高い缶詰買ってあげたかったよアレクサンダー。ペットの服はあんまり興味持てなかったけど一度くらい着せてもよかったよねアレクサンダー。トリミング当日危険を察知したのか死ぬほど嫌がられて泣く泣く予約キャンセルしたこと忘れないよアレクサンダー。
あーダメだダメだなんか恨み言混ざってきちゃった。
私こと高塚えみり32歳が就職のため実家を離れて早10年。アレクサンダーは1人暮らしでも寂しくないようにと両親からプレゼントされたオスの茶トラ猫だ。そのためにわざわざペットOKの物件を探してくれて(正直言って私は私で部屋を見つけていて本契約寸前までいっていたのだけど)一緒に生活するようになったのだった。
ちなみに名付けたのはうちのバカ兄。某ロックバンドから拝借したらしい。イカつい名前つけやがって。私はアレクサンダーのことを基本的に「アレク」と呼んでいた。
仕事が忙しい時は帰宅時にモフモフと抱っこさせてくれてありがとう。予定のない休みの日はダラダラとゲームばかりやっている私の隣で眠ってくれてありがとう。自由気ままに一緒に過ごしてくれた相棒。やっぱり寂しいよアレク。
「ううっ、このままだとまた泣いちゃうだけだし寝よう!」
切り替え切り替え。そうだ切り替え。明日も朝から忙しい。仕事があるって幸せね。
時刻は午後10時過ぎ。まだあまり眠くないけれどおやすみなさい。
・・・・。
すかー。くー。
・・・・。
・・・・。
「・・・りー」
「・・・えみりーってば」
「エミリー、起きて! エミリー!」
どこからか少年の声がする。体を揺さぶられせっかくの甘美な睡眠は強制終了となった。
だんだんと瞼に光が刺さって目を閉じていられなくなってきた。
「うんん・・・何よもう・・まだ目覚まし鳴ってないじゃん・・・」
「しっかりしてよエミリー! 見て! ほら! 俺だよ!」
「はあ・・・?」
さっきから何度も馴れ馴れしく名前を呼ばれているけど私はえみりだ。エミリーじゃない。
しぶしぶ目を開けるとそこにはライトブラウンの髪色にライムソーダみたいな色の瞳をもった少年が満面の笑みでこちらの顔を覗き込んでいた。
「うわああっ!?」
「おはようエミリー! やったよ俺たち! 一緒に来れたんだ!!」
少年は笑顔を崩さないまま声高に叫んでいる。すっごくテンション高いけど何なの。だいたいここは私の部屋なんだし不法侵入か? 朝から空き巣?
「あの、あんた誰」
「アレクだよ! アレクサンダー! ほら、この髪見てよ! いっぱい撫でてくれたじゃんか!」
「・・・・・」
「ねっ? わかるだろ?」
「・・・・・アレク?」
「そう!」
「・・・茶トラ猫の?」
「そうだよ!!」
「・・・・・・人になったの?」
「そうなんだ! 転生できたんだよ俺たち! また一緒にいられるねエミリー!」
「・・・・・・・・・・・・」
ようやく目が開いたがそれ以上に口が開いた。開きっぱなしだ。目の前の少年が昨日火葬したはずの愛猫だと言い張る。転生できたとか言ってる。シンプルにわけがわからない。
でも、どうやらそれは嘘でもなんでもないようだ。
いま着ている服を見ると買った覚えのない白のブラウス。パンと張った真白いシーツ。一人で寝るにはムダとしか思えない大きなベッド。どこぞの高級ホテルの一室かと思うようなロココ調の家具にやたら広い部屋。
極めつけは鏡に映った自分だ。さらっとしたブラウンの髪にくりっと大きな瞳は水色。人形みたいに整った目鼻立ち。なんてこと。間違いない。
「転生しちゃった・・・」
10年という長い月日を一緒に暮らしてくれてありがとうアレクサンダー。もっと高い缶詰買ってあげたかったよアレクサンダー。ペットの服はあんまり興味持てなかったけど一度くらい着せてもよかったよねアレクサンダー。トリミング当日危険を察知したのか死ぬほど嫌がられて泣く泣く予約キャンセルしたこと忘れないよアレクサンダー。
あーダメだダメだなんか恨み言混ざってきちゃった。
私こと高塚えみり32歳が就職のため実家を離れて早10年。アレクサンダーは1人暮らしでも寂しくないようにと両親からプレゼントされたオスの茶トラ猫だ。そのためにわざわざペットOKの物件を探してくれて(正直言って私は私で部屋を見つけていて本契約寸前までいっていたのだけど)一緒に生活するようになったのだった。
ちなみに名付けたのはうちのバカ兄。某ロックバンドから拝借したらしい。イカつい名前つけやがって。私はアレクサンダーのことを基本的に「アレク」と呼んでいた。
仕事が忙しい時は帰宅時にモフモフと抱っこさせてくれてありがとう。予定のない休みの日はダラダラとゲームばかりやっている私の隣で眠ってくれてありがとう。自由気ままに一緒に過ごしてくれた相棒。やっぱり寂しいよアレク。
「ううっ、このままだとまた泣いちゃうだけだし寝よう!」
切り替え切り替え。そうだ切り替え。明日も朝から忙しい。仕事があるって幸せね。
時刻は午後10時過ぎ。まだあまり眠くないけれどおやすみなさい。
・・・・。
すかー。くー。
・・・・。
・・・・。
「・・・りー」
「・・・えみりーってば」
「エミリー、起きて! エミリー!」
どこからか少年の声がする。体を揺さぶられせっかくの甘美な睡眠は強制終了となった。
だんだんと瞼に光が刺さって目を閉じていられなくなってきた。
「うんん・・・何よもう・・まだ目覚まし鳴ってないじゃん・・・」
「しっかりしてよエミリー! 見て! ほら! 俺だよ!」
「はあ・・・?」
さっきから何度も馴れ馴れしく名前を呼ばれているけど私はえみりだ。エミリーじゃない。
しぶしぶ目を開けるとそこにはライトブラウンの髪色にライムソーダみたいな色の瞳をもった少年が満面の笑みでこちらの顔を覗き込んでいた。
「うわああっ!?」
「おはようエミリー! やったよ俺たち! 一緒に来れたんだ!!」
少年は笑顔を崩さないまま声高に叫んでいる。すっごくテンション高いけど何なの。だいたいここは私の部屋なんだし不法侵入か? 朝から空き巣?
「あの、あんた誰」
「アレクだよ! アレクサンダー! ほら、この髪見てよ! いっぱい撫でてくれたじゃんか!」
「・・・・・」
「ねっ? わかるだろ?」
「・・・・・アレク?」
「そう!」
「・・・茶トラ猫の?」
「そうだよ!!」
「・・・・・・人になったの?」
「そうなんだ! 転生できたんだよ俺たち! また一緒にいられるねエミリー!」
「・・・・・・・・・・・・」
ようやく目が開いたがそれ以上に口が開いた。開きっぱなしだ。目の前の少年が昨日火葬したはずの愛猫だと言い張る。転生できたとか言ってる。シンプルにわけがわからない。
でも、どうやらそれは嘘でもなんでもないようだ。
いま着ている服を見ると買った覚えのない白のブラウス。パンと張った真白いシーツ。一人で寝るにはムダとしか思えない大きなベッド。どこぞの高級ホテルの一室かと思うようなロココ調の家具にやたら広い部屋。
極めつけは鏡に映った自分だ。さらっとしたブラウンの髪にくりっと大きな瞳は水色。人形みたいに整った目鼻立ち。なんてこと。間違いない。
「転生しちゃった・・・」
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