メグルユメ

パラサイト豚ねぎそば

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32.次元の狭間

13.儚き一日

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「我々を入館していただき、誠にありがとうございます」
『いや何。レイドが来たとの報せがあっては応じざるを得まい』

 謁見の間では、エンドローゼを除く勇者一行が現当主ロランド・ゴールに膝を着き、挨拶をしていた。
 好々爺然としているロランドは、まるで自分の孫に会ったかのように、温和な雰囲気を出している。

『話はそれで終わりかね? 私は君達としたいことがあってね』
「は、はい。終わりでございます」
『ついてきたまえ』

 話の流れから考えるに、案内されるのは仕事場だと思った。
 しかし、ついたのは明らかに女の部屋だ。名札のところには”ニャス”と書いてあり、名の隣には可愛らしい花と猫の絵が描かれている。

『さて、この中にエンドローゼがいるはずだ。果たして、どんな状態になっているのかな?』

 少し不穏なことを言いながら、ロランドが扉を開けた。

 中は異様な空気で満ちていた。
 確かに、中にエンドローゼがいたのだが、少女二人にサンドウィッチにされていた。先程エンドローゼを連れ去った少女と、黒翼に金髪の妖艶な女だ。

「あ、あの。お、お迎えがきーました、よ?」
『ヤダ。もうちょっと一緒にいる。離れない』
「あぅう」

 エンドローゼがこちらに手を振っている。明らかにこちらに助けを求めている。

『やはり、エンドローゼは可愛いな。つい、助けるのを忘れてしまうよ』

 絶対にわざと忘れているロランドは、嬉しそうに目の前の光景を眺め、楽しそうにしている。

「も、も、申し訳、なーいので、すが、しゅ、しゅ、出発を、お、遅らせてください、まっせんか?」
「私達は別に構わないけど、貴女はいいの?」
「あ、あ、汗をす、すごくかーいていますが、だ、だだだ、大丈夫で~すよ?」
『汗うま! 汗うま! エンドローゼの汗うま!!』
『最高! エンドローゼ全然抵抗しない! 優しい! 優しすぎる! 本当に最高! 可愛すぎて死ねる』
「死なないでください」

 自分達もこの茶番コントに付き合う必要はないと考え、アストロ達はその場を離れることにした。




 レイド達がなぜかジルの特訓を受けることになり、一行は中庭に立っていた。

「何で私まで」

 アストロが辟易としながら、一つしかない腕を開閉させて調子を確かめる。なんだかんだと言って付き合ってくれるいい女だ。

『命を刈り取る役目を放棄した剣だ。これを振り合おう』
「いや、だから私、魔法使いなんだけと。剣とかあんまり振ったことないんだけど」
『む? 魔を操りし者だったか。なればそれで構わない。いざ、仕合おう』
「まずは私からだ!」

 なぜか肉弾戦をすることを強いられそうになるアストロが、魂の叫びによって訴える。やる気に満ちるジルはルールの変更を了承し、その前にレイドが立ち塞がった。
 なぜかやる気に満ち溢れる両者がぶつかる。大戦斧を回転させながらぶつけるジルに、レイドは大楯で突進した。
 大戦斧と大楯が火花を散らす。誰もがこの後、描いた景色がある。いわゆる拮抗だ。
 しかし、そうはならなかった。

 大戦斧と大楯が交わり、ジルがぐっと力を込めると、レイドも負けじと力を込めた。

 ここで思い出さなければならないのはレベル差だ。そのレベルから繰り出されるレイドのパワーだ。レイドは外人、つまり、人の理から外れた者である。たかだた竜の力の一端を手に入れただけの一般軍人に勝てる領域にいないのだ。

 結果、ジルは吹き飛ばされた。そして、レイドは勢い余って転んでいった。

『「えぇ?」』

 そして、両者はともに泥の中に落ちていったのだった。
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