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32.次元の狭間
6.氷獄の魔宮
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「くそっ! 何でこんなことになっているんだ!」
コストイラが汗を蒸発させながら唾を吐く。
「悪態を吐く暇があったら、刀を振りなさい。死ぬわよ!」
「分ぁってる!」
唾に対して唾で答えるアストロに、さらに唾を吐いてコストイラが答える。
現在、コストイラ達はジャイアントイエティ群に囲まれていた。
パレードだと思うのだが、アレンの見立てではパレードではないらしい。
逃げようと思っても、すでに四方がジャイアントイエティに囲まれている。
コストイラは出された前脚を切りつけ、血を浴びる。辺りが雪原となっているほど寒いが、血は温かい。この温かさがあるからこそ、指が凍れずに、いつも通りに体が動く。
ジャイアントイエティという巨大で強力な魔物を相手に、調整を行っていた。
暴炎の侍は腕の力だけでなく、刀の質量も利用して攻撃を繰り出していく。
紺碧の後追い星は突く、薙ぐ、叩く以外にできることがないが、それだけを極めていく。少しずつアシドの軌道がズレていく。
絶壁の楯は楯で防ぎ、後ろにいる者を護るのみを意識していたが、護るだけでは駄目なことを知った。護るためには攻めなくてはいけないことも知った。
暗い過去の魔女は片腕のみを振るい、この場を支配していく。
傷だらけの凡人は何もできず、腕を痛めながら弓を引くが、ジャイアントイエティにはダメージがない。
誰もが逆らえない少女は盤面をくるくると見すぎて、すでに目をくるくる回し始めている。前線で戦う者達に対して回復を放ち続けているうちに、すでに吐き気が決壊しそうだ。
暗殺術を昇華させた勇者は雪岳巨人の目玉からズボリと出てきた。
「プハァ」
シキは溜め込んでいた空気を吐き出し、片腕を抜き出した。
「何だ? 数がちゃんと減っている?」
「そりゃあ、倒しているんだから当たり前じゃない」
「まぁ、そうなんだけど。いつの間にオレ達はこんなに倒したんだ?」
「まぁ、確かに」
そこで、奥の方にジャイアントイエティ以外の魔物が見えた。あれは灰色のドラゴンだ。
頭部を灰色の殻で守っている特徴を持っているのはエイルドラゴンだ。
慈悲の竜はジャイアントイエティを噛み殺していく。
「何だ? 積極的にジャイアントイエティを狙っている?」
「何かの意思がありそうね。本人か他人かは分からないけど」
エイルドラゴンが空色の瞳をこちらを向けてくる。
エイルドラゴンは口の中に魔力を溜めていく。そして、砲を吐き出し、ジャイアントイエティを破壊していった。
『オオオオオ!!』
雪岳巨人は仲間を屠ってきた慈悲の竜に雄叫びを上げる。
『オオオオオオ!!』
慈悲の竜も負けじと雄叫びを上げる。
その時、竜の後方に聳えていた、蒼白の塔の扉が開き、吹雪が飛び出してきた。
『オオオオ!!』
あのジャイアントイエティの体が凍っていく。
コストイラ達がジャイアントイエティを壁にしてやり過ごそうとする。
「この寒さに特化している巨人を凍らせるとか、どんな化け物だよ」
ザクザクと雪上を歩く音が近づいてくる。この巨人達を凍らせた張本人が。
エイルドラゴンの頭がヌッと出てきた。コストイラがかじかむ指を無理に動かし、刀を掴んだ。
エイルドラゴンの空色の瞳がそんなコストイラを見つめる。静かに見つめ合い、行動には移行しない。
何もせずに、何も言わずに、立ち去った。
「な、何だったんだ?」
「敵かどうか分かんねぇな」
「敵味方の二極化じゃなくて、単純に日和見側なんじゃ」
エイルドラゴンの背を見ながら、コストイラが自身の顎を触る。
ザクザクザクという足音はまだ後ろにある。ジャイアントイエティの向こう側にまだいる。この巨人達を凍らせた張本人はすぐそこにいる。
ヌッと氷の女王が出てきた。
勇者一行に緊張感が走る。
氷の女王がこちらに気付く。
『キャ!?』
「キャ?」
『あ』
分かりやすく驚いた氷の女王が口元に手を当てた。急に女の子のような声が出てきたことが恥ずかしいのだろう。
『あの、見なかったことに』
「別にいいけど、普通はそこ、聞かなかったことに、じゃねぇの?」
コストイラのツッコミに、氷の女王は顔を真っ赤にして両手で覆った。
コストイラが汗を蒸発させながら唾を吐く。
「悪態を吐く暇があったら、刀を振りなさい。死ぬわよ!」
「分ぁってる!」
唾に対して唾で答えるアストロに、さらに唾を吐いてコストイラが答える。
現在、コストイラ達はジャイアントイエティ群に囲まれていた。
パレードだと思うのだが、アレンの見立てではパレードではないらしい。
逃げようと思っても、すでに四方がジャイアントイエティに囲まれている。
コストイラは出された前脚を切りつけ、血を浴びる。辺りが雪原となっているほど寒いが、血は温かい。この温かさがあるからこそ、指が凍れずに、いつも通りに体が動く。
ジャイアントイエティという巨大で強力な魔物を相手に、調整を行っていた。
暴炎の侍は腕の力だけでなく、刀の質量も利用して攻撃を繰り出していく。
紺碧の後追い星は突く、薙ぐ、叩く以外にできることがないが、それだけを極めていく。少しずつアシドの軌道がズレていく。
絶壁の楯は楯で防ぎ、後ろにいる者を護るのみを意識していたが、護るだけでは駄目なことを知った。護るためには攻めなくてはいけないことも知った。
暗い過去の魔女は片腕のみを振るい、この場を支配していく。
傷だらけの凡人は何もできず、腕を痛めながら弓を引くが、ジャイアントイエティにはダメージがない。
誰もが逆らえない少女は盤面をくるくると見すぎて、すでに目をくるくる回し始めている。前線で戦う者達に対して回復を放ち続けているうちに、すでに吐き気が決壊しそうだ。
暗殺術を昇華させた勇者は雪岳巨人の目玉からズボリと出てきた。
「プハァ」
シキは溜め込んでいた空気を吐き出し、片腕を抜き出した。
「何だ? 数がちゃんと減っている?」
「そりゃあ、倒しているんだから当たり前じゃない」
「まぁ、そうなんだけど。いつの間にオレ達はこんなに倒したんだ?」
「まぁ、確かに」
そこで、奥の方にジャイアントイエティ以外の魔物が見えた。あれは灰色のドラゴンだ。
頭部を灰色の殻で守っている特徴を持っているのはエイルドラゴンだ。
慈悲の竜はジャイアントイエティを噛み殺していく。
「何だ? 積極的にジャイアントイエティを狙っている?」
「何かの意思がありそうね。本人か他人かは分からないけど」
エイルドラゴンが空色の瞳をこちらを向けてくる。
エイルドラゴンは口の中に魔力を溜めていく。そして、砲を吐き出し、ジャイアントイエティを破壊していった。
『オオオオオ!!』
雪岳巨人は仲間を屠ってきた慈悲の竜に雄叫びを上げる。
『オオオオオオ!!』
慈悲の竜も負けじと雄叫びを上げる。
その時、竜の後方に聳えていた、蒼白の塔の扉が開き、吹雪が飛び出してきた。
『オオオオ!!』
あのジャイアントイエティの体が凍っていく。
コストイラ達がジャイアントイエティを壁にしてやり過ごそうとする。
「この寒さに特化している巨人を凍らせるとか、どんな化け物だよ」
ザクザクと雪上を歩く音が近づいてくる。この巨人達を凍らせた張本人が。
エイルドラゴンの頭がヌッと出てきた。コストイラがかじかむ指を無理に動かし、刀を掴んだ。
エイルドラゴンの空色の瞳がそんなコストイラを見つめる。静かに見つめ合い、行動には移行しない。
何もせずに、何も言わずに、立ち去った。
「な、何だったんだ?」
「敵かどうか分かんねぇな」
「敵味方の二極化じゃなくて、単純に日和見側なんじゃ」
エイルドラゴンの背を見ながら、コストイラが自身の顎を触る。
ザクザクザクという足音はまだ後ろにある。ジャイアントイエティの向こう側にまだいる。この巨人達を凍らせた張本人はすぐそこにいる。
ヌッと氷の女王が出てきた。
勇者一行に緊張感が走る。
氷の女王がこちらに気付く。
『キャ!?』
「キャ?」
『あ』
分かりやすく驚いた氷の女王が口元に手を当てた。急に女の子のような声が出てきたことが恥ずかしいのだろう。
『あの、見なかったことに』
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